サイバナ

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戦力分析2019

グルパマ・エフデジ戦力分析!【2019年シーズン】

ティボー・ピノ、アルノー・デマールを擁するグルパマ・エフデジ。

フランス国内の下位カテゴリレースでは無類の強さを誇るものの、ワールドツアーでの存在感は今ひとつ。新戦力は3人と控えめな補強ながら、若手の育成と組み合わせてチームの底上げを図る。

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グルパマ・エフデジ2019ロースター

ブルーノ・アルミライル(24、フランス、R)
ウィリアム・ボネ(36、フランス、RS)
ミカエル・ドゥラージュ(33、フランス、R)
アルノー・デマール(27、フランス、S・U)
アントワーヌ・デュシェーヌ(27、フランス、RS)
ダヴィ・ゴデュ(22、フランス、C)
ジャコポ・グアルニエーリ(31、イタリア、L)
ダニエル・ホールゴール(25、ノルウェー、RS)
イグナタス・コノヴァロヴァス(33、リトアニア、T・RS)
マチュー・ラダニュ(34、フランス、RS)
オリヴィエ・ルガック(25、フランス、R)
トビアス・ルドヴィグソン(27、スウェーデン、T)
ヴァランタン・マデュア(22、フランス、P・E)
ルディ・モラール(29、フランス、RC・E)
スティーヴ・モラビト(35、スイス、RC)
ティボー・ピノ(28、フランス、A・C)
ゲオルク・プライドラー(28、オーストリア、RC)
セバスティアン・ライヒェンバッハ(29、スイス、C)
アントニー・ルー(31、フランス、PS)
マルク・サロー(25、フランス、S・PS)
ロメン・シーグル(24、フランス、PS)
ラモン・シンケルダム(29、オランダ、S・L・)
バンジャマン・トマ(23、フランス、PS)
ブノワ・ヴォグルナール(36、フランス、R)
レオ・ヴァンサン(23、フランス、C)

・新加入選手

シュテファン・キュング(25、スイス、TL・R・U)←BMCレーシングチーム
マイルズ・スコットソン(24、オーストラリア、RS)←BMCレーシングチーム
キリアン・フランキーニー(24、スイス、C)←BMCレーシングチーム

・退団選手

ダヴィデ・チモライ(29、イタリア、S・L)→イスラエル・サイクリングアカデミー(PCT、イスラエル)
アルテュール・ヴィショ(30、フランス、PC)→ヴィタルコンセプト・B&Bホテルズ(PCT、フランス)
ジェレミー・ロワ(35、フランス、R・E)→引退


S:スプリンター
C:クライマー
A:オールラウンダー(ステージレーサー)
TS:10km以下の短い距離に強いTTスペシャリスト、TL:30km以上の長距離に強いTTスペシャリスト、T:どちらの性質も持つTTスペシャリスト
PS:スプリントに強いパンチャー、PC:上りに強いパンチャー、P:どちらの性質も持つパンチャー
RS:スプリントに強いルーラー、RC:上りに強いルーラー、R:どちらの性質も持つルーラー
E:逃げのスペシャリスト
L:リードアウトマン
U:石畳・未舗装路に強い
D:ダウンヒルが得意

※年齢は2018.12.31時点で換算

2018年シーズンの主な戦績

・シーズン 33勝
(うちワールドツアー 8勝)

・UCIランキング
 ワールドツアーチーム:5102pts(14位)
 ワールドツアー個人:ピノ(1500pts、17位)
 UCIポイント個人:ピノ(2340pts、13位)

・チーム勝利数ランキング
 9勝 デマール
 5勝 ピノ、サロー
 3勝 ルー

・レース出場日数ランキング
 82日 モラール
 74日 ルガック
 73日 デュシェーヌ、ヴァンサン
 71日 プレイドラー

・グランツール総合成績

ジロ・デ・イタリア:ライヒェンバッハ(22位)
ツール・ド・フランス:ゴデュ(34位)
ブエルタ・ア・エスパーニャ:ピノ(6位)

・モニュメント成績

ミラノ〜サンレモ:デマール(3位)
ロンド・ファン・フラーンデレン:デマール(15位)
パリ〜ルーベ:サロー(26位)
リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ:モラール(26位)
イル・ロンバルディア:ピノ(優勝)

