パリ〜ツールを制したフェルナンド・ガビリアのロングスプリントは、ドーハで通用するのか?

ロード世界選手権が開幕した。

初日は男子のチームタイムトライアルと、女子の個人タイムトライアルだ。

チームタイムトライアルは、2連覇中のBMCレーシングを12秒上回り、エティックス・クイックステップが優勝した。メンバーは、ボブ・ユンヘルス、マルセル・キッテル、イヴ・ランパート、トニ・マルティン、ニキ・テルプストラ、ジュリアン・ヴェルモトの6名だ。

トニ・マルティンが好調なようで、次の個人タイムトライアルでも優勝の期待がかかる。

今年のパリ〜ツールは、終盤の丘がカットされ、完全にロード世界選手権男子エリートロードレースのコースに似せてきた。そのため、世界選手権出場予定選手の多くがパリ〜ツールに参戦した。

世界選手権の前哨戦の模様を呈していたが、優勝はコロンビアのフェルナンド・ガビリア(エティックス・クイックステップ)だった。

ロングスプリントを敢行し、見事に先着する

ナセル・ブアニ(フランス)のコフィディス、アルノー・デマール(フランス)のFDJ、エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア)のチームスカイが集団の先頭で牽きながら、チームスカイが先頭で残り1kmを切る。

6〜7番手くらいから単独で仕掛けていったのが、ガビリアだった。鋭い加速に誰も反応は出来なかったが、ゴールまで距離もあったので、集団スプリントの波に飲み込まれるものだろうと思った。

通常のスプリント開始のタイミングで2番手に出たのが、アルノー・デマール。次いでヨーナス・ヴァンヘネヒテン(ベルギー、IAMサイクリング)、マッテオ・トレンティン(イタリア、エティックス・クイックステップ)、ブライアン・コカール(フランス、ディレクトエネルジー)、マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ)、ナセル・ブアニという順でガビリアを追いかける。

しかし、数メートルの差でガビリアが逃げ切って優勝、2位以下は先程の順番でフィニッシュしていった。

22歳のガビリアは、これで今季7勝目。ワールドツアーやHCカテゴリーでの勝利を連発していて、内容も非常に良い。1年中好調を維持しているようにも見えるので、来週のロード世界選手権も期待が膨らむ結果となった。

各チームとも連携がバラバラ、トレイン組めずに集団スプリント

残り1km地点では、チームスカイやコフィディスは好位置でエースをリードアウト出来ていたが、ガビリアのアタックをきっかけにトレインが完全に崩壊した。

エリア・ヴィヴィアーニは結局、23位と沈んでしまい、ブアニは7位と伸び悩んだ。

逆にFDJは位置取りが悪かったものの、デマールの伸びのあるスプリントで2位に食い込んだ。実質的にこの日のデマールのスプリント力はプロトンの中で一番であっただろう。

マッテオ・トレンティンは単独で動き、残り1km地点ではチームスカイやコフィディスのトレインにタダ乗りしていた。失速したヴィヴィアーニの真後ろにポジショニングしていたため、デマールやヴァンヘネヒテンらの動きに僅かに遅れを取ってしまった。それが無ければ、ガビリアとのワンツーフィニッシュもあったかもしれないほど、4位という結果は素晴らしい。

ロード世界選のイタリア代表のエースはヴィヴィアーニの予定ではあるが、この日の走りだけを見ているとトレンティンの方が遥かに勝っていた。

ヴァンヘネヒテンはベルギー代表に選ばれていない。代表のエースであるトム・ボーネンはスプリント勝負に絡めず21位だった。ヴァンヘネヒテンはIAMサイクリングのアシストに引き上げられてからのスプリントだったのに対して、ボーネンは恐らく単独で番手を上げてからのスプリントだったので、脚が残っていなかったのだろう。

ユルゲン・ルーランズ(ベルギー、ロット・ソウダル)はガビリアの早めの仕掛けに最初に反応した選手で、後続選手を2〜3メートルほど引き離す強力な加速を見せた。そして、チームメイトのイェンス・デブシェール(ベルギー、ロット・ソウダル)は8位に入った。2人は良い走りをしていた。

ボーネンは世界選では、デブシェールとルーランズのアシストを受けることが出来るので、この日の21位という結果はあまり気にしなくていいかと思う。

カヴェンディッシュは、残り1kmを切ってからは単独でポジションを上げていき、スプリントに絡んで6位だった。つい先日まで胃腸のトラブルで1週間ほど安静にしていたため、病み上がりであることを考えれば上々の出来だったはずだ。

ブアニは少し心配だ。コフィディスの手厚いアシストを受けながらも、最終ストレートでポジションを落としてしまい、7位だった。デマールが非常に良い走りを見せただけでなく、フランス代表から落選したブライアン・コカールにも負けてしまったとなると、立場がない。

そして、この日どこにも姿を確認出来なかったカレブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・バイクエクスチェンジ)は、終盤でプロトンから遅れてしまったようで、10分3秒遅れの178位でフィニッシュ。完走した選手の中で最下位だった。調子が悪くて、集団のスピードにさえついて行けなかったのか、落車やメカトラのせいだったのかは不明ですが、来週の世界選に向けて大きな不安要素であると言えましょう。

ということで、250kmほどの長い距離を走る平坦スプリントワンデーレースでは、最終盤ではアシストの体力も消耗していて、なかなか綺麗なトレインが組めないように見えた。

ロード世界選の方が、パリ〜ツールより激しく消耗する展開になる可能性が高いため、最終盤でトレインを組んでエースを発射する展開には、なかなかならないのかもしれない。

ガビリアは、世界選に向けて一つのメッセージを発信した。純粋にエース同士の脚力勝負ではなく、仕掛けのタイミングで勝負が決まる可能性があるよ、と。

もちろんパリ〜ツールには、優勝候補筆頭のアンドレ・グライペル(ドイツ)、マルセル・キッテル(ドイツ)、アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー)は出場していないため、ガビリアが世界選の優勝最有力だと言うつもりはない。

だが、大いに可能性を感じさせるロングスプリントであったことには違いない。

ナイロ・キンタナ、エステバン・チャベス、ダルウィン・アタプマと、これまでにサイクルロードレース界にコロンビア旋風を巻き起こしていたが、それらは山での出来事だった。

平地でもコロンビア旋風を巻き起こすことが出来るのか。フェルナンド・ガビリアの走りに注目したい。

Rendez-Vous sur le vélo…

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