サイバナ

これからサイクルロードレースの話をしよう。略して『サイバナ』。サイクルロードレースのレース結果やコラムなど、お届けします。

戦力分析2019

アージェードゥーゼール ラモンディアール戦力分析!【2019年シーズン】

2018/11/30

絶対的エースのロマン・バルデを主軸に据えるアージェードゥーゼール ラモンディアール。

バルデ中心の布陣は変わらず、若手選手を育成してチームの底上げを図る。

スポンサーリンク

アージェードゥーゼール ラモンディアール2019ロースター

ゲディミナス・バグドナス(33、リトアニア、RS)
ロマン・バルデ(28、フランス、C・PC・D)
フランソワ・ビダール(26、フランス、C)
ミカエル・シュレル(32、フランス、PC)
クレメン・シェヴリエ(26、フランス、C)
ブノワ・コズネフロワ(23、フランス、PS)
ニコ・デンツ(24、ドイツ、R)
シルヴァン・ディリエ(28、スイス、RS・U)
アクセル・ドモン(28、フランス、C)
サミュエル・デュムラン(38、フランス、PS)
ユベール・デュポン(38、フランス、C)
ジュリアン・デュヴァル(28、フランス、RS)
マティアス・フランク(32、スイス、PC)
トニー・ガロパン(30、フランス、PC・RC・E)
ベン・ガスタウアー(31、ルクセンブルク、R)
アレクサンドル・ジェニエス(30、フランス、PC・E)
アレクシー・グジャール(25、フランス、R・T)
カンタン・ジョレギ(24、フランス、P)
ピエール・ラトゥール(25、フランス、A)
オリバー・ナーセン(28、ベルギー、PS・U・D)
ナンズ・ピーターズ(24、フランス、P)
スティーン・ヴァンデンベルフ(34、ベルギー、R・U)
クレマン・ヴァントゥリーニ(25、フランス、S)
アレクシー・ヴィエルモーズ(30、フランス、PC)

・新加入選手
ラリー・ワーバス(28、アメリカ、R・E)←アクアブルースポーツ(PCT、アイルランド)
ドリアン・ゴドン(22、フランス、RS)←コフィディス・ソルシオンクレディ(PCT、フランス)
ジョフリー・ブシャール(26、フランス、PC)←CR4C ロアンヌ(アマチュア、フランス)※トレーニーから昇格
オレリアン・パレパントル(22、フランス、C)←シャンブリーCF(アマチュア、フランス)※2018年8月1日から所属

※ヤーコ・ハンニネン(21、フィンランド)は2019年8月1日より加入予定

・退団選手
ヤン・バーケランツ(32、ベルギー、RC)→チームサンウェブ
ルディ・バルビエ(26、フランス、PS)→イスラエル・サイクリングアカデミー(PCT、イスラエル)
シリル・ゴティエ(31、フランス、C)→ヴィタルコンセプト・B&Bホテルズ(PCT、フランス)
マッテーオ・モンタグーティ(34、イタリア、C)→アンドローニ・ジョカトーリ・シデルメク(PCT、イタリア)


S:スプリンター
C:クライマー
A:オールラウンダー(ステージレーサー)
TS:10km以下の短い距離に強いTTスペシャリスト、TL:30km以上の長距離に強いTTスペシャリスト、T:どちらの性質も持つTTスペシャリスト
PS:スプリントに強いパンチャー、PC:上りに強いパンチャー、P:どちらの性質も持つパンチャー
RS:スプリントに強いルーラー、RC:上りに強いルーラー、R:どちらの性質も持つルーラー
E:逃げのスペシャリスト
L:リードアウトマン
U:石畳・未舗装路に強い
D:ダウンヒルが得意

※年齢は2018.12.31時点で換算

2018年シーズンの主な戦績

・シーズン 15勝
(うちワールドツアー 3勝)

・UCIランキング
 ワールドツアーチーム:6397pts、11位
 ワールドツアー個人:バルデ(1530pts、14位)
 UCIポイント個人:バルデ(2545pts、10位)

・チーム勝利数ランキング
 4勝 ジェニエス
 3勝 ガロパン
 2勝 バグドナス

・レース出場日数ランキング
 85日 デュヴァル
 84日 ディリエ、シュレル
 80日 フランク、ナーセン

・グランツール総合成績

ジロ・デ・イタリア:ジェニエス(11位)、デュポン(20位)、ビダール(37位)
ツール・ド・フランス:バルデ(6位)、ラトゥール(13位)、フランク(55位)
ブエルタ・ア・エスパーニャ:ガロパン(11位)、デュポン(26位)、ガスタウアー(36位)