戦力補強アナリティクス

評価:★★★☆☆

スポンサー問題を抱えていたBMCレーシングチームから、3人獲得するのみというシンプルな補強を実施。

目玉は個人タイムトライアルでシーズン3勝あげたキュングだ。今やローハン・デニス、トム・デュムランに次ぐTTスペシャリストと言っても過言ではない。

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高い独走力を活かしてデマールのためのスプリントトレイン要員として起用もできるし、同郷の英雄であるファビアン・カンチェラーラの後継者と目されているように、将来的にはクラシックスペシャリストとして大成することも期待されている。北のクラシックの戦力が薄いエフデジではエース格として経験を積むことができるだろう。

スコットソンは2017年オーストラリア王者に輝いたこともある。脚質はTTスペシャリスト、もしくはルーラータイプで、キュングと同じくスプリントトレインもしくは北のクラシック要員としての起用が見込まれている。

フランキーニーはボルタ・ア・バレンシアナで新人賞を獲得したクライマーだ。ピノの山岳アシストとして起用されるだろう。

しかし、スプリントの発射台を務めていたチモライが移籍。代わりとなるリードアウト要員の補強がない点は懸念材料の一つである。

注目選手プレビュー

モニュメントを制したピノ

2017年に総合4位と結果を残したジロに出場、第19ステージまで総合3位と表彰台圏内をキープするも、第20ステージは体調を崩してしまい40分以上遅れてフィニッシュ。肺炎のため、最終日にリタイアとなった。失意のジロから一転、ブエルタではステージ2勝をあげる活躍を見せ、総合6位で完走。そして、秋のイタリアンクラシックシリーズでは、ミラノ〜トリノに勝利すると好調そのままにイル・ロンバルディアで独走勝利を飾った。1年を通してみれば、成功のシーズンだったといえよう。

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いまや世界トップレベルのクライマーへと進化した一方で、2016年にフランスTT選手権を制した面影はなく、タイムトライアルは苦手にしている。グランツール総合を獲るためには、山岳ステージで積極的に攻撃を仕掛けるしかない。

ここ2シーズンはピノへのプレッシャーを軽減するために、ジロの総合を狙っていたが、2019年はいよいよツール総合に照準を合わせるとのこと。2年間の経験を糧に、34年ぶりにフランス人マイヨジョーヌの誕生なるか注目だ。

我慢強さが取り柄のスプリンター・デマール

パリ〜ニース第1ステージ優勝、ツール・ド・スイス第8ステージ優勝、そしてツール第18ステージ優勝とワールドツアーで3勝をあげた。いずれも、単純な集団スプリントステージではなかった。

パリ〜ニース第1ステージは、ラスト2kmが平均勾配5%程度の上りスプリントとなっており、上り区間を耐え凌いだデマールが勝利した。スイスとツールは険しい山々を越えた先の平坦ステージであり、特にツールではライバルスプリンターたちが続々とリタイアしていくなかで生き残った希少なスプリンターだった。このように、デマールがスプリンターにとって辛い上りでも、耐え抜く力に優れている。

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また、8月にはツール・ポワトゥ=シャラントで5ステージすべてに勝利する完全総合優勝を果たした。スプリンターながら、独走力・登坂力を兼ね備えたデマールらしい快挙だといえよう。

2019年はミラノ〜サンレモなど春のクラシックを狙い、5月は3年ぶりにジロへの出場を予定している。最大の目標はツールでステージ優勝をあげることだろう。

パンチ力が魅力的なアタッカー・モラール

パリ〜ニース第6ステージでは集団の間隙を突いて、ラスト1kmでアタックを成功させて独走逃げ切り勝利を飾った。自身初のワールドツアーでの勝利だった。さらにブエルタでは4日間リーダージャージを着用するなど自己ベストの総合14位で完走。キャリア最高の一年になった。

