サイバナ

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コラム ジロ・デ・イタリア2017

サンウェブアシスト通信Vol.3〜エースの腹痛、その時アシストたちは?〜

『ぼくはココアが大好きなんだ!』

彼は、そう言うと、ココアを1リットル一気に飲み干したという。

ココアは、認知・計算能力を高め、治癒能力を向上し、抗酸化作用もあるそうだ。
カフェイン、食物繊維、乳糖、脂肪、ポリフェノール等々、有効な成分が含まれているのだが、何事も過剰な摂取は身体に良くないだろう。

彼は案の定、腹を下したそうだ。

これは、トム・デュムランがまだ20歳頃のエピソードである。

昨年のツールでも、デュムランはレース中に腹を下して、沿道で観戦していた家族のキャンピングカーのトイレを借りて窮地を脱したことがある。
だが、その影響は他のステージでは感じられず、ツールではステージ2勝をあげていた。

この2つのエピソードから推測できることは、デュムランは単にお腹が弱いということだ。
内臓へのダメージがあってお腹を下したわけではなく、シンプルにお腹が緩くなることがよくあるのだろう。

つまり、今回も明日以降への影響はほとんどないものも思われる。

レース後にデュムランはいつになく多くツイートをしていた。
それは恥ずかしさを紛らわすためなのか、本人の言葉通り悔しさと不甲斐なさからなのか、真相は本人のみぞ知る。
少なくても、元気そうなことはよくわかった。

とはいえ、タイミングが悪かった。
何しろ、この日は獲得標高5500mにも達する今大会のクイーンステージだったからだ。

『サンウェブアシスト通信』は、そんなエース・デュムランを支えるアシスト陣の奮闘ぶりを伝える記事である。

Vol.3は、第14〜16ステージの様子をお伝えしたいと思う。

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流れに任せた第14ステージ

最終盤まで、ひたすら平坦路を突き進み、最後に一撃山岳を登るレイアウトだった。

逃げ切りを狙いたいチームによる激しいアタック合戦が延々と繰り広げられていた。
スタートして30kmの間の平均時速は50キロをゆうに超えていたそうだ。

その中でサンウェブアシスト陣は、特に集団コントロールをすることなく、流れに身を任せていた。
ただ、何もしなかったわけではない。、

モビスターのアシストが逃げに乗ろうとしたならば、即座にチェックする役割を担っていた。
とにかくモビスターへのマークを徹底していたのだ。

結果的にモビスターは逃げに乗らず、3名の逃げが決まる。
アタック合戦は終了し、いざ集団コントロールをしようと思ったところ、FDJが逃げを追いたいとのことで集団コントロールを担ってくれた。

ここにモビスターとオリカ・スコットも加わり、結局サンウェブは集団コントロールすることなく最終盤の山岳を迎えた。

山岳の登り口に向けてのポジション争いは、あまりのスピードにサンウェブアシスト陣は前を陣取ることは出来なかった。
デュムランが自らポジションを上げ、最終的は大方の予想を覆す劇的なステージ勝利をあげたのだった。

サンウェブアシスト陣は序盤のアタック合戦で、逃げのチェック以外、ほとんど仕事らしい仕事はしなかった。
ただし、レースそのもののスピードが速かったために、体力は大きく消耗しただろうが、何もサンウェブに限った話ではない。

プロトンでの存在感を見せはじめた第15ステージ

前半は平坦、後半はイル・ロンバルディアそのものの、テクニカルなステージとなっている第15ステージ。

この日も、逃げに選手を送り損ねたチームを中心に集団コントロールを行なっていたため、前半はサンウェブアシスト陣の出番はほとんど無かった。

1つ目の2級山岳に入ると、サンウェブが積極牽引を始める。
サンウェブ山岳トレインの形成だ。

1号車はゲオルグ・プレイドラー。
身長190cmの大男なのだが、同僚のチャド・ヘイガも190cmあるので見分けが難しい。

2号車はサイモン・ゲシュケ。
いつもハードワークを厭わない、ナイスガイだ。

3号車はローレンス・テンダム。
ウィルコ・ケルデルマンのいない今は、デュムランにとって最も頼れるアシストである。
この日は山岳アシストとしての職務を果たしていたが、通常はモビスターアシスト陣を監視する業務を行っている。

