サイバナ

これからサイクルロードレースの話をしよう。略して『サイバナ』。サイクルロードレースのレース結果やコラムなど、お届けします。

クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ2017 コラム

ドーフィネ個人TTで失速したクリス・フルームは本当に不調なのか?

2017/07/13

グランツールで総合上位を狙うオールラウンダーにとって、タイムトライアルの出来は最も重要なポイントとなる。
どれだけ山で良い走りをしてタイム差を築いたとしても、たった1回のタイムトライアルで全てが水の泡となってしまいかねないからだ。

ジロ・デ・イタリアで総合優勝したトム・デュムランは、まさしくTTスペシャリストと言うべき脚質の選手だ。
それが、クライマー並に山を登れるようになってしまったので、とんでもなく強いグランツールレーサーへと成長したのだ。

デュムランの活躍を見れば見るほど、近年のグランツールではタイムトライアルの重要性がどんどん高まっているように思える。
たとえ距離が短いと言われる今年のツール・ド・フランスにしても同じことだと言えよう。

そして、タイムトライアルには偶然の要素が紛れにくい。
誰かを風よけに使うことは出来ず、ただ一人で黙々とペダリングする。
レース中に突然雨が降ってきて、路面のコンディションが悪化した。という事態を除けば、外部からの影響は受けにくく、如実に実力差が反映されやすいのだ。

クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ第4ステージは、ツールを見据える総合系選手たちにとって、現在のパフォーマンスをハッキリクッキリ表す試金石となった。

途中平均勾配5%ほどの登りを含む、アップダウンのあるコースレイアウトだったとはいえ、TT世界チャンピオンのトニ・マルティンを下してステージ優勝したリッチー・ポートはスペシャルだった。
対して、ツール3連覇を狙うクリス・フルームは中間計測こそ3位を記録したものの、後半に失速しステージ8位に終わった。

ポートだけでなく、アレハンドロ・バルベルデ、アルベルト・コンタドールからも遅れを喫する結果となった。

スポンサーリンク

不調がささやかれている今シーズンのフルーム

フルームはドーフィネまでに、カデルエヴァンス・グレートオーシャンロードレース、ヘラルド・サンツアー、ボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャ、ツール・ド・ロマンディと、1つのワンデーレースに3つのステージレースしか出場していない。

出場レース数の少なさは毎年恒例のことであり、昨シーズンはグレートオーシャンロードレースがリエージュ~バストーニュ~リエージュに変わっただけでレース数自体は同じだ。
レースに出場していない間は、スペインの山岳地帯を中心にトレーニングに励んでいる。
これも例年通りの調整方法である。

だが、今年は内容があまり良くない。

かつて総合優勝したことのあるヘラルド・サンツアーでは総合6位、ツール・ド・ロマンディでも総合18位となっており、今シーズンは未だにステージ優勝も総合優勝もない。

ツールを初めて制した2013年以降、ドーフィネまでに1勝もあげられてない年は一度も無かった。
いくらドーフィネで調子をあげてツールに臨むスタイルを貫くフルームでも、調子の悪さが目立ってしまう。

という状況で、ドーフィネの個人TTが8位。
この結果をどう捉えれば良いのだろうか。

フルームのコメントを読み解く

チームスカイの公式ホームページに掲載されているレースレポートから、フルームのコメントを意訳してみた。

Froome eighth in Dauphine time trial

「リッチーは信じられない走りを見せ、バルベルデとコンタドールも非常に印象的なTTだった。レベルが上がってきていることは分かっていたが、今回のTTでそれが証明されたね。

ドーフィネが終わってから、TTのトレーニングを積む時間がまだ3週間もある。
もう少しトレーニングしなければならないことは明らかだからね。
ドーフィネまでに出来ることは全部やってるし、ツールまで前進あるのみだよ。

もしも、今日タイムを獲得していたら、今後の山岳ステージで守りの走りをしていたかもしれない。
今はタイムを挽回しなければならないので、山岳ステージでは攻撃的に走ることが出来るよ。

今日は良いテストだったけど、週末の3日間は重要なステージになる。
誰がどれくらいの調子なのか正確に見極める、もう一つの大きなテストになるだろうね。」

というコメントを残している。

コメントから読み取れることは、ドーフィネはあくまでもツールの準備期間でありつつ、ライバルの力量を正確に見極めて足りない部分をツールまでの3週間で準備しようと考えていることだろうか。

春先から好調のポートは、ツール・ド・ロマンディでもTTで好タイムを記録しており、想定の範囲内と思われる。
バルベルデの好調が未だに継続していること、そして完全に調整目的と宣言して走っているコンタドールに負けたことは想定外だったのではないだろうか。

フルームはあえてTT力を落として、登坂力をあげているという説を提唱したい

フルームの目標はツール・ド・フランスを3連覇することだ。
ただ、それだけだ。

したがって、今年のツールのステージに合わせて、自分の脚質を調整しているに違いない。

2013年と2016年のツールでは、個人TTが計50〜60km用意されていた。
フルームはその全てで1位か2位をとっており、大きくタイムを稼いでいた。
2013年は総合2位に4分20秒差をつけて、2016年は4分5秒差をつけて総合優勝している。

しかし、2015年は13.8kmの個人TTと28kmのチームTTがあるのみだった。
個人TTではナイロ・キンタナに11秒しか差をつけられず、チームTTでもモビスターに対して3秒のリードしか稼げなかった。
結果として、総合2位のキンタナには1分12秒差という比較的僅差で総合優勝を果たしている。

個人TTが長かろうが短じかろうが、フルームは総合優勝しているのだ。

今年のツールでは、TTの長さよりもいわゆる激坂と呼ばれる難易度の高い登りへの対応が問題となる。
キンタナだけでなく、ポートもバルベルデもコンタドールもダンシングを多用して激坂は得意としている。
しかし、フルームはペース走行で登ることを得意としており、激坂への対応力はキンタナたちに劣ると見られている。

そのため、ツールの激坂に対応できるように例年とは違うトレーニングを積んでいるのではないだろうか。
例えば体重を落として、より山岳向きの身体に仕上げているという要領でだ。

結果として、TTでは満足のいく走りが出来なかった上に、ライバルたちは比較的TTに向いている脚質に仕上げていることが分かった。
週末の山岳ステージでの、ライバルたちの走りと自分の走りを比べて、もう少し体重を重くしてTTに強い身体に仕上げる、といった微調整が必要があるかもしれない。
ならば、「ツールまで3週間ある」「週末の山岳ステージでライバルたちの調子を正確に見極めたい」と発言した意図も理解できる。

つまり、今シーズンのフルームは不調なのではなく、例年にない調整方法で仕上げている段階にあったためレースで結果が出せなかっただけと、筆者は見ている。

この推察が正しいかどうかは、週末のステージで明らかとなる。
第6ステージでは、平均勾配10.3%・最大勾配15%という激しい登りが登場する。
ツール本大会でもクイーンステージに採用されている登りだ。

ここでライバルたちを圧倒するフルームが見られるなら、今年のツールで総合優勝に最も近い存在はフルームであると言えよう。
もしもフルームが遅れるようなことがあれば、調整失敗による不調が明らかとなるだろう。

はたまた、完璧に仕上げたフルームを上回る走りをライバルたちは見せてくれるのか。
まさしくツール前哨戦。
クリテリウム・ドゥ・ドーフィネから目が離せない。

Rendez-Vous sur le vélo…

スポンサーリンク

-クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ2017, コラム
-