サイバナ

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コラム ツール・ド・フランス2017

ペダルを踏み外しても勝利するペーター・サガンの圧倒的なパワーとは?

2017/07/13

ツール・ド・フランス第3ステージの中継では、サガンの着順がクイズの対象になったこともあり、様々な議論が交わされていた。

ところが、
・サガンには厳しい。
・昨日のスプリントで、サガンは伸びてなかったし。
・パンチャーじゃなくてクライマーが来る。
・いやいや、むしろ上りに強いスプリンターが生き残って来る。

というように、サガン圧勝を予想する声は少なかったように思われる。

なぜなら、残り1.6km地点から始まる、最大勾配11%・平均勾配5.8%の上りの頂上にフィニッシュするコースレイアウトになっているからだ。

ストラーデ・ビアンケやアムステルゴールドレースのようなレイアウトであり、サガンよりもフィリップ・ジルベールやミカル・クウィアトコウスキーのような上りに強いパンチャーが有利という予想は決して的外れではないと思う。

かく言うわたしも、サガンの着順は4位以下と予想していた。

ところが、サガンは勝った。
それも、スプリント中にペダルが外れるアクシデントに見舞われながらの圧倒的なスプリントだった。

というように、サガンにはしばしば「圧倒的」という形容詞が使われる。
いったい、サガンの"どこ"が"圧倒的"なのだろうか。

と思っていたところに、ツールのオフィシャルパートナーを務めるディメンションデータが、興味深いデータを公開していた。
そのデータを考察し、サガンの強さを分析してみたいと思う。

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ディメンションデータ提供の走行データとは

内容はこちらだ。

ペーター・サガン、マイケル・マシューズ、そしてリッチー・ポートの3名の残り1kmを切ってからのスピードを比較している。

このデータと、実際のレース映像を比較していると、3つのポイントが浮かび上がった。

ポイント1,短い上りならクライマーと同等以上のスピードを出せる

残り1kmから残り600m地点までは、平均勾配6%ほどの上りだった。

集団を牽いていたBMCレーシングのアシストが離れ、ポートが牽き始めたタイミングだ。
サガンは、一流のクライマーであるリッチー・ポートに匹敵するかそれ以上のスピードを出していたことになる。

ポイント2,ポジション取りがうまい

上りに入った時点では、サガンは30番手前後のポジションにいて、アシストとも離れ離れだった。
残り1kmのフラムルージュをくぐったあたりでも、まだサガンの前方には10名以上選手がいた。

そこでサガンは、ポート以上のスピードを出して、自分のポジションを前に移動したというわけだ。

マイケル・マシューズは、10番手から15番手あたりでなかなかスピードを上げられない様子が見えた。

といように、ライバルたちがなかなか動きにくい上りで、サガンは自由にポジション取りすることができる。
そのメリットは計り知れない。

ポイント3,上りやポジション取りに脚を使ってもなお、余りある脚力

これだけ派手に脚を使って動いたら、普通はスプリントする力は残っていないはずだ。
しかも、ペダルを踏み外すアクシデントにも見舞われている。
それでも、サガンは時速40キロオーバーのスピードを出して、スプリントしていた。

一方でラスト400m区間はマシューズの方が速かった。
しかし、上り坂でポジションを前に移動できなかったマシューズは、残り400m地点でサガンとの距離差は自転車4〜5台分は開いていた。

このギャップを埋めるのが精一杯で、サガンをかわすことができなかったのだ。

結論

サガンが強い理由は、『短時間で出力できるパワーの"総量"が段違いに多いから』だと主張したい。

ポートより速いスピードで上ったと言っても、上り坂が10kmとか続いたらサガンはとうてい敵わない。
あくまで短い上りだからこそ、なし得る力技だろう。

全く同じ位置から、全く同じタイミングでスプリントを開始したら、常にサガンが勝つとは限らない。
しかし力技で、サガンが有利な位置にいち早く移動することは可能なのだ。

それら力技を繰り出す回数と時間が、他のパワー型のパンチャーやスプリンターに比べて段違いに多いと言えよう。

仮にパワーの総量が100である選手Aと選手Bがいるとする。
Aは自力でポジションを上げるのにパワーを50使ってしまうと、スプリントの時に使えるパワーは50しか残らない。
Bはアシスト選手の力を借りてポジションを上げたため、パワーを20しか使わずに済み、スプリントに使えるパワーは80残っている。
2人が同じタイミング・同じ位置からスプリントした場合、残りのパワーが多いBの方が先着することだろう。

ところがサガンの場合はこのパワーの総量が200あるのだ。
ポジション上げに50使っても、先頭に出て風を受けて30使っても、ペダルからクリートが外れて20失っても、まだ100のパワーでスプリントができる。

こんなイメージではないだろうか。

総量200のパワーを一気に解放すれば、ツール・ド・スイスで決めたように400mのロングスプリントで勝つことも出来るし、時速76kmのトップスピードを記録することも出来る。
そうでなくとも、残り1km地点くらいまでにサガンをそこそこ前方に送り届けることが出来れば、あとは自分で何とかして勝ててしまう。

全くもって恐ろしい選手だ。
ライバルの立場からすれば、スプリントまでにサガンのパワーをいかに削り取ることが出来るかが重要ではあるが、ボーラ・ハンスグローエのチーム力がそれを阻む。

ボーラ・ハンスグローエには、クイックステップ・フロアーズのファビオ・サバティーニや、ロット・ソウダルのユルゲン・ルーランズのような強力なリードアウト役はいない。
だが、強いルーラーは揃っているので、残り1km地点くらいまでサガンを送り届ける任務は十分にこなせるのだ。

第3ステージのような、パンチャー向きのステージはサガンの独壇場になるかもしれない。
サガンの圧倒的なパワーと、どうにかして対抗するライバルたちの立ち回りにも引き続き注目していきたい。

Rendez-Vous sur le vélo…

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