アルデンヌクラシックでも適性を見せており、実質的にエース格として出場が予想される。意外性を発揮した逃げ切り勝利に期待したい。

ラヴニール王者の実力が開花しつつあるゴデュ

2016年ツール・ド・ラヴニール総合優勝を飾った逸材は、徐々に類まれなる登坂力を見せ始めている。

秋のイタリアンクラシックではピノのアシストとして好走を披露。山岳アシストとして強力なけん引力がゴデュの武器となっている。

まだ22歳と非常に若いことを考えると、順調な成長ぶりに期待は高まるばかりだ。経験を積みながら、ステージレーサー、グランツールレーサーとしての成長に期待したい。

フランス王者のルー

2008年のプロデビュー以来、エフデジ一筋で走り続ける生え抜きライダーは、2018年フランス選手権で待望の初優勝を飾った。フランス選手権は、もはやフランス籍チーム同士の殴り合いのようなレース展開になりやすく、17人が出場したエフデジは終始レースをコントロール。強敵ジュリアン・アラフィリップの脚を削りながら、最後はルーが4人によるスプリントを制して勝利した。これでエフデジの選手が3年連続フランスチャンピオンジャージを着用することとなった

しかし、通算17勝の大半が1クラスのレースであげたもの。ワールドツアークラスでは、2009年ブエルタのステージ優勝以来なし。2019年はフランスチャンピオンとして、ワールドツアーでの勝利を期待したい。

勝てる選手に育成中なサロー

チーム2位の5勝をあげる活躍を見せた。そのすべてが1月から5月までのシーズン序盤の1クラスまたはHCクラスのレースに集中している。

ワールドツアーレベルでは未勝利ながら、ブエルタではほとんどアシストなしにステージ5位を2回経験した。デマールのアシストとして起用せずに、大事に育ていることから、チームは勝てるスプリンター・パンチャーにしたいのだろう。要チェックな選手だ。

チーム総合評価

ステージレース:★★★★☆
北のクラシック:★★☆☆☆
アルデンヌクラシック:★★★☆☆
スプリント:★★★★☆
個人タイムトライアル:★★★☆☆
チームタイムトライアル:★★★☆☆
平均年齢:27.8歳

グランツール総合を狙える選手は、現状ではピノ一人である。山岳アシストはライヒェンバッハ、ゴデュ、モラール、フランキーニーなど充実している。心配材料はピノの体調面だ。胃腸のトラブル、肺炎、落車負傷などのトラブルさえなければ、少なくとも総合表彰台を狙える戦力は整っている。

北のクラシックはデマール、キュングの上位進出は期待できるものの、優勝争いは厳しいかもしれない。アルデンヌクラシックはモラールに期待だが、同様に厳しいだろう。ピノのイル・ロンバルディア連覇は期待できるものの、アルデンヌクラシックには例年出場していないため、モラール頼みかもしれない。

スプリントはデマールを中心に、最終発射台のシンケルダム、グアルニエーリ、トレイン要員は

下位クラスのレースではルー、サロー、マデュアあたりに勝利は期待できるだろう。

(おまけ)サイバナの推しメン:マデュア

秋のスプリンタークラシックとして伝統のあるパリ〜ブルージュでプロ初勝利を飾った。その勝ち方は集団スプリントではなく、ラスト2kmで集団から飛び出して逃げ切り勝利だった。プロ1年目の選手らしからぬ度胸とタフな独走力を発揮した見事な勝利だった。

マデュアの父ローランも、元プロサイクリストだった。しかもツール・ド・フランスに8度出場し、1995年には総合12位に入った実力者だった。

ジュニア時代はトレックレースでも活躍。2013年ヨーロッパトラック選手権のジュニア個人パシュート銀メダル、ジュニアチームスプリント銀メダルなどの実績を持ちつつ、ロードレースでも多くの勝利を重ねていった。

フランス人アスリートは文武両道を極めることが基本スタイルとなっており、マデュアも2014年から地元ブレストのISEN電気工科学院に通いながら、ブレストの名門アマチュアチームに所属しながらサイクリングに打ち込んでいた。

2016年にはフランスアマチュアロード王者に輝くと、翌年はエフデジとトレーニーとなった。2018年にトップチームに昇格すると、パリ〜カマンベール2位、ダンケルク4日間レース総合7位、ルート・ド・オクシタニー新人賞、ブルターニュクラシック・ウエストフランス8位など結果を残した。

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その集大成がパリ〜ブルージュの勝利だ。さらに4日後のパリ〜トゥールでも5位に入り、シーズンを通して好パフォーマンスを見せていた。

今後の活躍が楽しみな若手フランス人選手なので、注目していきたい。

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