2017年のワールドツアー初戦となるツアー・ダウンアンダーがいよいよ開幕します!
つかの間のオフシーズンから明けたばかりのレースということもあり、レースの難易度は高くはありません。
平坦ステージ中心に、スプリンター・パンチャー・クライマー全ての選手に総合優勝の可能性のあるレースです。
レースプレビューをかねて、優勝予想をしたいと思います。
まずは、ざっくりと各ステージの紹介
第1ステージ、アンレー〜リンドック、145km
途中アップダウンを挟むものの、難易度は低い丘が続きます。
フィニッシュ前は下り基調ということもあり、ハイスピードでの集団スプリントが予想されます。
第2ステージ、スティアリング〜パラコーム、148.5km
まずは内陸の丘陵地帯を5周走ります。絶え間なくアップダウンが続きますが、フィニッシュに向けて一旦下りと平坦を挟むので、レースは落ち着くと思います。
そして、フィニッシュ地点である標高400mの山を登る、パンチャー向きのステージレイアウトになっています。フィニッシュ前1.5kmで100m登るので、約6〜7%の登りスプリントとなるでしょう。
第3ステージ、グレネルグ〜ビクターハーバー、144km
コースプロフィールはゴツゴツしていますが、10kmで200m登る程度なので、ほとんど平坦ステージだと言えましょう。
しかし、フィニッシュ前の周回コースでは、一気に100m登るパンチ力のある坂を4回通ることになるので、ピュアスプリンターが生き残るのは大変なことになるでしょう。
第4ステージ、ノーウッド〜キャンプベルタウン、149.5km
内陸部の丘陵地帯を走りますが、アップダウンはそこまで大きくはないです。
フィニッシュ地点に向けて一旦下り基調となるので、集団スプリントになる可能性も十分にあります。なお、フィニッシュ前はわずかに登り基調です。
第5ステージ、マクラーレン・バレ〜ウィランガヒル、151.5km
決戦の地・ウィランガヒルへのフィニッシュとなる最大の山場です!
ウィランガヒルへの登りは全長約3km、平均勾配は8%ほどです。決して楽ではない登りにピュアスプリンターはまず生き残れません。
クライマーとパンチャーによるヒルクライム対決を制するものは誰か、そしてスプリンターやパンチャーが築いたリードを、クライマーたちは崩すことが出来るのでしょうか!
第6ステージ、アデレード〜アデレード、90km
アデレードの中心地で、1周4.5kmの周回コースを20周します。
多少のアップダウンがある程度のコースなので、集団スプリントになることでしょう。そして、第18回目のダウンアンダーの総合覇者が決定します!
総合優勝者を予想
ピュアスプリンター、パンチャー、クライマーの観点から総合優勝者を予想してみます。
中間スプリントの上位3名には、1位3秒・2位2秒・3位1秒のボーナスタイムが、そしてステージ上位3名にも、1位10秒・2位6秒・3位4秒が設定されています。ボーナスタイムを巡る攻防も重要です。
なお、スタートリストはこちらを参照ください。
※スタートリスト→Tour Down Under – Startlist
ピュアスプリンターの総合優勝はさすがに厳しいか
スプリンター有利な1・4・6ステージのゴールスプリントで勝利を重ねることが出来れば、最大で30秒のアドバンテージを手にすることが出来ます。
それでも、3km以上あるウィランガヒルの登りでリードを守ることは難しいでしょう。
近年のダウンアンダーは登りステージの重要度が上がったこともあり、ピュアスプリンターによる総合優勝は2010年のアンドレ・グライペル以来ありません。
ピュアスプリンターでは、カレブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット)、マーク・レンショー(オーストラリア、ディメンションデータ)、ニッコロ・ボニファツィオ(イタリア、バーレーン・メリダ)、ダニー・ファンポッペル(オランダ、チームスカイ)、ニキアス・アルント(ドイツ、チーム・サンウェブ)あたりの名前があげられますが、わたしが注目している選手はベン・スウィフト(イギリス、UAEアブダビ)です!
