ジロ・デ・イタリア2017 全21ステージプレビュー!

第100回記念大会となるジロ・デ・イタリアは、5月5日にサルデーニャ島で開幕する。

総走行距離は3,615.4km。
全21ステージの内訳は、
・スプリンターステージ:8
・中級山岳ステージ:8
・上級山岳ステージ:5
・個人タイムトライアル:2
となっている。

大会の前半は比較的やさしめのステージが続き、後半になると一気に難易度が上がる。

最終日はミラノへとフィニッシュする個人TTステージで、総合争いの決着がつけられる。


ジロ・デ・イタリア2017 全ステージコースプロフィール

第1ステージ:アルゲーロ〜オリビア/206km/★★☆☆☆

サルデーニャ島の北岸を沿うように東へ進むステージ。
海岸に隣接する道路を走る区間も多々あるため、気象状況によっては横風が吹くこともあり得る。

平坦ステージではあるが、不規則に訪れる小さな登りは数多く存在し、4級山岳も4ヶ所登場。
3つ目の4級山岳は残り21km地点に登場し、登坂距離3.25km・平均勾配5.6%・最大勾配12%となっている。

残り2km地点には400mほど石畳区間も登場する。
集団スプリントのための位置取り争いに影響する可能性があるので、要注意だろう。

最後のコーナーは残り600m地点にあり、最終ストレートは道幅8mはあるので、迫力ある集団スプリントが見られるに違いない。

このステージの勝者が自動的に、100回記念大会用のマリアローザに袖を通すことになる。

第2ステージ:オルビア〜トルトリ/221km/★★☆☆☆

サルデーニャ島の内陸部を通りながら、南下していく。
丘陵地帯を通るため、3級山岳と2級山岳が一つずつ登場する。

2級山岳は残り147.5km地点からダラダラと登り始め、頂上は残り174.1km地点にある。
登坂距離26.6km・平均勾配3.2%とひたすらに長い登り坂だ。
屈強なピュアスプリンターたちにとっても、問題のない登りだと思われる。

2級山岳を越えると、フィニッシュ地点まで約40kmのダウンヒルを経て、フィニッシュ前10kmは完全に平坦路だ。

最終コーナーは残り1800m地点に現れる。
そこからフィニッシュラインまでは、道幅7.5mの広い直線路となる。
激しいポジション争いの末、集団スプリントが見られることだろう。

第3ステージ:トルトリ〜カリアリ/148km/★☆☆☆☆

トルトリから高速道路を走って南下していき、2つ目の中間スプリント地点から西方面へと進路を変えて、カリアリにフィニッシュする。
途中4級山岳が登場するものの、ほぼ平坦路のステージとなっている上に、148kmとステージ自体の走行距離も短い。

残り5kmを切ってから直角に曲がった後は、フィニッシュラインまでほぼ直線路となっている。
道幅も広く、この日も集団スプリントとなるだろう。

休息日(移動日)

サルデーニャ島から、選手たちは空路でシチリア島へと移動する。

第4ステージ:チェファル〜エトナ/181km/★★★★☆

シチリア島の北岸の街・チェファルをスタートして、海沿いに東に進んでいく。
途中から南下していくと、決戦の舞台となるエトナ山へと近づく。

57.2km地点から2級山岳ポルテッラ・フェッミーナ・モルタの登りが始まる。
登坂距離32.8km・平均勾配5%・最大勾配8%と、ひたすらに長い。

163km地点からの登坂距離18km・平均勾配6%・最大勾配12%のエトナ山の登りで、今大会最初の本格的な総合争いが勃発するだろう。

第5ステージ:ペダーラ〜メッシーナ/159km/★☆☆☆☆

コースの前半部は内陸の丘陵地帯を通過するため、アップダウンが多くなっている。
後半は海岸沿いのフラットな道を進み、コース難易度も星1つだ。

もし、前日のエトナでニーバリがリーダージャージを獲得することが出来れば、ニーバリの生まれ故郷であるメッシーナにマリアローザを着て凱旋することが出来るだろう。

第6ステージ:レッジョ・カラブリア〜テルメ・ルイジャネ/217km/★★☆☆☆

序盤に3級山岳があるが、中盤は完全にフラットとなっている。
191km地点からの4級山岳を皮切りに、コースの表情が一変する。

ラスト10kmはアップダウンの激しいテクニカルなコースとなっていて、フィニッシュ地点は勾配8%の丘の上に設定されている。

ラスト2kmは平均勾配5.3%・最大勾配10%の登りであるため、ピュアスプリンターには厳しそうだ。
ステージ優勝争いは登坂力のあるパンチャー同士の戦いとなりそうだ。

