サイバナ

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コラム ロード世界選2016

ドーハの地で覇権を争う『スプリンターカルテット』とは?

2017/07/13

『世界一退屈な街』

かつてのドーハの別称である。

元々は真珠の産地となる漁村として栄えたドーハだが、1930年頃に日本で真珠の養殖技術が確立すると、安価で美しい真珠が市場に流通するようになり、ドーハの真珠産業は大打撃を受けた。その後、1949年から石油の輸出を開始し、1971年にカタールが独立すると、首都となった。

近年のドーハの発展ぶりは凄まじく、2004年には34万人だった人口が、2013年には130万人となった。世界選手権の周回コースにもなっている超高級人工リゾート島『ザ・パール』、高さ300mを越える『アスパイアー・タワー』を始めとして高層ビルが林立し、中東随一の摩天楼を形成している。そして、今もなお多くのビルが建造中である。

2022年にはサッカーW杯の開催地となっていて、交通インフラの整備も進めているところだ。ドーハはもはや『退屈な街』ではない。

UCIは、サイクルロードレースをサッカーのように世界規模のスポーツにすることを目指している。

来シーズンからは『ツアー・オブ・カタール』『アブダビツアー』がワールドツアーカテゴリーに昇格し、『ツアー・オブ・ターキー』はトルコ初、『ライドロンドン・サリークラシック』はイギリス初のワールドツアーレースとなった。バーレーンメリダが始動し、中国ではプロジェクトTJスポーツがランプレ・メリダの系譜を継いで誕生する。

世界選手権が中東の地で初開催となるが、全く不思議なことではない。

この記念すべき大会では、ピュアスプリンター同士によるスプリント決戦になると予想されている。

現代のトップスプリンターと言えば、マーク・カヴェンディッシュ、アンドレ・グライペル、マルセル・キッテル、アレクサンダー・クリストフの4名を外して考えることは出来ない。

今年の世界選は、この『スプリンターカルテット』中心にレースが展開されるに違いない。

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4人が集うレースはツール・ド・フランス以来

実績では、カヴェンディッシュが圧倒している。

ツール通算30勝は歴代2位の記録であり、2011年にデンマークで行われた世界選でマイヨ・アルカンシエルを獲得している。

次いでグライペルがカテゴリー1以上のレースでは通算136勝と、カヴェンディッシュの141勝に迫る実績を誇る。

両者はかつてチームHTC・コロンビアでチームメイトだった。傑出した才能はチーム内で両立することは叶わず、2010年に対立が表面化してグライペルはチームを去った。以来、お互いに強力なライバル同士、切磋琢磨し合って来た。

そこへ、キッテルが彗星のごとく現れる。2013年シーズン、アルゴス・シマノがワールドチームに昇格すると、同年のツール・ド・フランスでステージ4勝。翌年のツールもステージ4勝と、キッテルフィーバーを巻き起こす。キッテルの台頭と共に、カヴェンディッシュは不調に陥ってしまった。グライペルは出場するグランツールでは必ずステージ優勝をあげる安定感のある走りを見せているが、ジャーマンスプリンターの称号はキッテルへと移ってしまったように思えた。

クリストフは2014年シーズンから猛烈に勝ち始め、わずか3年で53の勝利を積み重ねた。もはやカヴェンディッシュとグライペルは過去の人になってしまったのだろうか。

そして、2016年のツール・ド・フランスでカヴェンディッシュ、グライペル、キッテル、クリストフの4名が集い、『ファンタスティック・フォー』による総合争いの裏では、『スプリンターカルテット』による頂上決戦が行われた。

下馬評ではキッテルとクリストフへの期待が非常に高かったが、結果はキッテルとグライペルがそれぞれ1勝、クリストフは未勝利だったのに対し、カヴェンディッシュは4勝と他を寄せ付けない強さを見せていた。予想に反して、ツールではカヴェンディッシュの圧勝だった。

こうなると、キッテルもクリストフもグライペルも黙っていられないだろう。打倒カヴェンディッシュの旗印を掲げて、ドーハに殴り込みをかけに行く。今年のロード世界選は、トップスプリンター同士による近接格闘戦第2ラウンドなのだ。

なお、2月に行われたツアー・オブ・カタールには、カヴェンディッシュとクリストフが出場していた。ロード世界選とほぼ同じコースを使った第2ステージではクリストフが勝利し、カヴェンディッシュは2位だった。

キッテルとグライペルは同じドイツチームであり、ドイツの出場枠は6名と、イギリスとノルウェーに比べて3名少ない上に2大スプリンターが同チームに存在する点は、懸念事項であろう。

本記事では『スプリンターカルテット』の4名ばかりに注目を集めているが、スロバキアのペーター・サガン、ベルギーのトム・ボーネン、イタリアのジャコモ・ニッツォーロ、フランスのナセル・ブアニ、アルノー・デマールらも、もちろん優勝候補である。

それでも、筆者はツール・ド・フランスからの流れを汲んで、カヴェンディッシュ・グライペル・キッテル・クリストフの4名を『スプリンターカルテット』と名付け、注目していきたいと思う。

Rendez-Vous sur le vélo…

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