あと一歩のところで、マリアローザを逃したステフェン・クライスヴァイクが所属するロットNLユンボの戦力分析です。
クライスヴァイク、ロバート・ヘーシンク、ディラン・フルーネヴェーヘンら、オランダ人選手たちの活躍が楽しみなメンバー構成です。
ロットNLユンボ2017年ロースター
エンリコ・バッタリン(イタリア)
ジョージ・ベネット(ニュージーランド)
クーン・バウマン(オランダ)
ビクトール・カンペナールツ(ベルギー)
タン・カステリンズ(オランダ)
ロバート・ヘーシンク(オランダ)
ディラン・フルーネヴェーヘン(オランダ)
マルティン・ケイゼル(オランダ)
ステフェン・クライスヴァイク(オランダ)
ステフェン・ラメルティンク(オランダ)
トム・リーザー(オランダ)
ベルトヤン・リンデマン(オランダ)
ポール・マルテンス(ドイツ)
プリモシュ・ログリッチ(スロベニア)
ティモ・ルーセン(オランダ)
ヨス・ファンエムデン(オランダ)
アレクセイ・ヴァーミューレン(アメリカ)
ロバート・ワグナー(ドイツ)
マールテン・ワイナンツ(ベルギー)
ブラム・タンキンク(オランダ)
・新加入選手
ユルゲン・ヴァンデンブロック(ベルギー)←カチューシャ
ラース・ボーム(オランダ)←アスタナ
ステフ・クレメント(オランダ)←IAMサイクリング
ファンホセ・ロバト(スペイン)←モビスター
ダーン・オリヴィエ(オランダ)←ジャイアント・アルペシン
アンタン・トルホエック(オランダ)←ルームポット・オランジュプロトン(PCT、オランダ)
フローリス・デ・ティア(ベルギー)←トップスポート・フラーンデレン・バロワーズ(PCT、ベルギー)
ギース・ヴァンホッケ(ベルギー)←トップスポート・フラーンデレン・バロワーズ(PCT、ベルギー)
アムンドグロンダル・ヤンセン(ノルウェー)←チーム・ジョーカー(CT、ノルウェー)
・退団選手
モレーノ・ホフランド(オランダ)→ロット・ソウダル
ウィルコ・ケルデルマン(オランダ)→サンウェブ・ジャイアント
ミケ・テューニッセン(オランダ)→サンウェブ・ジャイアント
トム・ヴァンアスブロック(ベルギー)→キャノンデール・ドラパック
セプ・ヴァンマルケ(ベルギー)→キャノンデール・ドラパック
デニス・ファンウィンデン(オランダ)→イスラエル・サイクリングアカデミー(PCT、イスラエル)
ジャン・ジーウェイ(中国)→SEGレーシングアカデミー(CT、オランダ)
マールテン・チャリンギ(オランダ)→引退
総合リーダーはクライスヴァイクが担う
2016年ジロで、総合優勝寸前だったクライスヴァイクが、引き続きリーダーを務めることでしょう。
これまでグランツールには11回出場し、9回完走しています。ジロとは相性が良く3度の一桁総合順位でフィニッシュしています。
2017年のジロにも出場の期待がかかり、初の表彰台・総合優勝を狙うことでしょう。
また、カチューシャから新加入のヴァンデンブロックも、総合力の高いオールラウンダーです。近年はアシストに回ることが多いので、グランツールではクライスヴァイクの山岳アシストを務めると思われますが、クライスヴァイクの出場しないステージレースではヴァンデンブロックの走りにも期待がかかります。
懸念された山岳アシスト不足は解消とは言えない状況
2016年ジロでもクライスヴァイクが単独でライバルチームの攻撃に耐えるシーンがよく見られました。元々総合上位を狙う予定ではなかったことも影響しているとは思いますが、山岳アシスト不足は否めません。
2016年ジロに出場したブラム・タンキンクの残留は朗報と言えますが、長年チームに在籍していたオールラウンダーのウィルコ・ケルデルマンが移籍してしまいました。代わりにヴァンデンブロックを獲得し、ケルデルマンの穴を埋めることには成功しましたが、それ以上の補強はほとんどありませんでした。
したがって、2017年シーズンも山岳アシスト不足に悩まされることでしょう。
その状況で朗報と言えるのは、ジョージ・ベネットの成長です。2016年ブエルタでは総合10位に入り、本来エースを務めるクライスヴァイクが落車でリタイアした後は、もはやエースと言える活躍を見せていました。山岳アシストとして重要な役割を与えられる可能性が高いですし、単独エースとしてステージレースへの出走もあり得るでしょう。
ヘーシンクも、チーム内ではトップレベルの登坂力を持った選手です。ブエルタで自身初のグランツールでのステージ優勝を飾り、かつての輝きを取り戻しつつあります。
