イル・ロンバルディアを制したエステバン・チャベスは、クラシックハンターになり得るのか?

フランク・シュレクと、ライダー・ヘシェダル、共にトレック・セガフレードに所属する2人のライダーが引退する。

フランクは、弟のアンディと共に、ツール・ド・フランスでアルベルト・コンタドールやカデル・エヴァンスらと死闘を繰り広げた。世界が注目するツールで印象的な活躍をしたこともあり、とても人気のある自転車選手の一人だ。イル・ロンバルディアでは、フランクのためにチームは特別仕様のバイクを用意した。

ヘシェダルは2012年のジロ・デ・イタリアのチャンピオンである。グランツールを制した一人であるにもかかわらず、ヘシェダルはノーマル仕様のバイクで引退レースに出場していた。もっとも、ジロを制したときはトレックではなくガーミンに所属していたが。

フランクのグランツール成績は、2011年のツール・ド・フランス総合3位が最高で、他には2006年アムステルゴールドレース優勝、2010年ツール・ド・スイス総合優勝が主要な戦績である。

確かにフランクの方が目立った活躍をしているが、ヘシェダルもグランツール総合優勝は誰にも出来るわけではない特別な経験である。

にもかかわらず、フランクのみ特別バイクを用意されることを見ると、ただ勝つだけではダメなんだろうなあと思いたくもなる。

プロであるなら、勝つことは当たり前で、プラスアルファで印象を残すような、ファンを楽しませるような要素がないと、人気選手にはなり得ないのではないかと思う。

イル・ロンバルディアはオリカ・バイクエクスチェンジのエステバン・チャベスが制した。このレースを見ていて、チャベスはただ勝つだけではなく、プラスアルファを創り出す才能も大いに持ち合わせている選手であると確信した。

チャベスのレースを動かす力・才能

平均勾配8.9%、最大斜度15%と今大会で最も傾斜が厳しいサンアントニオ・アバンドナートの登りで、レースが動いた。

最初に動いたのはチャベスではなかったが、強力な追走集団にはしっかりと入り込んだ。

この動きで、ダン・マーティンやジュリアン・アラフィリップなど、有力選手がふるい落とされてしまった。

次にレースが動いたのは、この日最後の大きな登りとなったセルヴィーノの登りに入った瞬間だった。

チャベスがペースアップして、仕掛ける。反応したのはロメン・バルデとリゴベルト・ウラン、ディエゴ・ローザはエースのファビオ・アルの様子を見ながら、間合いを測っていた。

このセルヴィーノの登りは序盤が一番傾斜がキツい。

SS 24

キツいと言っても最大9%ほどである。一級のクライマーたちにとってみれば、9%の登りなどそれほど厳しいものではないが、すでに200km以上、それも厳しい山岳地帯を走ってきて疲労がたまったクライマーたちにとっては、簡単な登りではなかった。通常なら、登りの後半、頂上付近でアタック合戦が起きるのがセオリーではあった。登り口でいきなりアタックを仕掛けるとは、想定していなかった選手も何人かいたであろう。

プロトンの様子を逐一観察しながら、ここぞというタイミングでアタックを仕掛ける力も、プロロードレーサーにとって重要な資質である。

チャベス、バルデ、ウラン、ローザの4名のスプリント力は、どっこいどっこいである。ゴールまで最も連れて行きたくないアレハンドロ・バルベルデを後方に取り残したことはお見事である。

取り残された追走集団も、人数は揃っていたので協調体制を築くことが出来れば先頭に追いつくことも十分可能ではあったが、圧倒的なスプリント力を持っているバルベルデを前に引き上げては勝ち目がないと見て、モビスター以外の選手はほとんど先頭で牽く様子が見られず、バルベルデと共に追走集団に残っていたジョヴァンニ・ヴィスコンティが一人で仕事をするシーンが目立っていた。

4人でローテーションする先頭集団と、ほぼヴィスコンティ一人で牽いている追走集団が先頭との差を詰めることは難しく、徐々に差が開いて、先頭4名の逃げ切りがほぼ確定した。

とはいえ、ワンデーレースでは上位10位までUCIポイントを獲得することが出来て、8位20pts、9位10pts、10位4ptsと9位以上は決して低くはないポイントを獲得することが出来る。そのため、追走集団では5位を狙った駆け引きが始まったことも、先頭4名の逃げ切りを加速させる。

先頭4名は、残り5kmを切って、最後の丘を登る。石畳もある登りで、最初に仕掛けたのはローザ。最初にチェックしたのはチャベス。ローザに仕掛けさせて、チャベスは背後でピタリとマークして力を溜める。

突然失速したバルデを置いて、チャベス、ローザ、ウランの3名によるスプリント勝負が濃厚となる。

最後は完全なる力勝負で、最初に仕掛けたローザの背後からチャベスがまくって勝負あり!わたしには、ローザに仕掛けさせたパワーの分だけ、チャベスが上回ったように見えた。

グランツールレーサーとして、台頭したチャベスではあったが、ブエルタ・ア・エスパーニャ第20ステージしかり、ワンデーレースのレース運びが非常にうまくなっているように感じた。自らレースを動かして、そのまま勝利する姿は、サイクルロードレースファンからの支持を得られる活躍であると言えよう。

それにインタビューでの爽やかな笑顔も、コロンビア陣らしからぬ整った顔立ち[1]キンタナとアタプマの印象が強すぎて…。すみません。も、女性ファンのハートをガッチリ掴んでいるのではないだろうか。

来シーズンは、グランツールだけでなく、リエージュ~バストーニュ~リエージュやフレーシュ・ワロンヌのようなクライマー向けのクラシックレースでの活躍も期待したくなるレースだった。またチャベスの笑顔が見られることを祈って。

Rendez-Vous sur le vélo…

References

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1 キンタナとアタプマの印象が強すぎて…。すみません。

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