ガヴィリア勝利の裏に隠されたダヴィド・マルティネッリの見事なリードアウトとは?

誰だって、最初は初心者で素人だ。
そして、練習と実践はまるで異なること。

どれだけ理論を学習しても、どれだけ知識を蓄えても、実践に勝る学びはない。
だが、実践で最高のパフォーマンスと最高の学びを得るためには、最大限練習することが大切だ。

スポーツでも、受験勉強でも、どんなジャンルには言えることだと思われる。

ジロ・デ・イタリア第5ステージ、ペダーラからメッシーナまでの159km。
第3ステージから引き続き、実況は上野智広さん、解説は今大会初登場となる山本元喜選手だった。

上野さんは今年50歳となる大ベテランアナウンサーだ。
過去には北京オリンピックの野球、サッカー、ソフトボールなどの実況を担当し、フリーアナウンサーに転向後も野球中継の実況を中心に活躍している方だ。

その卓越した経験を活かして、『むさしの芝居塾』の講師として、後進育成にも力を注いでいる。

オリンピック中継では、実況経験の乏しい種目の実況も担当したことだろう。
慣れないスポーツ実況の難しさは経験済みだ。

しかしながら、ほぼ初挑戦と思われるサイクルロードレース中継では、ジャージの識別すらままならない様子に、ファンのモヤモヤを増幅させる結果となってしまった。

ここで、プロなんだから初心者などという言い訳は通用しない。やるならちゃんとやれ。
なんて言うつもりは全く無い。

いかに、サイクルロードレース実況が難しいか、という話をしたかった。

一方で、J Sportsでのサイクルロードレース中継の実況は、サッシャさん、谷口廣明さん、永田実さんの実況畑出身のプロたちに加えて、実況ナビゲーターとして白戸太朗さん、栗村修さん、別府始さんも担当している。
年間を通して、この6名でサイクルロードレースの実況を持ち回りで担当している。
しかし、サッシャさん、谷口さん、永田さんは人気実況者であり、サイクルロードレース以外の仕事も山ほど抱えている。
白戸さん、栗村さん、別府さんも同じく、別の本業を持っている方々だ。
皆さん、忙しいのである。

かと言って、簡単に新しい実況者を育成できるほど、サイクルロードレースの実況は簡単ではないことは、上野さんほどのベテランが苦しんでいる様子からも伝わるだろう。
ゆえに上記の6名に頼らざるを得ない現状があるのではなかろうか。

これは個人的な憶測ではあるが、J Sportsとしても新しいレースの中継を試みたいが、実況者の確保が難しいという問題があるのではないかと思う。
昨シーズンは、ツアー・オブ・ターキーやアークティックレース・オブ・ノルウェーなどの放映権を持っていたようだが、日本語実況が無いままオンデマンド配信していた。
今シーズンは、J Sportsでのジロ・デ・イタリアの中継がないために、ツール・ド・ヨークシャーとアークティックレース・オブ・ノルウェーに日本語実況をつけるリソースが回せるようになったのではないかと思われる。

わたしは、これからも数多くのレースが、日本語実況つきで見られるようになったらいいなと思っている。
そのためには、レース実況を出来る人材を増やす必要があるのだ。

ゆえにダゾーンでは、新たに木下貴道さん、上野智広さん、そして今後は林正浩さんが担当する予定である。
上野さんと林さんは相当ベテランの域に達している方ではあるが、木下さんはまだ32歳と非常に将来有望である。

木下さんは、谷口さんが立ち上げたスポーツゾーン社所属のフリーアナウンサーである。
ジロを通して、サイクルロードレース実況の力をつければ、いずれJ Sportsでの起用もあり得るだろう。

サイクルロードレース実況の後継者育成という難しい課題に、ダゾーンは取り組んでくれていると考えれば、また見方・聞こえ方も変わってくるのではないだろうか。
わたしは、ダゾーンの日本語実況を心から応援していきたい。

ガヴィリア2勝目でマリア・チクラミーノも獲得

前置きが長くなったが、第5ステージはクイックステップ・フロアーズのフェルナンド・ガヴィリアが2勝目をあげ、ポイントランキングでも1位となりマリア・チクラミーノを獲得した。

ロット・ソウダルのアンドレ・グライペルは4位、オリカ・スコットのカレブ・ユアンは23位に沈んだ。

ルカ・ピベルニクの見事な勘違いガッツポーズの後もレースは続き、集団前方では激しいポジション争いが繰り広げられていた。

ラスト2kmを切ってから大きく180度ターンするコーナーが登場し、内径と外径の差のためコーナリング中にプロトンは一列棒状に伸びてしまう。
ここで、各チームのトレインが崩れてしまった。

集団前方に位置取りし、即座にトレインを形成し直したのはボーラ・ハンスグローエだった。
180度コーナー通過後からフィニッシュまで、好位置をキープし続けることができたので、エーススプリンターのサム・ベネットはステージ3位となった。

ロット・ソウダルは180度コーナーに突入するまでは、絶えず集団前方を位置取りできていたが、コーナー通過後にはリードアウトがバラバラとなってしまい、グライペルも10番手あたりまで沈んでしまっていた。
リードアウトのジャスパー・デブイストがサポートするもスピードの上がりきったメイン集団では、決定的な仕事は出来なかった。

オリカ・スコットも、前方にアシストの人数は残していたものの肝心のユアンが15番手付近にいたため、ルカ・メスゲツはユアンを7〜8番手まで引き上げることで精一杯だった。
前方が塞がれた状態では、さすがのユアンもまともにスプリントが出来なかった。

クイックステップは、コーナー通過時点ではガヴィリアを含め、大半の選手が10番手以下に沈んでいた。
だが、ここからの粘りが凄まじかった。

キーマンとなったのはダヴィド・マルティネッリだ。

番手を下げていた最終発射台を務めるマクシミリアーノ・リケーゼと、ガヴィリアを引き連れて、猛烈な加速を見せる。
ジャスパー・デブイストのStravaデータを見ると、マルティネッリが引き上げていた区間では、時速65〜70キロで走っていたことがわかる。
下り基調のレイアウトだったとはいえ、それ以上のゴールスプリントに匹敵するほどのスピードで、リケーゼとガヴィリアを引き上げていたのだ。

この動きにより、他のエーススプリンターと同じ番手までガヴィリアを引き上げることに成功した。
しかも、リケーゼという最強の発射台込みでだ。

この時点で勝負あった。
あとは、リケーゼの抜群のリードアウトを信じ、ガヴィリアが全力を解き放つだけだ。

この勝利は混戦の最中、猛烈な牽引を見せたマルティネッリが掴み取った勝利と言っても過言ではない。

マルティネッリは、今月末に24歳となる若手選手だ。
昨シーズンはツール・ド・ポローニュでステージ1勝をあげている。

まだまだ実績には乏しくも、リードアウトのためのリードアウト役に関しては、トップレベルで任せることが出来るだろう。

このジロがマルティネッリにとって、初のグランツールでもある。
経験を積みながら、スーパーリードアウトに成長するのか、エーススプリンターへと進化するのか、これからの走りが楽しみな選手の一人である。

Rendez-Vous sur le vélo…

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