総合勢は、ポジションを落とさないよう集団前方で終盤のアップダウンに臨みたい。

第7ステージ:カストロヴィッラリ〜アルベロベッロ/224km/★☆☆☆☆

全体的には平坦ステージに分類されるが、139km地点の中間スプリントを越えてからアルベロベッロへ向かう道は多くのアップダウンを含む。

とはいえ、ピュアスプリンターにとってそこまで厳しいものではなく、集団スプリントとなることが予想される。

ゴールストレートはやや登り坂となっているが、問題は残り600m付近に登場する鋭角カーブの存在だ。

このコーナーを先頭で通過したチームが非常に有利だと言えるので、終盤のポジション争いには注目したい。

第8ステージ:モルフェッタ〜ペスキチ/189km/★★★☆☆

前半の90kmはひたすら真っ平らであるが、中盤の2級山岳を越えるとアップダウンが激しくなる。

このコースはラスト5kmが非常にテクニカルになっている。

2kmのダウンヒルの後、フィニッシュまで1.5kmは平均勾配5.7%の登り坂となっている。
さらにフィニッシュライン直前の200mは平均勾配10.5%・最大勾配12%の激坂フィニッシュとなっている。

さらに、ラスト1kmには2度のヘアピンカーブに3ヶ所の直角コーナーもある。
集団を振り切るには持って来いのレイアウトとなっているので、ラスト5kmのダウンヒルで総合勢がアタックを仕掛ける可能性も十分にある。

第9ステージ:モンテネーロ・ディ・ビザッチャ〜ブロックハウス/152km/★★★★☆

グランツールの一つの傾向として、週末に重要なステージを持ってくる傾向にある。
休日であれば、観客の動員も見込めるし、テレビ視聴率も高くなる。
そこに合わせて重要なステージを設置するのだ。

2週目に入ったジロにとって、ここからの数ステージは趨勢を決定づけかねない極めて重要なステージとなっている。

まずは第9ステージ。
序盤・中盤は何の変哲もないコースではあるが、ラストの1級山岳ブロックハウスが非常に強烈となっている。

ラスト10kmは平均勾配9.4%・最大勾配14%と、かなり厳しい登りだ。
これだけ急な斜面が長く続けば、総合勢による山岳バトルが勃発するに違いない。

特にタイムトライアルを苦手とするクライマーほど積極果敢に攻撃を仕掛けてくることだろう。
この日、マリアローザの所有者が移動する可能性は高い。

休息日

激戦から明けて、待ち望んだ休息日がやってくる。

ただし、翌日も総合争いにおいて極めて重要な個人TTステージが待っている。
心身ともに休ませたいところだが、個人TTのパフォーマンスを考えると、コースの下見などやることは多そうだ。

第10ステージ:フォリーニョ〜モンテファルコ/39.8km/★★★★☆

休息日明け一発目は、いきなり39.8kmの個人タイムトライアルだ。

途中4〜5%の登りも含まれているため、クライマーにも多少有利となっている。
ラスト5kmは緩やかな登りとなっていて、平均勾配は2%程度だ。

多少の登りがあっても、TTスペシャリスト向きのコースであることには違いない。
前日の1級山岳で失ったタイムを挽回する絶好のチャンスであり、さらにクライマーを突き放す好機でもある。

またマリアローザが移動する可能性があるだろう。
めまぐるしい総合バトルは見応えがありそうだ。

第11ステージ:フィレンツェ(ポンテ・ア・エマ)〜バーニョ・ディ・ロマーニャ/161km/★★★★☆

全21ステージの中で、ちょうど折り返し地点となる第11ステージ。

2級山岳2つ、3級山岳2つが次々と登場するステージとなっていて、今ステージも難易度は高めである。
最後の2級山岳モンテ・フマイオーロの頂上まで残り3kmの区間は、平均勾配8.6%・最大勾配12%となっている。

ここを越えると、フィニッシュまではおよそ25kmのダウンヒルだ。
ダウンヒルが得意な選手たちは、2級山岳モンテ・フマイオーロの頂上付近でアタックを仕掛けて、集団からリードを奪ってダウンヒルで逃げ切る狙いを実行するかもしれない。

