サイバナ

これからサイクルロードレースの話をしよう。略して『サイバナ』。サイクルロードレースのレース結果やコラムなど、お届けします。

クリテリウム・デュ・ドーフィネ2018 コラム

タオ・ゲオゲガンハートは、フルームの後継者になり得るのか?

いよいよ集団は、決戦の地ラルプ・デュエズに到達。登坂距離13.8km・平均勾配8.1%の今大会最後の勝負どころである。

集団のリーダーチームであるチームスカイが引き続きコントロールしていた。先頭ではトーマス・ピドコック(イギリス)がペースメイクを行い、集団の絞り込みをかけていく。

仕事を終えたピドコックに代わって、ケニー・エリッソンド(フランス)が強烈なペースアップを開始。すると、43歳のアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスターチーム)がたまらず遅れを喫してしまった。

フィニッシュまで残り7km地点、今シーズン、モビスターへ電撃移籍を決めたエガン・ベルナル(コロンビア)が満を持してアタック。猛烈な加速で一気に集団を引き離した。

この動きに反応したのはマイヨジョーヌを着るタオ・ゲオゲガンハート(イギリス、チームスカイ)だった。1分6秒遅れの総合3位につけているパヴェル・シヴァコフ(ロシア、アスタナプロチーム)も食らいつく。昨年大会に総合優勝したトム・デュムラン(オランダ、チームサンウェブ)はここで脱落。早くも総合上位3選手による三つ巴の戦いに持ち込まれた。

22秒差の総合2位につけるベルナルだが、残り5km地点でマイヨジョーヌグループとのタイム差は30秒まで開いていた。2年ぶりの総合優勝に向けて、快走を見せていたが、ここからマイヨジョーヌが驚異の追い上げを見せる。

残り4km地点でゲオゲガンハートはシヴァコフを振り切ると、単独でベルナルを追走。2人のタイム差は徐々に縮まり、残り1kmのフラムルージュが見えるポイントでとうとうベルナルの背中を捉えた。

後がないベルナルは、アタックを試みるもののゲオゲガンハートを振り切ることはできない。すると今度はゲオゲガンハートがカウンターアタックを仕掛けると、ベルナルは反応できず。

勝利を確信したゲオゲガンハートは右手を突き上げながらフィニッシュ。自身初のツール・ド・フランス総合優勝を決定的なものとした。

◇         ◇

以上は「5年後のツール・ド・フランス」と題した筆者の妄想である。

当初は、チームスカイの絶対的エースに君臨するベルナルを、ゲオゲガンハート、シヴァコフ、そしてベテランになったエリッソンド、イギリス期待の新星ピドコックといったメンバーが支えるみたいなストーリーを思い描いていた。

しかし、ゲオゲガンハートのことを考えれば考えるほどに、アシストに収まる器ではないと思い至ったのだ。それはシヴァコフも同様である。

となると、チームスカイに3人ものリーダーを擁する状況はいつか破綻すると思い、ベルナルはナイロ・キンタナの後釜としてモビスターへ。シヴァコフはロシアとゆかりのありそうな(カチューシャではなく)アスタナへ移籍させた方が、自分のなかではリアリティのあるストーリーになった次第である。

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ツアー・オブ・カリフォルニア、クリテリウム・デュ・ドーフィネの走りを見たことで、筆者のゲオゲガンハートに対する認識は、チームスカイの有望若手選手から未来のグランツールチャンピオンへと変わったのだ。

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初期はパンチャー寄り、今はTT力が向上したオールラウンダー

まずはゲオゲガンハートのキャリアを少し振り返ってみたいと思う。

・2013年(18歳)
パリ〜ルーベ・ジュニア3位
ツアー・オブ・イストリア(ジュニア)総合優勝
ジロ・デッラ・ルニジアナ(ジュニア)総合優勝

・2014年(19歳) ビッセル・ディベロップメントチーム(現ハーゲンズベルマン・アクシオン)に加入
リエージュ〜バストーニュ〜リエージュU23(1.2U)3位
ツアー・オブ・カリフォルニア(2.HC)総合75位
ツール・ド・ラヴニール(2.Ncup)総合10位
ツアー・オブ・ブリテン(2.HC)総合15位

