バーレーン・メリダ出場選手一覧&レビュー【ツール・ド・フランス2017】

※選手の脚質、役割、レビューを書いています。

7回目のツール・ド・フランス出場を決めた新城幸也のバーレーン・メリダ。
総合はヨン・イサギレ、スプリントはソニー・コルブレッリが狙う。

バーレーン・メリダ、ツール出場メンバー

191,ヨン・イサギレ(スペイン、[get_age birth=”19890204″]歳)

逃げ:★★★★☆
TT力:★★★★☆
登坂力:★★★★☆
スプリント:★★★☆☆

モビスターから新チームであるバーレーン・メリダに移籍して、いよいよ単独エースとしてグランツールに臨む。

昨年は、ナイロ・キンタナのアシストとして出場。
第20ステージでは、大雨のジュプラーヌ峠からのダウンヒルで、ヴィンチェンゾ・ナタリとヤルリンソン・パンタノを千切る走りを見せステージ優勝をあげた。

今シーズンは、総合エースとしてツール一本に照準を絞って調整してきた。
パリ〜ニース総合7位、ブエルタ・アル・パイス・バスコ総合3位、ツール・ド・ロマンディ総合5位、ツール・ド・スイス総合7位と、まずまずの結果を残している。
しかし、ツールで表彰台を獲得できるほどのインパクトは無く、上りではあっさり遅れるシーンも目立っていた。

現実的には、総合成績だけを狙うには厳しくステージ優勝を狙った動きに徹した方が結果が出やすいようにも思えるが、せっかく移籍したのだからとことん総合成績を狙ってほしいなとも思う。
下りの多いコースレイアウトはヨン・イサギレにとって好都合だ。

いずれにせよ、このチームのエースはヨン・イサギレだろう。
目標は総合トップ10に入り&ステージ1勝か。

192,新城幸也(日本、[get_age birth=”19840922″]歳)

逃げ:★★★★☆
TT力:★★☆☆☆
登坂力:★★★☆☆
スプリント:★★★☆☆

来ました!
我らが新城幸也!
グランツールへの出場は11回目で、ツール・ド・フランスへの出場は7回目だ。
もちろん日本人選手として断トツの出場回数である。

ツールでは2度敢闘賞を獲得したことがあり、ここぞの場面で逃げに乗って印象的な活躍を世界に見せていた。
というように、逃げのスペシャリストとしての活躍が目立つが、本来は上りもこなせるパンチャーと言った脚質だろう。

だが、プロレーサー・新城幸也の最大の武器は、回復力の高さだ。
昨年の2月に大腿骨骨折という重傷を負ったにもかかわらず、わずか2ヶ月後には自転車に乗ってトレーニングを再開。
さらに1ヶ月後にはツアー・オブ・ジャパン屈指の難関ステージである伊豆ステージで劇的な復活勝利をあげた。

さらに、『ツール・ド・フランス2017公式プログラム』の「新城幸也を科学する」というコラムによれば、昨年のツール第20ステージの超級山岳ジュプラーヌ峠でのペダリングが、通常時と変わらぬスムーズな動きを見せていた。
3週間走ったにもかかわらず、蓄積した疲労がペダリングに現れていないのだ。
つまり、新城幸也は回復力も高く、疲労に強く、極めてタフなレーサーだということが実証された。

だからこそ、起用するチームにとっては信頼できる真のプロフェッショナル選手なのだろう。
プロトンの中でもベテランの域に達していることもあるが、新城幸也をリスペクトする選手は少なくない。

プロの走りとは何か。
プロサイクリストに出来ることは何か。
たとえわかりやすい数字に見えなくとも、ユキヤはユキヤの走りで常にメッセージを送ってくれている。

とはいえ、日本人のファンはどうしてもユキヤのステージ優勝を期待せざるを得ない。
どうにかして日本人選手がグランツールの舞台で勝利するシーンを見たいのだ。

間違いなくユキヤが、いま一番ステージ優勝に近い位置にいるだろう。
もう敢闘賞じゃ満足できない。
ジャパンカップ3位でも満足できない。

わがままな我々ファンのためにも、魅せてくれユキヤ!

