サイバナ

これからサイクルロードレースの話をしよう。略して『サイバナ』。サイクルロードレースのレース結果やコラムなど、お届けします。

戦力分析2019

ロット・スーダル戦力分析!【2019年シーズン】

北のクラシックを得意とするティシュ・ベノート、アルデンヌクラシックを得意とするティム・ウェレンスを擁するロット・スーダル。

長年、チームのエーススプリンターを務めたアンドレ・グライペルが退団し、新たにカレブ・ユアンが加入しており、引き続きスプリントにも注目だ。

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ロット・スーダル2019ロースター

サンデル・アルメ(33、ベルギー、RC)
ティシュ・ベノート(24、ベルギー、PC・U)
ヴィクトール・カンペナールツ(27、ベルギー、TL)
ジャスパー・デブイスト(25、ベルギー、S・PS・L)
トマス・デヘント(32、ベルギー、R・E)
フレデリック・フリソン(26、ベルギー、RS)
アダム・ハンセン(37、オーストラリア、RS)
イェンス・クークレール(30、ベルギー、PS・L)
ビョルグ・ランブレヒト(21、ベルギー、PC)
ニコラス・マース(32、ベルギー、RS)
トーマス・マルチンスキー(34、ポーランド、PC)
レミー・メルツ(23、ベルギー、R)
マキシム・モンフォール(35、ベルギー、C・E)
ローレンス・ナーセン(26、ベルギー、PS)
トッシュ・ヴァンデルサンド(27、ベルギー、S・L)
イエール・ヴァネンデル(33、ベルギー、PC)
ハーム・ヴァンフック(21、ベルギー、C)←ロット・スーダルU23(アマチュア、ベルギー)※2018年7月1日から所属
イエール・ワライス(29、ベルギー、RS・E)
ティム・ウェレンス(27、ベルギー、A、PC・RC・E・U)
エンゾ・ワウテルス(22、ベルギー、S・L)

・新加入選手

カレブ・ユアン(24、オーストラリア、S)←ミッチェルトン・スコット
ロジャー・クルーゲ(32、ドイツ、S・L)←ミッチェルトン・スコット
アダム・ブライス(29、イギリス、PS)←アクアブルースポーツ(PCT、アイルランド)
ブライアン・ファンフーテム(27、オランダ、R)←ルームポット・ネーデルランセローテライ(PCT、オランダ)
カールフレデリック・ハーゲン(27、ノルウェー、P)←チームジョーカー・イコパル(CT、ノルウェー)
スタン・デウルフ(20、ベルギー、RC・U)←ロット・スーダルU23(アマチュア、ベルギー)
ゲルベン・ティッセン(20、ベルギー、PS)←ロット・スーダルU23(アマチュア、ベルギー)※2019年7月1日より加入予定
ラスムス・ブリエルアイバーソン(21、デンマーク、PS)←ジェネラルストア・ボットーリ・ザルディーニ(アマチュア、イタリア)

・退団選手

アンドレ・グライペル(36、ドイツ、S)→フォルトゥネオ・サムシック(PCT、フランス)
ラースユティング・バク(38、デンマーク、RS)→ディメンションデータ
イェンス・デブシェール(29、ベルギー、S・RS)→カチューシャ・アルペシン
モレノ・ホフラント(27、オランダ、S)→EFエデュケーションファースト・ドラパック
マルセル・シーベルグ(36、ドイツ、S・L)→バーレーン・メリダ
ジェームス・ショー(22、イギリス、R)→未定


S:スプリンター
C:クライマー
A:オールラウンダー(ステージレーサー)
TS:10km以下の短い距離に強いTTスペシャリスト、TL:30km以上の長距離に強いTTスペシャリスト、T:どちらの性質も持つTTスペシャリスト
PS:スプリントに強いパンチャー、PC:上りに強いパンチャー、P:どちらの性質も持つパンチャー
RS:スプリントに強いルーラー、RC:上りに強いルーラー、R:どちらの性質も持つルーラー
E:逃げのスペシャリスト
L:リードアウトマン
U:石畳・未舗装路に強い
D:ダウンヒルが得意

※年齢は2018.12.31時点で換算

2018年シーズンの主な戦績

・シーズン 25勝
(うちワールドツアー 7勝)

