ツアー・ダウンアンダーの前哨戦であるピープルズ・チョイス・クラシックは、ペテル・サガンが勝利して、カレブ・ユアンの3連覇を阻んだ。
シーズン緒戦ということもあり、各選手ともコンディションのバラつきが大きい。ゆえに、好調な選手は突出して好調に見えるため分かりやすい。
今回は、前哨戦を終えてとりわけ好調そうに見えた2選手に注目したい。
パンチャーが見せた高速巡航とスプリント
一人目はボーラ・ハンスグローエのジェイ・マッカーシーだ。彼はスプリンターではなく、パンチャー的な脚質の持ち主であり、ダウンアンダーの総合優勝候補の一人と目されている。
ピープルズ・チョイス・クラシックではマッカーシーの役割は、エースのサガンのためにトレインを組んで、好位置を確保することだった。
残り2周となる、21周回目に入る直前から、マッカーシーは集団の先頭で牽引し始めた。
クイックステップ・フロアーズやミッチェルトン・スコットなど強力なトレインがポジションを上げてくるものの、マッカーシーのスピードは凄まじく先頭を確保しつづけていた。特に差がつきやすいコーナーでは必ず集団の先頭を抑えていたのだ。
あまりのスピードに、チームメイトが付き切れしかけるほどだった。
3つ目のコーナーを曲がったところで、マッカーシーの牽引は終了。最終周回に突入するまで、この21周回目はボーラ・ハンスグローエが先頭を守りつづけていたのだ。
この21周回目のタイムは2分56秒で、1周2.3kmで計算すると時速47.04kmとなる。コーナリングでスピードが落ちることを考えると、直線では時速50kmを大きく上回るスピードを維持していたことになる。
ちなみに、肝心のサガンはこのボーラトレインを活用せずに、ロット・スーダルやクイックステップのトレインにタダ乗りしてポジションを確保。見事に勝利を飾ったのだった。
さて、マッカーシーは1月7日に行われたオーストラリア国内ロード選手権で2位に入っている。逃げ切り勝利を決めてオーストラリア王者となったアレクサンダー・エドモンドソンを追って、マッカーシーは最終ストレートでロングスプリントを仕掛けた。凄まじい加速力を見せ、付き位置のネイサン・ハースを千切るほどのスピードを出して2位に滑り込んだのだ。
マッカーシーは決してスプリンターでもなければ、TTスペシャリストでもないにもかかわらず、驚異的なスピードを出している。つまり最大出力・平均出力ともに高く、好調である様子がうかがい知れるのだ。
平地でパワーが出ていれば、上りでもその力を発揮することは可能だ。リッチー・ポートの爆発的なヒルクライムに対抗することができるだろうし、ライバルを千切って独走に持ち込むような勝利も狙えるだろう。
集団内でおとなしくしていた他の総合勢のコンディションの良し悪しは読めないものの、マッカーシーの総合優勝の期待が一気に高まってきたといえよう。
20番手からごぼう抜きの加速力
もう一人、非常に好調に見えた選手はクイックステップ・フロアーズのエリア・ヴィヴィアーニだ。
レースリザルトは4位ではあったが、恐らく最高スピードを出した選手はヴィヴィアーニではないだろうか。
集団スプリントに向けて、激しい位置取り争いの最中、ヴィヴィアーニは大きくポジションを下げてしまっていた。ユアンがスプリントを開始する直前で、ヴィヴィアーニは20番手と絶望的なポジションだった。
やむを得ず、後方からスプリントを開始したヴィヴィアーニではあったが、ぐんぐん加速して前との差を詰めていく。しかし、残り80m付近で先頭を走るユアンとは5車身程度の大差が開いていた。
ここからのヴィヴィアーニの伸びが凄まじかった。ユアンとの差を一気に縮めながらフィニッシュ地点に滑り込んでいったのだ。あと20mもあれば、ヴィヴィアーニが勝っていたかもしれないと思うほどのスピードの伸びだった。
20番手から一気に4番手まで浮上したヴィヴィアーニの驚異的な加速力は、ダウンアンダー本戦でも発揮することができればステージ勝利量産の可能性も十分あるだろう。
ユアンが絶対優位と思われていたダウンアンダーのスプリント争いだったが、サガンが連覇を阻み、グライペルも好パフォーマンスを見せ、そしてヴィヴィアーニが爆発的な加速力を見せつけてきた。
今年のダウンアンダーのスプリントキングは誰になるか、混沌とした争いから目が離せない。
Rendez-Vous sur le vélo…