サイバナ

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その他レース2017 コラム

アレハンドロ・バルベルデ、天衣無縫の独走劇。70km単独逃げ切りが意味するものとは?

2017/07/13

NIPPOヴィーニファンティーニ所属の"寿司ドラゴン"こと小林海が、興味深いツイートをしていた。

イタリアのワンデーレース、トロフェオ・ライグエーリアに出場した際に、感じたことのようだ。

ミラノ〜サンレモ、ロンド・ファン・フラーンデレン、パリ〜ルーベ、リエージュ~バストーニュ~リエージュ、イル・ロンバルディア。
この5つのレースはワンデークラシックの中でも特別で「モニュメント」と呼ばれている。
歴史があり、格式の高いレースでの勝利は、他のレースでの勝利とは比べ物にならないほど価値が高い。
ゆえに、プロサイクリストはモニュメントでの勝利を夢見て、日夜トレーニングに励むのである。

モニュメントのうち、イル・ロンバルディアを除く4レースは、3月から4月にかけて開催される。
人生をかけてモニュメントでの勝利を渇望するライダーたちは、シーズン前半と言えども、3月から4月にかけてトップコンディションに持っていきたいのだ。

同様に、ジロ・デ・イタリアに照準を合わせている選手は、5月に向けて。
ツール・ド・フランスに照準を合わせている選手は7月に向けて、トップコンディションに持っていけば良いので、この季節のレースでは目標の違う選手たちによってコンディションにバラつきがある。

モニュメントでの勝利を狙う選手をアシストする選手たちもまた、高いパフォーマンスを発揮するためにコンディションを上げているはずである。
そのようなアシスト選手たちの高いパフォーマンスを目の当たりにして、小林は驚いたのだろう。

ヨーロッパのワールドチームの選手たちの基準の高さに直接触れることは、さぞかし良い経験となっていることだろう。

一方でスペインでも、クラス1のワンデーレース「ブエルタ・ア・ムルシア」が開催された。
本レースで、ムルシア出身のアレハンドロ・バルベルデが勝利した。

ただの勝利ではなく、ラスト70kmを単独で逃げ切っての勝利である。

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バルベルデの春先の目標は?

バルベルデの今シーズンの目標は、ツール・ド・フランスでナイロ・キンタナをアシストしながら総合上位に入ることと、ブエルタ・ア・エスパーニャで総合優勝を狙うことだろう。

バルベルデは昨シーズン、ジロ・ツール・ブエルタと、3つのグランツールに出場し、それぞれ総合3位・6位・12位と、上位でフィニッシュしている。
常人では考えられないタフネスさも、バルベルデの長所の一つだ。

ツールが始まる7月までおとなしくレースをするはずがない。
今シーズンはジロに出場しない分は、アムステル・ゴールドレース、現在3連覇中のフレーシュ・ワロンヌ、モニュメントのリエージュ~バストーニュ~リエージュの3レース、いわゆる「アルデンヌ・クラシック」での優勝を目標してくるだろう。

アルデンヌ・クラシックは4月下旬に行われるので、まだ2ヶ月の猶予がある。
だが、3月から4月にかけてワールドツアーのステージレースであるパリ〜ニース、ボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャ、ブエルタ・アル・パイス・バスコに出場予定であり、早めにコンディションを上げていく必要もある。

バルベルデはチャレンジ・マジョルカでシーズンインし、第2戦のトロフェオ・アンドラトクスでは2位に入り、シーズン初戦から上々の仕上がりを見せていた。
ムルシアは、マジョルカ以来2週間ぶりのレースだった。

ブエルタ・ア・ムルシアには6つのワールドチームが出場

ワールドチームはモビスター、カチューシャ・アルペシン、オリカ・スコット、バーレーン・メリダ、ボーラ・ハンスグローエ、ロット・ソウダルの6チームが出場している。
特にオリカ・スコット、ボーラ・ハンスグローエ、ロット・ソウダルは、春のクラシックでエースを務める選手や、重要なアシストが含まれるクラシック戦線の主力メンバーを出場させている。

ブエルタ・ア・ムルシアには中盤に、アレド峠・ベルメホ峠・ヘバス峠の3つの登りが立て続けに現れる。

特にベルメホ峠は登坂距離11.2km・平均勾配5.9%と、ワンデーレースにしては長いヒルクライムが組み込まれている。

アレド峠でチームUKYOのオスカル・プジョルがアタックが単独アタックを成功させ独走を開始するが、モビスターのルーラー陣が集団を牽き、アレド峠を下ったあたりでプジョルは吸収された。

カウンターアタックを許さないモビスターによる高速牽引を経て、フィニッシュまで70kmを残した、このベルメホ峠の登り口で、バルベルデがアタックを仕掛けた。
マジョルカで順調な仕上がりを見せていたバルベルデのヒルクライムは鋭く、反応できる選手はほとんどいなかった。

バーレーン・メリダのヨン・イサギーレが追走を試みるも、この日が開幕戦のヨン・イサギーレにとって、バルベルデのスピードは速すぎた。
結局、誰もバルベルデに追いつけず、単独でのアタックが決まった。

ベルメホ峠の頂上付近は深い霧に覆われており、コースの先が見えにくい状態でのダウンヒルは危険であった。

追走集団は濃霧で視界不良のためか、ダウンヒルでバルベルデとのタイムを縮めることが出来ない。

3つ目のヘバス峠をクリアした時点で、バルベルデは後続集団に3分もの差をつけていた。
単騎のバルベルデに対し、フィニッシュまで下り基調で30kmあるため、追走集団がバルベルデを捉えることはまだまだ可能な範囲だと思われた。

しかし、バルベルデとの差は全く縮まらない。
フィニッシュまで残り5km地点でもなお、バルベルデと集団との差は2分以上あった。

そうして、2分10秒差をつけてバルベルデは勝利した。

この勝利は、ただの勝利ではない

リザルトを見る限り、バルデルデに次いで第1集団でフィニッシュした選手は22名いた。

カチューシャ・アルペシンは4名、ボーラ・ハンスグローエは2名、オリカ・スコットは1名、バーレーン・メリダは2名、ロット・ソウダルは3名と、
モビスター以外のワールドチームでは計12名残っていたのだ。

この12名による追走を、70km近くにわたって逃げ切ったことも驚きだが、
ラスト30kmの下り基調の平坦路で、わずか50秒しか差を詰めさせなかったバルベルデの走りは驚異的だ。

しかも、バルベルデは力を出し尽くして勝利した、という雰囲気はなく、どことなく余力を残しているようにも見える。
自然にアタックして、自然に勝利した、まさに天衣無縫の独走劇だった。

下位カテゴリーのワンデーレースとはいえ、ライバルチームの選手たちが仮に調整段階だったとしても、ワールドチームの集団追走を振り切るほどの仕上がりの良さは素晴らしいの一言に尽きる。

少なくともパリ〜ニースの優勝候補の筆頭であるし、今年もアルデンヌ・クラシックでの好走が期待できる。

フレーシュ・ワロンヌ4連覇、自身4度目のリエージュ~バストーニュ~リエージュ制覇に向けて、視界は良好だ。

あとは、無事にパリ〜ニースなどのステージレースをこなしてくれることを祈るばかりである。

Rendez-Vous sur le vélo…

・ブエルタ・ア・ムルシアのハイライト動画(ロングバージョン)

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