CCCチーム戦力分析!【2019年シーズン】

BMCがメインスポンサーを撤退したために、新たに誕生したCCCチーム。

主力選手がごそっと抜けたなか、残留を決めたグレッグ・ファンアーフェルマートを中心としたチーム構成になっている。

CCCチーム2019ロースター

パトリック・ベヴィン(27、ニュージーランド、PS・T)
アレッサンドロ・デマルキ(32、イタリア、RC・E)
ジョセフ・ロスコフ(29、アメリカ、T)
ミヒャエル・シェアー(32、スイス、RS・U)
グレッグ・ファンアーフェルマート(33、ベルギー、PS・U)
ネイサン・ファンフーイドンク(23、ベルギー、RS・U)
フランシスコホセ・ベントソ(36、スペイン、RS)

・新加入選手

サイモン・ゲシュケ(32、ドイツ、RC)←チームサンウェブ
ローレンス・テンダム(38、オランダ、C・RC)←チームサンウェブ
ビクトル・デラパルテ(32、スペイン、C)←モビスターチーム
ハイス・ファンフック(27、ベルギー、R・U)←ロットNL・ユンボ
セルジュ・パウェルス(35、ベルギー、PC)←ディメンションデータ
ルカシュ・ヴィシニオウスキー(27、ポーランド、RS・U)←チームスカイ
アマーロ・アントゥネス(28、ポルトガル、C)←CCC・スプランディ・ポルコウィチェ(PCT、ポーランド)
パウェル・ベルナス(28、ポーランド、R・U)←CCC・スプランディ・ポルコウィチェ(PCT、ポーランド)
カミル・グラデク(28、ポーランド、R・U)←CCC・スプランディ・ポルコウィチェ(PCT、ポーランド)
ルーカス・オウシアン(28、ポーランド、RC・E)←CCC・スプランディ・ポルコウィチェ(PCT、ポーランド)
シュモン・サイノク(21、ポーランド、S)←CCC・スプランディ・ポルコウィチェ(PCT、ポーランド)
ヨナス・コッホ(25、ドイツ、RS)←CCC・スプランディ・ポルコウィチェ(PCT、ポーランド)
ギヨーム・ファンケイルスブルク(27、ベルギー、R・U)←ワンティ・グループゴベール(PCT、ベルギー)
ヤコブ・マレツコ(24、イタリア、S)←ウィリエール・トリエスティーナ(PCT、イタリア)
ウィリアム・バルタ(23、アメリカ、RC)←ハーゲンズベルマン・アクシオン(PCT、アメリカ)
ヨセフ・チェルニー(25、チェコ、T)←エルコフ・オーサー(CT、チェコ)
リカルド・ゾイドル(30、オーストリア、C)←フェルベルメイヤー・シンプロンウェルス(CT、オーストリア)

・退団選手

リッチー・ポート(33、オーストラリア、A・C・T)→トレック・セガフレード
ティージェイ・ヴァンガーデレン(30、アメリカ、A・T)→EFエデュケーションファースト
アルベルト・ベッティオル(25、イタリア、P)→EFエデュケーションファースト
ローハン・デニス(28、オーストラリア、T)→バーレーン・メリダ
ダミアーノ・カルーゾ(31、イタリア、C)→バーレーン・メリダ
ディラン・トゥーンス(26、ベルギー、PC)→バーレーン・メリダ
シュテファン・キュング(25、スイス、TL・R・U)→グルパマ・エフデジ
キリアン・フランキーニー(24、スイス、C)→グルパマ・エフデジ
マイルズ・スコットソン(24、オーストラリア、RS)→グルパマ・エフデジ
ジェンピー・ドリュケール(32、ルクセンブルク、PS・L・U)→ボーラ・ハンスグローエ
ニコラス・ロッシュ(34、アイルランド、C)→チームサンウェブ
ユルゲン・ルーランズ(33、ベルギー、S・L・U)→モビスターチーム
ブレント・ブックウォルター(34、アメリカ、RC)→ミッチェルトン・スコット
ダニーロ・ウィス(33、スイス、P)→ディメンションデータ
トム・ボーリ(24、スイス、T・RS)→UAE・チームエミレーツ
ロイック・フリーゲン(25、ベルギー、P)→ワンティ・グループゴベール(PCT、ベルギー)
サイモン・ゲランス(38、オーストラリア、PS)→引退


