サイバナ

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さいたまクリテリウム2016 コラム

別府史之、さいたまクリテリウムで魂の大逃げ。日本人よ、これが世界だ!

2017/03/15

ツール・ド・フランスの4賞ジャージが揃うのは史上初!!という謳い文句と共に、さいたまクリテリウムは大いに湧いた。

サッカーに例えるなら、メッシやベイルやイブラヒモビッチが同時に来日し、長友や本田も帰国した上で、Jリーグの選手たちと試合をするようなものである。

マイヨ・ジョーヌのクリス・フルーム、マイヨ・ヴェールのペーター・サガン、マイヨ・ブランのアダム・イェーツ、マイヨ・アポワルージュのラファル・マイカ。この4名だけでも圧巻の光景であるが、ツール・ド・フランス総合2位のロメン・バルデ、ステージ1勝の現代のトップスプリンターであるマルセル・キッテル、そしてヨーロッパのレースシーンの最前線で活躍する日本人選手、別府史之と新城幸也も参戦した。

普段、画面越しにしか見ることの出来ない、世界の超一流選手を肉眼で目にする機会は本当に貴重である。日本のプロツアーを走る選手たちにとっても、世界のトップ選手たちと一緒にレースを走る機会は、刺激的な学びを得られる時間になったであろう。

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さいたまクリテリウムは一周3.1kmの周回コースを、20周する。途中、JRの線路をくぐるためのアンダーパスを通過する。勾配7%のアップダウンは見た目以上に傾斜がある。ヘアピンカーブもあり、さいたまスーパーアリーナ内部を通過するなど、距離が短いながらも変化に富んだコースレイアウトとなっている。

ビッグネームが一同に集った、ツール・ド・フランス第22ステージとも言われる、さいたまクリテリウムのレースを振り返りたい。

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ワールドチームが常にレースをコントロール

まずは1周のパレード走行がスタート。マイヨ・ジョーヌのフルームを先頭に、ゆっくりと集団が進むなか、日本のコンチネンタルチームの選手たちがアタックをするハプニングもありつつ、1周回終えると同時にアクチュアルスタート。

いきなりアタックがかかり、すぐにエティックス・クイックステップのファビオ・サバティーニ、チームスカイのワウト・ポエルス、AG2Rのサミュエル・デュムラン、ジャイアント・アルペシンのクーン・デコルトらを含む強力な10名の逃げが形成される。

この逃げを封じる動きを見せたのが新城幸也である。

クリテリウム本戦の前に行われたポイントレースでは、序盤から積極的に動き優勝を飾っていた。脚をたくさん使ったであろうに、クリテリウム本戦でも序盤から、メイン集団の先頭に立ち逃げを封じるべく積極的に牽いていた。無尽蔵のスタミナと尋常ならざるタフさがユキヤの武器の一つである。

逃げ集団を吸収すると、再びアタック合戦が始まり、キッテルとバルデを含む6名の逃げが形成されると、レースは落ち着き、逃げ集団ではキッテルがスプリントポイントを、バルデが山岳ポイントを荒稼ぎする。

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メイン集団は、ジャイアント・アルペシンやオリカ・バイクエクスチェンジがコントロールして、ユキヤとフミは集団内で力を溜めていた。フルーム、サガン、アダム・イェーツらも同様だ。

フィニッシュまで6周を残したところで、逃げ集団は吸収される。吸収を嫌って単独で飛び出したバルデが粘るも、ワールドチームの牽きによって、集団が大きく縦に伸びるほどにスピードが上がった状態では、バルデも長くは持たずに吸収。

このタイミングで、ユキヤとフミがカウンターアタックを仕掛けたのだ。

ユキヤとフミの逃げが決まる

AG2Rのアレクシ・ヴィエルモーズがチェックして、3名の逃げが決まる。大舞台で日本人選手2人を含む逃げに、沿道の観衆はこの日一番の大歓声を送った。

コーナーを曲がり、蛍光イエローとショッキングピンクのジャージが見えるたびに、歓声が巻き起こる。しかし、4賞ジャージを揃えるメイン集団は、いくら日本人選手2人の逃げと言えども容認はしてくれない。

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キッテルでスプリント勝負に持ち込みたいエティックス・クイックステップと、フルームに見せ場をつくりたいチームスカイが全開でフミとユキヤたちを追いかける。特にエティックス・クイックステップのジュリアン・ヴェルモトは、今年のツールでも延々と先頭固定で引き続けるシーンが見られた。世界トップレベルのルーラーである。

