マイヨロホ争奪戦!クリス・フルームに逆転の秘策はあるのか?

第19ステージの個人TTを終えて、総合1位のナイロ・キンタナと総合2位のクリス・フルームのタイム差は1分21秒となりました。

ブエルタ・ア・エスパーニャが8〜9月に開催されるようになってから、ツール・ド・フランスとブエルタ・ア・エスパーニャを同年に制覇した、いわゆるダブルツール達成者は一人もいません。

偉大なる歴史に挑戦するフルームは、あと1分21秒で人類史上初の栄誉を得ることが出来ます。

ツール・ド・フランスでは、フルーム擁するチームスカイのチーム力が大いに発揮され、キンタナ擁するモビスターをとても苦しめました。

逆に今大会はここまでモビスターの攻勢にチームスカイが苦しめられている上、フルーム自身の調子もあまり良さそうに見えません。

果たして、キンタナを逆転するための秘策はあるのでしょうか?

昨年のブエルタは、第20ステージで逆転劇が起きた

2015年のブエルタは第20ステージまで、ジャイアント・アルペシンのトム・ドゥムランがマイヨロホを守っていました。

ただ総合2位のアスタナのファビオ・アルとの差は、わずか6秒でした。

迎えた最終決戦の場となるコースプロフィールは、この通りです。

SS 16

3つ目の1級山岳でファビオ・アルはドゥムランに対して攻撃を仕掛け、リードを築いてダウンヒルへ入ります。

しかし、TTスペシャリストであるドゥムランは、下りで猛烈に追い上げ、アルを捉えるかと思った矢先に、前待ちしていたアスタナのアシスト2名(ルイスレオン・サンチェス、アンドレイ・ゼイツ)と絶妙なタイミングで合流し、ドゥムランを引き離すことに成功します。

このアシストが決定的となり、ドゥムランに大差を付けることに成功し、アルは逆転でマイヨロホを獲得することに成功しました。

2016年の第20ステージと、2015年の第20ステージは構成が似ている

SS 16

ブエルタ2016第20ステージ

上が2015年で、下が2016年の第20ステージのコースプロフィールです。

山岳の等級は違い、最後は頂上フィニッシュという違いはありますが、パンチ力のある登りが連続し、終盤にダウンヒルがある点が似ています。

昨年のアルになくて、今年のフルームにあるものは、フルームの圧倒的なダウンヒル力です。アシストの力が無くても、ライバルに差をつけられる力は十分に持っています。

したがって、終盤の長いダウンヒルでキンタナからリードを奪う展開に持ち込みたいと考えます。

もし最後の超級山岳で横一閃の戦いとなると、1分21秒というビハインドをひっくり返すのは容易ではないように思えます。何しろ、ここまでの山岳ではキンタナからほとんどリードを奪えなかったわけですから。

となると、ツール・ド・フランスでも見せたダウンヒルでのアタック、フルームの高い独走力を活かした作戦が、逆転の秘策となり得ます。

モビスターの強力アシストをいかにして削るか

モビスターには下りに強いアレハンドロ・バルベルデ、ホセホアキン・ロハス、ホナタン・カストロビエホなどのアシストがいる上に、山岳アシスト陣も充実しています。

特にルーベン・フェルナンデスとダニエル・モレーノの力は強力です。もちろんバルベルデも山岳でのアシストは最強レベルと言える力を持っています。

このモビスター山岳アシスト陣を、ダウンヒルでキンタナをアシストする選手を削るために、2級山岳の登りではモビスターの強力な山岳アシスト陣を蹴散らすほどの圧倒的なパワーを持った強烈な攻撃を仕掛ける必要があります。

この動きで鍵を握る選手は、レオポルド・ケーニッヒとサイモン・イェーツです!

チームスカイはオリカ・バイクエクスチェンジと手を組むべき!

サイモン・イェーツはチームスカイの選手ではなく、オリカ・バイクエクスチェンジの選手です。

フルームはキンタナからタイムを奪いたいように、オリカ・バイクエクスチェンジのエースであるエステバン・チャベスは、ティンコフのアルベルト・コンタドールからタイムを奪いたいです。

つまりチームスカイとオリカ・バイクエクスチェンジは、共に総合上位の選手に仕掛ける立場のチーム、という点で利害が一致しています。両者が共闘体制を築くメリットは大きいです。

となると、山岳でモビスターアシスト陣を一掃出来るほどの強烈な牽きが出来る選手は、レオポルド・ケーニッヒとサイモン・イェーツしかいません!

第15ステージで、キンタナとコンタドールが逃げた際に、追走の集団でアシストを使いきったオリカ・バイクエクスチェンジは、サイモン・イェーツに先頭を牽かせるシーンがありました。

このことから、サイモン・イェーツは自身の総合順位もかかっていますが、オリカ・バイクエクスチェンジとしてはチャベスの表彰台獲得がファーストオーダーになると思います。

レオポルド・ケーニッヒは、第15ステージで50分以上遅れてしまったため、総合争いでは圏外に飛んでしまいましたが、それまではコンタドールより上位の総合5位をキープしていました。第17ステージでは優勝したマティアス・フランクに6秒差に迫るステージ2位に入り、非常に調子は良さそうです。

レオポルド・ケーニッヒとサイモン・イェーツの本気の牽引の前には、モビスターの山岳アシスト陣も太刀打ち出来ないと思います。

となると、攻撃を仕掛けた2級山岳の頂上では、フルーム、ケーニッヒ、チャベス、サイモン・イェーツ、キンタナ、コンタドールと言った面々に絞られると思います。

山頂まで牽ききったケーニッヒとサイモン・イェーツは役目を終え、今度はフルームが自らダウンヒルでアタックします。

理想はここで1分以上のリードを築くことです。ダウンヒルは24kmほどあるので、第19ステージのTTの結果を見る限り、1分以上の差をつけることは十分可能だと思われます。

このダウンヒルの途中、もしくは最後の超級山岳の途中で、2015年のアスタナのように逃げ集団に送り込んでおいたアシストと合流してアシストしてもらえる展開に持ち込めれば、尚良しです。ピーター・ケノー、ダビ・ロペスガルシアが適任でしょう。

そして、フルームはいつものペース走行で駆け上がり、下りで稼いだリードを守る、という展開です。

これが、わたしの考えたフルーム逆転するための秘策です。

さすがに、こんなにうまく行くとは思えませんし、ダウンヒル手前の2級山岳がそれほど厳しい登りではない可能性も十分にあり得ます。

それくらい、フルームにとって非常に厳しい状況だと言えましょう。

こうなることを予測して、『フルームに3分以上タイム差をつける』と言い、第15ステージで見事な逃げを成功させたキンタナの方が、現時点では非常に優位に、そして順調にレースを進めています。

ただ、個人的にフルームのダブルツールを見たい!という想いが強いゆえ、このようなことを考えてみました。

明日のレース序盤から、誰を逃げに送るか。中盤の山岳で仕掛けるのか。ダウンヒルでのアタックはあるのか。見どころ満載で非常に楽しみですね!

Rendez-vous sur le vélo!

『コロンビアの友達と無駄話なう(意訳)』と、フルームがツイートしていました。

明日は、この3名が熾烈な争いをすることになりますが、つかの間の…という感じですね。

(執筆時間:1時間15分)

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