サイバナ

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コラム ツアー・ダウンアンダー2017

カレブ・ユアンは始まりの地・アデレードで力を取り戻すことが出来るか?

2017/03/09

ワールドツアーでの勝利体験は誰しもが出来るものではない。たった1勝をあげることすら出来ずに、引退していく選手はごまんといる。

だが、一方で勝利の女神に愛され、勝利の祝福を受け続ける選ばれし才能を持った男たちもいるのだ。

19歳で出場した若手登竜門レース、ツール・ド・ラブニールでステージ2勝をあげた。翌年は年初の国内U-23ロード王者となり、ラブニールではステージ1勝を飾り、ロード世界選U-23ロードレース2位に入る。

これらの活躍があり、20歳ながらトップチームへの昇格を果たす。21歳となるシーズンは、トップチーム昇格1年目にも関わらず、年間で11勝をあげる鮮烈なデビューを飾った。うち1勝はブエルタ・ア・エスパーニャでのステージ優勝だ。

22歳のシーズンは、ツアー・ダウンアンダー2勝をはじめ、サイクラシックス・ハンブルグでも優勝を果たす。

身長165cmの小さな身体とは思えない、爆発的なスプリント力を武器に、トップチーム昇格後通算16勝をあげる活躍を見せている。ついた異名は"ポケットロケット"だ。

その男の名はカレブ・ユアン。今日はカレブ・ユアンの話をしようと思う。

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韓国人の母を持つ、オーストラリア人スプリンター

オーストラリア最大の都市・シドニーで生まれ育ったユアンは、韓国人の母を持つ。アジア人のような見た目をしているのはハーフだからだ。

10歳で自転車を始めると、2010年・16歳のときに国内ジュニアロード選手権で勝利し、ジュニアチャンピオンとなる。2011年にはトラックのジュニアオムニアム部門で世界チャンピオンとなり、若くから才能を発揮していた。

これだけの才能をワールドチームが見逃すはずがない。オーストラリアを本拠地とする当時のオリカ・グリーンエッジが、2013年にはユアンとトップチーム昇格を前提とした契約を結んだのだった。

以降の活躍は冒頭に書いたとおりだ。

弱冠22歳ながらに、ユアンは世界のトップスプリンターたちと互角の勝負を繰り広げる選手へと成長した。

ユアンのハイライトの一つが、2015年のブエルタでの勝利である。

この日のフィニッシュ地点は登り基調のスプリントステージだった。アシストに引き連れられたペーター・サガンとジョン・デゲンコルブを相手に、ユアンは二人を寄せ付けない圧倒的な加速を見せ、フィニッシュラインに飛び込んだ。サガンもデゲンコルブも登り基調のスプリントは苦手な選手ではない。ユアンのスプリントに、世界が驚愕したことだろう。

なぜなら、ユアンの身長は165cmと、プロロード選手の中でも格段に小さな体格だからだ。ユアンはスプリンターとして、小さな体格をハンデにすることなく、武器として活用することに成功している。

カヴェンディッシュ流の低空前傾スプリントスタイルをモノにした

マルセル・キッテルは188cm、アレクサンダー・クリストフは181cm、アンドレ・グライペルは183cm、ペーター・サガンは184cm、ジョン・デゲンコルブは180cmと、いずれも180cmを越える巨躯から生み出されるパワーを活かすスプリンターたちだ。

マーク・カヴェンディッシュは身長175cmと、他のスプリンターたちに比べて若干小さな身長である。カヴェンディッシュは自身の身長を活かして、異常なほど前傾姿勢でスプリントすることで、ライバルたちに比べて小さな空気抵抗でスプリントすることが出来るのだ。時速70キロにも達する高速スプリントバトルでは、わずかな空気抵抗の差が大きなスピードの差を生むことになる。

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ユアンも、カヴェンディッシュのフォームを研究したことだろう。さらに前傾姿勢を強く、誰よりも低空でスプリントをする超低空スプリントスタイルを身につけた。

単純なパワーでは、巨体スプリンターたちには敵わないかもしれない。しかし、空気抵抗を加味した実際のスピードでは、ユアンは互角の勝負を演じることが出来るようになった。

小さいけど爆発的なパワーを秘めていることから、"ポケットロケット"というニックネームがつけられた。

2016年のツアー・オブ・ブリテン第8ステージではアンドレ・グライペルを下して優勝、サイクラシック・ハンブルクでは、ナセル・ブアニの斜行失格はあったが、ジョン・デゲンコルブ、アレクサンダー・クリストフらを上回り優勝した。

