サイバナ

これからサイクルロードレースの話をしよう。略して『サイバナ』。サイクルロードレースのレース結果やコラムなど、お届けします。

戦力分析2019

EFエデュケーションファースト戦力分析!【2019年シーズン】

スポンサー危機を乗り越え、チーム存続したものの2018年は低迷したEFエデュケーションファースト。

大型補強を敢行し、グランツール、クラシック、スプリントいずれも戦えるチームに仕上がった。

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EFエデュケーションファースト2019ロースター

マッティ・ブレシェル(34、デンマーク、PS)
ネイサン・ブラウン(27、アメリカ、R)
ヒュー・カーシー(24、イギリス、C)
サイモン・クラーク(32、オーストラリア、R)
ローソン・クラドック(26、アメリカ、R)
ミッチェル・ドッカー(32、オーストラリア、R)
ジョセフロイド・ドンブロウスキー(27、アメリカ、C)
アレックス・ハウズ(31、アメリカ、RS)
セバスティアン・ラングフェルド(33、オランダ、R・U)
ダニエル・マルティネス(22、コロンビア、C)
ダニエル・マクレー(26、イギリス、S)
サーシャ・モードロ(31、イタリア、S)
ローガン・オーウェン(23、アメリカ、S)
テイラー・フィニー(28、アメリカ、T・RS・U)
トーマス・スクーリー(28、ニュージーランド、R)
リゴベルト・ウラン(31、コロンビア、A)
ジュリアス・ファンデンベルフ(22、オランダ、RS・U)
セップ・ファンマルク(30、ベルギー、PS・U)
マイケル・ウッズ(32、カナダ、C・PC)

・新加入選手

ティージェイ・ヴァンガーデレン(30、アメリカ、A・T)←BMCレーシングチーム
アルベルト・ベッティオル(25、イタリア、P)←BMCレーシングチーム
タネル・カンゲルト(31、エストニア、C)←アスタナプロチーム
モレノ・ホフラント(27、オランダ、S)←ロット・スーダル
ラクラン・モートン(27、オーストラリア、C)←ディメンションデータ
セルジオ・イギータ(21、コロンビア、C)←マンサナ・ポストボン(PCT、コロンビア)
ショーン・ベネット(22、アメリカ、PC)←ハーゲンズベルマン・アクシオン(PCT、アメリカ)
ジェームス・ウェーラン(22、オーストラリア、RS)←ドラパック・EFサイクリング(PCT、オーストラリア)
ルイス・ビラロボス(20、メキシコ、C)←アエボロ(CT、アメリカ)※2019年7月1日から加入
ヨナタン・カイセド(25、エクアドル、C)←メデリン(CT、コロンビア)

・退団選手

ウィリアム・クラーク(33、オーストラリア、RC)→トレック・セガフレード
キム・マグヌソン(26、スウェーデン、R)→リワル・レディネス・サイクリングチーム(PCT、デンマーク)
トム・ヴァンアスブロック(28、ベルギー、S・L)→イスラエルサイクリングアカデミー(PCT、イスラエル)
ジュリアン・カルドナ(21、コロンビア、C)→アンドローニジョカトリ・シデルメク(PCT、イタリア)
ピエール・ロラン(32、フランス、RC)→ヴィタルコンセプト・B&Bホテルズ(PCT、フランス)
ブレンダン・カンティ(26、オーストラリア、R)→未定
ダニエル・モレーノ(37、スペイン、C)→未定


S:スプリンター
C:クライマー
A:オールラウンダー(ステージレーサー)
TS:10km以下の短い距離に強いTTスペシャリスト、TL:30km以上の長距離に強いTTスペシャリスト、T:どちらの性質も持つTTスペシャリスト
PS:スプリントに強いパンチャー、PC:上りに強いパンチャー、P:どちらの性質も持つパンチャー
RS:スプリントに強いルーラー、RC:上りに強いルーラー、R:どちらの性質も持つルーラー
E:逃げのスペシャリスト
L:リードアウトマン
U:石畳・未舗装路に強い
D:ダウンヒルが得意

※年齢は2018.12.31時点で換算

2018年シーズンの主な戦績

・シーズン 6勝
(うちワールドツアー 2勝)

・UCIランキング
 ワールドツアーチーム:4373pts(16位)
 ワールドツアー個人:ウラン(904pts,42位)
 UCIポイント個人:ウッズ(1368pts、38位)