チームスカイ時代は、春のクラシックレースで山岳アシストに近い動きを任されることもあったので、登る力は結構あるはずです。
UAEアブダビというゴタゴタあった新チームのデビュー戦を盛り上げる意味でも、スウィフトの動きには注目したいところです。
パンチャーではサガンとゲランスが有力か
集団スプリントでそつなく上位に食い込むことが出来る、もしくは逃げに乗るのがうまくて、ある程度登りもこなせる選手が、最も総合優勝に近いと言えましょう。
近年の総合優勝者は、ほとんどがパンチャー的な脚質を持った選手たちです。サイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・スコット)は通算4度の優勝を誇り、前年度の総合優勝者でもあります。
しかし、今年のダウンアンダーには世界チャンピオンのペーター・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)が参戦します。
実績・実力から言えば、今大会最有力優勝候補です。しかし、ここはヨーロッパから12時間ほど時差があり、最高気温40度に達する灼熱の地オーストラリアでのシーズン初戦です。
シーズン前半戦のサガンの目標は、春のクラシックでの勝利でしょう。ダウンアンダーにピークを持ってくるとは思えません。
となると、地元オーストラリアでの勝利は、長いシーズンを通してもかなり重要度の高いオーストラリア人であるゲランスのモチベーションは非常に高いと言えましょう。
わたしは、パンチャー枠ではゲランスが最有力候補であると推したいです!
同じオーストラリア人枠では、2015年総合優勝のローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング)にも衆目ですが、チームメイトのリッチー・ポートのアシストに回るのではないかと思います。なお昨年はポートが総合2位で、デニスは総合23位でした。
他には、逃げのスペシャリストであるトーマス・デヘント(ベルギー、ロット・ソウダル)、2013年のダウンアンダー覇者であるトムイェルテ・スラフテル(オランダ、キャノンデール・ドラパック)、2014年総合3位&ステージ1勝のディエゴ・ウリッシにも注目したいです。
個人的に楽しみにしている選手はペトル・ヴァコッチ(チェコ、クイックステップ・フロアーズ)です。クイックステップらしい、我武者羅な攻撃性が売りの選手なので、番狂わせを演じる期待感が持てます。
そして、何と言っても我らが新城幸也の存在を忘れてはなりません!
ダウンアンダーはユキヤの脚質に合ったコースと言えましょう。もしかしたら、ボニファツィオで獲りに行くステージは、アシストに回るかもしれませんが、それ以外のステージではジョヴァンニ・ヴィスコンティと共に自由に攻撃が許される選手ではないかと思います。
少なくともステージ優勝は十分に狙えます!是非とも、アタックしてほしいです!
クライマーは激戦区、ウィランガヒルでの爆発力が問われる
2015年、当時チームスカイのリッチー・ポートが、ローハン・デニスを下してステージ優勝をあげた際は、ウィランガヒルの登りの後半はほとんどダンシングで攻撃をし続けるような激しいクライムを見せていました。
それほどまでに苛烈なアタックを成功させても、TTスペシャリストのデニスに対して9秒差しかつけられませんでした。
デニスの粘りを褒めるべきでしょうが、短いウィランガヒルの登りでは決定的な差をつけることはなかなか難しいです。ゆえにポートのように爆発力のあるクライミング能力が問われます。
というわけでリッチー・ポートはやはり総合優勝の最有力候補の一人であると言えましょう。ウィランガヒル3連覇中の爆発力に加え、地元オーストラリアの大声援を受けて、ポート本来の実力を存分に発揮してほしいものです。
ただ、今年はポートの独壇場にはならないと思います。ポートに引けを取らない爆発力のあるクライミングを武器とする選手が参戦するからです。
その選手の名は、エステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・スコット)です。昨年のブエルタ、イル・ロンバルディアで見せた終盤の勝負どころでの絶妙すぎるタイミングでのキレ味鋭いアタックに加え、クライマーらしからぬスプリント力も持ち合わせています。
チャベスのオリカ・スコットもまた、地元オーストラリアのワールドチームであり、沿道の観客は大声援をチャベスにも送ってくれることでしょう。ポートのウィランガヒル4連覇を阻むとしたら、チャベスではないかと予想しています。