サンウェブ山岳トレインが積極的に集団を牽引した甲斐もあって、2級山岳は何事もなく越えることが出来た。

事件は2級山岳の下りで発生した。

総合2位につけるナイロ・キンタナがダウンヒルのコーナーを曲がりきれず、落車してしまったのだ。
バイク交換に手間取り、キンタナはマリアローザグループから大きく遅れてしまう。

その時、デュムランはおもむろに集団の先頭に立ち、周囲にスピードを落とすように促した。
プロトンの王の誕生である。

自主的にレースをニュートラル化し、キンタナを待つ際に、集団の先頭を横並び走るデュムラン、ゲシュケ、テンダムの姿は荘厳だった。

この場は我々が仕切る。
明確なメッセージと姿は、世界中にサンウェブアシスト陣の名を轟かせたことだろう。

あの場に、デュムラン1人しかいなかったら、あまり示しがつかなかったように思われる。
ゲシュケとテンダムの存在は、とても重要だったのだ。

キンタナが無事に集団復帰を果たし、続く3級山岳からはオリカ・スコットとバーレーン・メリダが積極的に集団牽引を行い、サンウェブアシスト陣の仕事は終了。

デュムランは無事にメイン集団内でフィニッシュしたのだった。

高いモチベーションで臨んだクイーンステージ

逃げ切り狙いだけでやく、山岳賞争いでスカルポーニ追悼ポイント獲得の2倍キャンペーンが実施されたこともあり、序盤から凄まじいアタック合戦が勃発した。

大量30名弱の逃げが形成された。
前待ち作戦を狙うモビスターアシスト陣を監視するため、きっちりテンダムも逃げに乗った。

そして、メイン集団はサンウェブが牽いていた。
1級山岳モルティローロ峠を越えてからもサンウェブの牽引は続く。

今大会のチーマコッピ(最も標高が高い山岳)であるステルヴィオ峠では全開で集団を牽いた。

チャド・ヘイガ、プレイドラー、ゲシュケがその任を担っていた。
決して登りが得意ではない3名だが、非常によく働いていた。
気がつけば、モビスターのアシスト陣はメイン集団に残っていなかったからだ。

この日のヘイガ、プレイドラー、ゲシュケらの力は、モビスターの山岳アシストであるビクトール・デラパルテ、ホセ・エラダ、ホセホアキン・ロハスらを上回っていたのだ。
もはや、本ステージにかけるモチベーションの差にも見えた。

ステルヴィオ峠を越える頃には、サンウェブアシスト陣は全員仕事を終えて遅れていた。
あとは、適切なタイミングで逃げに乗っているテンダムがデュムランのサポートをすれば完璧だった。

ところが、冒頭に述べたとおり、ステルヴィオ峠を降りた頃には、デュムランのお腹は限界を迎えていた。
世界中が見守るなか、沿道でジャージを脱ぎ捨て、勢いよくビブショーツを下ろして、王は用を足していた。

テンダムは集団から遅れたデュムランを、2回目のステルヴィオ峠の登り口までアシストして力尽きていった。

デュムランは、調子悪かったのはお腹だけで、脚はよく回っていたため、キンタナたちから2分程度タイムを失うにとどめることが出来た。
だが、よほど悔しかったようで、表彰台では終始無表情でシャンパンファイトをせずに降段していた。

ひとまず、この日のサンウェブアシスト陣に落ち度は全く無かった。

総評

高い士気のためか、本来の実力以上を発揮している印象を受ける。
それだけに、腹痛によりデュムランがタイムを失ったことが士気にどう影響するか気になるところ。

とはいえ、サンウェブの明るい雰囲気であれば、デュムランさえもいじってネタにしている可能性はあるかもしれない。

最終週は、難関ステージが続く。
サンウェブアシスト陣の重労働もまだまだ続く。

Rendez-Vous sur le vélo…

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-コラム, ジロ・デ・イタリア2017