S:スプリンター
C:クライマー
A:オールラウンダー(ステージレーサー)
TS:10km以下の短い距離に強いTTスペシャリスト、TL:30km以上の長距離に強いTTスペシャリスト、T:どちらの性質も持つTTスペシャリスト
PS:スプリントに強いパンチャー、PC:上りに強いパンチャー、P:どちらの性質も持つパンチャー
RS:スプリントに強いルーラー、RC:上りに強いルーラー、R:どちらの性質も持つルーラー
E:逃げのスペシャリスト
L:リードアウトマン
U:石畳・未舗装路に強い
D:ダウンヒルが得意

※年齢は2018.12.31時点で換算

2018年シーズンの主な戦績

・シーズン 23勝
(うちワールドツアー 14勝)

・UCIランキング
 ワールドツアーチーム:8779.97pts、4位
 ワールドツアー個人:ファンアーフェルマート(2442.14pts,5位)
 UCIポイント個人:ファンアーフェルマート(2744.47pts、7位)

・チーム勝利数ランキング
 7勝 デニス
 3勝 キュング
 2勝 ファンアーフェルマート、ポート、ヴァンガーデレン、デマルキ

・レース出場日数ランキング
 90日 デマルキ
 83日 キュング
 82日 シェアー
 80日 ファンアーフェルマート、ロッシュ、ルーランズ

・グランツール総合成績

ジロ・デ・イタリア:デニス(16位)
ツール・ド・フランス:カルーゾ(20位)
ブエルタ・ア・エスパーニャ:トゥーンス(33位)

・モニュメント成績

ミラノ〜サンレモ:ルーランズ(5位)
ロンド・ファン・フラーンデレン:ファンアーフェルマート(5位)
パリ〜ルーベ:ファンアーフェルマート(4位)
リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ:トゥーンス(20位)
イル・ロンバルディア:トゥーンス(3位)

戦力補強アナリティクス

評価:★☆☆☆☆

はじめに断っておきたい。低評価ではあるが、スポンサー問題が長引いたことが原因であり、GMのジム・オショヴィッツはできる限りの手を尽くした結果である。しかし、あまりにも流出した戦力は大きすぎた。

昨シーズン、チームTTを除く20勝のうち、残った戦力は5勝分となっている。退団した選手17人のうち、15人がワールドチームへ移籍。入団した選手17人のうち、6人がワールドチームからの移籍で、残りはプロコンチネンタルチーム、コンチネンタルチームからの補強に留まっている。甚大な主力選手流出のなかで、オショヴィッツはチームに残留したファンアーフェルマートのために、可能な限りクラシックで戦える戦力を用意した。

ファンケイルスブルクとファンフックは、ファンアーフェルマートのトレーニングパートナーを務めていた人物で、ファンアーフェルマート直々に獲得を希望したといわれている。ファンケイルスブルクは2011年から2016年までクイックステップに所属し、パリ〜ルーベ出場7回、ロンド・ファン・フラーンデレン出場5回と北のクラシックでの経験は豊富である。ファンフックは2016年パリ〜ルーベ21位、2018年ビンクバンツツアー総合18位など石畳レースで良いリザルトを残している。

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グラデク、ベルナスは共に身長190cm越えのツインタワーだ。2人とも初ワールドチームであるため、パリ〜ルーベ、ロンドへの出場経験はないが、HCクラス以下の石畳レースへの出場経験は豊富で、ファンアーフェルマートのアシストを務めることになる。

