超大型台風21号が日本列島に近づくなか、ジャパンカップサイクルロードレースは開催された。
台風21号の強風域直径は2200kmあり、観測史上歴代5位の大きさだった。
強風と大雨の影響で、日本各地でスポーツ試合やお祭りなどのイベントが中止となっていた。
千葉県で開催されていた男子プロゴルフ「ブリジストンオープンゴルフトーナメント」の最終日は中止。理由はコンディション不良、選手やギャラリーの安全が確保できないとのことだった。
広島県で開催予定だったプロ野球クライマックスシリーズの第4戦は21・22日と2日連続で雨天中止となっていた。
三重県で開催予定だった全日本フォーミュラ選手権最終戦・鈴鹿グランプリは22日の決勝レースが中止。代替レースは開催されずに、シーズン王者が決定された。
京都三大祭の一つである時代祭は29年ぶりに中止。天候不良が原因となる中止は初めてとのことだった。
ふじさわ江の島花火大会は開催日と21日と予備日の22日ともに中止となった。
このように西日本だけでなく、関東でもイベントが中止となり、家屋浸水の被害も起きるほどの天候不良にもかかわらず、ジャパンカップサイクルロードレースは、22日の本戦のレースのみ周回数が14周から10周に減ったこと以外は、ほぼ予定通りに開催された。
控えめにいって狂っている。
走る選手も選手だし、レース決行を決める主催者も主催者だし、何よりも大雨が予想されるなかでも喜び勇んで観戦に訪れる多くのファンから一番多くの狂気を感じる。
かくいうわたしもその一人である。
2016年のジャパンカップの観客動員数は2日間を通じて13万5千人だったとのことだ。
2017年は現地で観戦した印象では、少なくともその半分以上の人々が訪れていたように思える。
つまり、豪雨のなかでも7万人近い人々がレースを観戦し、熱狂したのだ。
コースが覆われるほどの雪でも降らない限り、サイクルロードレースは開催される。
ゆえに、豪雨のなかでの観戦にあたって、防水対策を整えることは非常に重要なことだ。
自分なりに対策をして観戦に臨んだものの、不十分な点も多々あった。
また何年後に訪れるかもしれない、雨天観戦対策の備忘録を残しておきたいと思う。
雨天時に役に立ったもの
クロックスのレインブーツ
間違いなく、今回の観戦グッズMVPといえる逸品だ。
オシャレは足元から、などという言葉もあるが、雨対策も足元からだといえよう。
ゴム製のブーツは、一切の水の侵入を許さない。
どれだけ雨に濡れようとも、どれほどの水たまりに脚を突っ込もうと、ブーツ内は快適なままだ。
クロックスのレインブーツは、ソールとインソールがクロックスのサンダルのものを継承しており、とても歩きやすい。
おもったよりも柔らかいゴム製ブーツとなっているため、足首も屈折させやすいことも歩きやすさに拍車をかけている。
そのため特別に疲れやすいということもなかった。
体感的には、普段履いているスニーカーで歩き回ったときと同じくらいの疲労感だった。
とはいえ、さすがに自転車に乗ってペダルを漕ぐ動作に適しているとはいえなかった。
クロックスのレインブーツを履いたまま、ロードバイクに乗ってジャパンカップ フリーランに参加したものの、上り坂でダンシングはできなかった。
登山用の本格的なレインブーツなどに比べて、クロックスのレインブーツは非常に安い点も重要だった。
年にそう何回も履くことはないだろうし、ましてやサイクルロードレースの雨天観戦対策に投資するとなれば、人によっては数年に1回活用する機会があるかないかといったところだ。
ならば、できるだけコストは下げたいところなので、クロックスのコスパは最高だった。
当方、普段履いている靴のサイズは25cmまたは25.5cmであることが多いが、このレインブーツは26cmのものを選んだ。
後述する厚手のソックスを履く前提で大きめなサイズを選んだが大正解だった。
モンベル メリノウール トレッキングソックス
絶賛のクロックス レインブーツの中に履いていった靴下は、モンベルのメリノウール製の厚手の靴下だった。
いくら外から水が入ってこないとはいえ、長時間歩いていれば足汗で蒸れるものである。
それに、いくら動きやすい柔らかめのゴムとはいえ、くるぶしや足首がゴムに擦れ続けることで痛くなることもあるだろう。
その2つの懸念点を解消するアイテムが、モンベルの厚手の靴下だ。
