サイバナ

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戦力分析2018

バーレーン・メリダ戦力分析!【2018年シーズン】

2018/01/20

グランツール総合優勝4回を誇るヴィンチェンツォ・ニーバリ擁するバーレーン・メリダ。

新城幸也は地元スタートのツールへの出場と世界選手権が目標とのことだ。

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バーレーン・メリダ2018ロースター

ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア)
ヨン・イサギレ(スペイン)
新城幸也(日本)
ソニー・コルブレッリ(イタリア)
ヴァレリオ・アニョーリ(イタリア)
マヌエーレ・ボアーロ(イタリア)
グレガ・ボーレ(スロベニア)
ニッコロ・ボニファツィオ(イタリア)
ボルト・ボジッチ(スロベニア)
フェン・チュンカイ(台湾)
イバン・ガルシア(スペイン)
エンリーコ・ガスパロット(イタリア)
ハインリッヒ・ハウッスラー(オーストラリア)
ラムナス・ナヴァルダウスカス(リトアニア)
アントニオ・ニーバリ(イタリア)
ドメン・ノヴァク(スロベニア)
フランコ・ペリツォッティ(イタリア)
デーヴィッド・パー(スロベニア)
ルカ・ピベルニク(スロベニア)
カンスタンティン・シウトソウ(ベラルーシ)
ジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア)
ワン・メイイン(中国)

・新加入選手
ゴルカ・イサギレ(スペイン)←モビスター
クリスティアン・コレン(スロベニア)←キャノンデール・ドラパック
マテイ・モホリッチ(スロベニア)←UAE・チームエミレーツ
ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア)←AG2R・ラモンディアル
ハーマン・ペーンシュタイナー(オーストリア)←アンプラッツ・BMC(CT、オーストリア)
マーク・パデュン(ウクライナ)←チーム・コルパック(アマ)※トレーニーから昇格

・退団選手
スガブ・グルマイ(エチオピア)→トレック・セガフレード
ハビエル・モレーノ(スペイン)→デルコ・マルセイユプロヴァンス・KTM(PCT、フランス)
ヨンアンデル・インサウスティ(スペイン)→ファンダシオン・エウスカディ(CT、スペイン)
アンドレア・ガローシオ(イタリア)※トレーニー→未定
アンドレア・トニアッティ(イタリア)※トレーニー→未定
ヤネス・ブライコビッチ(スロベニア)→未定
オンドレイ・ツィンク(チェコ)→マウンテンバイク競技に復帰

アルデンヌ、ツール、ブエルタ、世界選を狙うニーバリ

2017年シーズンはジロ・デ・イタリア総合3位、ブエルタ・ア・エスパーニャ総合2位と安定した成績を残したニーバリ。シーズン最終戦となったイル・ロンバルディアでも独走逃げ切りを決めて、節目のプロ通算50勝目を飾るなど、1年を通してハイパフォーマンスを発揮した。

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ニーバリは2018年の目標として、リエージュ~バストーニュ~リエージュ、ツール・ド・フランス、ブエルタ・ア・エスパーニャ、世界選手権を狙うと表明している。ジロ・デ・イタリアは2017年に引き続きニーバリの地元であるシチリア島を通過するルートになっているが、欠場となる。

2018年のツールには石畳や未舗装路のステージが登場し、2014年にツール総合優勝した時と同様に石畳区間を通過するステージが組み込まれていることを含め、ニーバリの脚質に合ったコースレイアウトであることが出場を決断する後押しになっただろう。

イル・ロンバルディアは2015・2017年と2度制したことがあるが、リエージュ~バストーニュ~リエージュは2012年に2位に入ったことがあるものの、優勝経験はない。リエージュだけでなく、アムステルゴールドレース、フレーシュ・ワロンヌにも出場する。

もう一人、総合エースを担う選手はヨン・イサギレだ。ナイロ・キンタナ、アレハンドロ・バルベルデのいるモビスターを飛び出して、バーレーン・メリダに移籍した。パリ〜ニース総合7位、ブエルタ・アル・パイス・バスコ総合3位、アムステルゴールドレース7位、フレーシュ・ワロンヌ12位、リエージュ~バストーニュ~リエージュ5位、ツール・ド・ロマンディ総合5位、ツール・ド・スイス総合6位と極めて安定した成績を残し、ツールに単独エースとして出場した。

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しかし、雨の降る第1ステージの個人TTで落車し、無念のリタイアとなった。絶対的エースを失ったチームは、ツールに何の爪痕も残せぬまま残りのステージを走った。

もし、あの落車がなければ総合トップ10は固かったように思える。1週間程度のステージレースと違って、3週間の長丁場を走るグランツールでは爆発的な登坂力を見せるより、安定した走りが重要となるからだ。大崩れしないヨン・イサギレならば、好成績を残せただろう。

