カチューシャ・アルペシン戦力分析!【2018年シーズン】

新加入のマルセル・キッテルに大注目のカチューシャ・アルペシン。

総合エースはイルヌール・ザカリンが担いつつ、キッテルでのスプリント勝利増産を狙う布陣となっている。

カチューシャ・アルペシン2018ロースター

イルヌール・ザカリン(ロシア)
トニー・マルティン(ドイツ)
シモン・スピラク(スロベニア)
マキシム・ベルコフ(ロシア)
イエンセ・ビエルマンス(ベルギー)
ホセ・ゴンサルベス(ポルトガル)
マルコ・ハラー(オーストリア)
ロベルト・キセロウスキー(クロアチア)
パヴェル・コチェトコフ(ロシア)
ビアチェスラフ・クズネツォフ(ロシア)
マウリス・ラメルティンク(オランダ)
レト・ホレンシュタイン(スイス)
ティアゴ・マシャド(ポルトガル)
マルコ・マティス(ドイツ)
バティスト・プランカールト(ベルギー)
ニルス・ポリッツ(ドイツ)
ヨナタン・レストレポ(コロンビア)
マッズウルス・シュミット(デンマーク)
リック・ツァベル(ドイツ)

・新加入選手
マルセル・キッテル(ドイツ)←クイックステップ・フロアーズ
ネイサン・ハース(オーストラリア)←ディメンションデータ
イアン・ボズウェル(アメリカ)←チームスカイ
アレックス・ドーセット(イギリス)←モビスター
ステフ・クラス(ベルギー)←BMC・ディベロップメントチーム(アマチュア)
マッテオ・ファッブロ(イタリア)←サイクリングチーム・フリウリ(アマチュア)
ウィレム・スミット(南アフリカ)←UC・ナント・アトランティック(アマチュア)

・退団選手
アレクサンドル・クリストフ(ノルウェー)→UAEチーム・エミレーツ
スヴェンエリック・ビストラム(ノルウェー)→UAEチーム・エミレーツ
ミケル・モロコフ(デンマーク)→クイックステップ・フロアーズ
マトヴェイ・マミキン(ロシア)→ブルゴス・BH(PCT、スペイン)
レイン・ターラマエ(エストニア)→ディレクトエネルジー(PCT、フランス)
ピオトル・ハウィク(オランダ)→ビート・サイクリングクラブ(CT、オランダ)
アンヘル・ビシオソ(スペイン)→引退
アルベルト・ロサダ(スペイン)→引退

総合エースはザカリンが担う

グランツールでエースを張るのはザカリンだ。2017年はジロ・デ・イタリア総合5位、ブエルタ・ア・エスパーニャ総合3位と徐々に大器の片鱗を見せ始めている。

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登坂力はもちろん、TT力も決して低くなく、まさにオールラウンダーといった脚質だ。弱点はダウンヒルで、2016年ジロではダウンヒルの最中にコントロールを失い谷底に転落する事故を起こしている。この影響もあってか、特に雨で濡れているような路面コンディションの悪いダウンヒルは非常に苦手にしている印象だ。

ダウンヒルで遅れたザカリンを、アシストが全力で引き戻すシーンはもはや恒例行事ともいえる。

一方で、攻撃的な上りはザカリンの魅力を引き立てている要素だ。爆発的なヒルクライムを見せるわけではないが、ライバルたちの動きを見ながらペースアップするタイミングを図ることがとてもうまく、集団から抜け出してリードを築く展開は度々見られる。

と思いきや、何でもなさそうな上りで突然遅れることもしばしば。動きの読めない不思議ちゃんとは、サイクルフォトグラファー辻啓さんの寸評である。

好不調の波を抑えることができれば、安定してグランツール表彰台を狙えるような選手になることだろう。

山岳アシストが大幅戦力ダウン

ところが、ザカリンを支える山岳アシスト陣の多くが移籍してしまった。

ジロで強力山岳トレインを形成していたロサダとは来季の契約を結ばず、マミキンは移籍した。ブエルタでザカリンを支えていたターラマエも移籍となった。

代わりにチームスカイからボズウェルを獲得したものの、1人で3人分の穴を埋めることは難しい。21歳のクラスは、ツール・ド・ラヴニール(2.Ncup)で総合5位に入った上りに強い選手で、22歳のファッブロもラヴニールではしっかり上っていた力のある選手だ。とはいえ、ネオプロに過剰な期待をかけても難しいものがある。

引き続きキセロウスキーがザカリンの第1アシストを務めることになるだろう。ジロ第20ステージの山岳で見せた強烈な牽引に期待だ。

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ゴンサルベスはステルZLMツアー(2.1)でステージ1勝をあげ、プリモシュ・ログリッチを抑え総合優勝を果たしている。クズネツォフも上れる選手であるので、山岳アシストとして期待がかかる。