吸湿・速乾性が高く、ほとんど密閉状態のレインブーツ内でも足裏がむずむずする感覚は一切なかった。
そして、くるぶしや足首の痛みもなかった。
逆にユニクロなどの薄手の靴下を履いて出かけてみると、ブーツ内で擦れてくるぶしが当たって痛むし、靴下が徐々にずれて快適ではなかった。
クロックスのレインブーツ&モンベルのメリノウールソックスの組み合わせは、雨天観戦を最もスムーズにしてくれた。
モンベルのサンダーパスパンツ
いわゆるレインパンツの一種である。
防水パンツ的なものを一切持ち合わせていなかったので、新たに買い足したものだ。
モンベルのレインパンツには、ゴアテックスを使用した「レインダンサーパンツ」などの上位シリーズもあるが、「サンダーパスパンツ」はモンベル独自素材の「ドライテック」を使用したものだ。
そのため、安価であることが利点となっている。
心配だったのは、防水性・撥水性・透湿性だった。
結論からいうと、防水性は十分すぎるほどあり、撥水性と透湿性はやや心もとなかった。
そこで、サンダーパスパンツの下にはスポーツタイツやレギンスを履くことをおすすめしたい。
自分もユニクロのヒートテックレギンスを履いていったことで、サンダーパスパンツの表面に溜まってしまう水分に、体温が奪われることなく過ごすことができた。
直履きだと、浸水はせずとも表面の水分に熱を奪われてしまいそうな感覚があった。
気温15度前後の宇都宮市内、または森林公園での観戦であれば、サンダーパスパンツで十分な性能だったといえよう。
もし、これ以上気温が低いような状況では、もう一段階上のレベルのレインパンツを履きたくなると思われる。
ビニール袋
コンビニとかでもらえるような何の変哲もないビニール袋が劇的に役立った。
というのも、リュックサックの内部への浸水が激しく、防水対策をしていない小物やらノートPCなどが浸水してしまう恐れがあった。
慌てて、ビニール袋に入れて運ぶことで事なきを得た。
単純ながら最も効果的な防水対策だといえよう。
透明なジップロック
上のビニール袋に通じるものであるが、スマホを収納できるくらいのサイズのジップロックが非常に役に立った。
雨の中でも気兼ねなくスマホを触れるようになったのは便利だった。
シャワーキャップ
ミラーレス一眼カメラの防水対策に使用した。
詳しい使い方はこちらの記事をご覧いただきたい。
100均で購入した何の変哲もないシャワーキャップを使用した。
おかげで低コストながらも、高価なカメラを守りながらも雨のレースを撮影することができた。
とはいえ、防御力が0から20程度に上がっただけであり、万全な防水対策とはいえない。
観戦中ずっと首からカメラをぶら下げているようなことはせず、ここぞというタイミングでバッグから取り出したり、レインウェアの下や柵の影にカメラを潜めてなるべく雨にさらされないような工夫はしていた。
あまりに役に立たなかったもの
ユニクロのブロックテックパーカ
意気揚々と「ブロックテックパーカ」で十分とツイートして、雨天観戦に臨んだものの、あっという間に撥水性が失われる有様だった。
防水性は高いので、雨が布地を越えて侵入してくることはなかったものの、袖口や裾からの浸水は防げなかった。
特に袖口から浸水すると、結果的に両手がずっと水浸し状態となり、なかなか不快なものがあった。
逆にいえば、ユニクロのブロックテックパーカは日常生活においては十分すぎるくらいの撥水性と防水性があることがわかってよかった。
ただ、何時間も雨に打たれ続けるような雨のレース観戦においては性能が不十分だったというだけの話だ。
完全防水ではないリュックサック
クロームのロストフというリュックを背負って、観戦していた。
ナイロン製の生地の防水性・撥水性は高いのであるが、大雨に何時間も打たれ続けるとさすがに浸水してしまう。
一度浸水が始まると、もうダメだった。
バッグ内がひたすら湿っているような状況となり、布地に触れている荷物も段々と浸水していってしまう。
普段も雨の中リュックを背負って出かけることはあったが、これほど浸水するとは思いもよらなかった。
雨に打たれ続けるという事態は想定以上にダメージを与えるということが、よくわかった。
撥水スプレー
ほとんど役に立たなかった。