・UCIランキング
 ワールドツアーチーム:4700.01pts、15位
 ワールドツアー個人:ウェレンス(1480pts、18位)
 UCIポイント個人:ウェレンス(2663pts、9位)

・チーム勝利数ランキング
 8勝 グライペル
 7勝 ウェレンス
 2勝 カンペナールツ、ワライス、デヘント

・レース出場日数ランキング
 91日 ファンデルサンド
 90日 デヘント
 86日 アルメ
 80日 デブイスト

・グランツール総合成績

ジロ・デ・イタリア:アルメ(57位)、ハンセン(60位)、バク(106位)
ツール・ド・フランス:デヘント(65位)、マルチンスキー(103位)、デブイスト(142位)
ブエルタ・ア・エスパーニャ:モンフォール(42位)、デヘント(67位)、アルメ(73位)

・モニュメント成績

ミラノ〜サンレモ:デブシェール(22位)
ロンド・ファン・フラーンデレン:ベノート(8位)
パリ〜ルーベ:デブシェール(10位)
リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ:ヴァネンデール(11位)
イル・ロンバルディア:ウェレンス(5位)

戦力補強アナリティクス

評価:★★★★☆

2012年にチームに加入して以来、計87勝をもたらしたグライペルが移籍。代わりにミッチェルトン・スコットから24歳のユアンを獲得し、一気に世代交代を進めた。ユアンのリードアウトとしてクルーゲも一緒に獲得し、同じくスプリンターのブライスも補強した。スプリントはユアンを中心とした布陣にする方針を打ち出した。

そのユアンは総合化を進めるミッチェルトン・スコットからは干され気味で、内定していたツール・ド・フランスへの出場がキャンセルされ、グランツールを走ることができなかった。ロット・スーダルは総合を全く狙わない(狙えない)チームなので、グランツールへのユアンの出場は約束されたようなものだ。

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身長165cmと小柄な体格を最大限に活かした「超低空スプリント」は、型にハマれば長身のピュアスプリンターを圧倒する爆発的な加速力を誇る。しかし、その力を100%発揮するためには集団先頭でユアンを解き放つリードアウトが重要になってくる。「超低空スプリント」は異様なまでの前傾姿勢をとるため、ライバルスプリンターの背後や、横に並ばれた状態で繰り出すことはできない。

前述のようにクルーゲ、ブライスら新戦力に加え、2年前までチームメイトだったクークレール、デブイスト、ヴァンデルサンドとリードアウトマンの戦力層は申し分ない。最終発射台に繋げるまでのルーラー陣にも、ハンセン、カンペナールツ、マースとベテラン陣が揃っており、リードアウトトレインは非常に強力である。

アマチュアから3人の若手を補強。デウルフはステージレースでは3度総合表彰台を獲得しており、オールラウンドに走れる脚質を持っている。さらにU23リエージュ~バストーニュ~リエージュ6位、パリ〜ルーベ・エスポワールで優勝とワンデーレースにも強い。パリ〜ルーベ・エスポワールは過去にヤロスラフ・ポポヴィッチやボブ・ユンゲルスなど後の総合系の選手が勝利したこともある。

ティッセンはU23ベルギーロード王者となり、少人数でのスプリントを得意としている。ブリエルアイバーソンは、UCIレースでの実績は皆無だが、イタリアのアマチュアカテゴリーのレースで勝利を量産している逸材だ。

注目選手プレビュー

脚質は「ウェレンス」なウェレンス

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ウェレンスは一言で表現しづらい脚質の持ち主だ。

通算23勝を飾っているが、8回独走勝利を決めている。さらにそのうち3回は、2位以下に1分以上の大差をつけての勝利だ。

2016年ツール・ド・ポローニュ第5ステージでは、悪天候のなかフィニッシュまで残り45km地点で集団から抜け出すと、ぐんぐん差を広げて2位に3分48秒差で独走勝利し、同大会の総合優勝も決めた。逃したら総合優勝が決まってしまうという状況で逃げ切りを決めたという点で比較すると、2018年ジロ・デ・イタリア第19ステージのクリス・フルームが思い出されるが、そのときは80kmを独走して2位にちょうど3分差をつけていた。ウェレンスのベースには、長距離をものともしない独走力が下支えになっているといえよう。

