サイバナ

これからサイクルロードレースの話をしよう。略して『サイバナ』。サイクルロードレースのレース結果やコラムなど、お届けします。

その他レース2017 コラム

プリモシュ・ログリッチの成長が止まらない。総合レーサーとして覚醒なるか?

2017/06/23

「何歳だって筋肉を増やすことが出来る」

人間は老化と共に、身体能力が衰えることは避けられない動物であると思っていた。
しかし、野球で言えば山本昌やイチロー、サッカーなら三浦カズのように、40代を過ぎても現役を続けている選手も存在する。

動体視力、反射神経などある程度年齢に依存すると思われる能力の低下は避けられないだろう。
筋肉は適切なトレーニングを行うことで、何歳だって筋肉量を増やすことが可能だと言われている。

プロアスリートも、トレーニングによって筋肉量を維持することが出来るため、若い頃に比べれば能力の絶対値は落ちたとしても、つちかった経験を活かして、第一線で活躍することが可能なのだ。

20代後半から30代前半という、プロアスリートとしては成熟期と言われがちな年齢の選手だって、まだまだ伸びしろはあるはずである。

スロベニアの無名選手だったプリモシュ・ログリッチは26歳にして初めてワールドチームとなるロットNL・ユンボへの移籍を果たす。

25歳までは、選手数が10名にも満たない、地元のコンチネンタルチームで走っていた選手である。

そのような選手が、初めて出場したジロ・デ・イタリアでステージ優勝をあげ、現在開催中のボルタ・アオ・アルガルベでは並み居る強豪選手を押しのけ、総合首位に立っている。

ログリッチ自ら、ログリッチ自身の可能性を切り拓いている。

スポンサーリンク

異例の経歴の持ち主

2013年、スロベニアのコンチネンタルチームであるアドリア・モービルに加入。
アドリア・モービルはスロベニアでは強豪チームであり、かつてはUAEアブダビのマルコ・キュンプとクリスチャン・デュラセック、カチューシャ・アルペシンのマルコ・ハラー、バーレーン・メリダのグレガ・ボーレらが所属していた。

ログリッチは、23歳と決して若くはない年齢で、コンチネンタルチームデビューを果たす。
これには理由がある。

2012年まで、ログリッチはスキージャンプの選手だったのだ。
2007年にはジュニアの世界チャンピオンになるほどの有望選手であった。

しかし、その後伸び悩んだためか、2007年に経験した大クラッシュが影響しているのか、2012年にスキージャンパーとしての競技人生に終止符を打った。
第二の人生として選んだ道が、プロロード選手だったのだ。

元々スポーツ選手としての高い素質がログリッチにはあったのかもしれないが、スキージャンプを辞めてからたった1年でコンチネンタルチームに加入するほどの力をつけていることは驚きだ。

2015年シーズンに華開く

2013年はレースに慣れることで精一杯だったのか、特筆すべき成績は収めていない。

2014年は、ツール・ド・アゼルバイジャンでプロ初勝利を収めた。

そして、迎えた2015年シーズンは飛躍の年となった。

4月の1クラスのステージレースであるツアー・オブ・クロアチアで総合2位。
続く同じく1クラスのステージレースであるツール・ド・アゼルバイジャンでステージ1勝&総合優勝と、総合系選手として一気に台頭したのだ。

ログリッチの人生を一変させるレースが、地元で開催されたツール・ド・スロベニアだった。

クロアチアとアゼルバイジャンと同じく1クラスのレースではあったが、ツール・ド・スロベニアは出場チームの格が違った。
カチューシャ、チームスカイ、ランプレ・メリダの3つのワールドチームだけでなく、
ユナイテッド・ヘルスケア、アンドローニ・ジョカットリ、NIPPOヴィーニファンティーニなどのプロコンチネンタルチームの中でも強豪チームが出場するハイレベルなレースだった。

このハイレベルな大会のクイーンステージとなった第3ステージで、ログリッチはステージ優勝をあげた。

終盤に山が立て続けに登場し、ラストは平均勾配5.6%で登坂距離は10km以上もある長い山頂フィニッシュとなる難易度の高いコースだった。
ランプレ・メリダのディエゴ・ウリッシを振り切り、チームスカイのミケル・ニエベを僅差で差し切って、ステージ優勝したのだ。

この活躍が認められ、ロットNL・ユンボはログリッチへ獲得オファーを出した。

ワールドツアー1年目からグランツールでステージ優勝

2016年、ロットNL・ユンボで初めてワールドチームに所属し、ワールドツアーのレースにも初めて出場した。

同年のジロ・デ・イタリアのメンバーに選ばれると、初日の個人TTでいきなりステージ2位となる。

さらに第9ステージの個人TTで、ステージ優勝をあげたのだ。

この日のレースは、レース中盤から雨が降り、降雨後に有力選手が走る機会が多かったこともあり、前半に走り終えていたログリッチに有利に作用したことは否めない。
それでも、グランツールでのステージ優勝の称号に嘘偽りはなかった。

なぜなら、ジロの後に行われたスロベニア国内TT選手権で優勝を果たし、自身のTT力の確かさを証明したからだ。

2017年、シーズン序盤から好調をアピール

2017年、ログリッチは28歳になるシーズンを迎えた。

シーズン初戦となったブエルタ・ア・バレンシアナでは、トニ・マルティンが逃げ切った第2ステージで3位、ナイロ・キンタナが勝った第4ステージで5位と、持ち前のTT力を活かしつつ、険しい山岳でも登れることをアピールしていた。

更に続くボルタ・アオ・アルガルベ第2ステージでは、クイックステップ・フロアーズのダン・マーティンと激しい競り合いの末、ほとんど同着と言えるほどの接戦を演じ、ステージ2位となった。
さらに、第3ステージの個人TTでは、モビスターのホナタン・カストロビエホとTT世界王者のトニ・マルティンに次ぐ、ステージ3位に入る。

もはや、ログリッチの登坂力とTT力の高さは、グランツールでトップ10に入るような高いレベルにまで達しているのではないかと、思うほどの健闘ぶりである。

ログリッチの1学年下の世代には、ナイロ・キンタナやペーター・サガンなど、世界的トップレーサーがうじゃうじゃいる黄金世代である。

黄金世代の選手たちは、20代前半からワールドチームでしのぎを削ってきている。
ログリッチのように、20代後半からワールドチームでデビューする選手は、決して少なくはないが、目立つ存在になることは難しいように思える。
若さには勝てない、普通ならそう考えるからだ。

しかし、ログリッチには年齢など関係ない、と言わんばかりに成長が止まらない。

22歳までスキージャンプをしていて、23歳から始めたロードレースで、たった5年後には世界トップの選手たちと台頭に渡り合う存在になろうとは、一体誰が予想しただろうか。

周りは予想せずとも、ログリッチは自分の可能性に期待して、日夜努力研鑽を重ねてきたに違いない。
まだまだ多くの伸びしろを感じる、ログリッチには注目せざるを得ない。

ログリッチは、ジロはパスしてツールに出場する予定だ。

クリス・フルーム、ナイロ・キンタナ、エステバン・チャベス…。
聞き慣れた総合エースたちが名を連ねるツールで、ニューヒーロー誕生の予感がする。

Rendez-Vous sur le vélo…

スポンサーリンク

-その他レース2017, コラム