上記のブロックテックパーカとリュックにこれでもかというほど吹き付けたものの、結果的にはずぶ濡れになってしまった。
事前の実験では、そこそこ雨に打たれても十分に撥水していた。
実験と本番の違いは、やはり雨に打たれ続ける時間の差だった。
ブロックテックパーカの撥水性が失われ始めたのは体感的に30分を過ぎてくらいからだった。
リュックも1時間以上は平気だったように思われる。
日常生活では、なかなか30分以上雨に打たれ続けることはないだろう。
なので、通勤・通学において撥水スプレーで防水対策することは非常に有用だといえる。
しかし、数時間にわたって雨に打たれ続けるような特殊な環境では、用をなさなかった。
自転車(ロードバイク)
非常に根本的な話であるものの、雨が降ったら自転車を持っていかなくても良かったかもしれない。
フリーランへの出場が決まっていたことと、自転車での移動を前提とした立地のよくないホテルを確保していたこともあり、輪行で自転車を持参した。
自転車に乗って駅からホテルまで移動しないといけないため、持ってこれる荷物の総量をリュック一つ分にまで絞り込まねばならなかった。
そのため、必要最小限の持ち物にし、帰りもお土産を買って帰るスペースがほとんどなかった。
仕方がないので、わざわざスカイツリーのソラマチまで出向いて、栃木土産を購入して会社の人たちに配るアリバイ作りをせねばならなかった。
(お土産に関しては晴れていても、同じことになったと思うが。)
要は、雨のなか自転車を持っていったものの、雨に打たれてずぶ濡れになるわ、結局本戦にはバスで行くわで、輪行の労力に見合っていなかったという話だ。
あれば良かったもの
パーマセルテープ
一眼カメラを守るために使うシャワーキャップの固定に、こちらも100均で購入したマスキングテープを使用した。
しかし、雨に濡れると粘着力が全くなくなってしまうため、度々貼り替える必要があって、難儀していた。
プロのカメラマンも、防水対策にビニールをカメラに巻くという原始的な対策をしている方が多かった。
そういった方々は、100均のマスキングテープではなく、「パーマセルテープ」と呼ばれる、何度でも貼り直しができて、水にも強いテープを使用しているとのことだ。
やや高いものの、カメラにシャワーキャップを固定する以外にも日常生活で幅広く使えると思うので、買っても良かったと思った。
折りたたみ傘
公式サイトにも「雨天時の観戦の際には、後方のお客様の観戦の妨げとなりますので、傘を差しての観戦はご遠慮ください」と記載があるように、レース観戦の際に傘を差さないことはマナーだ。
だからといって、傘が必要ないかというと、決してそのようなことはなかった。
普通に宇都宮市内を歩く際や、帰りのバスを待つ際など、傘を差したいと思う場面はいくらでもあった。
一番傘を差したかったのは、宇都宮から自宅最寄り駅まで帰ってきて、駅から自宅までの道のりだった。
だが、2日間散々雨に耐えたあげく、こんなところで傘は買いたくないと思い、ずぶ濡れになりながら帰ったのだった。
傘はレース観戦中は不要でも、それ以外の場面では普通に必要なものだった。
完全防水のバックパック
雨対策の最上位は「完全防水」である。
一切の浸水を許さないレインブーツ、ビニール袋、ジップロック、シャワーキャップなどの完全防水性能を持った素材が、とにかく役に立っていた。
ナイロン、ポリエステル、レザーなど、比較的防水性が高いとされている素材でも、長時間濡れ続けるような状況ではその性能を発揮できない時がやってくるのだ。
したがって、バッグも完全防水のものにすべきだった。
となると、やはりオルトリーブのヴェロシティが第一候補にあがるだろう。
雨のなか、ロードバイクに乗っていると、リュックには泥跳ねの汚れが大量に付着する。
凹凸のあるナイロン製の生地には、細かい砂のような汚れがこびりついてしまい、清掃に難儀したのだ。
これがオルトリーブであれば、さっと雑巾でひと拭いすればいいのだ。
なんなら丸洗いしてもいいだろう。
まとめ
究極の雨対策は「完全防水」だ。
そして、今回のジャパンカップ観戦は究極の状況下での観戦だったのだ。
決して甘く見ていたわけではなかったが、それでも準備が甘かったといわざるを得ない。
今回の筆者の体験が、未来の自分だけでなく、誰かの役に立てばと思い、備忘録を残した。
何か思い出したら、書き足していく。