・モニュメント成績

ミラノ〜サンレモ:ガロパン(26位)
ロンド・ファン・フラーンデレン:ナーセン(11位)
パリ〜ルーベ:ディリエ(2位)
リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ:バルデ(3位)
イル・ロンバルディア:フランク(32位)

戦力補強アナリティクス

評価:★★☆☆☆

ワーバスの数奇なプロサイクリスト人生は、AG2R初のアメリカ人選手の誕生という形でまだまだ続くことになった。2014年にはBMCレーシングをクビになり、引退寸前のところをワールドチームに昇格したばかりのIAMサイクリングに拾われたが、チームは2年後に解散。今度は新チームのアクアブルースポーツに加入し、ツール・ド・スイスで涙のプロ初勝利を飾り、アメリカ王者に輝くなど人生を一変させた。しかし、またもや所属チームがシーズン中にもかかわらず活動終了し解散。

失意のなかにあると思いきや、レースが無いことを良いことに同僚のコナー・ダンと共に「#NoGoTour」を企画。アルプス周辺を全8日間にわたって当てのない自転車旅をしながら、道中の様子をSNSにアップ。それが大きな話題を呼び、ワーバスはアージェードゥーゼールとの契約を勝ち取り、ダンもイスラエルサイクリングアカデミーへの移籍を決めた。

脚質はルーラーで、2018年は出場全レースに完走している、実力と人気を兼ね備えた選手だ。フランスチームに馴染むかは未知数であるが、これまで所属したどのチームよりも安定しているはずなので、結果を残してさらなる契約延長を勝ち取って欲しい。

ゴドンはフランスメディアのインタビューで「私たち若い世代の多くの人たちは、ランス・アームストロングのように偉大なチャンピオンのプロッフェショナリズムやレース中の厳格さにインスパイアされた」と語り、2016年にイタリアのネイションズカップで2位に入った実績が評価され、コフィディスのトレーニーとなった。

2018年シーズンはボックル・デ・ラ・マイエンヌ初日のプロローグで、マチュー・ファンデルポールを下してプロ初勝利を飾った。脚質はルーラー、TTスペシャリストに近いが、上りスプリントでも結果を残しておりスケールの大きな逸材である。

ブシャールは2018年フランス国内アマチュアロード選手権で優勝し、プロも走るツアー・アルザスで総合優勝を飾った。26歳で一気にワールドチームに昇格した晩成型のルーキーだ。

パレパントルのニックネームは「Pinpin」なので、フランス語的には「パンパン」だろうか。トマト料理とリエージュ〜バストーニュ〜リエージュが好きな22歳のクライマーだ。

決してチーム状況が良いとはいえないなか、プロコンチネンタルチームから2名、アマチュア出身の選手を2名獲得するに留まった。ワールドチームから主力級選手の獲得はゼロだ。これは2011年オフ以来の出来事であるが、その時はロマン・バルデを獲得している。育成に力を入れているチームだからこその割り切った補強策だ。

注目選手プレビュー

グランツールよりクラシック?なバルデ

Embed from Getty Images

もはやこのチームはバルデのためのチームといっては過言ではないほどの押しも押されぬ中心選手。しかし、ツール・ド・フランスでの成績は2016年の総合2位を境に徐々に下降線。毎年のようにバルデ向きのコースといわれながら、とうとう2018年は3年連続であげていたステージ優勝をも逃した。トップステージレーサーの印象が強いが、意外にも1クラス以上のステージレースでの総合優勝経験はない。

一方で2018年はツールの石畳区間対策のために、未舗装路を60km以上走るストラーデ・ビアンケに出場。泥にまみれながらも予想外のタフさを発揮して、2位となった。リエージュ〜バストーニュ〜リエージュでは3位となり、自身初のモニュメントの表彰台を獲得した。インスブルックでの世界選手権では4人によるスプリントでアレハンドロ・バルベルデに及ばず2位だった。

このように非常にタフな展開のワンデーレースに強いという新たな一面を見せた。2019年はステージレースだけでなく、ワンデークラシックでの活躍を期待したい。

不思議の人でも変人でも強いラトゥール

Embed from Getty Images

ニックネームは「ロジャー」、イギリス制作のコメディ映画「アリ・G」を好み、イタリア料理のラビオリが大好物、15歳のときに自分の両太ももに名前をつけて辛いときは呼びかけて励ますというどこかで聞いたことのある設定を地で行く変わった人だ。

