サイバナ

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コラム

フロリアン・セネシャルこそ、北のクラシックで9勝をあげたチームに最も貢献した男だ

2月24日のオンループ・ヘット・ニュースブラッドから始まった北のクラシックシリーズは、4月11日のブラバンツ・ペイルをもって、ひとまず終幕を迎えた。

クイックステップ・フロアーズは破竹の快進撃を見せ、全14戦のうち、実に9戦で勝利を収めた。

内訳は次の通りだ。

ル・サミン:ニキ・テルプストラ
ドワルス・ドール・ウエスト・フラーンデレン(以下、DDWV):レミ・レヴァーニャ
ノケレ・クルス:ファビオ・ヤコブセン
ハンザムクラシック:アルバロ・ホッジ
デパンヌ3日間レース:エリア・ヴィヴィアーニ
E3・ハーレルベーケ:ニキ・テルプストラ
ドワルス・ドール・フラーンデレン(以下、DDV):イヴ・ランパールト
ロンド・ファン・フラーンデレン:ニキ・テルプストラ
スヘルデプライス:ファビオ・ヤコブセン

ワールドツアーは6戦3勝、HCクラスは6戦4勝、1クラスは2戦2勝となっている。

これら9レースのうち、最も多い7レースに出場したのが移籍1年目24歳のフロリアン・セネシャルだ。

テルプストラでもなく、ジルベールでもなく、ランパールトでもなく、なぜセネシャルが一番多くのレースに出場できたのだろうか?

セネシャルが出場したレースを中心に振り返ってみたいと思う。

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2月27日 ル・サミン(1.1)

出場メンバー:フィリップ・ジルベール、ティム・デクレルク、ファビオ・ヤコブセン、ダヴィデ・マルティネッリ、セネシャル、ゼネク・スティバル、テルプストラ

参加したワールドチームは3チームだったが、主力メンバーが出場しているクイックステップの戦力は圧倒的だった。

レース終盤にテルプストラとジルベールを含む3人が集団から抜け出す展開となり、テルプストラが独走に持ち込んで勝利。2位にジルベールが入り、ワンツーフィニッシュを飾った。

このレースには24歳のセネシャル、24歳のマルティネッリ、そしてネオプロ21歳のヤコブセンも帯同していた。

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レースを通して、集団破壊のコツや逃げを潰すタイミングなどを身を持って学んだものと思われる。

3月4日 DDWV(1.1)

出場メンバー:リケーゼ、レミ・カヴァーニャ、マルティネッリ、ヤコブセン、ヨナタン・ナルバエス、ホッジ、セネシャル

リケーゼ以外の6人は全員25歳以下と若手主体で臨んだ。カヴァーニャは加入2年目、マルティネッリは3年目で、ほかは1年目という経験が浅いメンバーが大半を占めていた。

にもかかわず、優勝したカヴァーニャに続き、2位セネシャル、4位ヤコブセン、7位ナルバエスとトップ10に4人を送り込む圧勝劇を繰り広げた。

特にセネシャルは、数日前のル・サミンでテルプストラとジルベールが見せた通りの走りを見せ、数的優位な逃げ集団を自ら作り出して、カヴァーニャの逃げ切り勝利を演出していた。

3月14日 ノケレ・クルス(1.HC)

出場メンバー:カヴァーニャ、ホッジ、ヤコブセン、マルティネッリ、セネシャル、ピーター・セリー

ル・サミン、DDWVは1クラスのレースで、若手主体といえどもワールドチームとしての強さが際立っていた。

一方でノコレ・クルスは、BMCレーシング、ロット・スーダル、ボーラ・ハンスグローエ、カチューシャ・アルペシン、チームスカイ、チーム・サンウェブに加え名だたるプロコンチネンタルチームが出場するハイレベルなレースだ。

にもかかわず、29歳のセリーを除く5人が25歳以下という若手主体チームで挑んでいた。

レース中盤から終盤にかけて、強力なメンバーを含むグループがメイン集団から抜け出す展開となった。この精鋭集団にはセリーとセネシャルがチェックしていた。

精鋭集団に選手を送り損ねたロット・スーダル、チームスカイがメイン集団を率いて、残り10kmを前にして精鋭集団を吸収。

再び一つの大集団となると、アタック合戦が始まった。カチューシャ・アルペシンを中心に、何度も集団からの飛び出しを図る動きが見られたが、それらの動きは全てセネシャルがチェックして決定的な逃げを作らなかったのだ。

集団前方では、マルティネッリがエースのヤコブセンのポジションを確保。残り1kmを切ると、またしてもセネシャルがトレインの先頭を牽引。マルティネッリ、そしてヤコブセンに繋いで見事に集団スプリントを制したのだった。