・チーム勝利数ランキング
 2勝 ウラン
 1勝 サイモン・クラーク、ウッズ、マクレー、モードロ

・レース出場日数ランキング
 87日 ロラン
 85日 サイモン・クラーク、ドッカー、カーシー
 84日 ヴァンアスブロック

・グランツール総合成績

ジロ・デ・イタリア:ウッズ(19位)
ツール・ド・フランス:ロラン(27位)
ブエルタ・ア・エスパーニャ:ウラン(7位)

・モニュメント成績

ミラノ〜サンレモ:ブレシェル(12位)
ロンド・ファン・フラーンデレン:ヴァンマルク(13位)
パリ〜ルーベ:ヴァンマルク(6位)
リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ:ウッズ(2位)
イル・ロンバルディア:ウラン(4位)

戦力補強アナリティクス

評価:★★★★☆

スポンサー問題を抱えていた2017年は、移籍市場での出遅れが響き、まともな戦力が揃わずに2018年シーズンを迎えることとなった。だが、2018年は3年契約を結んだEFエデュケーションファースト社から軍資金を引き出し、積極的な補強を敢行。多くの即戦力と将来有望な若手を獲得した。

目玉はヴァンガーデレンだろう。ツアー・オブ・カリフォルニアの個人タイムトライアルを制し、総合2位となった。ステージレーサーとして輝きを取り戻しつつある。EFにとってステージレーサーはウランへの依存が大きく、ヴァンガーデレンはチームの弱点を補う補強となった。タイムトライアル能力が非常に高く、チームTT要員としても期待できるだろう。

カンゲルトは2017年ジロでの大クラッシュによる上腕骨折、右肩脱臼・骨折から見事に復帰。ツール・ド・スイス総合11位、ツール総合16位と力を取り戻しつつある渋い実力者だ。モートンは2017年ツアー・オブ・カリフォルニア新人賞を獲得しており、ブエルタ・ア・コロンビア総合優勝のカイセドも期待のエクアドル人選手だ。イギータは身長166cmと小柄な体格から、ナイロ・キンタナやミゲルアンヘル・ロペスを彷彿とさせるコロンビアンクライマーだ。シーズン途中に加入予定のビラロボスはツアー・オブ・ユタ新人賞を獲得した。

このように山岳アシストになりうる選手を5人ほど獲得しており、ステージレースの戦力強化を図った。

ホフラントはロット・スーダルでは孤独を感じるなど、ポテンシャルを発揮することができず。オランダ人選手も多い多国籍軍団のEFなら、モードロやマクレーと共にエーススプリンターとして起用できるだろう。

ベネットはU23ジロ・デ・イタリアの中級山岳ステージである第6ステージで逃げ切り勝利を飾り、ウェーランはU23ロンド・ファン・フラーンデレンで優勝した共に若手のホープだ。

ベッティオルは2年ぶりの古巣復帰。BMCではグレッグ・ヴァンアーヴェルマートのアシストを務めていたが、良い結果をもたらすことができなかった。だが、キャノンデール時代の2016年にはツール・ド・ポローニュ総合3位、ブルターニュクラシック2位などの実績を持つパンチャーだ。

注目選手プレビュー

ツール落車がとにかく痛かったウラン

コロンビア人選手としては、キンタナ以上のSNSフォロワー数を誇る人気選手にして、EFの看板選手だ。

ツールでの活躍が義務付けられたエースだったが、第9ステージの石畳区間での落車のダメージが響き、第11ステージ終了後にリタイアを決意。ウランの代わりに、クラドックが落車負傷を押して21ステージ完走を果たしたことで話題を呼んでいたため、何とかチームスポンサーをアピールする機会を持てたことは不幸中の幸いである。

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その後のウランはクラシカ・サンセバスチャン6位、ブエルタ総合7位、イル・ロンバルディア4位、ツアー・オブ・グアンシー総合6位とそれなりの結果を残していた。

オフシーズンは母国コロンビアでライドイベントを主催。ゲストにクリス・フルームを招いたことで大きな話題を呼んだ。

2019年も狙いは当然ツールとなる。山岳アシストを補強し、ウランをサポートする体制は整ってきた。総合表彰台を獲得して、チームスポンサーをアピールしていきたいところだ。