さらにビンクバンクツアー(旧エネコツアー)と相性が良く、2度の総合優勝を含む4度の総合表彰台を獲得している。このレースでは、北のクラシックで使われるような石畳や激坂が登場する。なので、石畳をいなしながら、パンチャーらしく激坂を越える力を持っているといえよう。

本格的な山岳ステージを含む2018年のパリ〜ニースでは総合5位に食い込み、長い上りにも十分に対応できることを示した。独走力を活かして、タイムトライアルでも結果を残しており、まさにオールラウンドに戦うことのできる稀有な脚質の持ち主だ。

泥・石畳・激坂好きなベノート

ストラーデ・ビアンケで待望のプロ初勝利を飾った。先頭で逃げる2人に単独でブリッジをかけて、激坂区間で2人を引きちぎって独走に持ち込んで勝つという、強い勝ち方を見せた。

ワンデーレースでサバイバルな展開を得意にしており、北のクラシックでは2018年にE3ハレルベーケ5位、ロンド・ファン・フラーンデレン8位など、たびたび一桁の結果を残している。

ティレーノ~アドリアティコでは総合4位になっており、登坂力も高い。まだ24歳という年齢も魅力で、これからクラシックライダーになるのか、オールラウンダーとして進化するのか、今後が楽しみな選手だ。

ソーシャルエスケープライダー・デヘント

言わずと知れた逃げのスペシャリスト。

2018年はパリ〜ニース、ツール・ド・ロマンディで山岳賞を獲得。さらに、ボルタ・ア・カタルーニャ第3ステージとツール・ド・ロマンディ第2ステージではあまりにも見事で鮮やかな独走逃げ切り勝利を飾った。

ツールでは鳴りを潜めたが、ブエルタでは後半ステージで一気にギアを上げて、山岳ステージでは確実に逃げに乗り山岳ポイントを連取。自身初のグランツールでの山岳賞を手に入れた。

「逃げは乗るものではなく、作り出すもの」を信条とし、ツアー・ダウンアンダーでは逃げようとブリッジをかけてきた選手の元に、デヘント自ら下がって逃げ集団に引き上げる動きも見られた。逃げ集団を統率し、安定させた後に、タイミングを見計らって独走に持ち込む動きはもはや芸術だ。

デヘントのシーズン最終戦となったイル・ロンバルディアのレース後、ベルギーの自宅までウェレンスと共に自走で帰るという企画を実行。アルプス山脈を越える難ルート計1000kmを6日間かけて無事に帰宅。道中、美しい景色やランチの写真をSNSにアップして、純粋に自転車を楽しむ様子が見られた。少人数で長距離走ることがとことん好きな選手なのだ。

また、前述した自走で帰宅の件だけでなく、グランツール出場中に毎日食べた夕食をSNSにアップしたり、「来年はどのグランツールを走ったらいいと思う?」という内容でアンケートを取ってみたところ、「ジロ・ツール・ブエルタ全部!」が最多票を集めて、まんざらでもない反応を見せていたりと、SNSを巧みに使う選手だ。デヘントのSNSアカウントのフォローをオススメしたい。

涙の数だけ強くなれるカンペナールツ

2017年のジロ・デ・イタリアの個人タイムトライアルステージにて、気になっていた女性に向けて、胸に油性ペンで書いた「デートしよう!」というメッセージを世界放送に乗せて猛アピールが実り、デートOKの返事をもらった。しかし、ベルギーチャンピオンジャージ着用者の振る舞いとはいえず、スポンサーへの敬意を忘れているとチームディレクターから苦言を呈され、UCIからも罰金を食らってしまった。ジロ後にデートをしたものの、その女性からは「やっぱりお友達のままでいましょう」とフラレてしまった悲しい過去を持つ。

ところが、カンペナールツはタダでは転ばない男だった。2017年8月の欧州選手権個人タイムトライアルで、前年度王者のヨナタン・カストロビエホを1秒差に抑えて初優勝を飾った。2018年シーズンはベルギー国内タイムトライアル選手権で2年ぶりの優勝を飾り、欧州選手権個人タイムトライアルを連覇。

フラれた女性を見返す力が原動力だったかどうかはわからないが、今のカンペナールツは輝いて見えるのは気のせいだろうか。

鉄人ハンセンのネクストチャレンジは?

