サイバナ

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コラム ツール・ド・フランス2017

共闘を呼びかけたAG2Rのロマン・バルデ、個の力でフルームを撃破。

2017/07/30

正直、今年のコースレイアウトはいまいちだと思っていた。

ツール・ド・フランス3連覇を目指すクリス・フルームの活躍を、好ましく思っていない勢力の影響かどうかは知らないが、フルームにとって不利、ナイロ・キンタナにとって有利なコースレイアウトだと言われていたものの、蓋を開けてみればフルームは早くも第5ステージでマイヨジョーヌを獲得。

さらにアレハンドロ・バルベルデ、ヨン・イサギレ、リッチー・ポート、ラファル・マイカら、フルームのライバルになり得る総合系選手が次々と落車リタイア。

もはや目下最大のライバルと見られていたアスタナのファビオ・アルと共にエースを務めるヤコブ・フグルサングも左手首を骨折。

ロマン・バルデ擁するAG2Rも、チームのホームグラウンドを走る第9ステージで、全勢力をかけて総攻撃を仕掛けたものの1秒もタイムを挽回できず。

ダン・マーティンもポートの落車に巻き込まれてタイムを失い、肝心のキンタナはジロの疲れが取れていないためか全然ダメ。
コンタドールに至ってはまたしても落車が相次ぎ、「僕が諦めると思っている人は、僕を理解していない」と言いつつも、相変わらず厳しい上りで失速している。

チームスカイのアシスト陣は昨年以上の鉄壁ぶりを見せている。
他のチームのアシストが全滅しているような中でも、スカイは平気で2〜3枚のアシストを残している。

恐れを成したライバルたちは、マイヨジョーヌのご機嫌をうかがいながらレースを展開する。

もはや、チームスカイの天下だった。
何人たりとも歯向かうことは出来ない。
盤石の体制で、ツール3連覇に向けて邁進すると思われていた矢先の第12ステージ。

今大会、初めて総合争いで大きな動きが生まれた。

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チームスカイ打倒のために、共闘を呼びかけたAG2R

第11ステージの終了後に、AG2RのGMであるヴィンセント・ラヴェニューがインタビューに答えていた。
このステージでは、エースのバルデが平坦路で落車に巻き込まれていた。
幸いなことに、重大な怪我は負わなかったものの左手首を痛めてしまっていた。

そして、翌第12ステージは、超級山岳バレ峠、1級山岳ペイルスールド峠を越えて、最後は2級山岳ペイラギュードへとフィニッシュするステージとなっていた。
このペイラギュードの上りはラスト200mの勾配が16%に達する激坂フィニッシュだ。

ツール第2週の最大の山場というべき、重要なステージを前にエースは負傷してしまい、他の総合を争うチームも無事でないチームばかりだ。
一方で、チームスカイは重要なアシストの1人であるゲラント・トーマスを落車で失ったものの、残る8人で十分すぎるほどのレースコントロールを見せていた。

AG2Rが総力をあげてフルームに対抗した第9ステージでは、モン・デュ・シャのダウンヒルでバルデがフルームグループから30秒近いリードを築いたものの、ファビオ・アル、ヤコブ・フグルサング、リゴベルト・ウランらがフルームに協調してリードを潰されてしまった。
結局バルデはステージ4位に終わり、ステージ3位に入ったフルームからボーナスタイム分の4秒を失う結果となった。

鉄壁チームスカイの牙城を崩すには、もはやAG2Rのチーム力では足りないことは明白だった。
それどころか、フルームに協力するチームが現れるようでは、逆立ちしても敵わない。

そこで、冒頭のインタビューのような場で、各チームに向けて共闘を呼びかけたのだ。
「まずはチームスカイのアシスト陣を崩さないことには、勝負にならない」とラヴェニューは主張している。

ごもっともな意見だ。
なぜなら、昨年のツールがまさにチームスカイのアシスト陣が崩れなかったために、総合系選手たちは攻撃を仕掛けようにも仕掛けられなかったからだ。

果たして、AG2Rの呼びかけに応えるチームは現れたのだろうか。

フルームがコースアウト、復帰を待たざるを得なかった集団

やはり、チームスカイのチーム力はずば抜けていた。
スタートからずっとチームスカイが集団をコントロール。
超級山岳バレ峠では、ミカル・クウィアトコウスキーがペースをつくり、ダウンヒルも先頭で牽引をしていた。