ただ、総合で上位を狙うような走りではなく、パンチャーのようにステージ優勝やクラシックレースを狙う走りをするのではないかと個人的には予想しています。もし、アシストに回ることがあれば、これ以上ない頼もしい存在であることは言うに及びません。
若手選手に目を向けると、デ・ティア、バウマン、オリヴィエ、ヴァーミューレン、ヤンセン、トルホエック、ヴァンホッケあたりも登坂力のある選手たちです。みな若く、実績も乏しくグランツールのような長丁場の経験も少ないため、過度な期待は禁物でしょう。
屈指のTTスペシャリストを揃えたルーラー集団
欧州ロード選手権個人TT2位のカンペナールツ、ロード世界選手権個人TT8位のファンエムデン、ジロ第9ステージ(個人TT)優勝のログリッチと、高いTT力を持つ選手たちが揃っているチームでした。
ここに解散したIAMサイクリングから移籍のクレメント、アスタナから移籍のボームが加わります。
クレメントは2016年ツール総合18位と登坂力も持ち合わせながら、TT力・独走力に長けた選手であります。
ボームはTTスペシャリストではありませんが、クラシックスペシャリストと言える脚質で、平坦に強いタフな選手です。2016年はグランツールに未出走でしたが、長丁場のステージレースではボームのようなタフで何でも出来る選手が重宝されます。
とあるグランツールの出場メンバー例
ステフェン・クライスヴァイク
ユルゲン・ヴァンデンブロック
ジョージ・ベネット
ロバート・ヘーシンク
ブラム・タンキンク
クーン・バウマン
ステフ・クレメント
ビクトール・カンペナールツ
ラース・ボーム
貴重な山岳アシストを全投入したパターンです。実際は、後述するエーススプリンターが出場する可能性が高いため、総合上位とステージ優勝を狙うバランスの良いメンバー構成で挑むものと思われます。
ワンデーレースの勝利、ステージ優勝を狙って、ヘーシンクがエースを務める機会が多くなるだろう
やはりヘーシンクの力が一つ飛び抜けている印象です。
他の強いパンチャーたちに比べると、スプリント力ではかなわない部分があるので、リエージュ~バストーニュ~リエージュやイル・ロンバルディアのようなクライマーズクラシックが狙い目でしょう。何よりも、山頂フィニッシュステージでは、積極的に勝ちを狙ってくると思います。
バッタリン、リンデマン、リーザーあたりは、スプリント力の高いパンチャーたちです。ワールドツアークラスのワンデーレースでは厳しいかもしれませんが、1クラス・HCクラスのレースでは、彼らがエースとして走る機会も多くなることでしょう。
石畳レースでは、ボームがエースです。2015年パリ〜ルーベ4位の力を再び見たいものです。
マルテンス、ワイナンツらベテランパンチャーたちの渋い働きにも注目したいところです。
若手では、ルーセンに注目です。20歳の頃からトップチームで走り、23歳ながら既に2度グランツールを完走しています。これから、どういった方向に成長していくのか楽しみな逸材です。
チーム内でもう一人のスター選手・フルーネヴェーヘンを中心としたスプリントにも注目
現オランダチャンピオンのフルーネヴェーヘンが、もう一人のエースです。23歳ながらに年間11勝をあげ、大器の片鱗を見せた2016年シーズンでした。
そんなフルーネヴェーヘンにとって頼もしい存在は、モビスターから移籍してきたロバトです。実力のあるスプリンターの加入により、これまで以上にトレインが組みやすくなることでしょう。
リーザー、ワグナーらと共に、フルーネヴェーヘンを支えてくれるに違いありません。
若手選手を多く抱えるオランダチームの飛躍に期待
ステージレース:★★★★☆
ワンデーレース:★★★☆☆
ステージ優勝:★★★★☆
スプリント:★★★★☆
チームの3分の1くらいはU-23の選手です。若い力がどこまで伸びてくるかによって、大きく成績が変わってくると思います。
爆発力を秘めた一方で、ボーム、クレメント、ヴァンデンブロックなど決して派手ではありませんが、堅実な補強でチーム力をアップさせている印象です。
ヘーシンクとフルーネヴェーヘンで、多くの勝利を狙いつつ、クライスヴァイクでの総合上位がこのチームのミッションでしょう。
あと一歩及ばなかったグランツールのリーダージャージ目指して、クライスヴァイクの走りが楽しみです。
・他のチームの戦力分析記事はこちら
ワールドツアーチーム一覧&全チーム戦力分析【2017年シーズン版】
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