昨年のウィランガヒルのステージ2位は、セルジオルイス・エナオモントーヤ(コロンビア、チームスカイ)でした。ポートの猛加速に唯一ついていくことの出来た選手です。しかし、昨年のリオ五輪で落車リタイアして以来のレースとなり、ブランクが気になるところです。実はそのブランクは、ポートも同様です。
そう考えると、いよいよチャベスが大本命ではないかと思うのです。
ただし、他にも強力なライバルたちがひしめいています。
エナオモントーヤのチームメイトであるゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)です。昨年はウィランガヒルステージで失速し、総合39位と奮いませんでした。ダウンアンダーの次戦のボルタ・アオ・アルガルベ、その次のパリ〜ニースと連続で総合優勝しているだけに春先にコンディションを上げてレースに臨んでいるはずです。
今年はツールではなく、ジロにトップコンディションを持ってくるよう調整するはずなので、ダウンアンダーからトーマスのパフォーマンスには期待が持てるのではないかと思います。
ダウンアンダー初出場となるジャンルーカ・ブランビッラ(イタリア、クイックステップ・フロアーズ)も、要注意人物です。ブランビッラも傑出したアタッカーで、逃げに乗ってスプリントポイントを稼ぎながら、ウィランガヒルでも上位フィニッシュが可能な登坂力も持ち合わせています。
ロバート・ヘーシンク(オランダ、ロットNL・ユンボ)も楽しみな選手です。2014年のウィランガヒルステージは、ポートに14秒遅れの4位に入り、総合6位でした。当時よりも体調面の不安が無くなった今のヘーシンクの方が調子は良いと思います。十分、総合優勝を狙える実力者です。
他には、昨年のウィランガヒルステージ3位に入り総合5位だったマイケル・ウッズ(カナダ、キャノンデール・ドラパック)、同じく昨年のウィランガヒル7位&総合7位のドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、AG2R)、昨年のウィランガヒル9位だったヤルリンソン・パンタノ(コロンビア、トレック・セガフレード)にも注目です。
若手で注目選手は3名います。
2015年ツール・ド・ラブニール総合優勝のマルク・ソレール(スペイン、モビスター)、2016年ツアー・オブ・ノルウェー新人賞のオドクリスティアン・エイキング(ノルウェー、FDJ)、2016年ツアー・オブ・ユタ総合優勝のラクラン・モートン(オーストラリア、ディメンションデータ)が、どれくらい走ることが出来るかも抑えておきたいところです。
未だかつてないほどに有力選手が揃ったダウンアンダー
例年は、シーズンインのレースとして、アルゼンチンで行われていたツール・ド・サンルイスに参加していた選手が多かったのですが、昨年限りでレースが中止となってしまいました。
また、2月に中東での大きなレースが続くことから、ツアー・ダウンアンダーを開幕戦に選ぶ選手が例年より増えている印象です。
さて、肝心の総合優勝予想を発表します!
総合優勝は、ずばり”エステバン・チャベス”です!
総合2位はサイモン・ゲランス、総合3位はリッチー・ポートというオリカワンツーフィニッシュを予想します。
心情的には、リッチー・ポートを総合優勝に推したいのですが、ポートはリオ五輪以来のレースであることと、チャベスの脚質に非常に合っているレースであることから、チャベス優勝と予想しました。
チャベスはツール・ド・フランス総合優勝に向けて、まだまだ調整の段階とは思いますが、キレ味鋭いクライムと力強いスプリントでウィランガヒルを制して、総合優勝するのではないかと思います。
ゲランスは直前の国内ロード選手権2位と、仕上がりは良さそうなので、やはり期待が持てると思います。
なお、山岳賞はトーマス・デヘント、ポイント賞はペーター・サガン、前哨戦のピープルズ・チョイス・クラシックはカレブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット)と予想しておきます。
サガンは、何だかんだでほぼ全てのステージで表彰台登る勢いで走りそうですが、ウィランガヒルの登りでは、さすがに失速するのではないかと見ています。というよりは、ウィランガヒルでもサガンと良い勝負をされては、クライマーの名が廃るので、クライマー陣にはサガンを振り切るほどの激しい戦いをして欲しいという願望が強いですね。
サガンには月末のカデルエヴァンス・グレートオーシャンレースで圧倒的な強さを見せてほしいなと思っています。
あと、ユアンには活躍して欲しいです!
もはや、当たるも八卦、当たらぬも八卦ですが、予想しながら観戦するのは楽しいので良しとします。
なお、日本での放送はJ SPORTS オンデマンドでライブ中継があります。(※ただし、英語実況のみとのこと)