しかし、下りの途中でフルームの前を走っていたミケル・ニエベがコースアウトしてしまう。
つられて、フルームもコースアウトして、アルも巻き添えを食ってしまった。
幸いにも誰も落車することは無かったが、スピードの上がった集団において致命的な遅れになりかねなかった。

ところが、何故か集団はフルームを待ったのだ。
いや、待たざるを得なかったという方が正しいかもしれない。

この時点で、集団に複数名アシストを残していたチームはチームスカイとAG2Rだけだったからだ。
そのAG2Rもヘロヘロのピエール・ラトゥールと、逃げに乗っていて落車して遅れてきたシリル・ゴティエの2人のアシストを残すのみだった。
コンタドール、キンタナ、アル、サイモン・イェーツ、ルイス・メインチェス、ダン・マーティン、リゴベルト・ウラン、ジョージ・ベネットなど、みんなエースただ1人となっていたのだ。

バルデが得意のダウンヒルでフルームを置き去りにすることは可能だったかもしれないが、まだペイルスールドとペイラギュードを残しての単独アタックは相当ハイリスクだった。
つまり、誰もチームスカイのミスを咎める攻撃ができず、むしろハイペースな集団についていくことで精一杯のようにも見えた。

結局、フルーム(とアル)は難なく集団に復帰を果たし、再びチームスカイが集団コントロールを担ったまま、ペイルスールドの上りへと突入する。

クウィアトコウスキーとニエベがつくり出すペースによって、残ったメンバーの中でも特に好戦的なキンタナが為す術もなく遅れていった。
さらにもう1人好戦的なコンタドールも山頂付近で急激に失速した。

AG2Rがレース前に呼びかけた共闘の可能性は、この時点で完全にゼロとなった。
残ったメンバーは付き位置で走ることしかできない。

チームスカイの計算ミス、フルームまさかの失速

ペイラギュードに入ると、ランダが先頭でペースメイク。
残り2km、残り1kmとマイヨジョーヌ防衛に向けて盤石の構えを見せていた。

ベネットの飛び出しにも、ランダは顔色一つ変えることなく、吸収していった。

ところが残り350m、ペイラギュードの飛行場に入ってから状況は一変する。

アルが決死のアタックを仕掛けると、絶対王者フルームが遅れを喫したのだ。
大きく蛇行しながら苦しむフルームの前方では、アルの動きを冷静に見極めて爆発的な登坂力を見せたバルデがステージ優勝をあげた。
3年連続、3回目のステージ優勝だ。

たった350mで、バルデはフルームから22秒、ボーナスタイムも含めると32秒タイムを挽回し、総合成績では25秒差にまで迫ることができた。

第9ステージではチームの総力をあげて1日中攻撃をしたのに4秒失ったのとは対照的に、この日はわずか300mの攻撃で32秒も稼いだ。
そして、フルームはマイヨジョーヌを失い、代わりにアルが総合首位に浮上した。

それでもフルームの優位は変わらない

第20ステージに22.5kmのタイムトライアルが用意されている。
これまでのTTの成績を考慮すると、フルームに対して1分以上のリードは欲しいところだ。

そう考えると、バルデはまだ1分25秒タイムが足りない。
1分25秒を稼ぎ出すためには、他のステージでまたタイムを稼ぐための攻撃をするしかない。

チーム力では対抗できない。
他のチームの戦力も乏しいため、共闘も見込めない。

もはやバルデは個の力でフルームをねじ伏せる以外に道はないだろう。

第17ステージは、超級山岳ガリビエ峠からのダウンヒルフィニッシュであり、ダウンヒルを得意とするバルデにチャンスがある。
そして、第18ステージは超級山岳イゾアール峠の山頂へとフィニッシュする。

この2ステージで、バルデは1分25秒以上のリードを築くことができるだろうか。
可能性はゼロではない。

これまで全く無いように思えていたフランス人による総合優勝が、かすかに現実的なものとして見えるようになったのではないだろうか。

もうチームスカイに策は通じない。
バルデよ、真っ向勝負で栄光を勝ち取れ。

Rendez-Vous sur le vélo…

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