セネシャルは中盤から終盤にかけて、集団前方で危険なアタックをチェックする役割を担い、チームの勝利に大いに貢献した。

3月16日 ハンザム・クラシック(1.HC)

出場メンバー:カヴァーニャ、ホッジ、ヤコブセン、マルティネッリ、ランパールト、セネシャル、セリー

ノケレ・クルスと同様にHCクラスのレースで、ワールドチームは6チーム出場していた。

残り10kmを切ってもレースは大集団のまま、集団スプリントに向けた位置取り争いが開始。

セネシャルは落車に巻き込まれてしまい、集団から遅れてしまった。

ワールドチームを中心にコントロールする集団のスピードは凄まじく、スプリンターのヤコブセンとホッジも、激しい位置取り争いのなかでポジションを大きく下げてしまっていた。(※本来はセネシャルが2人を護衛する役割だったと推察)

すると、集団前方を走っていたランパールトがポジションを下げると、ヤコブセンとホッジを10番手付近まで引き戻した。

残り1kmを切ると、カヴァーニャの牽引から、ランパールトがリードアウト。そして、ヤコブセンとホッジは前年度優勝のクリストファー・ハルヴォルセンをピタリとマークし、ここぞのタイミングで前に出たホッジが差し切って勝利した。

大集団での位置取りに苦労していた若手2人を、経験豊富なランパールトが冷静に引き上げたことが勝利に繋がった。

3月21日 デパンヌ3日間レース(1.HC)

出場メンバー:ヴィヴィアーニ、カヴァーニャ、ヤコブセン、マルティネッリ、リケーゼ、ファビオ・サバティーニ、セネシャル

絶対的エースのヴィヴィアーニを据えて挑んだ一戦。終盤は平坦路が続くコースレイアウトとなっており、集団スプリントが予想できるため、リードアウトには職人技を持つファビオ・サバティーニとリケーゼと2人の大ベテランを配置した。

ところが、肝心のサバティーニが途中リタイアとなってしまう。

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集団スプリントに向けてトレインを組むなか、カヴァーニャ、マルティネッリが仕事を終えた残り2kmを切ったあたりで、セネシャルがクイックステップトレインの先頭に立って牽引開始。

残り1kmを切ってからのセネシャルの牽きは非常に力強く、エースのヴィヴィアーニを6〜7番手の好位置まで引き上げた。残り400mで先頭に立ったところで牽引終了、続いてリケーゼがヴィヴィアーニを発射。

ヴィヴィアーニは、好位置でスプリント開始したパスカル・アッカーマンを差し切って、見事に勝利を飾った。

ここまでのレースでセネシャルはルーラーとしての走りが目立っていたが、集団スプリントのリードアウト要員としても高いパフォーマンスを発揮できることも示した。

素晴らしい走りを見せたセネシャルは主力メンバーに格上げ

セネシャルが出場した5つのレース全てにクイックステップは勝利した。

3月23日のE3・ハーレルベーケから、ヘント〜ウェヴェルヘム、DDV、そしてロンド・ファン・フラーンデレン、パリ〜ルーベへと続くワールドツアー5連戦が北のクラシック後半戦のメインイベントだ。

HCクラス以下のレースで素晴らしいパフォーマンスを発揮したセネシャルは、後半戦では主力メンバーとして起用され、DDVを除く4レースに出場したのだ。

特にモニュメントであるロンドとルーベは一際格式の高いレースだ。25歳以下の移籍1年目の選手が出場したのは2015年のランパールト以来のことだ。

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セネシャルはコフィディス時代の2017年パリ〜ルーベ12位、2016年ル・サミン3位など北のクラシックで実績を残していた。とはいえ、高度な戦術を要求されるクイックステップに移籍して1年目に、それも数レース走っただけでチームに完全にフィットしたのだから、セネシャルの適応力の高さを称賛せねばならないだろう。

クイックステップのスカウト部門が、セネシャルの学習能力や戦術眼の高さを見抜いて、獲得に動いたのだとしたら、同様に何かしらの根拠を持って獲得した5人のネオプロも底知れぬポテンシャルを持っていることだろう。

昨オフの主力選手大量離脱によるチーム力低下といった懸念は完全に杞憂だった。それどころか、昨季の同時期にシーズン23勝をあげていたのに対し、今季はそれを上回る25勝をあげている。

クイックステップ首脳陣の慧眼には、ただただ畏敬の念を抱くばかりである。

Rendez-Vous sur le vélo…

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