油断すると致命傷を負いかねないステージなので、最後まで全く気が抜けない。

第12ステージ:フォルリ〜レッジョ・エミリア/234km/★☆☆☆☆

激闘の日々を終え、総合争いは一旦小休止。
最終決戦の地となるイタリア北部に向けて移動していくステージだ。

序盤に2級山岳、中盤に3級山岳があるが、以降はフィニッシュ地点まで延々と下り基調の平坦路を走ることになる。

久々に大集団によるスプリント勝負となるだろうが、注意点は残り1kmを切ってから二度ほど135度くらいのゆるいカーブを経て最終ストレートへとたどり着くことだ。
幸い、道幅は広いため、大勢には影響は少ないと思われる。

第13ステージ:レッジョ・エミリア〜トルトーナ/167km/★☆☆☆☆

完全に真っ平らなステージ。
カテゴリー山岳も一切ない。

逃げ切りたい小集団と、スプリントに持ち込みたい大集団の駆け引きを楽しみながら、再び集団スプリントとなることだろう。

そして、この日がスプリンターたちにとって、今大会最後の見せ場となるだろう。
翌日からは、総合バトルの終盤戦へと移っていく。

第14ステージ:カステッラーニア〜オロパ(ビエッラ)/131km/★★★☆☆

平坦、平坦、そして最後の最後に一発ドカンと1級山岳が待ち受けるレイアウトだ。

フィニッシュ地点となるオロパの登りは、登坂距離11kmで最大勾配は13%だ。
残り7kmを切ってからは、平均勾配8%ほどの登りが続く。

決定的な差をつけるチャンスでもあり、登りが苦手な選手は離されまいと必死で走ることを強いられるだろう。

第15ステージ:ヴァルデンゴ〜ベルガモ/199km/★★★★☆

前半の150kmは、最終ステージのミラノ近郊を通過しながら、ほとんど平坦の道を進んでいく。

150km地点から2級山岳の登りが始まる。
登坂距離8.7km・平均勾配7%・最大勾配11%で、頂上付近が最も勾配が厳しい。

一旦下ってから、即座に3級山岳の登りが始まり、また下っていくと、フィニッシュ前のテクニカルなアップダウンが登場する。

残り4km地点を切ったあたりには、最大勾配12%の石畳の登りが設置されている。
このミュールとも言える登りの後は、フィニッシュ地点までダウンヒルだ。
途中鋭角なコーナーをいくつか含んでいるため、ミュールで仕掛けて逃げ切りを持ち込む展開も考えられる。

総合上位勢もリスクを負った攻めを仕掛けやすいステージだと言えよう。

休息日

翌日には、大決戦となるクイーンステージが待ち受けている。

疲れた身体をリフレッシュさせるだけでなく、決戦に向けて気分転換を図ることだろう。

第16ステージ:ロヴェッタ〜ボルミオ/222km/★★★★★

紛うことなき、今大会のクイーンステージ。
モルティローロ峠、ステルヴィオ峠、ジョゴ・ディ・サンタ・マリアの3つの峠道を越えるステージは、総獲得標高5000mオーバー。

何しろステルヴィオ峠の頂上は標高2758mで、今大会のチーマコッピである。

71.9km地点から登り始めるモルティローロ峠は、登坂距離12.6km・平均勾配8%・最大勾配16%。
やはり、頂上付近の勾配がキツくなっている。

121.8km地点から始まるステルヴィオ峠は、登坂距離21.7km・平均勾配7%・最大勾配12%というジロの名物峠だ。
登り始めから頂上付近まで、安定して7%前後の傾斜が続く。

189.1km地点から始まるジョゴ・ディ・サンタ・マリアの登坂区間は、今大会唯一のイタリア国外、スイスの道を走る。
登坂距離13.5km・平均勾配8.6%・最大勾配12%と、3つの峠の中で最も平均勾配がキツくなっている。

この登りを終えると、フィニッシュ地点まで20kmのダウンヒルだ。
ステルヴィオ峠の登りで通った道を逆走する形で、山を下っていく。
つまり、7%前後のダウンヒルが延々と続くわけだ。

名うてのダウンヒラーがこぞって、決死の攻撃を仕掛けてくるだろう。

第17ステージ:ティラーノ〜カナツェーイ(ヴァル・ディ・ファッサ)/219km/★★★☆☆

スタート直後から、2級山岳が連発して訪れる。

1つ目の2級山岳アプリカは、登坂距離12.3km・平均勾配6.5%・最大勾配11%となっている。
続いて、49.2km地点から始まる2級山岳パッソ・デル・トナーレは登坂距離11km・平均勾配6%・最大勾配10%だ。

