サイバナ

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コラム ジロ・デ・イタリア2017

24歳のボブ・ユンゲルスは将来グランツール総合優勝できるのか?

2017年のジロ・デ・イタリアは、TTスペシャリストのトム・デュムランvsクライマーのナイロ・キンタナという構図だった。

もちろん、デュムランの登坂力はクライマークラスであり、デュムランを一概にTTスペシャリストという枠にはめ込むことが正しいとは思わない。
同様にキンタナのTT力もスペシャリストに匹敵するとも劣らない力を持っており、純粋にクライマーもいう枠には収まらないことは承知している。

2人ともオールラウンダーではあるが、元々の脚質はTTスペシャリストとクライマーという違いがあると言えよう。
TTスペシャリスト系オールラウンダーvsクライマー系オールラウンダーという言い方が適切かもしれない。

同じような構図が、新人賞争いでも見られていた。
ボブ・ユンゲルスはTTスペシャリスト、アダム・イェーツやダヴィデ・フォルモロはクライマー寄りだからだ。

マリアビアンカは、最終日の個人TTで逆転したユンゲルスの手に渡った。

しかし、アダム・イェーツも第9ステージの遅れが無ければ、マリアビアンカを獲得できていたかもしれない。

マリアローザもマリアビアンカもTTスペシャリスト系オールラウンダーの勝利となったが、どちらも非常に際どい争いであった。
だが、今後は間違いなくTTスペシャリストのグランツールレーサー化は加速するだろう。

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ユンゲルスの経歴

古くはミゲル・インドゥラインやランス・アームストロングがTTスペシャリスト系オールラウンダーとして栄華を誇っていた。
近年ではブラッドリー・ウィギンスやクリス・フルームの成功に続き、トム・デュムランのジロ制覇したことで、ますますTTスペシャリストへの注目が集まることだろう。

その筆頭がボブ・ユンゲルスであり、BMCレーシングのローハン・デニスとなるだろう。
ゲラント・トーマスもグランツールで総合争いが出来る力を証明した。
個人的にはチームスカイのジョナサン・ディベンにも素質があると見ている。

ユンゲルスは、2012年レオパード・トレック・コンチネンタルチームという、文字通りレオパード・トレックの育成チームでデビューした。
翌年には、トップチームであるレディオシャック・レオパードへ移籍して、GPノービリ・ルビネッテリエでプロ初勝利をあげている。
さらに、ツール・ド・ルクセンブルクでステージ1勝をあげ、ルクセンブルク国内選手権のロードとTT両方のチャンピオンに輝いた。
弱冠20歳にして快進撃と言える成績を残していた。

当時は、チームメイトに母国の大先輩であるフランクとアンディのシュレク兄弟が在籍していた。
二人の後継者として、ボブ・ユンゲルスは大いに注目を浴びていた。

2014年、ブエルタ・ア・エスパーニャに初出場するも第19ステージでDNF。
2015年はエトワール・ド・ベセージュで個人TTステージで圧勝して総合優勝を果たした。
また2年ぶりにルクセンブルク国内ロード&TTチャンピオンに輝く。
ルクセンブルクチャンピオンジャージを身にまとい、ツール・ド・フランスに初出場し、エースのバウケ・モレマに次ぐ総合27位で完走した。

2016年はツアー・オブ・オマーン第1ステージで優勝。
ティレーノ~アドリアティコ総合3位&新人賞と結果を残して、ジロに初出場した。
第10ステージでマリアローザを獲得し、以降3ステージにわたってリーダージャージを守る活躍もあり、総合6位でフィニッシュし新人賞を獲得した。
同年のルクセンブルク国内選手権は3度目のロード&TTのチャンピオンとなり、世界選手権のチームタイムトライアルで優勝するなど、飛躍の年となった。

2017年もティレーノ~アドリアティコ新人賞を獲得するなど、安定した走りを見せジロに臨んだ。
目標としていた昨年の総合順位を上回ることは出来ず、総合8位ではあったが2年連続で新人賞を獲得した。

ユンゲルスの持ち味とは?

脚質はTTスペシャリストと書いたが、今シーズンのユンゲルスはフェルナンド・ガビリアやマルセル・キッテルのためのトレインを形成するメンバーの一人でもある。
残り2〜10kmくらいの区間において、好位置を確保するためのルーラー的なスピードマンの役割を果たすことが多い。

つまり、時速50〜60キロ近い高速域を出力できる脚質が持ち味だと言えよう。
時速50キロを1時間に渡って出力するようなTTスペシャリストよりも多くのパワーを出せる分、より多くの筋肉を必要とするだろう。
そのため、登りではクライマーやTTスペシャリスト系オールラウンダーに比べて、筋肉の重さが枷となる。

今の脚質・体型のままでは、グランツールでの総合優勝は非常に厳しいと言えよう。
だが、ユンゲルスの強みはそういったパワーだけでなく、気合いと根性で登りに食らいつくタフさにある。

ジロの第19ステージでは、前日にアダム・イェーツから2分以上遅れたにも関わらず、より厳しい1級山岳の登りで遅れることなくアダム・イェーツと同タイムでフィニッシュしている。

歯を食いしばって、必死の形相で登っていたシーンが非常に印象に残っている。

限界に近い踏ん張りどころで粘れるかどうかの差は、数秒差で争う総合系選手にとって極めて重要な素質だと言えよう。

だからこそ、ユンゲルスにはグランツール総合優勝する素質はあると、筆者は主張したい。

TTスペシャリスト系オールラウンダーの脚質に変えるためには最低でも半年必要か

デュムランは昨年のリオ五輪の個人TTに照準を合わせており、結果は銀メダルだった。
そこから、グランツール総合優勝に目標を切り替えてトレーニングを積んでいったとすれば、およそ半年から9ヶ月間でジロで総合優勝する脚が完成したと思われる。

ゲラント・トーマスも今年のグランツールで総合優勝を狙うと決めたのは、恐らく昨年の10〜12月頃だと思われる。
元々比較的登れる選手だったとはいえ、クリス・フルームのアシストとしてではなく、エースとして総合上位を狙うためにトレーニングを変えたはずである。
その準備期間はおよそ半年間程度だったわけだ。

一方で、ローハン・デニスはグランツールで総合優勝を狙うには、2〜3年の準備期間が必要だと言っている。

デュムランは2015年ブエルタで総合6位、トーマスは2016年パリ〜ニース総合優勝、デニスは2015年ツアー・ダウンアンダー総合優勝、USAプロサイクリングチャレンジ総合優勝と、グランツールに照準を合わせる前から、ある程度ステージレースで結果を出していたのだ。

これらの法則にユンゲルスを当てはめると、今後1〜2年以内にはグランツールで総合優勝を狙える選手に成長することが期待できるのではないだろうか。
数年後には、デュムラン、デニス、ユンゲルスらTTスペシャリスト系オールラウンダーがグランツールを席巻する日が来るかもしれない。

何にせよ、フルーム、キンタナ、ニーバリ、コンタドールと固定された感のあったグランツール総合優勝候補に、新しい風が吹くことは歓迎したい。
フランク・シュレク、アンディ・シュレク以来のルクセンブルク人総合レーサーとして、大いなる飛躍の時を待ちたい。

Rendez-Vous sur le vélo…

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-コラム, ジロ・デ・イタリア2017