リッチー・ポートの破壊力抜群な”ダンシングヒルクライム”とは?

これぞリッチー・ポート!と言えるような、凄まじく攻撃力の高いアタックを見ることが出来た。

ツアー・ダウンアンダー第2ステージを制したリッチー・ポートのヒルクライムだ。

ライバルを寄せ付けない圧倒的な加速に、誰もついていくことが出来ず、わずか1.5kmの登りで2位以下に16秒以上の差をつけることに成功した。

ボーナスタイムも含めて、2位に20秒の差をつけて総合首位に立った。ツアー・ダウンアンダーにおいて20秒の差は非常に大きく、得意のウィランガヒルの第5ステージも残しているため、念願である初の総合優勝がグッと近づいた。

今日は、リッチー・ポートの武器であるヒルクライムの話をしようと思う。

2015年、2016年のウィランガヒルで見せた凄まじいヒルクライム

※7分30秒頃からポートが仕掛ける

ローハン・デニスとの一騎打ちとなった、2015年のウィランガヒルでは、フィニッシュまで残り1kmのところでフルスロットルで加速を始めている。喰らいつくデニスを薙ぎ払うかのような力強いダンシングにより、9秒の差をつけてフィニッシュした。

2016年は、セルジオルイス・エナオモントーヤとの一騎打ちとなった。フィニッシュまで残り1.2kmのところでポートが仕掛けると、エナオモントーヤとマイケル・ウッズだけが反応した。ウッズが脱落してからは、エナオモントーヤとポートの凄まじい高速クライミングバトルが繰り広げられる。

駆け引きは一切ない。ひたすら力の限りを尽くしてダンシングし続けるポートの前に、エナオモントーヤは失速してしまう。ポートは2位に6秒差をつけてステージ優勝を果たした。

まるでゴールスプリントのようなダンシングで加速し続ける姿は、圧巻だった。ウィランガヒルでは、ポートに敵う者は誰もいないのではないか。そう思わせるには十分すぎるヒルクライム、いや”ダンシングヒルクライム”を見せていた。

ポートの”ダンシングヒルクライム”は、フルームには通用しなかった

2016年のツールでは、山岳で度々ウィランガヒルを思い起こさせるような鋭い加速を見せていた。

ポートのアタックを皮切りに本格的な山岳バトルが始まることは少なくなく、中位のライバルたちは遅れを喫するシーンが幾度も見られた。

だが、絶対的王者クリス・フルームに対しては、ポートの”ダンシングヒルクライム”も通用しなかった。

ダンシングによる急加速にも、フルームはシッティングで悠々と押さえ込んでしまうのだ。そのうち、ポートの方が消耗してしまい、逆にフルームに差をつけられるステージもあった。

ポートの”ダンシングヒルクライム”は攻撃力抜群ではあるが、フルームを倒すまでには至らない持続時間の短さが難点だった。フルーム級のバケモノを一撃で葬り去るには、更なる加速力を手にするか、持続時間を長くするしかない。

親友のフルームの元を去り、BMCレーシングに移籍した理由はただ一つ。エースとしてツールの頂点を獲るためだ。フルームは倒さなくてはならない強敵。ポートは自身のダンシングヒルクライムに磨きをかけるべく、トレーニングに励んだことだろう。

2017年、ポートはパラコームの登りで新・ダンシングヒルクライムを披露したのだ。

新・ダンシングヒルクライムは威力・持続時間共に上昇

パラコームへの1.5kmの登り口で、ボーラ・ハンスグローエのペーター・サガンが最初にアタックを仕掛ける。この動きに乗じて、リッチー・ポートがアタックを仕掛ける。集団は完全に崩壊した。

一度はサンウェブのウィルコ・ケルデルマンに前を抑えられるも、ダンシングを継続しながらタイミングを見計らって、再加速を始めた。この動きに反応できたのは、モビスターのゴルカ・イサギーレだけだった。

ポートはサドルに腰を一切下ろすことなく、ダンシングヒルクライムを続ける。ゴルカ・イサギレーレも喰らいつくが、ポートの果てしないダンシングに音を上げてしまった。

ゴルカ・イサギーレら後続集団に100mほど差をつけたことを確認すると、ようやくサドルに腰を下ろした。リッチー・ポートはサガンのアタックの時から、実に2分15秒に渡ってダンシングをし続けていたのだ。

その後もフィニッシュラインまで、少し腰を下ろしては再びダンシングを始め、パラコームの1.5kmの登りをわずか3分17秒で駆け抜けた。2位以下には16秒もの差をつける圧勝劇だ。

3分17秒の登りのうち、中継で確認できた範囲では28秒しかサドルに腰を下ろしていなかった。残りの2分45秒はずっとダンシングである。[1]タイムと距離は、筆者が中継を見ながらストップウォッチやコースプロフィールなどで確認したもの

この時のポートの出力は600〜700Wに達していたであろう。仮に同じワット数で平坦路を走った場合は、時速52kmに達するほどのパワーである。

2016年ブエルタ・ア・エスパーニャ第10ステージで、ステージ2位争いを制したロバート・ヘーシンクのゴールスプリントの出力が700Wほどだった。[2]ヘーシンクのStravaのデータより

身長172cmのポートに対して、身長187cmのヘーシンクの方がワット数は高い数値が出やすい。大型クライマーのゴールスプリントに匹敵するパワーを、リッチー・ポートは3分もの間、出力し続けることが出来るのだ。

2015年のウィランガヒルでは、1分50秒間・1.0kmのダンシングヒルクライムを。2016年のウィランガヒルでは、2分10秒間・1.2kmのダンシングヒルクライムをしていた。

2017年のパラコームでは、3分17秒間・1.5kmの新・ダンシングヒルクライムが炸裂した。

リッチー・ポートは確実に進化しているのだ。これらは机上の計算ではあるが、新・ダンシングヒルクライムの破壊力が抜群であることが伝われば幸いである。

ポートと同じくツール・ド・フランス制覇を目指すエステバン・チャベスにとっても、この日のポートの姿はただただ脅威に感じたことだろう。

南半球で見せた新・ダンシングヒルクライムを、フランスでも見せておくれよ。

Rendez-Vous sur le vélo…

References

References
1 タイムと距離は、筆者が中継を見ながらストップウォッチやコースプロフィールなどで確認したもの
2 ヘーシンクのStravaのデータより

2 COMMENTS

いやーリッチーポートは本当にすごかったですね!
全く駆け引きのない、ただひたすら相手をちぎるために踏みっぱなしのリッチーポートを見て、好調時のコンタドールを思い出し思わずファンになってしまいました。これならチームスカイの高速トレインも崩壊しそうです!特に激坂ならフルームに差をつけられるんじゃないかと思える走りでした。

それにしても今年のチームジャージは似たデザインが多くて分かりづらいですねえ…

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アバター画像 サイバナ管理人

林さん、こんばんは!

惚れ惚れするクライムでしたね〜!
コンタドールもそうですが、山岳バトルはこういう勢いありきのガチンコ勝負も最高に面白いです。

わたしは決してスカイトレインが嫌いなわけではなく、スカイの超合理的な戦略とリッチーの正面突破猪突猛進な攻撃がぶつかった時、一体なにが起きるのか楽しみで仕方ありません笑

ジャージの色は、ほんと遠めに見ると全然分からなくて困りますね汗
そのうち細かい差がわかるくらい慣れるといいのですが…。

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