波乱万丈を乗り越え、キャリア最高の結果を残したウッズ

激坂フィニッシュとなったブエルタ第17ステージで逃げ切り勝利を飾った。自身初のワールドツアーでのステージ優勝だった。

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という文章だけで語ることはできないほど、ウッズは波乱万丈の人生を歩んできた。

ウッズは元々陸上選手だった。2005年のパンアメリカンジュニア陸上の1500m走で金メダルを獲得するなど、カナダの若手中距離ランナーの有望株だった。オリンピックへの出場を夢見て競技に打ち込んでいたが、度重なる怪我もがウッズを襲った。

左足の舟状骨を何度も骨折し、2008・2010年と手術をしたもののパフォーマンスを取り戻すことができず、陸上競技の第一線から身を引くこととなってしまう。

それでも、ウッズのスポーツへの情熱は失われることはなかった。元々は陸上競技のクロストレーニングとして乗っていた自転車だったが、徐々にレースに出場するようになった。オリンピック出場への夢は、ツール・ド・フランス出場へと変わった。

2015年ツアー・オブ・ユタでステージ1勝をあげ総合2位となると、翌年にキャノンデール・ドラパックでプロデビュー。ウッズはすでに29歳になっていた。同年、リオ五輪ロードレースに出場し、陸上では叶わなかったオリンピック出場を果たした。

2018年シーズンはリエージュ~バストーニュ~リエージュで2位になるなど、クラシックライダーとしての素質も開花しつつあった。遅咲きながら順調にキャリアを重ねるウッズに、また悲劇が訪れる。

同年7月、ウッズの妻は身ごもっていた子供を死産。生まれてきたら”ハンター”と名付ける予定だったウッズ夫妻は子供を亡くし、失意に暮れていた。

そうしたなかで出場したブエルタ。第17ステージのフィニッシュ地点であるバルコン・デ・ビスカヤは最大勾配24%の超激坂。ラスト1kmを切ると、激坂スペシャリストのディラン・トゥーンスとの一騎打ちの様相を呈してきた。チーム監督は無線でウッズに指示を送った。「家族のために勝て」と。残り400mでラストスパートを仕掛けると、トゥーンスはたまらず遅れてしまった。そうして5秒差をつけて勝利を掴んだ。

レース後のウッズは「今日は息子のために勝ちたかったんだ」と涙を流したという。

さらに世界選手権では銅メダルを獲得。秋のイタリアンクラシックではウランとの連携が光り、好成績を連発。2019年に33歳となるが、ウッズはまだまだもっともっと成長できる選手だ。ツール出場の夢を叶えるために。

マルティネス

ワールドチーム1年目はコロンビア・オロ・イ・パス総合5位、ボルタ・ア・カタルーニャ総合7位、ツール・ド・ロマンディ総合12位、ツアー・オブ・カリフォルニア総合3位、コロラド・クラシック総合6位とステージレースで結果を残した。ツールではウランのアシストに徹し、石畳ステージで大きく遅れるなどあって新人賞ランキング5位となったが、今後はグランツールで新人賞を狙っていける実力の持ち主だ。

同い年のエガン・ベルナルの実力が抜きん出ているが、コロンビアの若手世代にはマルティネスのような逸材がゴロゴロいる。まずはプロ初勝利に期待したい。

今年こそワールドツアーで勝ちたいファンマルク

オンループ・ヘット・ニュースブラッド3位、E3ハーレルベーケ7位、ドワルス・ドール・フラーンデレン3位、ロンド・ファン・フラーンデレン13位、パリ〜ルーベ6位と北のクラシックで上位に入賞するも、勝利になかなか届かない。

アシスト不足のため単騎で戦わざるを得ず、後手に回ることが多かった。ラングフェルドに、復調したフィニー、昨シーズン途中に移籍してきたファンデンベルフ、今季新加入のベッティオル、ウェーランなど北のクラシック要員の戦力はアップした。

まだ戦力不足は否めないが、どうにか戦えるメンバーは揃ったので、今シーズンこそファンマルクの勝利を期待したい。

大怪我からの完全復活も近いフィニー

オリンピックメダリストの両親を持つフィニーは、2010年U23世界選手権個人TT王者となり、将来を嘱望されていた。しかし、2014年のアメリカ選手権でガードレールに激突し、脛を骨折するなどの大怪我を負ってしまい、1年以上レースに出場することができず、復帰後も低迷が続いていた。

