サイバナ

これからサイクルロードレースの話をしよう。略して『サイバナ』。サイクルロードレースのレース結果やコラムなど、お届けします。

さいたまクリテリウム2017 コラム

さいたまクリテリウムは興行レースではいけないのか?

・競技人気の拡大が目的。
・開催費用が高いけど、当該国への経済的な還元は少ない。
・スーパースターが出場。
・真剣勝負ではなく、興行的側面が大きい。

以上の要件を満たしているのは、何も「さいたまクリテリウム」だけではない。

野球の世界一決定戦と謳われるワールド・ベースボール・クラシック、略して「WBC」もそうだった。

オリンピックから野球・ソフトボールが外されたことで、世界に野球人気を拡大する術がなくなった。そこでアメリカ、中南米、日本だけでなく、ヨーロッパ、中東、中国や東南アジア諸国に拡大し、利益向上を図りたいメジャーリーグ機構によって企画された世界大会が「WBC」だ。

しかし、一説によるとWBCによる利益の9割はMLB機構に吸い込まれ、出場国への還元はほとんどないに等しかった。ストレートにいえば、出場する国・選手には「国を代表して戦う名誉」以外の恩恵が少ないのだ。当初から日本は収益配分に反発しており、出場辞退が決定的と報じられることも度々あった。

メジャーリーグのスーパースターが参戦!という謳い文句も蓋を開けてみれば、調整を理由に出場辞退者が続出。結局メジャーリーガーとマイナーリーガーの中間みたいな、とてもスーパースターとはいえない選手たちで構成されるチームばかりだった。

さらにメジャーリーガーたちは怪我を恐れて、無難なプレーに終始し、アメリカでは「WBCはお祭りだから」との風潮が強かった。

メジャーリーグ=ツール・ド・フランス、MLB機構=ASO、WBCアメリカ代表チーム=ワールドチーム、WBC日本代表=国内チームと置き換えると、似たような構図であることに気付いた。

だから、「さいたまクリテリウムは本気のレースじゃない」「赤字でやる価値はない」「興行以外にも人気拡大の手段はある」といった意見が出ることは仕方がないことだと思う。WBCでも同じような論調だったからだ。

ところが、2017年の第4回WBCでは大きな変化が起きたのだ。

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主催国のアメリカが本気を出した

出場を渋っていた日本ではあったが、出るからには本気でやるという律儀で真面目な性格のためか、第1・2回大会を日本が連覇。第3回大会はドミニカ共和国が優勝。

主催するMLB機構のお膝元であるアメリカは、第1回大会第2ラウンド敗退、第2回大会ベスト4、第3回大会ベスト8と、メジャーリーグの名が泣くような惨憺たる成績であった。

そうして迎えた第4回大会では、アメリカ代表チームは歴戦の名将を監督の座に招いた。名将は「本気でアメリカのために戦う者のみ招集する」と宣言し、やる気ある・志あるメジャーリーガーだけが集められた。

それまでの3回の大会とは比べ物にならないほどの実力者が揃い、まさにドリームチームといえる真のスーパースター軍団が出来上がったのだ。

結果は、準決勝で日本を2−1の接戦で破り、決勝戦はプエルトリコを8−0で圧倒し、ついに初優勝を果たした。

さらに野球後進国といわれていたオランダやイスラエルの躍進も目覚ましかった。

アメリカが本気を出したことで、WBCが世界一決定戦としての価値を高めることになったのだ。

もちろん、収益配分の問題は依然として残っている。それdも、当初の目的だった競技人気の世界的拡大は徐々に進みつつある。

野球が世界的スポーツとなれば、野球の最高峰リーグであるメジャーリーグを目指す選手も増え、メジャーリーガー同士の熾烈な争いに拍車をかけることになる、競技レベルがより向上することに繋がる。

そして、野球後進国と呼ばれる国々からメジャーリーグのスーパースターが誕生すれば、MLB中継が世界中で放送されることになるだろう。(なので、MLB機構も収入が増える)

スポーツにおいてファンが喜ぶことはだいたい効果がある

少なくとも日本の野球ファンのほとんどが、WBCに熱狂していたはずだ。4回あったどのWBCも、なんだかんだで相当盛り上がっていた。

日本プロ野球の選手会が、WBCへの出場を(渋々でも)決めた理由は、「なんだかんだでファンが喜ぶから」に尽きるだろう。

WBC自体もMLB機構が(建て前でも)競技人気の世界的普及を目指して、批判はあれど開催をし続けたことで、一定の成果を出し始めている。

日本では十分人気だと思われていたプロ野球も、2017年は歴代最高の来場者人数を記録している。日本でも再び野球は人気を拡大しつつあるのだ。

さいたまクリテリウムにも同様の効果を期待したい。確かに開催費用の問題や、その費用を国内選手の強化に使えばいいのでは、という指摘も正論かもしれない。

とはいえ、さいたまクリテリウムに来場した数万人の観客は、99%以上が「最高だった」と思っているはずだ。その人数は年々増えているように思える。さいたまクリテリウムが人気拡大に貢献していることと、来場した観客が喜んでいることは明白だろう。

