サイバナ

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コラム ロード世界選2017

ペーター・サガンのロード世界選手権4連覇は可能だろうか?

2017/10/05

1年前、カタール・ドーハの地で世界選手権2連覇を果たした際に、「ペーター・サガンのロード世界選手権3連覇は可能だろうか?」という記事を書いた。

サガンであれば、前人未到の大記録に挑むに違いない。
そして、ノルウェー・ベルゲンのコースはサガン向きのレイアウトであると。

とはいえ、筆者は実際に3連覇することは難しいのではないかと思っていた。
なぜなら、サガンは厳しいマークにさらされていたからだ。

ボーラ・ハンスグローエ移籍1年目、春のクラシックシーズンでは、クールネ〜ブリュッセル〜クールネの勝利と、ティレーノ~アドリアティコでステージ2勝をあげるにとどまった。
期待されていたロンド・ファン・フラーンデレンの連覇、ミラノ〜サンレモやパリ〜ルーベといったモニュメントの勝利には繋がらなかった。

プロトンでは、圧倒的にサガンの力抜きん出ている。
激坂も越え、石畳も越え、スプリント勝負に持ち込まれてしまうと、尋常ならざる加速力を発揮され戦いにならない。

そのため、ライバルたちは徹底的にサガンをマークして、サガンを消耗させてから勝負を挑むスタイルを貫いた。

オムループ・ヘット・ニュースブラッドでは、グレッグ・ヴァンアーヴェルマートにスプリント勝負で敗北。
ミラノ〜サンレモでは、ミカル・クウィアトコウスキーの駆け引きに敗れ、
ヘント〜ウェヴェルヘムでは、徹底マークの末に先頭グループから置き去りにされた。
ロンドでは、沿道の観客のジャケットに引っかかってしまい落車。
パリ〜ルーベでは、度重なるメカトラで優勝戦線から脱落。

メカトラや落車が多いことも気になるが、ライバルたちの徹底マークを跳ね返すチーム力が無かった印象も少なからず受けていた。
勝負どころまでサガンを運ぶことはできても、クイックステップ・フロアーズやBMCレーシングのように、終盤までアシストを残すようなレースを展開することができていなかった。

ゆえに、世界選手権でもサガンは厳しいマークに遭うことが予想され、選手層の薄いスロバキアではライバル国の攻撃に耐えられるとは思わなかった。

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動かなければマークされないけれども

その中で、サガンは苦肉の策ともいえるレース戦略を立てた。

ひたすら集団内で息を潜める、という作戦だ。
12回通過するフィニッシュ地点の通過順位は次のように推移していた。

85位→77位→116位→95位→90位→81位→106位→142位→99位→80位→58位→1位

ライバル国がマークしようがないほど、集団の真ん中から後方を陣取って、ただひたすら待機する作戦をとったのだ。

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ワンデーレース戦略のセオリーからすれば、あまりにもリスクある作戦だといえよう。

なぜなら、集団前方での動きに全く対応することができないからだ。
仮に、優勝候補を含む少人数の逃げが決まってしまえば、即試合終了となる。

少人数の精鋭集団にブリッジをかけるだけのチーム力は、残念ながらスロバキアは持ち合わせていない。
ユライ・サガンが終盤まで生き残っていたものの、ユライ一人ではどうにもならなかっただろう。

もはや賭けだ。
それでも、ラストのスプリント勝負に戦える脚を残すためには、これしか作戦の選択の余地はなかったのだ。

運を引き寄せるサガンの天運

だが、サガンはリスクある賭けに勝った。

残り10kmで、アラフィリップが独走に持ち込んだ際も静観を決め込んでいた。
ヴァンアーヴェルマートも集団前方でアタックを仕掛けている状況にもかかわらずだ。

動くに動けなかったサガンは、アラフィリップの逃げが決まった時に「今日は自分の日ではなかった」と覚悟を決めたようだった。

先頭を走るアラフィリップをめがけて、集団からブリッジをかける動きが活発になることで集団のペースが上がった。
わずかに前に追いつく可能性が生まれてきたのだ。

そこで、サガンもライバルたちの動きを利用してブリッジを試みようとした。
しかし、やはりというべきか、サガンは厳しいマークに遭い、前を追うことはできなかった。

その後、フェルナンド・ガヴィリアとマグヌス・コルトニールセンが前に追いついたことで先頭のペースが落ち、アルベルト・ベッティオールの献身的な牽引によって、残り500mでコルトニールセンを捉えることに成功した。

最後の最後で、サガンはきっちりアレクサンダー・クリストフの背後にピタリと張り付き、絶好のタイミングでスプリント勝負を挑むことができた。
地元のレースで、是が非でも勝利を収めたいクリストフと写真判定にもつれこむ接戦の末、サガンは見事に世界選3連覇を成し遂げた。

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運をも味方につけ、細い細い勝ち筋をたぐりよせ、一撃で仕留める姿は、世界チャンピオンの天命を得たとしかいいようがないレース展開だった。

サガンの世界選4連覇は可能なのか?

2018年の世界選の舞台は、オーストリアのインスブルックだ。
1964年、1976年に冬季オリンピックが開催されるほどウィンタースポーツが盛んな地、すなわち険峻な山が連なる地形でもある。

男子エリートのコースには、登坂距離7.9km・平均勾配5.7%のイグルスの上りを7回通過するなど、獲得標高は4700mほどある。
どう考えてもクライマー向きのコースレイアウトだ。

だが、サガンは「Nothing is impossible(不可能なことは何もない)」と、世界選4連覇に向けてやる気満々の様子だ。

天運を引き寄せたとしかいいようがない、3連覇を成し遂げた後では、もはやアルカンシェルを防衛することがサガンに与えられた宿命に思えてならない。
前人未到の3連覇を越えた先の世界を目指すことは、不思議ではない。
そして、サガンはやる前から諦めるようなことをするような人には見えない。

ゆくゆくはクライマーズクラシックと呼ばれるリエージュ~バストーニュ~リエージュやイル・ロンバルディアを獲り、5大モニュメントを制する計画を立てていたという。
とはいえ、まだ獲っていないミラノ〜サンレモとパリ〜ルーベを制することが、先ではないかと思われていた。
なぜなら、現在の脚質はスプリンター寄りであり、体重は80kg近くある。
サガン自身もこのままの体重では、2018年の世界選を勝つことはできないと話しているように、今から体重を減らすことが必要不可欠となる。

パリ〜ルーベが行われる4月から、世界選の行われる9月までの半年足らずで、パワーを維持しながら減量することは非常に困難な作業に思えてならない。
ならば、いっそのこと来シーズンの目標は世界選4連覇に絞って、最初から体重を落としてシーズンに臨む可能性もあるかもしれない。

どちらにせよ、サイクルロードレースの歴史上、誰一人として挑んだことのない世界選4連覇という未知なる挑戦に、サガンが燃えないはずがない。

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「Nothing is impossible」
という言葉からは、サガンは世界選4連覇を決して絵空事ではなく、現実的に可能な目標として捉えているように聞こえる。

世界選4連覇が可能か不可能か、決めるのはサガン自身だ。

Rendez-Vous sur le vélo…

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