サイバナ

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コラム パリ〜ニース2017

アルベルト・コンタドール覇権奪還するための最後のピースとは?

2017/07/13

パリ〜ニース第7ステージは、クイヨール峠の山頂へとフィニッシュする、今大会のクイーンステージだった。

翌日以降のレース展開など1ミリも考えていなかったかのような全てを出し切る走りを連日していたアラフィリップは、第7ステージにしてバッドデーが訪れてしまった。
最初の1級山岳で、早くも苦悶の表情を浮かべていて、明らかに調子が悪そうだった。

結果、クイヨール峠の長い登りを10km残した時点で、メイン集団から千切れていった。
ダビド・デラクルスが懸命にアシストするも、ステージ優勝したリッチー・ポートから2分40秒、総合1位に浮上したセルジオルイス・エナオから2分08秒遅れを喫した。
アラフィリップは総合5位へと転落してしまった。
セルジオルイス・エナオとの1分22秒の差は決して、小さいものではない。
アラフィリップの総合優勝の芽は潰えてしまっただろう。

だが、悲しむ必要はない。
彼の伝説は、これから何年とかけて築かれていくものだからだ。

この日のレースを最も動かして、幾人ものクライマーを葬り去ったライダーは、ヤルリンソン・パンタノだ。
アルベルト・コンタドールの山岳アシストを期待され、今季からトレック・セガフレードに加入したコロンビア人だ。

今シーズンここまで目立った活躍の無かったパンタノが、鮮烈な走りを見せた。

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コンタドールのための強烈なアシスト

コンタドールは今季前半シーズンの最大の目標が、昨年わずかに届かなかったパリ〜ニースでの総合優勝である。
第7ステージ開始時点では、総合1位のアラフィリップから1分34秒差の総合7位だった。

コンタドールより上位には、アラフィリップだけでなく、チームスカイのセルジオルイス・エナオ、クイックステップ・フロアーズのダン・マーティン、カチューシャ・アルペシンのイルヌール・ザッカリンがいる。

総合優勝するためには、強力なライバルたちから1分近いリードを奪う必要があった。

この日、パンタノに与えられたミッションはシンプルだ。
クイヨール峠の登りで、集団を破壊し、ライバル選手たちにダメージを与えること。
つまり、力の限り牽け、ということだ。

昨シーズンまでのコンタドールの山岳アシストは、ロマン・クロイツィゲルやラファル・マイカなどが担当していた。
しかし、クロイツィゲルはどちらかと言うと攻撃的な選手ではなく、コンタドールが遅れそうな時に一定ペースでアシストする役割として適した人材だった。
マイカもピュアクライマーに近い脚質を持ってはいるが、出力をあげて自らアタックを仕掛けるタイプではなかった。

結局、コンタドールが自ら仕掛けねばならなく、先に自分が消耗してしまい、仕掛けが裏目に出るシーンを何度も何度も見てきた。

しかし、今年は一味違うところを見せた。

パンタノの集団牽引は、周囲の想像を遥かに上回る強烈なものだった。

リーダージャージのアラフィリップが遅れただけでなく、前日ステージ優勝のサイモン・イェーツ、総合4位のゴルカ・イサギーレ、総合2位のトニー・ギャロパンらをまとめて後方に置き去りにした。

それだけでなく、エース級の選手たちがパンタノのスピードについていくことがやっとな状況で、パンタノが牽引する間は誰もアタックを仕掛けることが出来なかった。

最も手強い、セルジオルイス・エナオと、そのアシストを務めるミケル・ニエベにも多大なるダメージを与えることに成功した。
パンタノが仕事を終える頃には、ニエベは全くアシストができないくらい消耗させられていた。

一方で、コンタドールはパンタノの後ろで力を溜めることに成功し、セルジオルイス・エナオ、ダン・マーティンら総合ライバル勢とのガチンコ勝負に持ち込むことに成功したのだった。

リッチー・ポートが飄々と集団から抜け出し、先行する展開になるも、総合成績に影響のない選手であるため見送った。
コンタドールは、目の前の敵であるセルジオルイス・エナオとダン・マーティンからタイムを奪うことだけ考えれば良かった。