・2015年(20歳)
リエージュ〜バストーニュ〜リエージュU23(1.2U) 3位
ツアー・オブ・カリフォルニア(2.HC)総合13位、新人賞2位
USAプロチャレンジ(2.HC)総合7位、新人賞

・2016年(21歳)
トロフェオ・ピーヴァ(1.2U)優勝
ツアー・オブ・カリフォルニア(2.HC)総合12位、新人賞2位
ツール・ド・ラヴニール(2.Ncup)総合6位

・2017年(22歳) チームスカイに加入
ツール・ド・ヨークシャー(2.1)総合8位
ツアー・オブ・カリフォルニア(2.WT)総合8位
ツール・ド・スイス(2.WT)総合14位

・2018年(23歳)
ツアー・オブ・カリフォルニア(2.WT)総合5位
クリテリウム・デュ・ドーフィネ(2.WT)総合13位

まず、目につくのがワンデーレースで良い結果を残していることだ。ドーフィネでのゲオゲガンハートの走りぶりを見る限りではクライマーに見えるのだが、キャリア初期の頃はパンチャー的な脚質も持ち合わせていたことがわかる。

2014年ツアー・オブ・ブリテン総合15位は、10代の成績としてはHCクラスに昇格後最上位の成績である。

そして2014年以来毎年出場しているカリフォルニアでは、年々成績を向上させ、今シーズンは総合優勝したベルナルのアシストをしながら自身も5位に入った。

それよりも注目ポイントは、個人TTの成績である。2014年以降の個人TTステージの順位、レース距離、平均スピード(トップタイムのスピード)は次のようになっている。

2014年:80位、20.1km、45.395km/h(51.760km/h)
2015年:17位、10.62km、48.579km/h(50.908km/h)
2016年:22位、20.3km、47.362km/h(50.192km/h)
2017年:23位、24km、48.841km/h(50.615km/h)
2018年:3位、34.7km、50.391km/h(51.050km/h)

このように今年から急激にTT能力の向上が見られたのである。

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ゲオゲガンハートのヒルクライムでの走り方は、基本的にシッティングのまま高回転でハイペースを刻むスタイルである。いわゆるペース走行と呼ばれるような、TTスペシャリストたちによく見られる走り方である。

ベースとなるTT力が向上したことで、高速ヒルクライムが可能になったのだ。

かつてのツールで、フルームの前をひいていたゲラント・トーマスのように、ドーフィネではトーマスの前をゲオゲガンハートがひいていた。

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さらに遡れば、フルーム自身もブラッドリー・ウィギンスのために前をひいていた選手である。

初グランツールはブエルタか

ツールへの出場の期待感も高まったゲオゲガンハートだが、今シーズンはツールへの出場はないとのことだ。そのかわり、8月のブエルタ・ア・エスパーニャへの出場が最大の目標となっているそうだ。

ブエルタに出場するチームスカイのグランツールレーサーというと、ミカル・クウィアトコウスキーとダビ・デラクルスが有力であるが、絶対的エースとはいえないだろう。そしてフルーム、プールス、トーマス、ベルナルが出場する可能性は低い。

となると、ゲオゲガンハートは誰かのアシストというよりは、自身の総合成績を狙える立場にあるといえよう。

なお、フルームが最初に台頭した2011年ブエルタのときは26歳だった。同様の躍進を23歳にして初グランツール出場となるゲオゲガンハートに期待するのはさすがに酷な話かもしれないが、それだけの可能性を秘めているともいえよう。

逸材はベルナルだけじゃない。タオ・ゲオゲガンハートこそ、フルームの真の後継者になり得る逸材ではないだろうか。

Rendez-Vous sur le vélo…

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-クリテリウム・デュ・ドーフィネ2018, コラム