サイバナ

これからサイクルロードレースの話をしよう。略して『サイバナ』。サイクルロードレースのレース結果やコラムなど、お届けします。

コラム ジャパンカップ2018

ジャパンカップサイクルロードレース現地観戦のススメ

昨年とは打って変わって快晴のなか開催されたジャパンカップサイクルロードレース。UCIアジアツアーで唯一のHCクラスのワンデーレースであり、「アジア最大のワンデーレース」という言葉に偽りはない。主催者発表で8万2千人が観戦したビッグイベントである。

筆者は、勝負どころとなる古賀志林道のつづら折りの上り区間(登坂距離1.1km・平均勾配8.4%)を中心に観戦していた。

そこで撮影した写真と共に、現地観戦の醍醐味などまとめてみたいと思う。

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プロのアタックスピードの凄まじさ

1周目は山頂まで残り300〜400mほどのつづら折りの中腹で観戦していた。逃げに乗るために最初の上りでアタックを仕掛けることが多く、特に勾配が厳しくなるつづら折りの中腹は絶好の観戦ポイントだといえよう。

今年のファーストアタックを決めたのは、ジャパンカップをもって現役引退を発表しているオスカル・プジョル(スペイン、チームUKYO)だった。あまりのスピードにプジョルの勇姿を捉えきれず、ピンボケ&手ブレが酷い写真となったが、むしろプジョルのスピードを感じていただければ幸いである。

プジョルを追って、今年のツアー・オブ・ジャパン総合優勝のマルコス・ガルシア(スペイン、キナンサイクリングチーム)がアタック。勾配10%を越える区間にもかかわらず、凄まじいスピードを出す2人のスペイン人に、是が非でも逃げに乗りたかった日本勢がついていけない姿が見られた。

そして集団の最後尾にはファビオ・フェリーネ(イタリア、トレック・セガフレード)の姿があった。当日や前日に「今年の優勝予想は誰ですか?」と聞かれることが多く、私は「ヘーシンクかフェリーネ」と答えていた。そんな選手が1周目から千切れかけている姿を目の当たりにし、実にガッカリしたのであった。

アタックの瞬間を目撃

モトバイクが「27"」と書かれたボードを掲げて通り抜けると、プジョルとガルシアが通過。

しかし、27秒も経たないうちに、スペシャルペイントが施されたバイクを駆って、クーン・ボウマン(オランダ、ロットNL・ユンボ)が単独で先頭にブリッジしようとしていた。

そのボウマンを追って、ニコラス・ロッシュ(アイルランド、BMCレーシングチーム)、ローラン・ディディエ(ルクセンブルク、トレック・セガフレード)、雨澤毅明(宇都宮ブリッツェン)といったメンバーが集団から飛び出していったものの、結局ボウマンを捉えることができず。

集団がバラけながら、アタックした選手を追っていく選手たちの姿の迫力は、写真や画面越しではなかなか伝わってこないものだった。

ちなみにフェリーネは千切れておらず、集団後方にとどまっていることを確認した。

フォトジェニックを追求するも難しさを知る

山頂に移動して、コース脇の崖の上から何周か観戦していた。

辻啓さんのような真上からの集団の写真を撮ろうと思った結果がこちら。

全然違うなあと思い、辻さんの写真を見てみると…

真上から撮るときは、本当に真上近い角度からでないと、フォトジェニックにならないことがわかった。私が登った崖側では、角度が浅かったようだ。

そうこうしているうちに、6周目の山岳賞が近づいてきた。引退のかかったプジョルが獲ると思いきや、ボウマンが2人をぶっちぎって山岳賞を獲得した。

KOM付近で観戦するファンの数は非常に多いものの、ずっと一箇所にとどまって観戦する人は少ないため、人の入れ替わりが多い。そのため、スタート前に場所取りをせずとも、少し待てばある程度良い場所でレースを見ることはできるだろう。

ちなみにフェリーネは集団前方に陣取るトレック・セガフレードの選手たちのそばまでポジションを戻していた。これで一安心。

アルプデュエズのようなつづら折りを上から観戦

KOMからやや下って、つづら折りを上ってくる選手たちを上から眺めることにした。イメージとしてはこんな感じ↓

Embed from Getty Images

空から眺めることはできなくても、今年から参戦人数が120人以上に増えたからこそ、これを上の道路から見たらさぞ迫力があるのではないかと思っていたのだ。

しかし、つづら折りの沿道には思った以上に木が生い茂っていて、自分のイメージした感じの見た目ではなかった。また、写真に収めようにもうまく広角に撮ることができないので難しかった。

それでも、勾配10%を越える区間を遠目でも明らかにわかる高速度で駆け上がってくる集団の姿は圧倒的だった。

高速度といっても、時速20km台での走行だ。平坦路を時速50km近い猛スピードで過ぎていくわけではないので、選手の表情を観察することができるスピードと距離感だ。

口元に笑顔を浮かべるブリッツェンの選手は小野寺玲だ。後にブログにて「前半からかなりキツかった」と言っているように、苦しくなると笑っているように見えるためで、何か雑談しながら笑っているわけではなさそうだ。