しかし実力は年々上昇。ボルタ・ア・カタルーニャ、クリテリウム・デュ・ドーフィネ、そしてツール・ド・フランスでもマイヨブランを獲得するなどステージレースで好成績を連発した。2年連続でフランスTT王者に輝き、総合力も非常に高い。それほどの実力を持ちながらも、バルデのために身を粉にして働く姿には心を打たれる。

2019年もバルデがエースで、ラトゥールはアシストの立場だと思われるが、さらなる飛躍を期待したい。

2年連続チーム最多勝のジェニエス

2017年に移籍して以来、2年連続でチーム最多勝となった勝ち頭。座右の銘は「天は自ら助くる者を助く」の言葉どおり、最後まで絶対に諦めないガッツあふれる走りが魅力の選手だ。

短時間高出力を出すパンチャー的な走りを得意とし、逃げ切りからの激坂フィニッシュや小集団スプリントの展開を得意としている。総合力も意外な高く、2015年ジロ・デ・イタリアで総合9位、2018年は総合11位という経験を持つ。

2018年ブエルタ・ア・エスパーニャ第12ステージでは、非常に狭いフィニッシュ地点でディラン・ファンバーレの進路をうまく塞いでステージ優勝を飾った。フィニッシュ後の退避路をなぜかふさいでいたおじさんに突っ込み、肘鉄を食らわす格好となったがなんとか落車は免れ、代わりに2位のファンバーレがおじさんに巻き込まれて落車して2日後にリタイアに追い込まれていた。逃げ切って勝てる男は運も実力のうちなのだ。(ファンバーレは本当にかわいそうでした)

必殺仕事人ガロパン

ブエルタ・ア・エスパーニャ第7ステージは、アップダウンを含む「平坦」ステージで、およそ30人程度まで絞り込まれたメイン集団から、ラスト2kmで勇気あるアタックを仕掛けて逃げ切り勝利を飾った。自身3年ぶりのワールドツアーでの勝利だった。さらに総合11位はキャリア最高の成績だった。

筆者のガロパンへのイメージは「仕事人」だ。何しろ2018年のアージェードゥーゼールはワールドツアーで3勝しかできていないなかで、貴重なワールドツアー勝利を飾り、移籍1年目からチームの期待に応える活躍だったといえよう。

ちなみに本人の好きなレースはロンド・ファン・フラーンデレンとのことだが、2017年の17位が最高成績で、2018年はDNFだった。ナーセンと共に貴重なクラシック要員としての活躍も楽しみだ。

地味にポイントを稼ぐナーセン

Embed from Getty Images

2017年ツール・ド・フランスではベルギーチャンピオンジャージを身にまとい、集団先頭でダウンヒルをかっ飛んでいく姿は抜群の存在感があった。しかし、2018年はベルギーチャンピオンジャージのプレッシャーのためか、周囲のマークが厳しいためか期待された北のクラシックで表彰台に上ることすらできずに不発に終わった。以降のステージレースでも、ステージを狙った走りも控えめでアシストとしてもあまり目立った活躍は見られず。

しかし、ブルターニュクラシック・ウエストフランスで2年ぶりの勝利をあげて、何とか一矢報いた。気がつけばバルデとわずか14ポイント差でチーム2位のワールドツアーポイントを稼ぎ出していた。地味にエース級の活躍をしていたのだった。むしろ改めて振り返ると、ほとんどアシストがいないなかでトップ10圏内に食い込む底力は素晴らしい。

ナーセンはモニュメントを取れる器だと信じている。

電光石火ヴィエルモーズ

まだ10代の頃、攻撃的な走りが光ったヴィエルモーズのアタックはまるで「稲妻」のようだった。そうしてついたあだ名は「ピカチュウ」。プロに入っても苛烈な攻撃性を発揮し続けており、2015年ツール・ド・フランスではミュール・ド・ブルターニュにフィニッシュする第8ステージで集団から飛び出し独走勝利を飾った。

また「自転車選手をやっていなかったら、銀行員になって資産管理の仕事をしたい」と語るほどの経済通で、フランス経済省の晩餐会に招かれ、当時のエマヌエル・マクロン経済大臣(※現フランス大統領)と議論をかわしたほどだ。

