サイバナ

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コラム

クリス・フルームがダブルツール実現するための『鍵を握る男たち』とは?

2017/07/13

2016年のツール・ド・フランスのチームスカイは強かった。クリス・フルーム自身の強さも光ってはいたが、鉄壁のスカイアシスト陣の高速牽引に、ライバルたちは為す術もなく敗れ去った印象だ。

平坦路はウルトラタフガイなイアン・スタナードとルーク・ロウのイギリス人コンビに加えて、2015年のTT世界チャンピオンのヴァシル・キリエンカが牽き倒す。

山岳では、リエージュ〜バストーニュ〜リエージュを制したワウト・ポエルス、ファビオ・アルのブエルタ制覇を支えたミケル・ランダ、フルームに次ぐ登坂力を持ったセルジオルイス・エナオモントーヤにジロ・デ・イタリア山岳賞のミケル・ニエベ、そしてジュニア時代からフルームに連れ添っているオールラウンダーのゲラント・トーマスの5人が支えた。

いわゆるアシストタイプの選手はルーラーのスタナードとロウくらいなもので1)と言っても、この二人はパリ〜ルーベではエース級の実力者、残りの選手はもし他のチームに移籍したら、十分にエースを張れる選手はがりだ。まさに銀河系軍団と言えよう。

勝負どころの山岳になると、スカイがアシスト3名くらいを残しながら先頭で牽引し、ライバルチームのアシストはボロボロ落ちていく。結果的にフルームのライバルたちは単騎に追い込れるシーンが幾たびも見られた。これでは反撃のしようがない。

フルームの宇宙ダウンヒル、サガンとの平坦アタック、そして圧倒的なTT力と、これらがあったことで総合優勝に輝いたことは間違いない。ただ、スカイの鉄壁すぎるアシスト陣にライバルチームの気持ちを考えると絶望に近い感情を抱いたことも確かだ。

しかしながら、ダブルツールを狙った8月のブエルタには、ツールで疲弊したアシスト陣を1人も連れてくることなく、アシスト陣のメンバーを完全に入れ替えて来た。結果的に、ほぼフルメンバーを揃えたモビスターの前に、アシストの力で及ばない場面が多々あり、キンタナの前に敗北を喫した。だが、スカイのブエルタ出場メンバーが決して実力的に劣っていたわけではない。

近年のグランツールでは、レース序盤から恐ろしいほどのハイペースな展開だったり、平坦ステージの終盤でエースを守るために集団牽引を行なったり、山岳コースでは力尽きるまでエースを支えるなど、アシスト選手の活躍、言い換えれば酷使が目立つようになっている。グランツールを連戦しながらも、合間のステージレースやワンデーレースにも出場しているようなアシスト選手たちの消耗度は尋常ではないだろう。特にシーズン終盤戦となるブエルタではなおさらだ。

今シーズンのチームスカイは、ジャパンカップには本来5名のところを4名しか揃えることが出来ないほどに選手たちは疲弊していたと言えよう。まさに『スカイ、お疲れですかい?』状態である。

グランツールの総合争いを、連戦していくためには、アシストの選手層が厚い必要がある。

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エース級の選手たちは、アシストの立場に甘んじない

ところが、ニコラス・ロッシュ、レオポルド・ケーニッヒと言った他のチームならエースを担うことが出来る強力なライダーが、次々と他チームへの移籍を決めている。

これまでも、エドゥアルド・ボアッソンハーゲンやリッチー・ポートらも、かつてチームスカイに所属していたが、自身がエースとして勝負したいと想いを抑えきれずに移籍していった。

チームスカイの天下はいつまでも続かないように思えてならない。それでも、クリス・フルームという歴史に残る逸材の全盛期のうちにダブルツールを実現して欲しいと願う気持ちが強い。少なくとも、筆者はフルームのダブルツールを見てみたい。

来シーズン、フルームがダブルツールを狙うためには、アシストの充実が必須と言えよう。ただでさえ、ワールドツアーのレースが激増して、ワールドチームへの負担度は大きくなっているのだから。

朗報と言えるニュースが立て続けに訪れた

ニコラス・ロッシュもレオポルド・ケーニッヒも、クライマーである。グランツールでフルームをアシスト可能な選手が2人減ったことを意味する。(ロッシュは今シーズン、ジロの出場のみで、フルームと共にグランツールを走ってはいないが)

この観点から見ると、ディエゴ・ローザとケニー・エリソンドの補強は、非常に的確であると言えよう。

※参考:Rosa signs three-year deal with Team Sky

※参考:Team Sky confirm Elissonde on two-year deal

ローザもエリソンドもクライマーである。ローザはイル・ロンバルディア2位に入り、エリソンドはわずか1pt差でブエルタの山岳賞を逃したほどの、実力者たちだ。ロッシュとケーニッヒの抜けた穴を十分に埋めることが出来る。

なお、エリソンドはチームスカイに所属するフランス人としては2010年シーズン以来の選手となる。これまでツールでは、フランス人観客からブーイングを受け続けていたチームスカイにとって、エリソンドの加入はフランス世論を味方につけるためにも、非常に重要な補強であると言えよう。

また、すでに発表されていたことではあるが、アメリカのコンチネンタルチームであるアクセオン・ハーゲンズ・ベルマンからタオ・ゲオゲガンハートも獲得している。

元々スカイのトレーニーとして2015年シーズン後半に所属していた選手で、同年のジャパンカップにも参加した。20歳の選手をトップチームで走らせるほど。スカイの首脳陣は高い評価をしているに違いない。来季も22歳と伸びしろが十分ある上に、身長183cmと長身である点からも、フルームの後継者になり得る存在かもしれない。

更に、今年のジャパンカップに来日していたアレックス・ピータースという選手も期待が持てる。『スカイ、お疲れですかい?』状態のチームであったにもかかわらず、ジャパンカップでは6位という好結果を残している。

外部からの補強と若手イギリス人の育成による戦力の底上げを図り、ここまでは順調な戦力整備が進んでいる様子だ。

フルームがダブルツールを実現するためには、これらの選手の活躍が不可欠である。だからこそフルーム、ジロには出ないなんて言わないでおくれよ。無茶だとしても、フルームがマリアローザを着る姿を見てみたいのだから…。

Rendez-Vous sur le vélo…

References   [ + ]

1. と言っても、この二人はパリ〜ルーベではエース級の実力者

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