サイバナ

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コラム ドバイツアー2017

マルセル・キッテルが乗り込む『特急クイックステップ号シャンゼリゼ行き』とは?

2017/07/13

強い。ただひたすらに強かった。

これ以上、形容のしようがないほどに、マルセル・キッテルを擁するクイックステップ・フロアーズは強かった。

キッテルはドバイツアーでステージ3勝をあげ、総合優勝を果たした。キッテルにとって、ドバイツアーでの通算ステージ勝利数は8となり、3回目の総合優勝である。

だが、そのレースの内容は単に相性が良いから、という言葉では片付けられないほど、クイックステップのチームワークが光っていた。

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最終盤でも発射台を7人残しているチーム力の高さ

クイックステップのメンバーの個の力が際立っている。

エースのマルセル・キッテルの他には、

2016年ツールではキッテルの最終発射台を務めたファビオ・サバティーニ。

2015年パリ〜トゥール優勝、『振り向けばトレンティン』でお馴染みの2016年ジロ第18ステージ優勝のマッテオ・トレンティン。

2016年欧州ロード選手権2位と、ペーター・サガンと互角の勝負を繰り広げるスプリント力を持つジュリアン・アラフィリップ。

2016年ジロ・デ・イタリア新人賞&世界選TTT優勝メンバーのボブ・ユンヘルス。

23歳ながら、2016年ツール・ド・ポローニュ第1ステージではカレブ・ユアンとフェルナンド・ガヴィリアを下して勝利したダヴィデ・マルティネッリ。

同じく23歳で、2016年世界選U23個人TT2位のマクシミリアン・シャッチマン。

そして、ステージレースでは延々と集団牽引を行う無尽蔵のスタミナを誇るスペシャルルーラーのジュリアン・ヴェルモト。

と、平地のスペシャリストだけでなく、オールラウンダーとしてステージレースのエースを張るようなクラスの選手まで集まっている、ちょっとしたオールスター集団でドバイツアーに臨んでいた。

この豊富な戦力を擁して、クイックステップの組織力は第1ステージから際立っていた。

空撮映像を見る限りでは、ラスト2.2kmの時点でクイックステップのメンバーはキッテルを含めて7人残っている。

残りの1人も、第1ステージのフィニッシュタイムを見る限りでは、恐らくジュリアン・ヴェルモトだと思われる。ヴェルモトの役割は最終盤までキッテルを含むクイックステップのメンバーを無事に集団前方に送り届けることなので、既に任務完了していたのだろう。

残ったメンバーで、集団の最前列を陣取り、次々に列車を切り離してスピードを維持している。ラスト1.3kmの時点で5人のメンバーを残すという完璧なレース展開を見せていた。

そして、先頭はトレンティン、2号車がサバティーニ、最終車両がキッテルという鉄壁の編成でラスト1kmのアーチをくぐっていく。

高速クイックステップトレインを誰も止めることは出来ず、先頭のトレンティンを切り離した後は、残り200mでサバティーニが離脱して、いよいよ最終車両のキッテルを発射。あとはフィニッシュ地点めがけて、ひたすらスプリントするだけの簡単なお仕事を果たして、見事にステージ優勝をあげたのだった。

トレインが崩れても、再構築して引き上げる力強さ

第2ステージでは、クイックステップへのマークが厳しくなり、途中クイックステップトレインが散り散りになってしまう。

ハイスピードの先頭集団内で、平坦スペシャリストたちは互いに目配せしながら、ラスト1km地点でようやくトレインらしき隊列をくみなおすことに成功した。しかし、エースのキッテルの位置は前から30番前後という、あまり良くないポジションに落ちていた。

何とか集団の中ほどまでキッテルを引き上げて来ると、左から上がってくる他のチームのスプリンターをサバティーニが身体を使ってブロックする。キッテルのためのスペースを確保するためだ。

サバティーニには、左側の進路が空くという確信があったのだろう。身体を張ってエースのポジションを確保して、前方が開いた刹那、ゴールスプリントさながらの全開のダンシングを始める。

トレンティンもサバティーニの動きに即座に反応し、今回は緊急編成のサバティーニ・トレンティン・キッテルという順で最終トレインを形成。サバティーニが先頭まで二人を引き上げると、トレンティンが最終加速を開始。先行するディラン・フルーネヴェーヘンを追ってキッテルがもがき始める。

最後は車体1台分の差をつけての完勝だった。

たった1km前には30位くらいまで番手を落としていたキッテルを、アシスト陣の凄まじい引き上げによって、集団スプリントに持ち込み、エースはアシストの仕事に応える見事な勝利だった。

トレインが完全に崩壊しても、キッテルの力で押さえ込む

第5ステージでは、更にマークがキツくなった上に、頼りになるサバティーニに何らかのトラブルがあった様子で、最終スプリントに向けて隊列が完全に崩れてしまった。

背後にサバティーニがいると思っていたトレンティンが、キッテルと距離を空けてしまい、気付いた時にはトレンティンの力は残っていなかった。したがって、キッテル単独でスプリントに挑むことになってしまった。

先頭は、ディメンションデータのマーク・レンショー。カヴェンディッシュの最終発射台を務める男だ。続いてアダム・ブライス、ジャン=ピエール・ドラッカー、カヴェンディッシュ、キッテルと続く。これまでのスプリントと違って、キッテルの前方をライバル選手たちがふさぐ格好となった。

正面と左翼は、進路が塞がれているため、キッテルは右翼に活路を見出した。ドラッカーがスプリント開始した瞬間、誰もがドラッカーの動きに目をとられたその時、キッテルは一気に進路を右翼へと変えていった。

自分のスプリントコースを開拓すると一気にもがき始める。

カヴェンディッシュは、キッテルの動きをマークして背後にピタリとついたが、好調キッテルの爆発力には及ばず。エリア・ヴィヴィアーニとリカルド・ミナーリの追撃も押さえ込み1着でフィニッシュした。

今大会3勝目をあげ、堂々と3度目のドバイツアー総合優勝を果たした。

トレインの力だけでなく、キッテル単独でも勝てることを証明

今大会に参加してい他のスプリンターチームの力が劣るわけでは、決して無い。

カヴェンディッシュのディメンションデータ、フルーネヴェーヘンのロットNL・ユンボ、ジョン・デゲンコルブのトレック・セガフレード、バーレーン・メリダにUAEアブダビ。各チームとも屈指のトレインを形成して、度々クイックステップトレインへと襲いかかっていた。

事実、第2・5ステージでは、クイックステップのコントロールが及ばないほど、他のチームの制圧力も高かった。

しかし、第1ステージで見せた完璧なトレイン、第2ステージで見せたサバティーニの獅子奮迅の職人芸リードアウト、第5ステージで見せたキッテル単独でのスプリント。どれもが世界最高レベルの技術と力の結晶であり、明らかにドバイではクイックステップが最強チームだった。

キッテルが目指すところは、クラシックレースもだが、やはりツール・ド・フランスでのリベンジだろう。

カヴェンディッシュやサガンに良いようにやられた2016年のツールのお返しを、そしてシャンゼリゼでのグリーンジャージ獲得が、キッテルの夢であろう。

今年のツールのグランデパールはキッテルの母国ドイツだ。

ドイツ発、ベルギー経由の夢の超特急クイックステップ号は、シャンゼリゼに向けてすでに走り出している。

Rendez-Vous sur le vélo…

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