フィニッシュまで残り1km近くなったところで、満を持してアタックを仕掛ける。
パンタノの猛攻に遭ったセルジオルイス・エナオとダン・マーティンは、コンタドールのアタックについていくことが出来ない。

1分近いリードを奪うことは出来ずとも、強力なクライマーを相手に11秒挽回することに成功した。
コンタドールは、総合首位に浮上したセルジオルイス・エナオから31秒遅れ、ダン・マーティンとは1秒差の総合3位にジャンプアップしたのだった。

この日のコンタドールの戦果は、パンタノ砲一撃で手に入れた11秒だとも言えよう。
逆に言えば、あれほど強力なパンタノ砲をもってしても、11秒しか手にすることが出来なかったのだ。

この日は、チームスカイのアシスト四天王のうち、ニエベとセルジオルイス・エナオを倒したのみにすぎない。
ツール・ド・フランス本戦では、ワウト・ポエルスとケニー・エリッソンドも加わることだろう。

チームスカイの鉄壁山岳アシストを打ち倒して、ようやく本丸であるクリス・フルームに直接攻撃を仕掛けることが出来る。

パンタノ砲だけでは、堅守チームスカイ城を崩すには物足りないのだ。

だが、トレック・セガフレードは今年のツールに向けて強力な武器を用意している。

まずは、バウケ・モレマだ。
ジロでは単独エースを担うが、ツールではコンタドールのアシストに回ると公言している。

モレマは非常にタフなライダーで、なおかつチームのためならどんな命令でも忠実に実行する真のプロフェッショナルだ。
ジャパンカップ・クリテリウムでは、別府史之のために平坦アシストを務め、ジャパンカップ本戦でもディフェンディングチャンピオンにもかかわらず、好調のジャスパー・ストゥイヴェンのために働いていた。

また、昨年のツール第12ステージ、悪魔の山モン・ヴァントゥではフルームとリッチー・ポートと共に抜け出していた選手で、一時期は総合2位につけていた。
フルームに匹敵する登坂力、TT力を持ち合わせた選手であり、山岳でのハイペース走行はライバルチームのアシストを軒並み削ぎ落とすような攻撃を生み出すことが出来るに違いない。

パンタノとモレマによるツインバスターライフルは破壊力抜群で、鉄壁を誇るスカイアシスト陣の守りさえ貫くことだろう。

とはいえ、パンタノとモレマは主砲だ。
山岳の登り口や、勝負どころの手前で揺さぶるための要員が欲しいところだ。

その役割に適任なのが、ファビオ・フェリーネだ。
登坂力のあるパンチャーで、山岳の登り口ではパンチ力を活かした集団破壊の動きが期待できる。
ライバルチームのルーラーやスプリンター寄りの脚質の選手を、ふるい落とすことで、パンタノやモレマが働きやすい土壌を生み出すのだ。

主砲を発射する前には、副砲で牽制したいところである。
アタックを仕掛けられるクライマーが適任と言えるだろう。

ピーター・ステティナがその任に適していると思われたが、ステティナは4月いっぱいでロードレースから身を退き、トラック競技に専念するそうだ。
ツールでは戦力として期待できない。

ヘスス・エルナンデス、アイマル・スベルディア、両ベテランに期待するのは酷だろう。

そこで、ミカエル・ゴグルとルーベン・ゲレイロを推したい。

ゴグルは、パリ〜ニースに参戦していて、終盤の山岳まで生き残る力を持っている。

ゲレイロは、今シーズンがワールドツアー1年目のいわゆるネオプロだ。
ツアー・ダウンアンダーでは、登りのあるステージ、スプリントステージどちらも適応力の高さを見せていた。

ゴグルは23歳、ゲレイロは22歳と若く、これからの伸びしろにも大いに期待が持てる。
コンタドールがツール・ド・フランスで総合優勝するための最後のピースには、二人の若者に期待を寄せたい。

戦力は整った。
失われたマイヨ・ジョーヌを取り戻す時はきた。

だから、変なところでの落車だけはやめておくれよ。

Rendez-Vous sur le vélo…

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