この年の世界選手権はスプリンター向きの平坦コースであったことから、一躍ユアンも有力な世界チャンピオン候補となったのだった。

エネコツアーでの不調、パリ〜トゥールで失速、ユアン変調の兆し

ところが、サイクラシック・ハンブルクの直後のレースであるエネコツアー第1ステージでは、集団スプリントに絡むもののスピードが伸びずに12位。ツアー・オブ・ブリテン、ハンブルクでいずれも圧倒したライバルであるディラン・フルーネヴェーヘンがステージ優勝をあげた。

第3ステージも14位とスプリントに絡むも上位には食い込めず、第4ステージに至っては集団のスピードに付いていくことが出来ず、ステージ最下位の170位でフィニッシュ。第6ステージも遅れに遅れて151位だった。

翌月に控えた世界選手権に向けて、コンディションをあげていきたいところであったが、逆にコンディションを崩すレースとなってしまった。

世界選手権前哨戦となったパリ〜トゥールでも、集団から遅れてしまって、完走178名中178位と最下位でフィニッシュした。体調を優先してリタイアしてもいいところなのに、しっかり完走しきるところに、何かユアンの中で意地があったのだろう。しかし、コンディションは最悪のままだ。

オーストラリア代表として、世界選手権に臨んだものの、中盤の激しいペースアップについていくことが出来ずに脱落。そのままリタイアとなってしまった。

超低空スプリントを発揮する場面が訪れるはるか手間で、力なく失速するユアンの姿はただただ虚しかった。巨体を揺らすトップスプリンターたちと張り合う面影が全くないどころか、ワールドツアーの第一線で走る全てのプロロードレーサーと比較しても、ただ単に力の足りない選手に見えてしまうほどだった。

"ポケットロケット"の姿を取り戻せないまま、2016年のシーズンを終えた。

2017年、復調の兆しが見えるだろうか

2016年シーズンの終盤は蓄積疲労のため、不調に陥っていたのであれば不安がる必要もないだろう。

オフシーズンを経て、オーストラリアでは一足早く2017年のサイクルロードレースシーズンが開幕した。

1月1〜3日にミッチェルトン・ベイ・サイクリング・クラシックが行われた。ユアンは2015・2016年と同大会を連覇しており、どちらもステージ3勝をあげる、まさに圧勝劇だった。

しかし、今年は第3ステージで勝利するも総合3位に終わってしまう。やはり、ユアン本来の力を取り戻すことが出来ていないのかもしれないと不安がよぎる。

1月4日に行われた、オーストラリア国内クリテリウム選手権では、昨年に引き続き優勝を果たした。ユアンの超低空スプリントが炸裂しての勝利だ。

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※動画はこちら→#RoadNats Caleb Ewan Rockets To Title Defense In Ballarat

だが、クリテリウム選手権の出場メンバーは、正直サガンやデゲンコルブたちと比べると、数段階レベルが低いと言わざるを得ない。完全復調と断ずるには早いだろう。

続く1月8日に行われたオーストラリア国内ロード選手権では、ユアンは優勝候補の一角にあげられていた。ところが、またもや終盤に集団から遅れてしまいトップから9分25秒差の43位でフィニッシュした。パリ〜トゥールや世界選と変わらぬ失速ぶりに、ユアンの不調はまだ継続しているように見えてしまう。

次にユアンが出場するレースはツアー・ダウンアンダーのイベントの一つである1月15日のピープルズ・チョイス・クラシックである。昨年の優勝者は、ユアンだった。

その勢いのまま、ダウンアンダー本戦でもステージ2勝をあげる活躍を見せた。ここから2016年のユアンの快進撃は始まった。

験を担ぐわけではないが、今年もピープルズ・チョイス・クラシックで優勝し、完全復調を果たして、ポケットロケットが炸裂するスプリントシーンを度々見せてほしい。

力を取り戻すために、ユアンはアデレードの地を走る。

Rendez-Vous sur le vélo…

(追記)

1月15日に行われたピープルズ・チョイス・クラシックで、ユアンが連覇を飾った!

オリカ・スコットのトレインがしっかり機能し、集団の先頭でユアンの超低空スプリントが炸裂しての勝利だ。ポケットロケットは復活の兆しを見せたのだ。

世界チャンピオンのペーター・サガンを下しての勝利に、ユアンは無邪気に喜んだ。サガンはまだ本調子ではないかもしれないが、見事な勝利であることに間違いない。

続くダウンアンダー本戦でも期待したい。

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