サイバナ

これからサイクルロードレースの話をしよう。略して『サイバナ』。サイクルロードレースのレース結果やコラムなど、お届けします。

コラム

マルク・ソレルは、アルベルト・コンタドールの後継者になり得るのか?

パリ〜ニースは3年連続で4秒以内の超接戦が繰り広げられた。
しかも、最終ステージでスペクタクルな総合争いが繰り広げられていた。

2016年第7ステージでは15秒差の総合2位につけていたアルベルト・コンタドール再三アタックを仕掛けて、21秒差で総合4位のリッチー・ポートと共に総合1位のゲラント・トーマスを振り切ることに成功。逃げていたティム・ウェレンスと合流して3人で逃げ切ったのだが、ステージ優勝はウェレンスがもぎとった。コンタドールは2位に入り、4秒差で総合優勝を逃す結果となった。

2017年も31秒差で総合3位のコンタドールが攻撃を仕掛け、総合1位のセルジオルイス・エナオを振り切って逃げ集団に合流。そこから更にマルク・ソレル、ダビ・デラクルスと抜け出して、逃げ切ったもののやはりステージ優勝はデラクルスに獲られてコンタドールはステージ2位で、2秒差で総合優勝を逃した。

そして2018年は、デラクルスのアタックに乗じてソレルも集団から抜け出すことに成功。逃げていたオマール・フライレと合流し、3人で逃げ切った。ステージ優勝はデラクルスが獲ったものの、ソレルはサイモン・イェーツを35秒突き放し、4秒差で逆転総合優勝を飾った。

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また、コンタドール現役最後の勝利となった、昨年のブエルタ・ア・エスパーニャ第20ステージでも、ソレルはアングリルでコンタドールを牽くシーンも見られていた。

これらの構図を見ると、ソレルこそコンタドールの後継者にふさわしい。という声が上がっても不思議ではない。

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安定して高いパフォーマンスを発揮

ソレルのこれまでのキャリアの走りを振り返ってみたいと思う。

まずは総合優勝した2015年のツール・ド・ラヴニールだ。

第5〜7ステージが難関山岳ステージとなっており、ソレルは第5ステージは優勝したギヨーム・マルタン(フランス、現在はワンティ・グループゴベールに所属)から39秒遅れのステージ2位、第6ステージはエリー・ジェスベール(フランス、現在)から40秒遅れてステージ2位、第7ステージはマトヴェイ・マミキン(ロシア、元カチューシャで現在は)から12秒遅れてステージ3位だった。

結果として、ソレルはジャック・ヘイグ(オーストラリア、現在はミッチェルトン・スコットに所属)に1分09秒差をつけて総合優勝を飾った。ステージ優勝なしに総合優勝を飾ったのは、2007年以降ではバウケ・モレマ(2007年総合優勝)、エステバン・チャベス(2011年総合優勝)、そしてソレルの3人だけだ。

爆発的な力を見せてステージ優勝を飾って総合優勝するのではなく、安定して上位でフィニッシュし続けることで総合成績を掴んだのだ。

この安定した走りこそが、ソレルの武器の一つだといえよう。

無尽蔵のスタミナを持つタフネスさ

2016年のルート・デュ・スッド第4ステージでプロ初勝利を飾った。

このステージがクイーンステージで、標高2115mのツールマレー峠を越えるうえに、雨が降る悪天候のなかでのレースだった。

ソレルは逃げに乗りながら、後々追いつかれたメイン集団内で総合1位のナイロ・キンタナをアシストしつつ、最後の上りで独走に持ち込んで勝利したのだ。

逃げに乗りながらチームオーダーを実行しながらクイーンステージでステージ優勝を飾る抜群のタフネスさもソレルの武器なのだ。もちろん、悪天候でもパフォーマンスが落ちないことも含めてだ。


※ルート・デュ・スッド第4ステージのハイライト

クライマーを蹴落とすペース走行

そして、2017年のボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャでは総合3位に入った。

ハイライトは第5ステージだ。フィニッシュ地点のル・ポルトへ至る上りは残り8.4kmから平均勾配9%・最大勾配20%となる非常に厳しい上りだった。ここで、ソレルはステージ優勝を飾ったアレハンドロ・バルベルデのために素晴らしいアシストを見せた。

残り4km地点で、ヤルリンソン・パンタノがコンタドールのために強烈なペースアップを図ると集団は破壊された。パンタノが仕事を終えたタイミングでコンタドールがアタック。これにはバルベルデやクリストファー・フルームが対応し決定的な動きにはならなかった。

そしてソレルはバルベルデたちに追いつくと、先頭に立ち牽引を開始した。ソレルの牽きは非常に強力で、コンタドールを持ってしても手出しができないほどのペースだった。

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ソレルはシッティングで延々と牽き続けていた。残り1km地点になると、バルベルデがコンタドールとフルームを置き去りにしてステージ優勝を飾り総合優勝も手中に収めたのだった。

ソレルにはコンタドールやバルベルデのような、ダンシングで猛加速するような攻撃力はないかもしれない。淡々と刻むハイペースなヒルクライムでライバルを蹴落とすような破壊力は持ち合わせているのだ。


※ボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャ第5ステージの終盤のレース映像(ソレルがアタックに対応し、集団牽引を始めるあたりから)

グランツールを制す潜在能力を持つオールラウンダー

そして2018年。ブエルタ・ア・アンダルシア第5ステージの個人TTではステージ5位。パリ〜ニース第4ステージの個人TTではステージ2位と、タイムトライアルで好成績の残している。

これまでのキャリアを振り返ると、ソレルはタイプ的にはコンタドールではなく、ヒルクライムではペース走行を得意とし、タイムトライアルに強いフルームやトム・デュムランのような選手に近いといえよう。

つまり、グランツールで総合優勝できる素質が、ソレルには十分に備わっているのだ。

「マルク・ソレルはアルベルト・コンタドールの後継者になり得るのか?」という問いに対しては、『Yes』でもあり『No』でもある。

なぜならコンタドールの類まれなる攻撃センスは、もはや誰かに真似できるようなものではない。その攻撃性を継承するようなレーサーは、今後ともそう簡単には現れないと思う。

だが、スペイン人グランツールレーサーとしてコンタドールが打ち立てたグランツール通算7勝(抹消された記録もあわせると9勝)という偉大な記録を破ってくれるかもしれない、という期待をソレルに対して抱きたくなる。

何より、パリ〜ニース第8ステージで見せたソレルの走りは本当に見応えがあったし、面白かった。コンタドールとタイプは違えど、見応えのある走りを見せて勝つことはソレルにも可能だろう。

ナイロ・キンタナ、アレハンドロ・バルベルデ、ミケル・ランダというトリプルエースが健在なモビスターではあるが、ソレルがトリプルエースにとって代わって総合エースを張る日も、そう遠くないうちに訪れるかもしれない。

Rendez-Vous sur le vélo…

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