レース後にNIPPOヴィーニファンティーニの窪木一茂は、『後半は集団が速すぎて、本当にキツかった』と言うほどの牽引だったようだ。

だが、フミはヴェルモトと同じように、集団牽引を担うことの出来るスピードマンであり、ユキヤはツールで敢闘賞を獲得するほどの逃げのスペシャリストである。共に世界レベルの戦いを目の当たりにした沿道のファンたちの盛り上がりは、最高潮に達した。

とはいえ、ワールドチームが全開で牽引する集団に追いつかれるのも時間の問題。そう思った矢先に、蛍光イエローのジャージが単独で飛び出した。フミのアタックである。残り周回は3周である。

フミの単独アタックが決まる

今月は世界選手権、ジャパンカップとコンスタンスにレースに出場しているフミの脚は快調だ。メイン集団内では、この日のレースが1ヶ月ぶりという選手も少なくなかった。

フミの逃げが決まり、メイン集団から10秒以上のリードを築いたまま残り2周となる。

ユキヤとフミが前夜祭で語った作戦が、形になって、逃げが決まるのか。日本人選手の渾身の逃げを吸収せんと、メイン集団のスピードもぐんぐん上がる。

縦に大きく伸びた集団のスピードについていくことすら出来ず、集団から遅れてしまうコンチネンタルチームの選手がいたくらいだ。プロが普通についていくことすら出来ないほどのスピードにもかかわらず、フミは2周に渡って単独で逃げ続けた。

フミもユキヤもヨーロッパのレース最前線で戦う、トップ選手の一人である。しかし、もっぱらの役割はレースを勝つための走りではなく、エースを勝たせるためのアシスト選手として期待されている。サイクルロードレースを最近見始めたファンや、あまり見慣れていないファンにとっては、エースとアシスト選手の役割の違いをすぐに理解することは難しいだろう。したがって、レースで1番になっていないことは、不甲斐ない・実力が足りないと誤解されることもあるかもしれない。

言葉で説明してもなかなか伝わらない。ならば走りで見せようと、フミが思ったかどうかは分からない。

だが、わたしにはフミの走りが『日本人よ、これが世界だ!』と言わんばかりの走りに見えた。フミの魂の叫びが聞こえた。プロが遅れを喫するほどの高速の集団から、逃げ続けることが出来るか?この走りで、オレは世界と戦っている!と他の日本人選手たちにエールを送っているようでもあった。

沿道のファンたちも、別府史之の明らかに次元の違う走りを目の当たりにして、いかに凄い選手であるかを、肌で感じ取ることが出来たはずだ。

別府史之というプロサイクリストの凄みは、高速度での走行を長時間に渡って維持出来ることである。逃げに乗る、逃げを潰す、集団コントロール、集団スプリントのリードアウトとスピードを活かしたアシストは多岐多様に渡る。全てをハイレベルで実行することの出来るフミの存在価値は非常に大きい。だからこそ、2005年から10年以上に渡ってヨーロッパの舞台で活躍を続けることが出来ているのだ。

なかなかレースで優勝することは叶わなくとも、フミの走りがあってチームが勝利する機会は何度もある。だからこそ、フミは所属するトレック・セガフレードから早々と契約延長を打診されたのである。

残り1周回を残して、フミはメイン集団に吸収された。これほどの全開の走りをすると、フィニッシュに向かって超高速で突き進むメイン集団についていくことすらままならないところであるが、フミはメイン集団に食らいついただけでなく、最終的に7位でフィニッシュした。

今大会の敢闘賞を獲得したのは、当然のことである。3賞ジャージの逃げも盛り上がったが、この日一番の声援を受けて走った選手は、別府史之であったことは間違いない。

日本人トップレーサーの実力を現地で体感することが出来た、さいたまのファンたちは幸せだった。来シーズンもヨーロッパのレースシーンでの活躍に乞うご期待だ!

そして、フミとユキヤに続くような日本人選手の誕生を、一ファンとして心から祈っている。

Rendez-Vous sur le vélo…

(追記)

なななんと、フミ本人にTwitterでシェアしていただきました!!

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これからも、当サイトは別府選手を猛プッシュしていきます!!

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-さいたまクリテリウム2016, コラム