サイバナ

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コラム ツアー・オブ・カリフォルニア2017

ジョージ・ベネット成長の証。グランツールでも表彰台を狙えるのか?

熱戦が続くジロ・デ・イタリアの裏番組として、今シーズンからワールドツアーに昇格したツアー・オブ・カリフォルニアが開催されていた。
ツール・ド・フランスに向けて調整していく選手が多く集うなかで、アメリカ唯一のワールドツアーとして、アメリカチームやアメリカ人選手たちはシーズン最大の目標としてレースに臨んでいたのだ。

特に、コンチネンタルチームとして特例で招待されたラリー・サイクリングの気合いの入りようは尋常ではない。
コンチネンタルチームながら、なんとステージ2勝をあげる鮮烈な活躍を見せた。
ほぼ毎ステージ逃げに選手を送り込み、第4・7ステージでアメリカ人選手のエヴァン・ハフマンが逃げ切り、大金星をあげている。

ハフマンは、2013・2014年とアスタナに所属していた元ワールドツアーレーサーだ。
ゴールデンエイジと呼ばれる1990年生まれの27歳で、ペーター・サガンやナイロ・キンタナらと同い年だ。

そして、今大会で総合優勝を果たしたロットNL・ユンボのジョージ・ベネットも1990年生まれの選手だ。
しかも、ベネットにとってはこの総合優勝がプロ入り初勝利となった。

ヨーロッパのレースとは異なり、大口のスポンサーがついているためなのか、副賞には高級車であるレクサスが1台贈られる太っ腹ぶりだ。
彼が運転免許を所持しているかどうかは定かではないが、嬉しい勝利だっただろう。

ベネットは、元々定評のあった登坂力に加えて、タイムトライアル能力が大きく向上していることが見られたことにより、わたしはグランツールの表彰台を狙える選手の一人として見ることにした

これで、ロットNL・ユンボにはステフェン・クライスヴァイクだけでなく、今季絶好調のプリモシュ・ログリッチに加えて、ジョージ・ベネットという3本柱が形成されることになる。

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ベネットは昨年のブエルタで総合10位

2011年、トレック・リブストロングというチーム・レディオシャックの下部組織から、トップチームにトレーニーとして昇格して、プロデビューを果たした。
レディオシャックは、後にレオパード・トレックと合流し、現在のトレック・セガフレードへと脈を継ぐチームであり、トレック・リブストロングは現在のアクセオン・ハーゲンズ・ベルマンと名を変えている。

2012・2013年はシュレク兄弟、2014年はキャノンデールに移籍してイヴァン・バッソなど、総合上位を狙うエース選手と同じチームに所属してはいたが、総合エースの出場するグランツールへの出場経験は無かった。
ベネットの立場はあくまで若手選手の一人で、登坂力に期待されているわけではなかったのかもしれない。

2015年にステージレースのアシストとして期待され、ロットNL・ユンボに移籍する。
同年ブエルタでは、チーム最高順位となる総合37位で完走している。

2016年はウィルコ・ケルデルマンのアシストとしてツール・ド・フランスに出場。
マイヨ・ブランが期待されていたケルデルマンが低調なパフォーマンスに終始したが、ベネットはアシストの役割を全うして総合53位で完走している。
特に終盤の山岳コースでは、ケルデルマン以上に登れているシーンも目立ち、クリス・フルームらメイン集団で走行する姿が度々見られた。

そして、ステフェン・クライスヴァイクのアシストとして同年のブエルタにも出場。
肝心のクライスヴァイクが落車リタイアしたため、以降はベネットが総合エースとして走り、見事に総合10位でフィニッシュした。

ブエルタ第19ステージは、ほぼ平坦路の37kmの個人TTだった。
ステージ優勝したクリス・フルームには遠く及ばない3分18秒遅れのステージ25位でフィニッシュしており、同24位のエステバン・チャベス、同26位のマキシム・モンフォール、同32位のサイモン・イェーツらと同じレベルのTT力を持っていると見ていた。

とはいえ、チャベスやイェーツのような爆発力を持っているわけではないので、あくまでピュアクライマーとしてエース山岳アシストとしての活躍が期待される選手だったのだ。

それが、今シーズンは初戦のアブダビツアーからステージレースで立て続けに好成績を残していた。

アブダビツアー総合7位
ボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャ総合9位
ブエルタ・ア・パイスバスコ総合11位
と、ワールドツアーのステージレースで総合10位前後を安定して獲得している。

そうして迎えたツアー・オブ・カリフォルニアは、2016年に総合7位となっている比較的相性の良いレースだった。

評判通りの登坂力に加えて、タイムトライアルで好成績を残す

第2ステージは、2016年ツール山岳賞のラファル・マイカとの激闘に敗れ、ステージ2位だったが総合2位に浮上。
以降はマイカを徹底マークして、クイーンステージとなる第5ステージに挑んだ。

アメリカ人として総合優勝とステージ優勝を狙う、チームスカイのイアン・ボズウェルとキャノンデール・ドラパックのアンドリュー・タランスキーが積極的なレース展開を見せるなか、ベネットは遅れることなくきっちり対応していた。

この時点では、ベネットのTT力はマイカと同レベルと見られており、ベネットが総合で逆転するためには第5ステージでマイカを置き去りにするような走りが必要だった。
しかし、ベネットは守りに徹するような走りを見せ続け、マイカから2秒遅れのステージ3位だった。

総合争いの行方は、TT力に勝るタランスキーが、マイカを逆転できるかどうかに注目が集まっており、ベネットはまあ頑張れ、と言ったテンションだっただろう。

ところが、第6ステージ個人TTでベネットは周囲の予想を大きく上回る、好走を見せた。
ほとんど平坦な24kmのTTを28分45秒で走り抜き、タランスキーから2秒遅れのステージ4位に入ってみせた。

全く平坦のタイムトライアルでは、運で成績向上できる可能性はほとんどない。
いくら調子が良くても、そもそもの脚力が反映されやすい。

背中が地面と水平となっている美しいTTフォームからは、タイムトライアル能力改善するための努力の結晶だと言えよう。

ちなみにタランスキーは、今シーズン最大の目標をこのツアー・オブ・カリフォルニアに設定しており、一昨年から昨年にかけての不調から完全復活を遂げるステージ優勝もあげていた。
本人の調子は非常に良かったに違いない。
そのタランスキーに2秒差に迫る走りを見せた、ベネットのタイムトライアル能力は素晴らしいの一言に尽きる。

なお、タランスキーは昨年のブエルタ第19ステージでは1分54秒遅れのステージ7位だった。
この半年間で、ベネットのTT力が大きく改善されたことを裏付けるデータの一つではないだろうか。

もはや、一端の山岳アシスト選手ではなく、グランツールの表彰台さえ狙い得る、総合エースへと昇格を果たしてと言って良いだろう。

ロットNL・ユンボには、2016年ジロをあと一歩のところで総合優勝を逃したクライスヴァイクに加え、ベネット以上に今シーズンのステージレースで好成績を連発しているログリッチも控えている。

7月のツールには、ログリッチとベネットが共に出場する予定となっている。
基本的にはログリッチがエースとして走るだろうが、グランツールの経験値はベネットの方が上である。
状況によっては、ベネットで総合上位を狙う展開も十分に考えられるだろう。

ゆくゆくは、クライスヴァイク・ログリッチ・ベネットの3本柱が揃い踏みするグランツールも見られるかもしれない。
オランダチームの今後が、非常に楽しみになってきた。

Rendez-Vous sur le vélo…

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-コラム, ツアー・オブ・カリフォルニア2017