193,グレガ・ボーレ(スロベニア、[get_age birth=”19850813″]歳)

逃げ:★★☆☆☆
TT力:★☆☆☆☆
登坂力:★★☆☆☆
スプリント:★★★★☆

NIPPO・ヴィーニファンティーニから移籍してきたスプリンターだ。
昨シーズンはジロに出場し、山本元喜のブログでは「グレガ・ボーレ先生」と呼ばれていた。

NIPPOでは指南役を務めていたのかもしれないが、ベテラン選手揃いのバーレーンではボーレの年齢でも中堅クラスだ。

今大会では、コルブレッリのリードアウトを務める。

194,ボルト・ボジッチ(スロベニア、[get_age birth=”19800808″]歳)

逃げ:★★☆☆☆
TT力:★☆☆☆☆
登坂力:★☆☆☆☆
スプリント:★★★★☆

かつてエーススプリンターとして腕を鳴らしたボジッチも、いまはリードアウト専門のスプリンターとなっている。
昨シーズンはコフィディスでナセル・ブアニのリードアウトを務めていた。

今年で37歳となる大ベテランであるが、チームは2年契約を結んでいる。
ボジッチへの信頼の高さの現れだろう。

今大会では、コルブレッリの発射台を務めることになる。

195,ヤネス・ブライコビッチ(スロベニア、[get_age birth=”19831218″]歳)

逃げ:★★★☆☆
TT力:★★☆☆☆
登坂力:★★★★☆
スプリント:★★☆☆☆

ディスカバリーチャンネル、アスタナ、レディオシャックと、ヨハン・ブリュイネールのチームで育った選手だ。
2010年、ランス・アームストロングのアシストとしてツールに出場するため、調整レースで出場したクリテリウム・デュ・ドーフィネで総合優勝。
ツール本戦ではアシストに徹して総合41位で終えた。

高い実力を備えながら、アシストとして走ることが多かったクライマーだ。
直近の2年間はプロコンのユナイテッド・ヘルスケアで走っていたが、3シーズンぶりにワールドチーム復帰を果たした。

グランツールへの出場も2014年ジロ・デ・イタリア以来3年ぶりのこと。
ヨン・イサギレの貴重な山岳アシストとして走る。

196,オンドレイ・ツィンク(チェコ、[get_age birth=”19901207″]歳)

逃げ:★★★★☆
TT力:★★☆☆☆
登坂力:★★★☆☆
スプリント:★★☆☆☆

マウンテンバイクの選手から、ロードへと転向しまだ1年目の選手だ。
だが、既に高いポテンシャルを発揮し、ステージレーサーとしてチームに欠かせない一員となっている。

MTBからロードに転向した例で言うと、ジャン=クリストフ・ペロー、カデル・エヴァンスらの名前が上がる。
ペーター・サガンもMTB出身だが、共通しているのは上りに強いということだ。

ツィンクも山岳ステージでよく逃げている印象があり、上りを得意としているようだ。
何より経験が物をいうであろう、逃げに乗るのがうまい。

山岳アシストを務めつつ、アタッカーとして動くことも出来るだろう。

197,ソニー・コルブレッリ(イタリア、[get_age birth=”19900317″]歳)

逃げ:★★☆☆☆
TT力:★☆☆☆☆
登坂力:★★★☆☆
スプリント:★★★★☆

キャリア初のワールドチームに所属した1年目で、ワールドツアーのパリ〜ニース第2ステージで勝利をあげた。
さらに4月のブラバンツ・ペイルでも非常に力強い走りを見せて勝利をおさめた。

スプリンターではあるが、石畳系のワンデークラシックにも強く、アムステルゴールドレースのようなアルデンヌクラシックにも適性がある。
パリ〜ニースでは、雨と低温でコンディションが最悪の状況の中、最後までスプリント出来ていたようにタフさも兼ね備えている。

平坦コースでの集団スプリントよりは、上りを含んだり、激坂が含まれているようなテクニカルなコースの方が勝ちやすいかもしれない。
となると、ライバルはペーター・サガンやマイケル・マシューズとなる。
激戦は必至だが、強力なライバルたちに真っ向勝負を挑む。

198,ツガブ・グルメイ(エチオピア、[get_age birth=”19910825″]歳)

逃げ:★★★☆☆
TT力:★★★☆☆
登坂力:★★★☆☆
スプリント:★★★☆☆

バーレーン・メリダのGMは、元はランプレ・メリダの監督を務めていた南アフリカ人のブレント・コープランドが引き継いでいる。
対して、もう一人の元ランプレ・メリダの監督であったイタリア人のジュゼッペ・サロンニは、UAE・チームエミレーツへ移った。

ランプレ・メリダのイタリア人選手の多くは、UAEへ多く移籍しているのだ。
ニーバリは個人的にバーレーンの王子様と交流があった影響でバーレーン・メリダにやってきたが、それ以外の国籍の選手の多くはバーレーン・メリダにやってきている。