現地で観戦していないサイクルロードレースファンも、大半は開催をプラスに捉えているように思える。100%支持とは思わないが、70〜80%は支持しているのではないだろうか。

そこで、筆者がさいたまクリテリウムに期待することは、国内ファンの支持を得ているうちに、国内選手がワールドツアーの選手を打ち負かすことである。宇都宮ブリッツェンがチームTTで勝利したことは、もっと評価されるべきだ。たとえ、バカンスモードのワールドチームだとしても、本戦に備えて体力温存を図っていたとしても、「格下」であるはずの国内チームに負かされ続けることがあろうものなら、ワールドツアーのメンツが立たない。

選手にも意地というものはあるはずなので、WBCでのアメリカのようにさいたまクリテリウムといえど、レースの本気度が増すはずだ。そうすることで、さらにレースはスペクタクルなものとなり、観戦するファンはより楽しくなって、人気も拡大する。

興行レースだからといって、ワールドチームに遠慮することはない。興行レースだからといって、台本が用意されているわけでもない。ある意味KYな国内チームが本気でさいたまクリテリウムを勝ちにいってほしいと願う。

だからこそ、さいたまクリテリウムは批判があっても続けてほしい。WBCで決定的な変化が生まれたのは初開催の2006年から11年も経った時の話だからだ。

要はそれぞれベストを尽くそうぜって話

あまりにも人々の思惑が交差しすぎるこの世界では、何もかも自分の描いた理想通りに実現することは難しい。

大事なことは複雑に絡み合う思惑のなかで、ベストを尽くして点と点を結びつけることではないだろうか。

ワールドツアーを走る日本人選手、Jプロツアーを走る選手、日本のサイクルロードレースメディアの人々、そして日本のサイクルロードレースのファン。日本のサイクルロードレースに関わる全ての人々の根底にある想いは、日本のサイクルロードレースの発展、つまり"いつの日か日本人選手がマイヨジョーヌを着るという夢"ではないだろうか。

だから、
ストイックにトレーニングを積むもよし。
イケメンだから応援するもよし。
ロードバイクが好きだから機材に注目するもよし。
戦略が好きだから作戦に注目するもよし。

たとえ表面に出てくる行動が違ったとしても、根底にある想いが一緒であるならば、いがみ合う必要は全くない。

人それぞれのアプローチがあってよい。
経路が違っても、最終目的地が同じであるなら、お互いを尊重し、加速しあえる関係を築いた方が遥かに生産的である。

サイバナが「◯◯はダメ」と批判記事を書かない理由はここにある。1)むろん根底にある想いが、「他人を蹴落としたい」「自分だけが良い思いをしたい」などであるならば、尊重する必要はない。サイバナでは過去に2回、批判記事を書いたことがある。一つはチームスカイのメカニカルドーピングを報じたニュースへの記事、もう一つはロンド・ファン・フラーンデレンを放送しなかったダゾーンに関する記事。どちらも、サイクルロードレースの発展を願っているとは思えず、自分たちの利益のことしか考えていないようにしか見えなかったため書いた。ダゾーンについては、その後大きく方針転換があり、サイクルロードレースの発展に大いに貢献していると思っているため、わたしは今ではダゾーンを全面的に支持している。

自分は自分が良いと思うことを、これからも貫き通していきたい。

Rendez-Vous sur le vélo…

References   [ + ]

1. むろん根底にある想いが、「他人を蹴落としたい」「自分だけが良い思いをしたい」などであるならば、尊重する必要はない。サイバナでは過去に2回、批判記事を書いたことがある。一つはチームスカイのメカニカルドーピングを報じたニュースへの記事、もう一つはロンド・ファン・フラーンデレンを放送しなかったダゾーンに関する記事。どちらも、サイクルロードレースの発展を願っているとは思えず、自分たちの利益のことしか考えていないようにしか見えなかったため書いた。ダゾーンについては、その後大きく方針転換があり、サイクルロードレースの発展に大いに貢献していると思っているため、わたしは今ではダゾーンを全面的に支持している。

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-さいたまクリテリウム2017, コラム