古賀志林道はパフォーマンスの場でもある

3人の逃げと、宇都宮ブリッツェンがけん引するメイン集団という構図でレースは展開していった。9周目の山岳ポイントを獲りにいったボウマンが、プジョルとガルシアを置き去りにして独走に持ち込んだことで、レースは新たな展開を迎えた。

遅れたプジョルは引退を惜しむように、沿道のファンとハイタッチしていた。古賀志林道はふつうに走れば時速10km以下のスピードで上ることができるため、選手とファンの距離が最も近づく最高の場所なのだ。

ボウマンは、つづら折りを上りながら下の方を何度もチェックしていた。集団との差を目視で確認するためだった。全開で逃げ続けるというよりは、集団に残っているチームメイトたちの仕掛けのタイミングを測って、タイム差を調整しているようにも見えた。

そのボウマンが10回目の古賀志の上りをこなしていると、後方ではロットNL・ユンボが集団先頭に出てけん引開始。すると、ロベルト・ヘーシンクが集団からアタックを仕掛けたのだ。

突然の出来事に、カメラを構えるもがっつりピンぼけ。それくらい強烈なヘーシンクのアタックに、NIPPOのマルコ・ティッツァ、そして集団を引き続けていたブリッツェンの雨澤毅明、BMCのロッシュらの姿を確認できたが、一時的に時速30km近く出ていたであろうトッププロの強烈なスピードの前には、至近距離で目視できるといえども、選手個人を識別することは非常に難しかった。

ヘーシンクの動きをきっかけに集団は完全に崩壊。それは、沿道に向けてファンサービスを行うレースを諦めた選手たちの姿が見られるチャンスでもある。

マトリックス・パワータグの佐野淳哉も沿道のファンとハイタッチをしていて、トレック・セガフレードのエウジェニオ・アラファチは上りの間、何度も何度もウィリー走行を披露していた。

隠しきれない苦悶の表情

レース展開は佳境を迎えていた。それまで観戦していた場所からやや下って、つづら折りの最初のコーナー付近に移った。

ヘーシンクのアタックから、今度はアントワン・トルホークも積極的な動きを見せ、集団はどんどん絞り込まれていた。

ロットNL勢の積極的な動きが実り、先頭集団は6人に絞り込まれていた。そこからトルホークとミッチェルトン・スコットのロブ・パワーが抜け出していった。

先頭集団の競り合いも見応え十分であるが、ジャパンカップの沿道観戦はそれだけではない。レース中継では放送されない、千切れた選手たちの表情を見ることができる。

ここでもやはり際立ってわかりやすい表情をしていたのは小野寺玲だった。口元に笑顔を浮かべているような表情をしているが、タンクの中身が空っぽといった感じで、よろよろと必死にダンシングしながら上っていた。これがワールドチームを抑えて、集団けん引を担った男たちの仕事を終えたあとの姿だった。とても美しいと思う。

こちらはグルペットではないが、宇都宮ブリッツェンからエースを託された雨澤毅明も普段の鉄仮面から想像できない苦悶の表情を浮かべて走っていた。その奥で日本ナショナルチームの石上優大はまだ行けそうな顔をしている。21歳にもかかわらず、底知れぬポテンシャルを感じた瞬間だった。

そうして、最終周の選手たちが通り過ぎていくなか、docomo系の回線は電波が繋がるため、docomo系SIMを使用している同行者のスマホから中継映像を見て、フィニッシュを確認。

わたしたちのジャパンカップ観戦が終わったのだった。

あとでリザルトを確認したが、フェリーネはメイン集団内でフィニッシュしており、13位だった。

現地観戦でしか味わえない迫力

使えそうな写真を選別して掲載したが、撮り逃したなと思う選手はいっぱいいた。前日に帽子にサインを貰って、この日は3位に入ったマッティ・ブレシェル、ベストアジアライダーに輝いや中根英登をしっかり収めた写真は撮り損ねていた。

120人以上に集団が大きくなったことで、選手ひとりひとりの写真を撮る難易度は上がったような気がする。

個人的に写真を撮ることが楽しいので、写真撮影を優先させながら、余力があるときに選手に声援を送るスタイルで観戦していた。もちろん、写真撮影をほどほどに選手への声援を送り続けるファンもいれば、自作の応援グッズを披露する場としてレースを楽しむファンもいれば、酒盛りに興じるファンもいる。楽しみ方は人それぞれだ。

いずれにせよ、一つだけハッキリ言えることは、ジャパンカップを現地で観戦するからこそできる楽しみ方ということだ。

個人的にはプレスとしての動き方も概ね把握できたことで心の余裕が生まれ、知り合いも増えていったことで、どんどんジャパンカップ観戦が楽しくなってきている。

何よりいつも画面越しにしか見ることができないワールドクラスの選手たちの本気の走りを間近で見ることができる唯一無二のチャンスだ。海外レース好きにとって、何事にもかえられないだろう。

今から来年のレースが楽しみだ。

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