そして、ワールドチームでも屈指の多国籍集団が出来上がっているのだ。

プロトンでも珍しいエチオピア人レーサーのグルメイは、今シーズンはツアー・オブ・オマーン総合5位という成績が光る。
抜群のスタミナを活かした逃げが得意な選手であるが、上りの技術も着々と進化している。

全局面でのアシストも可能であり、アタッカーとしても自在に動くことが出来るだろう。

199,ハビエル・モレーノ(スペイン、[get_age birth=”19840718″]歳)

逃げ:★★☆☆☆
TT力:★★☆☆☆
登坂力:★★★★☆
スプリント:★☆☆☆☆

モビスターから移籍してきたクライマーだ。
ツールへの出場は初めてのことになる。

モビスターでも強力な山岳アシスト陣の一角を担っていたこともあり、バーレーンでも貴重な山岳アシストとして活躍が期待されている。

しかし、今年のジロではディエゴ・ローザを殴ってしまい、失格処分を受けた。
ニーバリのアシストを全く出来ないままレースを去ってしまったことは、チームにとって非常に痛手であった。
(代わりにフランコ・ペッリツォッティが大活躍したので、ニーバリへの影響は軽微ではあったが…)

汚名返上のツールとなるか。
そして、ブエルタへの出走も予定されていて、なんだかんだで3大グランツール全てスタートリストに名を連ねる選手となるかもしれない。
(裏を返せば、それくらいクライマーの人材難ということか…)

総合はヨン・イサギレ、スプリントはコルブレッリ、それでもユキヤの動向が一番気になるチーム

総合上位を狙うには、山岳アシストの選手層の薄さが気になるが、元々クライマーが少ないチームなので仕方ない。
ツール・ド・スイスでも、ヨン・イサギレは基本的に1人で総合上位を獲ったので、想定の範囲内だろう。

だが、ブライコビッチもハビエル・モレーノも決して弱い選手ではないので、完全に孤立無援ではないだろう。

エーススプリンターであるコルブレッリを主軸に、スプリントでも勝負できるメンバーを揃えてきた。
ボーレ、ボジッチだけでなく、ユキヤもコルブレッリのためにアシストする機会は多かった。

となると、ユキヤのステージ優勝のチャンスはコルブレッリでは勝負できない山岳ステージになるだろう。
逃げに乗ってからの小集団スプリントを制す。
これが現実的なユキヤの勝利パターンとなりそうだ。

1 COMMENT

いちごう

「そろそろ新城幸也」ですよね。

2009年。初出場のツール第2ステージ、集団スプリントで5位になったため、スプリント要員として認識されてしまい、それ以降のステージでは自由に動けなくなってしまいました。おまけに落車に巻き込まれて、手負いでその後を走ることになったのも不運でした。

5位になった第2ステージでは先頭付近での落車で集団が割れ、無事だったカヴら前3人のその後ろで一瞬だけ足止めになったフースホフトのスプリントに合わせた結果の5位。

もちろんスプリント力無くしてはフースホフトの加速に付いていくことすらできませんが、ピュアスプリンターではない新城選手にスプリントをさせようとしたチームの采配は疑問が残るものでした。

その後もテュルゴーやコカールらスプリンターのアシストや手薄な山岳アシストの代わりにロランを助けたり、なかなか自由に走れる機会がなかったのがこのフランスチーム時代でしたね。

ランプレ・メリダではシーズン最初のレースでの落車から奇跡の復活を果たし、主にチモライのスプリントアシストの動きが目立っていて、またここでもさほど自由には走らせて貰えなかった印象。
しかし、やっと逃げられた第6ステージでは敢闘賞。自由を与えられれば結果を出せるのは間違いないかと。

さて、今年のバーレーン・メリダ。
総合上位を狙うイサギーレが居ることから、やはり重要なアシスト要員としての選出であることは間違いないでしょう。
なので、例によって自由に走れるチャンスはそう多くないかも知れません。
それでも我々からすると、新城幸也が勝つところが観たい!

しかしチーム側からすると、
かつて、ヴォクレールと共に逃げた超級山岳オービスクでのアシストぶりや、集団コントロール要員として(カンチェラーラでさえついていけなかったこともある)アップダウンコースを先頭で牽引できる能力、更に時折スプリンターの代わりに集団ゴールで着に絡むなど、平坦・山岳を問わずしかも3週間を通して力を発揮してアシストできるこんな便利な選手は他に居らず、エースの側に常に置いておきたい気持ちも良く解る訳で。

なのでチームとしては勝ちを狙うカードの一枚ではなく、チーム力の維持に必要な選手という認識だと思われます。

それでも逃げのチャンスが一度や二度くらい来ると思うので、その時が来たら…と期待したいと思います。

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