サイバナ

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ツール・ド・フランス2017

BMCレーシング出場選手一覧&レビュー【ツール・ド・フランス2017】

2017/07/01

※選手の脚質、役割、レビューを書いています。

今シーズン好調を維持しているリッチー・ポートが悲願の総合優勝を狙うBMCレーシング。
山岳アシストの出来が気になるが、バランスの良いメンバー構成となっている。

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BMCレーシング、ツール出場メンバー

41,リッチー・ポート(オーストラリア、32歳)

逃げ:★★★☆☆
TT力:★★★★★
登坂力:★★★★★
スプリント:★★☆☆☆

今年のポートは一味違う。
なんてセリフは何回も言っているような気がするが、それでもやはり今年のポートは一味違うと声を大にして言いたい。

シーズン初戦となったツアー・ダウンアンダーでは、最強だった。
第2ステージと第5ステージで見せた、誰も寄せ付けない圧倒的なヒルクライムは、見事だった。

パリ〜ニースでは、雨と低温に苦しめられ第2ステージで14分以上遅れてしまったが、第1ステージでリタイアしたミカエル・シェアーの不在が大きく影響している。
ポート自体は好調であり、クイーンステージである第7ステージで独走勝利をあげている。
第2ステージの遅れさえ無ければ、総合優勝を争っていたに違いない。

ツール・ド・ロマンディでは、最終日の個人TTでサイモン・イェーツを逆転し総合優勝を決めた。

そして、クリテリウム・デュ・ドーフィネは個人TTステージでスペシャルな走りを見せステージ優勝。
ライバルたちの総攻撃をくらった第8ステージでは、終盤はほとんど1人で風を受けながらダウンヒル、平坦路を走り抜けていたにもかかわらず、最後の上りは誰よりも速かった。
総合2位には終わったが、ドーフィネで最も強かった選手は間違いなくポートだ。

ピークを早く持ってきすぎているという声も聞こえるが、シーズン序盤から好調を維持できていることを考えると、これがポート本来の実力なのかもしれない。
だとすれば、本当に今年のポートは一味違うと思う。

今年のツールは激坂が多く、距離の短い個人TTが特徴的だ。
登坂力の高さはナイロ・キンタナに匹敵するだろう。
20km前後のTTで好成績を残していることから、ツールのTTに関してはクリス・フルームと同等以上の力を発揮できると思う。

順当に行けば、今年のツールはポートが総合優勝する。
そう言えるほどに、今年のポートは一味違うのだ。

とはいえ、懸念点はある。

まずは、ポートを支える山岳アシスト陣の選手層の薄さが気になる。
好調のダミアーノ・カルーゾは頼れる存在ではあるが、不調のニコラス・ロッシュがどこまでやれるのか。
アレッサンドロ・デマルキ、アマエル・モワナールも上れることは上れるが、勝負どころの山岳で牽き倒すような走りは難しいだろう。

チームスカイや、モビスターが強力な山岳アシスト陣を揃えてくることを考えると、やや心もとないことが気になる。

そして、散々言われていることがポートのメンタル面だろう。
3週間の長丁場では、必ず集中が途切れてミスを犯すことが多かった。

だが、昨年のツールでは第2ステージでパンクした不運があったものの、その後は非常に安定した走りをしていて、ミスらしいミスは見当たらなかった。
序盤で大きなビハインドを背負ったことで、気負わず走ることが出来たから、という可能性もあるが、一応3週間に渡って安定して走った実績は残した。

実際に、好調すぎるポートが序盤からマイヨジョーヌを獲得したらどうだろうか。
経験のないプレッシャーとの戦い、集団コントロールに疲弊するアシスト陣。
ポート自身だけなく、BMCレーシングとしても真価が問われる。

ポートはフルームと同世代の32歳だ。
決して若い選手ではない。

同郷にして、同チームの先輩でもあるカデル・エヴァンスは34歳でツール総合優勝を果たした例はあるが、
これだけ出来が良い年だからこそ、何としてでもマイヨジョーヌを獲得したい。