ヴィシニオウスキーはチームスカイでの2年間は北のクラシック要員として起用されていたが、スカイ自体がそれほど北クラ向きのメンバーが揃っておらず、活躍の場が限定的だった。それでもオンループ・ヘット・ニュースブラッドでは2位に入る結果を残しており、CCCチームでは活躍の場がたくさん訪れることだろう。

このように北のクラシック要員に関しては、ベッティオル、キュング、ルーランズ、ドリュケールが抜けたものの、それらを十分に補う戦力を揃えることができた。

そして、スプリンターのマレツコを獲得。2クラス以上のレースで通算53勝を誇るものの、ワールドツアーでの勝利はなし。また、勝利の大半が中国や中東などアジアのレースであげたものだ。ヨーロッパのレースでの勝利はわずか3勝に留まっている。また、同じくスプリンターとして若手のコッホ、サイノクを獲得。スプリントトレインに起用できるTTスペシャリストタイプのチェルニーを補強したが、クイックステップやボーラ・ハンスグローエといったワールドクラスのトレインに対抗できる戦力ではない。ステージレースでスプリント勝利量産は難しいかもしれない。

また、ゲシュケ、テンダム、パウェルス、デラパルテ、アントゥネス、ゾイドルなど上りに強い選手を獲得したものの、ステージレース総合上位を狙えるポート、ヴァンガーデレン、カルーゾに代わるステージレーサーの補強はなかった。現有戦力ではステージレースの総合成績を狙うのは厳しいかもしれない。補強した上りに強い選手たちは、山岳ステージでステージ優勝を狙う走りに徹することだろう。

そのなかで、バルタは総合力の高い有望若手で、将来のステージレーサーとして経験を積んで行くものと思われる。

注目選手プレビュー

残留のファンアーフェルマートは、補強したアシスト陣と共にモニュメント制覇を狙う

2011年にBMCレーシングに移籍してから、ワンデーレーサーとして華が開いたファンアーフェルマート。チームへの恩義もあって、スポンサー問題に揺れるなかでも、事態が好転するまで待ちの姿勢を崩さず、男気残留を決めた。ほとんど崩壊しているチームで、もしファンアーフェルマートも移籍していたらと思うとゾッとする。そんなファンアーフェルマートのために、チームは精一杯の戦力を用意した。だからこそ、2019年シーズンの北のクラシックにかけるファンアーフェルマートの意気込みはひとしおだろう。

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2018年はワンデーレースでの勝利はゼロ。どのレースでも、勝負どころでアシストがほとんど残っておらず、ライバルの攻撃をファンアーフェルマートが一人で対応しなくてはならない場面が目立った。北のクラシック要員をしっかり補強したことで、ファンアーフェルマートが戦いやすい状況を作り出すことができそうだ。地元開催のロンド・ファン・フラーンデレン制覇が最大の目標となるだろう。

ダウンアンダーで覚醒したベヴィン

2016年にニュージーランドTT王者となったが、そのタイムトライアル能力が開花したのはBMCレーシングに移籍した2018年のことだった。

アブダビツアー第4ステージ8位、イツリア・バスクカントリー第4ステージ2位、ツアー・オブ・カリフォルニア第4ステージ2位と、ワールドツアーで好成績を残した。いずれも起伏の少ない平坦路のタイムトライアルであり、ベヴィンはひたすら一定ペースで走るTTを得意としている。

そして、ツアー・オブ・ブリテンでは連日のようにステージ上位に食い込み、総合4位となりポイント賞を獲得。パンチャー的な脚質を持ち合わせ、スプリントも得意にしている。

そうして、2019年は再びニュージーランドTT王者となり、ツアー・ダウンアンダーではステージ1勝をあげポイント賞も獲得。総合優勝の期待もかかっていたが、落車負傷による影響のため、最終日に失速してしまった。