2018年はニーバリのツール出場に伴い、ヨン・イサギレもアシストとしての出場が濃厚となっている。余力があればブエルタでは、ヨンがエースを張る可能性もあるだろう。

そして、頼もしい兄のゴルカ・イサギレが加入したことも大きい。これまでは弟・ヨンの影に隠れがちな存在であったが、パリ〜ニースではヨンを上回る総合4位に入り、ジロではステージ1勝をあげた。確かな存在感を示し、再び弟と同じチームで走ることになる。兄弟のコンビネーションが見られることが楽しみだ。

さらにAG2Rからポッツォヴィーヴォも加入した。ジロでは通算5回一桁順位で完走した経験を持つベテラン選手だ。引き続き、ジロでエースとして出場予定だ。

自身がエースとして走ることがほとんどであったため、もしヨンやニーバリのアシストをするとなった場合に、どのような走りを見せるのか注目だ。

意外と選手層の厚い山岳アシスト陣

山岳アシストとしては、アニョーリ、ペリツォッティ、シウトソウ、ヴィスコンティ、アントニオ・ニーバリらが候補だ。アントニオ以外の4人はいずれも30歳を越えるベテラン選手たちだ。ペリツォッティに至っては、40歳を迎えるシーズンとなる。

ペリツォッティは、ジロとブエルタでニーバリの頼もしい山岳アシストとして際立った活躍を見せていた。山岳での牽きの強力さは39歳のものとは思えないキレ味だった。2018年も健在であれば、引き続き第1アシストとしてバーレーン・メリダの戦術の幅を広げる存在となるだろう。

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ヴィスコンティは、アシストとして走るよりはステージ優勝を狙って積極的に逃げに乗ることが多くなるだろう。

ニーバリの弟のアントニオは、兄のバーターでチームに加入した印象が強かったが、シーズン終盤のワンデーレースでは集団を粉砕する牽引を見せるシーンもあった。今では頼れる山岳アシストの1人として、計算できる戦力になったといえよう。

シウトソウは、ツアー・オブ・スロベニア(2.1)で落車して、大腿骨骨折の重傷を負ってしまった。新城幸也も同箇所を骨折した経験を持つが、実際は選手生命を揺るがすような大怪我である。コンディションさえ戻れば、2016年にジロ総合10位に入る力を持っている選手なので、貴重な山岳アシストとして活躍してくれることだろう。

ヨン・イサギレ、ゴルカ・イサギレもアシストに回る可能性もあるため、山岳アシストの戦力は割と厚めだといえる。

平坦アシストには、ボアーロ、ボーレ、ナヴァルダウスカス、ノヴァク、ピベルニクらが担当することになるだろう。

新加入のコレンは、TTスペシャリスト・ルーラー的脚質を持っている。ナヴァルダウスカスは、不整脈の手術から回復途上にあり、2018年は100%の力で復帰できるとのことだ。

新城は、平坦も山岳もどちらでもアシストできる脚質を持っている。2017年はコルブレッリのアシストを務めることが多かった。引き続きコルブレッリのアシストを務めるのであれば、平坦中心のアシストを務めることになるだろう。もしくは、ツール出場7回の経験を買われて、山岳でも平坦でも仕事をこなせる万能アシストとしてツール出場の可能性も十分ある。新城自身も、自宅のあるヴァンデ県でスタートする2018年のツールにぜひとも出たいという意向を持っている。

コルブレッリの覚醒が待たれる

北のクラシックでは、コルブレッリに期待だ。むすろステージレースのスプリントよりも、ワンデークラシックに向いているのではないかと思うほどに、2017年シーズンは好結果を残した。

E3・ハレルベーケ7位、ヘント〜ウェヴェルヘム13位、ロンド・ファン・フラーンデレン10位、ブラバンツ・ペイル(1.HC)優勝に加え、アルデンヌクラシックのアムステルゴールドレースで9位に入っている。石畳と少々の上りであれば十分対応可能なのだ。勝利したブラバンツ・ペイルでは、コルブレッリ自ら集団を分断させる動きを仕掛け、さらに独走に持ち込んで勝ち切る見事なレース展開を見せていた。

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ポテンシャルは抜群なだけに、体調不良にすぐめげてしまうような精神面を克服できればクラシックレーサーとしての覚醒もあり得るのではないだろうか。

しかし、コルブレッリに続く選手層が薄いのがこのチームの弱点だ。

ハウッスラーは、実績抜群ではあるものの、2017年は膝の怪我やうつ病などに苦しみ、シーズン前半はほとんどレースに走ることができなかった。シーズン終盤はレース復帰を果たし、ワンデーレースを中心にしっかり完走する力は戻っている様子なので、2016年ミラノ〜サンレモ7位、パリ〜ルーベ6位に入ったような力を発揮できればコルブレッリとのダブルエース体制で挑むことも可能だ。