序盤から、ライバルチーム同士、アシストの削り合いとなるような攻撃が見られるかもしれない。

その後は、70kmほど下り基調のダウンヒルを終えて、フィニッシュ地点まで90kmほど3級山岳を含む緩やかな登り基調のコースとなっている。

総合のタイム差がつくような展開にはしにくいが、集団スプリントになる可能性も低そうだ。
逃げ切りが決まるのではないかと思っている。

第18ステージ:モエナ(ヴァル・ディ・ファッサ)〜オルティセイ、セント・ウルリッヒ(ヴァル・ガルデーナ)/137km/★★★★★

わたしは、今大会で最も重要なステージが、この第18ステージだと見ている。

1級山岳2つ、2級山岳2つ、3級山岳1つと、カテゴリー山岳が計5ヶ所登場するが、獲得標高は3000mを上回る程度である。

このステージの重要なポイントは、距離が137kmと短いことだ。
そして、見た目どおり登りと下りしかないレイアウトになっている。

思い返されるのは、昨年のブエルタ第15ステージだ。
ナイロ・キンタナとアルベルト・コンタドールの奇襲が成功し、クリス・フルームは大きくタイムを失った。

連日の激闘の疲れが、エースではなくアシストの脚にじわじわ溜まっていく。
集団の前にいなくてはならない。
頭では分かっていても、身体が言うことを利かずに、奇襲攻撃を喰らってしまう。
ということが、再び起こるかもしれない。

5つの登りは、どれも平均勾配が6〜7%前後ある。

最後の1級山岳ポンティヴェスは、頂上付近が最も厳しく最大勾配12%の区間が待ち受けている。

仮に集団分断作戦が実らずとも、エース同士の激しい山岳バトルは繰り広げられることだろう。

第19ステージ:サン・カンディド、イニチェン〜ピアンカヴァッロ/191km/★★★★☆

スタート直後から3級山岳が登場するが、中盤の2級山岳までは下り基調で少々アップダウンがあるようなレイアウトになっている。

やはり、勝負どころは最後の1級山岳ピアンカヴァッロの登りだ。

登坂距離15.5km・平均勾配7.3%・最大勾配14%。
登り始めが厳しく、頂上に近づくにつれゆるやかになってくる。

マリアローザをめぐる戦いは激化する一方だろう。
もはや、毎日がクライマックスである。

第20ステージ:ポルデノーネ〜アジアーゴ/190km/★★★★☆

いよいよ、残すところ2ステージ。
最終日は個人TTであるため、クライマーにとっては、この日が最後の攻撃のチャンスとなる。

ちょうど、フィニッシュまで半分を残した95km地点過ぎから、1級山岳モンテ・グラッパの登りが始まる。
登坂距離24.2km・平均勾配5.3%・最大勾配11%と、厳しい傾斜ではないが、長い登りが続く。

途中には、なだらかな区間や、短いダウンヒルも登場する。
変化が多く、仕掛けどころは豊富にあると言えるだろう。

最後の1級山岳フォザは、登坂距離14.1km・平均勾配6.7%・最大勾配11%で、モンテ・グラッパに比べると一定の傾斜が続く登りとなっている。
ここが泣いても笑っても、最後の山岳バトルポイントとなる。
TT力に劣るクライマー寄りの選手たちは、最後の勝負を仕掛けてくるだろう。

第21ステージ:モンツァ〜ミラノ/27.6km/★★☆☆☆

最終日は、F1グランプリが開催されるモンツァ・サーキットをスタートし、ミラノ中心部の大聖堂広場へとフィニッシュするタイムトライアルステージだ。

コースは全体的に下り基調で、ほぼ平坦路。
つまり純粋なTT力がものを言うステージとなる。
ピュアクライマーには不利、そしてTTスペシャリスト寄りのオールラウンダーには有利と言えるコースなのだ。

27.6kmもあれば、1〜2分のタイム差を挽回することも可能かもしれない。

もし最終日でマリアローザが逆転するようなことがあれば、2012年に総合優勝したライダー・ヘシェダル以来の出来事となる。

まとめ

大会終盤の厳しい山岳地帯と、長距離が設定された個人TTと、ピュアクライマーだけでなく、TTスペシャリスト寄りのオールラウンダーにも十分に勝機のあるステージレイアウトだと言えよう。

最後の最後まで勝負の行方がわからない展開になるのか、それとも誰かの圧勝と言える展開になるのか。
いずれにせよ、100回記念大会はスペクタクルな名勝負が生まれるに違いない。

次回は、ジロ・デ・イタリア総合優勝を狙うチームのプレビューを書いていきたい。

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