サイバナ

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ツール・ド・フランス2017

チームスカイ出場選手一覧&レビュー【ツール・ド・フランス2017】

2017/07/01

※選手の脚質、役割、レビューを書いています。

絶対王者クリス・フルームのツール3連覇が期待されるチームスカイ。
出場確実と見られていた何名かの選手は、コンディション不良のため欠場となってはいるが、相変わらず凄まじい巨大戦力を誇るメンバー構成となっている。

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チームスカイ、ツール出場メンバー

1,クリス・フルーム(イギリス、32歳)

逃げ:★★★★☆
TT力:★★★★★
登坂力:★★★★★
スプリント:★★★☆☆

ツール・ド・フランス2連覇中の最強のオールラウンダー。
ディフェンシブな走りを批判されがちではあったが、昨年大会は自らダウンヒルでアタックを決め逃げ切り、平坦ステージで飛び出して逃げ切り、魔の山でのランニングと、非常にアグレッシブな走りが目立っていた。

ところが、フルームの天下にさせたくないという誰かの意向が働いているのかどうかは分からないが、今年のコースは例年になく激坂が多く組み込まれた上に、個人TTの距離が短くなった。
一方でダウンヒルで決着がつくステージも増えているため、一概にフルーム不利とは言えないのかもしれないが。

フルームはツール3連覇のみを目標として、レーススケジュール・トレーニングメニューを組んできた。
絶対王者の調整方法を疑うつもりは毛頭ないが、シーズン未勝利でツールを迎えることに対して、不安に思うファンがいるのは事実だろう。

ツール前哨戦のクリテリウム・デュ・ドーフィネでは、第6ステージに登場した"モン・デュ・シャ"で、リッチー・ポート、ファビオ・アル、ヤコブ・フグルサングらと共に良い走りを見せた。
それ以上に、その後のダウンヒルが圧巻だった。
先行するアルをあっという間に捉え、さらに引き離すような走りはフルームの大きな武器となる。

今年のコースは激坂の多さに注目しがちだが、勝敗を決するようなステージにはダウンヒルが多く組み込まれている。
フルームは上りよりもむしろダウンヒルの技術を磨いていたのではないか、そう思うような走りをドーフィネでは見せていた。

一方で、個人TTでは、アレハンドロ・バルベルデとアルベルト・コンタドールにも負けてしまった。
フルームの実力からすれば、この二人には勝てるはずだ。
前哨戦とは言え、二人に負けてしまう走りだったことは、懸念材料だろう。
この点はフルーム本人も認めていて、「ツールまでに調整する」と言っていた。

もう一つの懸念点は、フルームへのマークの厳しさである。
ドーフィネではフルームが総合1位ではないのに、みなフルームを徹底マークしていた。
フルームが疲弊した瞬間を狙って、アタックを仕掛けるシーンも目立っていた。
打倒フルームという意味では効果的な戦術であるので、この待ちの姿勢を否定するつもりは全くない。
ゆえに、本戦でもライバルたちは同様の戦術をとってくるだろう。
フルームが、どのように対処するのか注目したい。

ただし、ドーフィネにはスカイが誇る強力山岳アシスト陣がほとんど出場していなかった。
本戦では、セルジオルイス・エナオ、ミケル・ランダ、ミケル・ニエベ、そしてゲラント・トーマスがフルームを強力にアシストする。
ドーフィネでは、クヴィアトコウスキー1人で奮闘していたが、ツールでは鉄壁の構えを見せている。

果たしてフルームは単に不調なのか、完璧な調整をしていたのか。
我々ファンは、厳しい山岳ステージでの走りを目にするまで、正解は分からないままだ。
このドキドキさえも楽しみたいと思う。

2,セルジオルイス・エナオ(コロンビア、29歳)

逃げ:★★★☆☆
TT力:★★★☆☆
登坂力:★★★★★
スプリント:★★☆☆☆

昨年大会は総合12位だった、チーム随一のクライマーだ。
どんな時でも、フルームの側で走っている最強の山岳アシストだ。

今シーズンは非常に好調を維持している。
2月のコロンビア国内ロード選手権で優勝、続くパリ〜ニースも総合優勝。
アムステルゴールドレース6位、フレーシュ・ワロンヌ4位とアルデンヌクラシックでも好成績を収めている。

ツール前哨戦では、ルート・デュ・スッドに出場し、勝負どころの山岳では集団先頭で牽引している姿が目立っていた。
厳しい山岳コースが多い今年のツールでは、エナオの存在は極めて重要だ。

