サイバナ

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コラム ジロ・デ・イタリア2017

サンウェブアシスト通信Vol.4〜ゲシュケの奮闘、だが欠けたピースは埋まらない〜

バッドデー。
全21ステージに及ぶグランツールでは、誰しもが必ず1日は経験すると言われているもの。

マッサージ受けた、ご飯も食べれてる、ちゃんと寝た、お通じも良好。
それでも、なぜか力が入らない。
脚が回らない。
という状況に陥ったら、それは間違いなくバッドデーだと言えよう。

トム・デュムランは、第16ステージでレース中にお腹を下してしまったために、2分近く遅れを喫してしまった。
だが、レース後には『脚はよく回っていたから、体調は問題ない』と言っていた。
つまり、バッドデーではない。

2分失ったとはいえ、デュムランの登坂力・TT力をもってすれば、まだまだセーフティと言えるリードではあった。
にもかかわらず、デュムランは失意のどん底にいるかのような表情を見せていて、「disappointed(失望した)」というフレーズを繰り返し使っていた。

今思い返すと、まだバッドデーが来ていないため、またタイムを失うかもしれない恐れがあったから、自分のミスで2分失ったことを悔やんでいたのかもしれない。

かと思えば、第18ステージでモビスター全力の攻撃をいなしたデュムランは、ライバルのニーバリとキンタナに対して「そんな走りでは勝てないよ?」というような挑発的なコメントを残していた。

この日も、デュムランは自分の身にまだバッドデーが来ていないことを自覚していたはずだ。
もしくは、自分自身のあまりの好調さに、もうバッドデーは来ないと安心してしまったのだろうか。

何にせよ、ニーバリとキンタナを挑発したことで、強烈なしっぺ返しを喰らうことになってしまった。

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モビスターお得意の集団分断作戦が決まる

スタート直後からデュムランの調子は悪かった。
普通にメイン集団についていくのも辛い状況だったのだ。

ダウンヒルで集団のスピードが上がった際に、少し楽をしたために集団の後ろに下がってしまった。
この隙を、モビスターは見逃さなかった。

アシスト総動員で集団のスピードを限界まで引き上げる。
バーレーン・メリダとFDJも協力して、一気に集団分断を引き起こした。

集団後方にいたデュムランは、モビスターの奇襲攻撃をまともに喰らってしまった。
サンウェブのアシスト陣が総出でデュムランをキンタナたちの集団に戻そうと、必死の追走を試みる。

質・量ともに勝るモビスター・バーレーン・FDJ連合に対して、サンウェブアシスト陣のみで対抗することは厳しい。
一人、また一人をアシストを失い、あっという間に全滅してしまった。

しかし、同じく取り残された同郷のステフェン・クライスヴァイクのロットNL・ユンボ、バウケ・モレマのトレック・セガフレード、そしてマリアビアンカを守るために先行するボブ・ユンゲルスを追いたいアダム・イェーツのオリカ・スコットの協力を得られ、なんとかキンタナグループに追いつくことが出来た。

ほとんどのチームがアシストをほとんど失うほど、ハイスピードで繰り広げられた戦いだったため、デュムランは周囲のサポートを受けながらも相当脚を使ってしまっていた。
ただでさえ、バッドデーなのに。

ペースを落としたメイン集団には、千切れていたモビスターとバーレーンのアシストたちが次々と復帰してくる。
しかし、サンウェブのアシストは戻ってこない。

小康状態となったメイン集団からは、次々に逃げるためのアタックがかかる。
中には総合で40分遅れているミケル・ランダも含まれており、40分以上離されてしまうとマリアローザを失いかねない状況だった。

だが、デュムランの周りにはアシストがいない。
誰一人として、前を追いたいチームはないため集団はまるでポタリングのような低速でノロノロ進んでいた。

遅いメイン集団に、ようやくサンウェブのアシストが一人戻ってきた。
ローレンス・テンダムだ。
サンウェブの中で、最も頼れる存在。

集団復帰に相当脚を使ったはずだが、全く休もうとせず集団の先頭で牽引する姿勢を見せた。
だが、40分は広がっても大丈夫なためゆっくりで大丈夫と、デュムランもしくはチームから指示があったようで、集団はスピードアップしなかった。

すると、ゲオルグ・プレイドラーとサイモン・ゲシュケも戻ってくる。
ようやく安心できる人数が揃ってきた。

結局、集団を全くスピードアップしなかったため、遅れたアシストが全員戻ってきた。

次の勝負どころは、1級山岳ピアンカヴァッロの登りだ。
良い位置で登り始めるために、まるでゴールスプリントのようなトレインが形成され激しいポジション争いが繰り広げられた。

サンウェブアシスト陣は、あまり良い位置にいなくて、デュムランは集団後方で登り始めた。
不調で脚が回らないことも影響しているかもしれない。

登りに入っても、デュムランのスピードは上がらない。
ギリギリ集団に食らいついているような状況だった。

だが、苦しいのは他のチームも同様で、デュムランが集団後方にいることに気付いても、モビスターやバーレーンは攻撃できなかった。

しかし、バーレーンのフランコ・ペッリツォッティが牽引を始めると、集団のスピードが上がる。
どんどん選手が振るい落とされるなかで、ついにデュムランが遅れ始めた。

ゲシュケがデュムランの前で懸命にアシストする。
本来であれば、ゲシュケは平均勾配10%近くある登りを集団と同じスピードでこなすことは出来ない。

だが、マリアローザの危機に際して、ゲシュケはリミッター解除をしたかの如く、猛烈な牽引を続けていた。
ステフェン・クライスヴァイクが遅れそうになるほどのスピードを出していた。

調子の上がらないデュムランにとって、ゲシュケの存在がどれほど心強かったことだろうか。
じりじりと集団からタイムが離されるものの、20秒程度に留めていた。

一番勾配が厳しい区間を過ぎたあたりで、ゲシュケは力尽きた。
フラフラの状態で、そのまま落車してしまうのではないかと思うほど力を出し尽くしていた。

あとはデュムランが単独で、キンタナたちから離されないよう必死のペース走行をする。

最終的に、キンタナからは1分9秒遅れてしまい、マリアローザも失ってしまった。

しかし、総合では38秒差の2位となっており、本調子のデュムランであれば最終日の個人TTで十分逆転出来るタイム差だ。

辛うじてマリアローザ戦線に残ることが出来たのは、序盤の集団復帰のために身を粉にして働いたサンウェブアシスト陣と、終盤のゲシュケの献身的なアシストのおかげだろう。
アシストが弱いと言われているサンウェブだが、この日の働きぶりは今大会で一番素晴らしかったと思う。

それでも、あえてタラレバを言わせていただきたい。
第9ステージでリタイアしたウィルコ・ケルデルマンがいたら、デュムランがマリアローザを失うことは無かっただろう。

ゲシュケが果たした役割は、本来山岳アシストがすることだ。
クライマーであるケルデルマンなら、デュムランを引き連れたままピアンカヴァッロの頂上まで駆け抜けていただろう。

この最終局面において、ケルデルマンの不在が致命傷になりかねない状況が訪れた。
だが、ゲシュケを始めとするサンウェブアシスト陣の奮闘により、辛うじて致命傷を免れることが出来た。

いよいよ第20ステージ。
泣いても笑っても最後の山岳ステージだ。

サンウェブアシスト陣にとっても、最後の仕事の日となる。

Rendez-Vous sur le vélo…

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-コラム, ジロ・デ・イタリア2017