2011年のブエルタから続いていた、連続グランツール完走記録は2018年のジロをもってピリオドを打った。その記録は20回連続。

これまで走る機会がほとんどなかったツール・ド・スイスには連続完走記録が始まる2011年以来、GPケベックとGPモントリオールには2010年以来の出場といったように、新たな刺激を堪能している様子だった。

2019年はユアンのスプリントトレインの一角として起用される見込みだが、38歳を迎えるシーズンにどのような挑戦をするのか楽しみだ。

次代の大物・ランブレヒト

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2017年U23リエージュ~バストーニュ~リエージュ優勝、ジロ・チクリスティコ・デッラ・ヴァッレ・ダオスタ総合2位、ツール・ド・ラヴニール総合2位といった実績を引っさげてプロデビューを飾った2018年は大器の片鱗を見せる結果を残した。

まず、5月のツール・デ・フィヨルド第3ステージでは切れ味鋭い上りスプリントを披露。ミヒャエル・アルバジーニ、エドヴァルド・ボアッソンハーゲンといった強豪を抑えてプロ初勝利となるステージ優勝を飾った。

イツリア・バスクカントリー総合18位、ツール・ド・スイス総合20位、ツール・ド・ポローニュ総合18位とワールドツアーのステージレースでも比較的上位で完走。21歳の選手ということを考えると、素晴らしい結果を残したといえよう。

そしてU23世界選手権ロードで銀メダルを獲得。最後はマルク・ヒルシの独走を許したものの、終盤はランブレヒトを中心にレースが展開されており、非常にマークが厳しいなかでの2位は立派だった。

今のところはパンチャー的な脚質を持っており、アルデンヌクラシックでの好成績が期待できるが、登坂力を磨けばグランツールレーサーとなる素質もある。個人的にはフィリップ・ジルベールのようなアルデンヌスペシャリストになるのではないかと期待を寄せている。絶対に注目しておくべき選手の一人として、強く推していきたい。

チーム総合評価

ステージレース:★★☆☆☆
北のクラシック:★★★★☆
アルデンヌクラシック:★★★★☆
スプリント:★★★★★
個人タイムトライアル:★★★★★
チームタイムトライアル:★★★☆☆
平均年齢:27.4歳

グランツールの総合成績は今のところ全く期待できず、というより一切狙っていない。1週間のステージレースに関しては、ウェレンスが総合優勝を狙えるが、山岳が厳しいレースは難しいかもしれない。

それよりもベルギーのチームらしく、屈指のパンチャー陣を主軸に春のクラシックを狙うだろう。北のクラシックはベノート、アルデンヌクラシックはウェレンスが当面のリーダーとなるだろう。

そして、新加入のユアンには大きな期待がかかる。リードアウトトレインの戦力は非常に手厚くなっている。恐らくユアンが臨むグランツールに出場することができるだろうし、高いモチベーションを持って、超低空スプリントを炸裂してくれることだろう。

(おまけ)サイバナの推しメン:ワウテルス

夢は「パリ〜ルーベで勝つこと」と語る、プロ3年目の選手だ。

2014年、ベルギー国内ジュニアロード王者に輝くなど、ジュニアカテゴリーで年間6勝を飾り頭角を現すと、2016年はベルギー国内U23選手権2位を筆頭にスプリントで好成績を残し、ロット・スーダルとの契約を勝ち取った。

しかし、同年の世界選手権では灼熱のドーハの地で完走はしたものの、熱中症のためレース後に病院へ直行。さらにオフシーズン中に膝の怪我のため手術を行い、2017年シーズンのプロデビューが遅れてしまった。オフシーズンに自転車に乗り込めないままにプロのレースを走っても話にならない。この年は9月のツアー・オブ・ブリテンで2度トップ10圏内に入るのがやっとだった。

2018年は年間56日間レースに出場。基礎体力が向上したことで、完走率も高くなり、主にグライペルのスプリントトレインの一角として活躍した。シーズン最終戦のツアー・オブ・グアンシーでは4度トップ10圏内に入賞。大きな進歩を見せた一年となった。しかし、2年間で未勝利に終わっている。

師と仰いでいたグライペルは移籍。新たにユアンが加入し、チームはさらに若いスプリンターも補強している。契約最終年を迎えたワウテルスにとっては、2019年はまさに正念場だといえよう。集団スプリントだけでなく、春のクラシックで結果を残したいところだ。

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