2018年はパリ〜ルーベで8位入賞を果たし、ツールでは集団スプリントで一桁順位をマーク。復活の兆しを見せる好走だった。

卓越したファッションセンスに、2年前のクラウドファンディングのグッズデザインを手掛け、ユーモアたっぷりな人柄は抜群の人気を誇っている。

ちなみに、ガールフレンドは女子チームのキャニオン・スラム所属のカタジナ・ニエウィアドーマだ。山岳、石畳、スプリント、逃げ、あらゆる局面に対応できるオールラウンダーで、通算14勝飾っている。自身のSNSにはフィニーの写真が3回に1回程度の割合で投稿されている。

というように、フィニーは公私共に充実しつつあるようだ。2013年以来のワールドツアーの勝利を期待したい。

チーム総合評価

ステージレース:★★★★☆
北のクラシック:★★★★☆
アルデンヌクラシック:★★★★☆
スプリント:★★★☆☆
個人タイムトライアル:★★★★☆
チームタイムトライアル:★★★★☆
平均年齢:27.2歳

ステージレースの総合を狙えるウラン、マルティネス、ドンブロウスキー、ヴァンガーデレン。山岳アシストはカーシー、カンゲルト、モートン、カイセド、イギータ。北のクラシックはファンマルク、フィニー。アルデンヌクラシックはウラン、ウッズ。スプリントはホフラント、モードロ、マクレー。

全体を通して見ても、なかなかの戦力が揃っているように見える。しかし、勝利に繋がるような突出した戦力かというと、あとひと押し足りないようにも思えるので、”決して悪くない”戦力だといえよう。

チームの基盤は整ってきたといえる。ここからはGMのジョナサン・ヴォーターズの腕の見せどころだろう。

(おまけ)サイバナの推しメン:ブレシェル

ひょんなことから、ジャパンカップサイクルロードレース本戦の前夜に、ブレシェルと交流する機会があった。柔らかな物腰で、ヨーロッパから遥かに離れた見知らぬ場所で見知らぬ人を相手に、笑顔を絶やさず素晴らしい紳士という印象を受けた。EFエデュケーションファースト・ドラパックのピンク色のキャップにサインを貰って、翌日の本戦は、沿道からマッティ!と叫んで応援しようと心に決めていた。

ブレシェルは、2010年にオーストラリアで開催された世界選手権で2位、母国開催のツアー・オブ・デンマークでは通算9勝を飾るなど、上れるスプリンターとして活躍してきた。2016年以降は勝利に恵まれておらず、アップダウンの厳しいジャパンカップでは、過去2回参戦してどちらも途中リタイアだった。今回もチームにはクライマーのドンブロウスキーがエースと見られており、ブレシェルの役割はアシストと見られていた。

レースでは後半、ロットNL・ユンボ勢の積極的な仕掛けにより、集団が粉々になっていた。わずか数人まで減らされていた先頭集団には、EFのピンクジャージの選手も1人しっかりと残っていた。細身で長身だったので、ドンブロウスキーが勝負に絡める位置に残っているのだとてっきり思っていた。しかし、ゼッケンナンバーを確認すると「31」がハッキリ見え、ブレシェルが集団に残っていることがわかった。

周りはクライマーだらけで、古賀志林道の上りでライバルたちが加速するとブレシェルはどうにか食らいついている状況だった。ロバート・パワーとアントワン・トルホークのアタックに追従する脚は残っていなかったが、ニコラス・ロッシュとイヴァン・サンタロミータの追走集団に留まっていた。

最後はスプリントでロッシュとサンタロミータを下し、ブレシェルは3位表彰台を獲得。スプリンターに近い脚質の持ち主なのに、ジャパンカップでクライマーたちに食らいついて表彰台を獲得したことは、素晴らしい戦果であった。

同日夜、EFのアフターパーティでブレシェルはとてつもない歓待を受け、終始笑顔を浮かべていた。壇上ではこうも語っていた。「スプリントには絶対の自信があった。優勝できなかったことは残念だけれども、シーズンの最後に良い走りができて良かった。2週間後にガールフレンドと結婚するんだけど、『来年のジャパンカップは絶対に勝つ』と約束したんだ」と。ブレシェルの目の奥には、確かな闘志の炎が見えていた。

スプリンターにとっては、優勝以外の結果にほとんど価値はない。それでも周りが喜ぶならと、笑顔でパーティに参加するブレシェルの姿は本当に紳士そのものだった。

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