実力通りの走りをすれば、総合優勝は決して難しいことではない。
祈るような気持ちで、ポートの走りを見守りたい。

42,ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、30歳)

逃げ:★★★☆☆
TT力:★★★★☆
登坂力:★★★★★
スプリント:★★☆☆☆

昨年もポートのアシストとしてツールに出場した。

今シーズンは、ツール・ド・スイス総合2位と好調をアピールしている。
ステージ優勝はあげられなかったものの、力強い登坂力を示していて、厳しい上りでもポートを十分にアシスト出来ることを証明した。

ドーフィネに出場していた山岳アシスト陣の出来が壊滅的だったことを考えると、カルーゾの好調ぶりは一縷の望みである。
山岳アシストは量より質が大事なので、カルーゾ1人好調を維持出来ているなら、ポートにとってとてつもない援軍となるだろう。

つまり、ポートの総合優勝の行方はカルーゾの出来にかかっていると言っても過言ではないのだ。

43,アレッサンドロ・デマルキ(イタリア、31歳)

逃げ:★★★★☆
TT力:★★★☆☆
登坂力:★★★★☆
スプリント:★★☆☆☆

2014・2015年とブエルタ・ア・エスパーニャで2年連続ステージ優勝をあげているパンチャー寄りなオールラウンダーだ。

昨年最も印象に残ったのは、リオ五輪男子エリートロードレースでの走りだ。
イタリア代表として、エースのヴィンチェンツォ・ニーバリのために終盤の厳しい上りを含む周回コースで目一杯の牽引を見せていた。

デマルキの牽きによって、集団は相当セレクションがかけられ、ニーバリの決定的なアタックをアシストしていた。
(※ニーバリはその後、テクニカルな下りで落車してしまったが、落車が無ければ間違いなくメダルを獲得していた)

あの働きをツールの舞台でも見せてほしい。
だが、ドーフィネの出来は非常に悪く、ほとんど山岳アシストとしての仕事は果たせていなかった。

ツールの中盤から終盤にかけて調子を上げてくれれば問題ないのだが、現状ではやや心配である。

44,ステファン・キュング(スイス、24歳)

逃げ:★★★★☆
TT力:★★★★★
登坂力:★★☆☆☆
スプリント:★★☆☆☆

今シーズン、ブレイクしかけているスイスのニューヒーローだ。
脚質はTTスペシャリストで、直近のスイス国内TT選手権で初優勝した。

また、ツール・ド・ロマンディではステージ1勝&ポイント賞、ツール・ド・スイスでは2つの個人TTステージで共に2位に入り、リーダージャージを着用する経験もした。
同郷の大先輩であるファビアン・カンチェラーラのように、TT力を磨き、いずれはクラシックスペシャリストとして名を上げていくであろう。

ツールでは、エースのために平坦路で牽き倒す。

45,アマエル・モワナール(フランス、35歳)

逃げ:★★☆☆☆
TT力:★☆☆☆☆
登坂力:★★★☆☆
スプリント:★★☆☆☆

2015年ジロ総合15位が、グランツールでの自己最高成績。
基本的には、常にアシストとして走ることが多いベテランクライマーだ。

だが、今シーズンはあまり良いところを見せられていない。
ドーフィネでも、決定的な仕事が出来ぬまま集団から千切れていったように見えた。

グランツール出場通算14回の経験を頼りに、出来る最大限のアシストを試みるだろうか。

46,ニコラス・ロッシュ(アイルランド、33歳)

逃げ:★★★☆☆
TT力:★★★☆☆
登坂力:★★★★☆
スプリント:★★☆☆☆

今シーズン、チームスカイから移籍してきたクライマーだ。
グランツールでは、2013年ブエルタ総合5位という実績を持っている。

チームスカイでは、強力山岳アシスト陣の一角として、2015年のフルーム総合優勝に大いに貢献した。
ポートとは、当時のチームメイトだった。

山岳アシストが手薄なチームにおいて、ロッシュへの期待は非常に大きかった。
ところが、今シーズンはあまり上れていない印象を受ける。
集団の先頭を牽く機会は多いものの、集団の人数を10人程度まで減らすような強烈な牽引は今のところ見られていない。
どう見ても不調ではないかと思ってしまう。