チームスカイ山岳アシスト四天王の一角を担いつつ、フルームのアシストをしつつも密かに総合トップ10を狙えるのではないかと思う。

3,ヴァシル・キリエンカ(ベラルーシ、36歳)

逃げ:★★★★★
TT力:★★★★★
登坂力:★★★☆☆
スプリント:★★☆☆☆

元TT世界チャンピオン、彫像のような筋肉が美しいチームスカイの平坦職人だ。
ひとたび、キリエンカが先頭に立つと、延々と仕事をし続ける。
野を越え、川を越え、丘を越えてもまだ牽いているのだ。

今シーズンはジロへ出場していたため、ツールへの出場は無いと思われていた。
しかし、スタナードが欠場することになったため、キリエンカに白羽の矢が立ったものと思われる。
ジロの疲労からどれだけ回復出来ているのかも気になるところだ。

もし、体調が万全であれば、キリエンカほど頼もしい平坦アシストは他にいないだろう。

4,クリスチャン・クネース(ドイツ、36歳)

逃げ:★★★★☆
TT力:★★★☆☆
登坂力:★★★☆☆
スプリント:★★★☆☆

ツールへの出場は、2012年以来となるルーラーだ。
2009年ツールでは総合19位という成績も残しているように、平坦だけでなく山岳でもある程度の仕事ができる脚質を持っている。

だが、チームスカイの山岳アシスト陣は屈指の陣容を誇るため、クネースに求められる役割は平坦アシストだろう。
ルーク・ロウ、キリエンカと共に集団を牽き倒す。

5,ミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、27歳)

逃げ:★★★★★
TT力:★★★★☆
登坂力:★★★★☆
スプリント:★★★★☆

今シーズン、凄まじく好調である。
パンチャーでもあり、クライマーでもあり、ルーラーでもあり、スプリンターでもあり、ダウンヒラーでもある、真のオールラウンダーだ。

ステージレースであるボルタ・アオ・アルガルベで総合2位、ストラーデ・ビアンケは優勝、そしてモニュメントの一つであるミラノ〜サンレモで優勝した。
アルデンヌクラシックでは、アムステルゴールドレース2位、フレーシュ・ワロンヌ7位、リエージュ~バストーニュ~リエージュ3位と一桁順位を連発している。

ツール前哨戦のクリテリウム・デュ・ドーフィネでは、フルームを支える山岳アシスト兼ルーラー兼ダウンヒラーとして獅子奮迅のアシストぶりを見せていた。

さらに、ポーランド国内TT選手権を圧勝。
本当に全局面で強さを発揮し続けている稀有な選手なのだ。

これほどの選手が、フルームのアシストに徹してくれることが非常に心強い。
特にダウンヒルを越えてから、しばらく平坦路を走るようなコースでは、クヴィアトコウスキーを使った前待ち作戦が非常に効果的になる。

クヴィアトコウスキーの起用法が、フルームのツール3連覇の行方を左右すると言っても過言ではないだろう。
そういう意味では、今大会最も鍵を握る選手なのかもしれない。

6,ミケル・ランダ(スペイン、27歳)

逃げ:★★★★☆
TT力:★★★☆☆
登坂力:★★★★★
スプリント:★★★☆☆

チームスカイ山岳アシスト四天王の1人である、オールラウンダーだ。
2015年ジロ総合3位の実績を持ち、ジロで総合エースとして走る一方でツールではフルームのアシストを務めている。

今年のジロではゲラント・トーマスとのダブルエース体制で臨んだものの、第9ステージの落車の影響で総合が絶望的になってしまった。
片足でしかペダルを踏めないほどの怪我を負ってしまったものの、驚異的な回復力を見せ、最終週は常に逃げに乗ったり先頭集団でアタックを仕掛けるなど貪欲にステージ優勝を狙っていった。

スプリント勝負に持ち込み、僅差で敗れることが2度続き、あからさまに不服そうな表情で山岳賞のポディウムに立っていた。
だが、第19ステージでようやくステージ優勝をあげた。
落車という不運を乗り越え、ようやく掴んだステージ優勝にチームは湧いた。

そして、山岳賞も確定し、一定の成果を収めてジロを終えたのだ。

以来、レースには出場せず回復に務め、ツールでは再びフルームのアシストとして走る。
ステージ優勝をつかむために走っていたランダも非常に強かったが、アシストに回った時のランダも強烈だ。