新加入のハースも、上りには強い選手ではあるものの、アシストよりもステージ優勝を狙って自分のために走る機会が多くなるものと思われる。ザカリンの出場しない1週間程度のステージレースでは、エースとして総合上位を狙う走りも見られるだろう。

一方で、平坦アシストは非常に充実している。新加入のキッテルのために、強力なトレインを形成できる選手層が非常に厚くなっているので、ルーラーには困らないだろう。

2017年ツール・ド・スイス総合優勝のスピラクは、ここ数年グランツールへの出場はなく、もはやツール・ド・スイスのみを狙う人になっている節がある。グランツールでザカリンと共演することはないだろう。

パンチャー陣は人材豊富だが、クラシックで勝てるかは微妙

ジャパンカップ・サイクルロードレース(1.HC)で2度の優勝経験のあるハースは、クライマー向きのワンデークラシックでエース格として出場することになるだろう。ディメンションデータでは、なかなかエース待遇として走る機会が少なかったなか、カチューシャ・アルペシンでは伸び伸びと走る機会が増えると思われる。

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ツアー・ダウンアンダー新人賞、カデルエヴァンス・グレートオーシャンロードレース4位、ブエルタ・ア・ムルシア(1.1)では集団先頭をとって2位に入ったレストレポも謎脚質の持ち主だ。上りにも強く、スプリント力も高いように見受けられるが、2017年シーズンは序盤に目立って以降はパッとしなかった。来シーズンもパンチャーとしての活躍は期待される。

ベルギーツアー(2.HC)第4ステージ優勝を飾ったラメルティンクは、アルデンヌクラシックでの活躍が期待される。2017年はそれぞれ50位以内で完走を果たしている。

プランカールトは、一桁順位は連発するもののなかなか勝利には届かない。スプリンター寄りのパンチャーとして、北のクラシックでの活躍が期待される。

新加入のスミットは、2017年アフリカロードチャンピオンに輝いている。22歳のビエルマンスは2017年は多くのワンデーレースに出場し、経験を積んだ。元ロシアチャンピオンのコチェトコフもパンチ力のある選手だ。

というように、候補はいるものの、飛び抜けた選手はいない。

新加入のキッテルのためのチーム構成

ということで、2018年のカチューシャ・アルペシンは、完全にキッテルのためのチームとなっている。

移籍元のクイックステップ・フロアーズでは、ツール・ド・フランスで5勝をあげるなど、シーズン14勝をあげた。

メインスポンサーのアルペシン社はドイツの育毛シャンプーの会社だ。抜群に端正な顔立ちのキッテルと、常にバッチリ決めているブロンドヘアーは、アルペシン社の広告塔として、これ以上ふさわしい人物はいないだろう。だからこそ、スポンサーのためにもキッテルがどれだけ勝利を量産できるかどうかに、全てがかかっているといっても過言ではない。

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元々、アレクサンドル・クリストフのチームであったため、リードアウト要員は充実している。

何といっても、4度のTT世界王者となったマルティンの存在は大きく、2年ぶりにキッテルとのコンビネーションが見られることとなった。

ベルコフ、ホレンシュタイン、マシャドらベテランルーラー陣に加えて、元アワーレコード保持者のドーセットも加入した。

さらに23歳のポリッツ、2016年U-23 TT世界チャンピオンのマティス、2015年U-23 TT世界チャンピオンのシュミットもおり、平坦での集団コントロール力は、世界トップレベルだ。

リードアウト要員には、ハラー、プランカールト、ツァベルらが控えている。

特にツァベルのリードアウトは非常に強力で、エシュボルン・フランクフルトではクリストフと共にワンツーフィニッシュを決めている。キッテルのリードアウトを務めることが多くなると思われるが、やはり偉大なる父・エリックの後を継ぐ者として、そろそろワールドツアーでの勝利も期待したいところだ。

キッテルのための布陣、ザカリンは孤軍奮闘か

グランツール:★★★★☆
北のクラシック系:★★★☆☆
アルデンヌクラシック系:★★★☆☆
スプリント:★★★★★

新加入したキッテルのためのスプリンターチームとなっている。ツールでは当然キッテルが最優先されるだろうし、キッテルが狙えるステージレースやワンデーレースも、最優先でスケジュールが組まれることだろう。

ザカリンはジロとブエルタとの相性が良さそうなので、キッテルとの住み分けは問題ないと思われる。しかし、平坦要員が充実している一方で山岳アシストの戦力が大幅ダウンとなったため、ザカリンは単独で戦いを挑まねばならない場面も増えるだろう。

北のクラシック、アルデンヌクラシック系のレースでは、なかなか勝利を期待することが難しいかもしれない。とはいえ、戦える人材は揃っているので、好成績は期待できるはずだ。新加入のハースがどこまで飛躍できるか注目したい。

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