サイバナ

これからサイクルロードレースの話をしよう。略して『サイバナ』。サイクルロードレースのレース結果やコラムなど、お届けします。

コラム ミラノ〜サンレモ2017

ペーター・サガン、ミラノ〜サンレモで見せたスターの宿命とは?

2017/07/13

ダゾーンはとうとう実況すら無くなった?!

ただでさえ英語実況のみの放送で、日本語実況に慣れ親しんだファンにとっては理解が難しくなっているにもかかわらず、英語実況さえ失われてしまった。
悲鳴にも似たダゾーンに対する阿鼻叫喚の嵐がtwitter経由で聞こえてきた。

あれ?去年のオリンピックだって実況無かったじゃないか。
と思ったが、ダゾーンは有料コンテンツだ。
NHKが無料でストリーミング放送を公開していたのとは訳が違う。

それに、昨年まではJ Sportsで楽しいロードレースが見れていたじゃないか。
ダゾーンの不出来な放送は、許しがたいものなのだろう。
憤る気持ちはわかる。

だけれども、J Sports側で考えてみると、レース主催者から放映権を買い、日本語実況をつけて放送するコストが見合わないために、ミラノ〜サンレモやジロ・デ・イタリアの放送を見送ることになった。とも言える。
悲しいけど、これ経営なのよね。
シビアな経営判断の煽りをくらうのは消費者だ。

見方を変えればサイクルロードレースに限らず、スポーツ中継そのものが、新たな時代の到来を迎えている。
いまは、その黎明期と思いたい。

黎明期には様々な混乱もあるし、消費者にとっても不都合も起きる。
だが、進化の過程と捉えて大目に見ていこうではないか。

個人的にはJ Sportsオンデマンドとダゾーンに課金して、サイクルロードレースを楽しみにしているファンはここにいるぞとアピールし続けていきたい。
それに実況なしのレースも、英語実況のみのレースでも、事前に予習しておけば結構楽しめるものなんだぜ。

さて、肝心のミラノ〜サンレモは、世界チャンピオン・サガンが2位でフィニッシュする結果となった。
サガンはモニュメント全制覇の夢を掲げており、今シーズンの最重要目標の一つがミラノ〜サンレモだった。

集団スプリントの展開に持ち込んでも勝てた可能性は高かったが、サガンは自ら仕掛ける道を選んだ。

結果として、集団スプリントでは勝ちの目が0に等しかったミカル・クウィアトコウスキーに勝ちを譲ることとなる。

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ジュニア・U-23時代からのライバル

圧倒的な強さを誇るサガンに対して、クウィアトコウスキーは組織力と心理戦をもって対抗した。

チームスカイの徹底した集団コントロールにより、勝負どころのポッジオの丘までクウィアトコウスキーともう一人のエースであるエリア・ヴィヴィアーニを守ることが出来た。
そのヴィヴィアーニがメイン集団にいることで、クウィアトコウスキーに先頭交代を拒否する理由を与えた。
ジュリアン・アラフィリップも同じく、集団にはフェルナンド・ガヴィリアが控えている。
一方で、サガンのチームメイトで、スプリンターであるサム・ベネットはポッジオの丘では既に遅れていた。

サガンを先頭交代させずに、クウィアトコウスキーとアラフィリップは力を温存しながら最後のスプリント勝負に挑む。

ここでクウィアトコウスキーは高度な心理戦をサガンに仕掛ける。
ほんの少しだけ、サガンから距離をとったのだ。

サガンとクウィアトコウスキーは同い年だ。
ジュニア・U-23時代から同じレースを走る機会が多かったそうだ。
ゆえにサガンの癖や、心理をクウィアトコウスキーは誰よりも知っていたのだ。

スリップストリームの恩恵を受けるには、前の車体に近ければ近いほど効果が高い。
しかし、クウィアトコウスキーはあえて距離を開ける。
距離が開けば、サガンは必ずスプリントを仕掛けると見抜いていたのだ。

サガンは、当然のようにスプリントを開始する。
だが、それは予定よりほんのすこし早いポイントだっただろう。

クウィアトコウスキーも同じタイミングで全開のスプリントを始める。
脚を使い果たしてスピードが乗り切らないサガンとの距離を一気につめて、フィニッシュラインの寸前でサガンをかわして優勝を掴んだ。

ジュニア時代からサガンを良く知るクウィアトコウスキーにしか出来ない、非常に高度な勝利だった。

サガンがスターたる所以

ゴールスプリントでバイクを投げ出したサガンは、珍しくバランスを失いよろけるシーンを見せた。

それほどまでに、このレースで全力を出し切り、消耗し果ててしまったのだろう。

だが、サガンはフィニッシュ後、優勝したクウィアトコウスキーと握手して健闘を称え合った。
自身のTwitterでは「惜しいレースだったね」とシンプルなツイートをしていた。

悔しくないはずがない。
しかし、スーパースターたるサガンには、ハンドルを叩いて悔しがるわけにはいかなかった。

サガンは強い。
誰も知る事実である。

ゆえに、サガンへのマークは厳しくなる一方だ。

ポッジオで3人が抜け出した時も、普通なら逃げ切るために3人はローテーションするはずである。
しかし、サガンなら集団から逃げ切るだろう。
仮に逃げ切れなくとも、サガンと一緒に先頭交代したら絶対に勝てない。
というように、サガンはあらゆる状況で不利に立たされることが多くなるだろう。

今年のミラノ〜サンレモは、極めて現代的なレースだと思った。

「アタックした選手が勝つ」
これがサイクルロードレースファンを最も沸かせる勝ち方だ。

アタックしたサガンを徹底マークして、最後の最後でスプリントでまくる戦いでは不満を覚えるファンがいても仕方ない。

もちろん、勝ったクウィアトコウスキーは凄いよ。
彼もストラーデ・ビアンケでは自ら攻めて、勝利を掴んだわけだし、高度な心理戦は見応えがあった。

とはいえ過去は、強者と強者同士による個の戦いだったが、いまはエースを介したチーム同士の戦いへと変化している。

実際問題、サガンが勝ったとしたら、サガン凄い!とはなるが、ボーラ・ハンスグローエのチーム力を称える人は少数だろう。
個人の勝利に重きをおかず、チームの勝利に最大限フォーカスしたVelonのHammerシリーズの誕生は、時流に乗っているのかもしれない。

時代が変われば、戦略も戦術も変わる。
何に価値を置くかも変わる。

少なくともレースをつまらなくしようと思って走ってる選手はいない。
いかなるときもプロとして勝利を求めて走っているだろう。

ならば、これらの変化は進化ではなかろうか?

サガンは、自身のInstagram上で
『2位は惜しかったけど、スペクタクルだったでしょ?
レースはスペクタクルな方がファンにとっていいんだよ』
と書き込んでいた。

サガンは圧倒的な個の力を持ちながらも、自転車レースが面白くなれば良いという視点でレースをしているのだ。
内心では悔しいんだろうけど、やっぱりカッコよすぎるよ。

新たな時代を切り開くスター選手として、矛盾するようだけど最強を目指してほしい。
ミラノ〜サンレモの勝利は来年におあずけになったけど、次はパリ〜ルーベがある。

モニュメント全制覇するその日まで、サガンを追い続けたい。

Rendez-Vous sur le vélo…

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