そんなヴィエルモーズがいまはバルデの忠実なアシストとして走る機会が多い。バルデと共に高地トレーニングを行っていたが、ツールでは落車の影響で難関山岳ステージを前に無念のリタイア。2019年こそはヴィエルモーズの電光石火の走りを見たい。

チーム総合評価

ステージレース:★★★☆☆
北のクラシック:★★★☆☆
アルデンヌクラシック:★★★☆☆
スプリント:★★★☆☆
個人タイムトライアル:★★☆☆☆
チームタイムトライアル:★★★☆☆
平均年齢:28.1歳

決して成功したとはいえない2018年シーズンから、戦力面では大きな上積みがないため低評価もやむを得ないだろう。一方で、フランス人を中心とした育成チームとして、伸びしろはたっぷりある。

一方でバルデと同じ年齢の選手は6名在籍、さらに所属選手の大半が上りに強いクライマーやパンチャーという構成になっており、バルデを中心に据えた布陣は変わらず。というか、そうそう変えられるものではない。結局、チームの浮き沈みはバルデのパフォーマンスにかかっているといえよう。特に配点の大きいツールでの成績が肝心だ。果たしてバルデはチームの期待、フランス国民の期待、ツールを主催するASOの期待(?)に応えることができるのか。

ナーセンの実力を考えると、もう少し北のクラシックを得意とする選手の補強がほしいところだが、ひとまず現有戦力で来季も戦わねばならなそうだ。新加入のゴドンは身長189cmと大柄で、石畳への適性を示すかもしれない。ディリエ・ヴァンデンベルフと共に、ナーセンを支える戦力になることを期待したい。

(おまけ)サイバナの推しメン:コズネフロワ

アージェードゥーゼールのメガネっ子3兄弟の末弟。かわいい顔して、腹の座った強心臓の持ち主だ。

シーズン最終戦のパリ〜トゥール。未舗装路区間が登場する難関コースへと生まれ変わった大会に、ネオプロのコズネフロワはナーセンのアシストとして出場。

レースの最終盤、チームサンウェブのソーレン・クラークアンデルセンのアタックに対して、クイックステップフロアーズのニキ・テルプストラとコズネフロワが反応。3人が集団から飛び出す展開となった。

後方集団にナーセンが控えているため、コズネフロワは先頭集団内でのローテーションを拒否していた。これに苛立ったテルプストラがコズネフロワを怒鳴りつける様子が何度も映されていた。

テルプストラといえば、SNSで自分の子供と戯れる姿が映された動画を投稿したり、チーム内ではDJ役を買って出てレース前のチームバスを盛り上げたりと、温厚なパパで頼れる兄貴といった印象だ。もちろん選手としては、パリ〜ルーベ、ロンド・ファン・フラーンデレンを制した経験を持つ一流オブザ一流のトップ選手だ。それほどの選手から声を荒らげられ恫喝されては、たまったものじゃない。それにコズネフロワはプロ1年目のルーキーである。新入社員が年齢が一回り上の競合他社の人生の先輩からガチで怒られたら、普通は萎縮するだろう。

そうやってテルプストラとコズネフロワが揉めているうちに、クラークアンデルセンが2人を置き去りにして独走に持ち込んでしまった。今度は2人でクラークアンデルセンを追ってもいいはずだが、あくまでエースのナーセンのためにローテーションは断固拒否。

苛立ちを隠せないテルプストラは、中央分離帯をギリギリでかわすライン取りをした。付き位置にいるコズネフロワがうっかり油断していたら段差に乗り上げて落車していたかもしれない。ベテランを怒らすと怖いのだ。

結局、テルプストラはクラークアンデルセンに追いつけず、コズネフロワは3位でフィニッシュした。

表彰式で、先に壇上に上がったコズネフロワのもとへ、満面の笑みを浮かべるテルプストラが登場。そこでテルプストラはコズネフロワにグッと近づくと、右手を差し出したのだ。さっきまでバチバチやってたテルプストラとは別人の、いつもの皆に慕われる頼れる兄貴の顔をしたテルプストラの姿に面を食らったのか、差し出された右手を握手と気づかず、一瞬反応が遅れていた。やはりコズネフロワも人の子。テルプストラの恫喝にビビっていたのだろう。

そんなコズネフロワは2017年のU23ロード世界チャンピオンだ。まさに大器の片鱗。切れ味鋭いアタックで、2019年はビッグタイトルを狙ってほしい。

スポンサーリンク

-戦力分析2019