チームスカイとの契約は今年一杯で終了する。
他のチームへの移籍も噂される中で、鮮烈な印象を残すような走りを期待したい。

7,ミケル・ニエベ(スペイン、33歳)

逃げ:★★★☆☆
TT力:★★☆☆☆
登坂力:★★★★★
スプリント:★★☆☆☆

チームスカイ山岳アシスト四天王の1人、ピュアクライマーのニエベもエントリー。

昨年はジロでステージ1勝&山岳賞を獲得して、ツールにも連戦で出場していた。
今年はジロをパスして、ツール・ド・スイスに出場し、総合9位という成績を残した。

ニエベはいつも、グランツール以外は調整と割り切っている感じがするので、例年通りの仕上がりではないかと思われる。

山岳アシストの第一陣として、集団牽引を担うことが多くなるだろう。
ニエベが落ちても、後ろにはまだ3人の山岳アシストを残しているのだ。

8,ルーク・ロウ(イギリス、27歳)

逃げ:★★★★★
TT力:★★★☆☆
登坂力:★★☆☆☆
スプリント:★★★★☆

ルーラーとしての能力はピカイチ。
実際に逃げに乗ることは非常に少ないが、彼が本気で逃げたとしたら、とても良い動きをすると思う。

逃げない代わりに、集団を牽くことが大好きなチームスカイの先頭に立って、いつも機関車の役割をこなしている。

常にコンビを組んでいるイアン・スタナードは、今大会にはコンディション不良のため欠場となった。

ルーク・ロウは、ヘラルド・サンツアーでステージ1勝をあげ、オムループ・ヘット・ニュースブラッド6位、クールネ〜ブリュッセル〜クールネ3位と春先は非常に調子が良かった。
しかし、得意なはずの北のクラシックではあまり良い成績を出せず、スタナードと同じくあまり力強い印象を受けていない。

その一点のみが不安材料ではある。
何しろ、チームスカイの平坦アシストは、グランツールにおいて凄まじい仕事量を課されるので、コンディションが整っていないと厳しい。

9,ゲラント・トーマス(イギリス、31歳)

逃げ:★★★☆☆
TT力:★★★★★
登坂力:★★★★☆
スプリント:★★★★☆

初めて総合リーダーとして臨んだジロでは悲運の落車の影響で、リタイアを余儀なくされた。

もしも、あの落車さえ無ければ、総合優勝はトーマスが果たしていた可能性は十分にあった。
それほど、今シーズンのトーマスは山に強く、TTも走れる総合力の高さが光っていた。

起きてしまったことは仕方がない。
前向きに捉えれば、ジロを第12ステージでリタイアしたことで、ツールでフルームをアシストするために調整する時間が増えたと言ってもいいだろう。

レース復帰戦となったルート・デュ・スッドでは、平坦・山岳問わず積極的に集団牽引するトーマスの姿が目立っていた。
破壊力のある牽引を出来ていたため、落車前のコンディションを取り戻しているように見える。

山岳でのアシスト、そして昨年のツール第11ステージで見せたような平坦路でのアシストもトーマスの仕事となるだろう。
それ以上に、フルームにとってトーマスはかけがえのない存在だ。

フルームがバルロワールドに移籍してきた2008年以来、二人はずっとチームメイトだ。
2013・2015・2016年と総合優勝した時に、必ずそばにいたのがトーマスだ。

フルームの全てを知る男が、常に近くでアシストしてくれる心強さは数字では表せない。
フルームのみならず、チームメイトからの信頼も厚い、チームスカイの陰のリーダーがトーマスなのだ。

コンディションが心配な選手が数名いるものの、戦力の厚さはピカイチ

膝の怪我からの復帰途上にあるワウト・ポエルス、ドーフィネでステージ優勝をあげたピーター・ケノー、ルート・デュ・スッド総合3位のケニー・エリソンド、ハンマーシリーズでインパクトを残した新星タオ・ゲオゲガンハートなど、有力選手を何人も外したとしても、このような強力メンバーでチーム構成できる。

だが、年々フルームのみならず、チームスカイへのマークが厳しくなっている。

山岳アシストはエナオ、ニエベ、ランダ、トーマスが務め、平坦アシストはルーク・ロウ、キリエンカ、クネースが務める。
そしてクヴィアトコウスキーは全局面でフルームを強力に支援する。
この強大なメンバーで、他チームの厳しいマークに対抗する。

果たしてフルームは3連覇の偉業を成し遂げるのか。
はたまた、それを阻む新たなスターが誕生するのだろうか。

今年もチームスカイを中心に総合争いは展開していくに違いない。

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