個人的に期待を寄せているのは、ガルシアだ。ブエルタ第19ステージでは、独走であわやステージ優勝か、という走りを見せつつ3位に入った。大柄な体格を活かした独走力の高さと、思い切りが良すぎる攻撃性が持ち味の選手だ。北のクラシックへの適性があるのではないかと思うので、今後の成長にとても期待している。

アルデンヌクラシックでは、ニーバリが狙うと公言した以上、このチームのエースはニーバリとなるだろう。

2015年にはアルデンヌクラシック3連戦に出場し、アムステルゴールドレース65位、フレーシュ・ワロンヌ20位、リエージュ~バストーニュ~リエージュ13位だった。脚質的に最も勝利が期待できるのはリエージュだろう。イル・ロンバルディアのようにアップダウンで攻撃を仕掛け、得意の独走に持ち込みたい。

ヨン・イサギレも2017年のアルデンヌクラシックで好成績を残しており、ダブルエースとして起用される可能性もある。

さらに2012・2016年アムステルゴールドレース優勝のガスパロットはアシストに回るだろうし、アップダウンを苦にしないパンチャー的な脚質を持つモホリッチ、2017年ジロ・デッレミリア(1.HC)優勝のヴィスコンティなど、アルデンヌクラシック向きの選手が多く、強力なメンバーを揃えることが出来そうだ。

新城も例年通りであれば、アルデンヌクラシック3連戦でアシストを務めるものと思われる。

スプリント勝利だけでなく逃げ切り勝利を狙いたい

コルブレッリがスプリンターとしてステージ優勝を狙える存在だ。だが、勝利はわずかに3勝のみ。しかも、そのうち2勝はワンデーレースだった。

期待されたツールでは、集団スプリントに絡むどころか平坦路で千切れるようなことが多々あった。アシストした新城いわく「『今日はもうダメだ』と、すぐ言い出すので励ましながら走っていた」と語っているように、精神的な脆さが露呈しているようだ。エースのヨン・イサギレが初日にリタイアしたことで、重圧が押しかかったことは否めないが、一抹の不安は拭いきれない。

発射台は、ボーレ、ボジッチ、ボニファツィオが務める。

むしろスプリントによるステージ優勝よりも、逃げ切りによるステージ優勝の方が狙いやすいだろう。

ブエルタ第7ステージで独走逃げ切りを決めたモホリッチ、ジロ第8ステージで4人の逃げ集団からラスト1kmで独走に持ち込んで勝利したゴルカ・イサギレ、ワンデーレースではあるがジロ・デッレミリアで独走逃げ切りを決めたヴィスコンティ、新城も2016年ツアー・オブ・ジャパン伊豆ステージでは最終周に独走に持ち込んで勝利している。

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2017年ツアー・オブ・ジャパンに出場したフェン・チュンカイもアタッカーといえる脚質だ。

ピベルニクはジロ第5ステージで、残り周回数を勘違いして独走逃げ切り勝利をあげたと思い込みガッツポーズをしてしまった。しかし、集団スプリントに向けてペースのあがる大集団を引き離す独走力をアピールすることはできた。

ネオプロのパデュンは、U23版ジロ・デ・イタリア第3ステージを含むネイションズカップで3勝をあげており、いずれも逃げ切りからの勝利となっている。上りにも強く、小集団スプリントで勝てるスプリント力を持ったパンチャー的な脚質を持った選手だといえよう。

独走が得意なアタッカーが豊富に揃っており、逃げ切り勝利が期待できる布陣でもある。

ニーバリ、コルブレッリへの依存度が高い布陣

グランツール:★★★★★
北のクラシック系:★★☆☆☆
アルデンヌクラシック系:★★★★☆
スプリント:★★★★☆

バーレーン・メリダは2016年オフに誕生した新しいチームだ。2017年シーズンはチームでわずか12勝のみだった。そのうち7勝をニーバリとコルブレッリが占めており、WTチームランキングでは14位と下位に沈んだ。それでも、新城いわく「新チームとしては100点に近い出来」とのことで、試行錯誤が続くなかでも想定以上の結果を残せた手応えがあったのだろう。

1年目は「新チームだから」という言い訳もできたかもしれないが、2年目こそ本当の勝負となる。新城の言葉を聞く限りでは、その勝負の準備は整っていると見てよいだろう。

2017年に引き続き、中核を担うのはニーバリとコルブレッリだ。怪我に泣いたヨン・イサギレが復活し、ゴルカ・イサギレとポッツォヴィーヴォが新加入したことで総合の戦力を手厚くすることができた。

コルブレッリのためのスプリントトレイン要員としてコレンを獲得し、元U-23世界王者のモホリッチの加入によりステージ優勝も多く狙えるだろう。

新城は2017年世界選で最終盤まで先頭集団に残ることができ、「まだまだ勝負できると思った」とのことで、2018年の目標はツールと世界選を狙うとのことだ。

バランス良くチーム全体が戦力アップしたことで、2年目の飛躍に期待したい。

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