バイクがBMCからジャイアントに代わってもタイムトライアルで結果を残し、パンチャー的な脚質も健在であり、今後もステージ優勝を狙った走りが期待できそうだ。

逃げのスペシャリスト・デマルキ

キャリア通算5勝はすべて逃げ切り勝利である、屈指の逃げのスペシャリストである。特に起伏の多い山岳ステージでの逃げを得意としている。

2018年はブエルタ第11ステージで勝利。序盤から形成された19人の逃げ集団には、実績のある有力選手が多数含まれていた。それでも、デマルキは終盤のアタックの掛け合いに対して、見事な対応を披露。自分は無駄脚を使わずに、ライバルが消耗したタイミングで独走に持ち込んで、28秒差で逃げ切ったのだ。ステージ勝利の瞬間は、一切の笑顔がなく、どうにか片手でガッツポーズをとることしかできず、フィニッシュ後はバイクの上でうずくまるほど、デマルキは疲弊しきっており万全な体調ではなかった。デマルキの経験がもたらした勝利だといえよう。

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2019年も逃げ屋としてグランツールでのステージ勝利を狙う。

チーム総合評価

ステージレース:★☆☆☆☆
北のクラシック:★★★★★
アルデンヌクラシック:★★☆☆☆
スプリント:★★★★☆
個人タイムトライアル:★★★☆☆
チームタイムトライアル:★★★☆☆
平均年齢:28.7歳

チームに残留したファンアーフェルマートのための北のクラシック専門チームと化した。むしろ、BMC時代以上にアシストは充実しており、2年ぶりのモニュメント制覇に向けて視界は良好だ。

現状ではグランツール総合を狙うことは非常に厳しく、デマルキをはじめとした逃げ切り狙いのステージ優勝を目標としたチーム編成にしたほうが成果をあげやすいだろう。

集団スプリントでは、マレツコをエーススプリンターに据えて挑むことになるが、ワールドツアーで実績のない選手で過度の期待は禁物だ。

なお、2018年シーズンまでプロコンチネンタルチームのCCC・スプランディ・ポルコウィチェとして活動していたチームは、新CCCチームの育成チームとして再編成。若手ポーランド人選手を中心としたコンチネンタルチームのCCCディベロップメントチームとして活動を継続する。

(おまけ)サイバナの推しメン:シェアー

2017年ジャパンカップサイクルロードレース、筆者はBMCレーシングのアフターパーティを取材していた。

そこで、シェアーは何を聞かれてもおどけた表情で「トーーーーール!」と答えてた。身長196cmの体格を活かしたシェアーの持ちネタである。英語で背が高いという意味の「Tall」と言っているのだ。

シェアーはプロ通算2勝ながら、北のクラシック、スプリントトレインなど様々な場面でエースの過酷な要求に応えてきた仕事人だ。長身でスラリとした体格に加えて、非常に端正な顔立ちをしており、きっとシェアーはクールな性格なのだろうと想像していた。しかし、目の前にいる本物のシェアーは「トーーーーール!」とギャグを言うばかり。まさかのリアルに直面し、クールなイメージは完全に崩れ去った。

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その後もシェアーの様子を観察していると、ファンと記念撮影する際は必ずファンの目線までかがんでおり、パーティの余興でじゃんけん大会をやる際は、率先してジャンケン役を務め、その時ももちろん持ちネタの「トーーーーール!」をかましていた。

また、ジャパンカップのようなシーズン終盤の遠征では、レース前に酒盛りして盛り上がるようなチームも少なくないなか、シェアーは真っ先に「コーヒーをくれ」とチームスタッフに要求。ヨーロッパでのレースとかわらぬルーティンで、どんなレースも疎かにせずプロとしての仕事を全うする非常に真面目な一面も見せていたそうだ。

2014年以来、プロでの勝利はないにもかかわらず、チームはシェアーと契約を続けている理由はそこにある。仕事にストイックながら、チームの雰囲気を明るくするために「トーーーーール!」とおどけることも厭わない。プロサイクリストの見本というべき人格者なのだ。

※参考:リッチー・ポートが目の前に! 選手たちと濃厚な時間を過ごしたBMCレーシング交流会

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