それでも、BMCをレーシングの中ではトップレベルのクライマーだ。
実績も豊富であるし、ツールのメンバーには選ばれた。

何も出来ないまま、ツールを終えることだけはやめて欲しい。
調子を上げて、チームスカイ時代のような山での働きを心より期待している。

47,ミカエル・シェアー(スイス、31歳)

逃げ:★★★★☆
TT力:★★★★☆
登坂力:★★★☆☆
スプリント:★★★☆☆

身長196cmの体格を活かした、典型的な大型ルーラーである。
チームの安定度は、シェアーがいるといないでは大違いだ。

パリ〜ニース第1ステージで、シェアーは落車リタイアしてしまった。
翌第2ステージでは、雨が降り、気温も低く、思うように身体が動かない選手が続出するなか、さらに強風も吹いていた。
集団内での、ポートの位置取りがあまり良くなかったためか、集団が分断した際に後方に取り残されてしまったのだ。
レース後のポートは、「シェアーがいないのが痛かった」というコメントを残していた。

このような緊急時、荒れた展開になったときこそ、シェアーのような強力なルーラーが力を発揮する。
エースの安全は、シェアーが確保する。
ポートは勝負どころまで、シェアーの側で待機していればよいだけになる。
その安心感は計り知れない。

48,フレフ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、32歳)

逃げ:★★★★★
TT力:★★★☆☆
登坂力:★★★☆☆
スプリント:★★★★★

春先のワンデークラシックで4勝をあげ、UCIワールドツアーランキング1位を突っ走るリオ五輪金メダリスト。
チーム内で唯一ステージ優勝のための自由を与えられる唯一無二の存在だ。

昨年のツールでは、第5ステージで勝利し、以降3日間に渡ってマイヨジョーヌを着用した。
狙うはもちろん3年連続のステージ優勝だ。

ツール・ド・ルクセンブルクでは総合優勝を果たしている。
ツール・ド・スイスでは、目立った活躍は無かったとはいえ、ヴァンアーヴェルマート向きのコースも無かった。
決して調子が悪いわけではないだろう。

そして、GVAに期待することがもう一つある。
ポートのアシストをぜひともしてほしいのだ。

もちろん、GVA向きのステージでは、そのようなお願いはしない。
だが、GVAに向いていない山岳ステージでは、あえて逃げに乗って前待ちでポートをアシストするような動きを見てみたい。

マイヨジョーヌを着るポートを、GVAが牽くようなシーンが見られたら涙ものである。

49,ダニーロ・ウィス(スイス、32歳)

逃げ:★★★☆☆
TT力:★★★☆☆
登坂力:★★★☆☆
スプリント:★★★☆☆

2008年にBMCレーシングに移籍して以来、チーム一筋で走っているアタッカーだ。
逃げにも乗るし、スプリントも出来るし、そこそこ上りもこなせる。

突出したパワーは無くとも、様々な状況に対応できる貴重なユーティリティープレイヤーだ。

平坦でのアシスト、ボトル運び、逃げのチェック、前待ち等々、ウィスの存在がチーム戦術の幅を広げることだろう。

好調ポートを全力で支えるベストメンバーが揃った

兎にも角にもポートの調子の良さが際立っている。
ポートが普段通りの力を発揮出来れば、山岳アシストの層の薄さも問題にならない上に、好調のカルーゾがいることは非常に大きい。

そして、平坦アシストは強力な人材を揃えてきた。
キュングとシェアーの働きが、マイヨジョーヌを獲得するためには必要不可欠である。

独立部隊として1人でステージ優勝を狙うヴァンアーヴェルマートの存在も大きい。
山岳コースでは、ポートのアシストをしてくれることを期待したい。

限りなくベストメンバーを組んできたBMCレーシング。
悲願のマイヨジョーヌ獲得なるか注目だ。

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