サイバナ

これからサイクルロードレースの話をしよう。略して『サイバナ』。サイクルロードレースのレース結果やコラムなど、お届けします。

戦力分析2019

チーム ユンボ・ヴィスマ戦力分析!【2019年シーズン】

ツール・ド・フランス総合4位のプリモシュ・ログリッチェと、総合5位のステフェン・クライスヴァイク、ステージ2勝のディラン・フルーネウェーヘンを擁するチーム ユンボ・ヴィスマ。

総合・スプリント・クラシックと弱点を的確に補う選手を獲得。非常に隙のないチームに仕上がっている。

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チーム ユンボ・ヴィスマ2019ロースター

ジョージ・ベネット(28、ニュージーランド、A・C)
クーン・ボウマン(25、オランダ、RC・E)
フローリス・デティエ(26、ベルギー、RC)
パスカル・エーンクホーン(21、オランダ、PS・E・U)
ロベルト・ヘーシンク(32、オランダ、PC)
ディラン・フルーネウェーヘン(25、オランダ、S)
アムントグレンダール・ヤンセン(24、ノルウェー、PS・U)
ステフェン・クライスヴァイク(31、オランダ、A・C)
セップ・クス(24、アメリカ、C)
トム・レーゼル(33、オランダ、L)
ベアトヤン・リンデマン(29、オランダ、PC)
パウル・マルテンス(35、ドイツ、P)
ダーン・オリヴィエ(26、オランダ、C)
ニールソン・ポーレス(22、アメリカ、A)
プリモシュ・ログリッチェ(29、スロベニア、A・T・RC・D)
ティモ・ローセン(25、オランダ、PS・L・U)
アントワン・トルホーク(24、オランダ、C・E)
ヨス・ファンエムデン(33、オランダ、T)
ダニー・ファンポッペル(25、オランダ、S)
マールテン・ワイナンツ(26、ベルギー、R・U)

・新加入選手

トニー・マルティン(33、ドイツ、TL・U)←カチューシャ・アルペシン
ミケ・テウニッセン(26、オランダ、PS・U)←チームサンウェブ
レナード・ホフステッド(23、オランダ、RC)←チームサンウェブ
ローレンス・デプルス(23、ベルギー、RC)←クイックステップフロアーズ
タコ・ファンデルホールン(25、オランダ、RS・E)←ルームポット・ネーデルランセローテライ(PCT、オランダ)
ワウト・ヴァンアールト(24、ベルギー、RS・U)←ヴェランダス・ウィレムス(PCT、ベルギー)※一旦、無所属を経て2019年3月から加入
ヨーナス・ヴィングガールド(22、デンマーク、R)←コロクイック(CT、デンマーク)

・退団選手

エンリーコ・バッタリーン(29、イタリア、PS)→カチューシャ・アルペシン
ハイス・ヴァンフック(27、ベルギー、R・U)→CCCチーム
ラルス・ボーム(33、オランダ、R・U)→ルームポット・ネーデルランセローテライ(PCT、オランダ)
ロバート・ワーグナー(35、ドイツ、L)→フォルトゥネオ・サムシック(PCT、フランス)
ブラム・タンキンク(40、オランダ、R)→引退
スタフ・クレメント(36、オランダ、T)→引退


S:スプリンター
C:クライマー
A:オールラウンダー(ステージレーサー)
TS:10km以下の短い距離に強いTTスペシャリスト、TL:30km以上の長距離に強いTTスペシャリスト、T:どちらの性質も持つTTスペシャリスト
PS:スプリントに強いパンチャー、PC:上りに強いパンチャー、P:どちらの性質も持つパンチャー
RS:スプリントに強いルーラー、RC:上りに強いルーラー、R:どちらの性質も持つルーラー
E:逃げのスペシャリスト
L:リードアウトマン
U:石畳・未舗装路に強い
D:ダウンヒルが得意

※年齢は2018.12.31時点で換算

2018年シーズンの主な戦績

・シーズン 33勝
(うちワールドツアー 10勝)

・UCIランキング
 ワールドツアーチーム:7266.95pts、10位
 ワールドツアー個人:ログリッチェ(1951pts、11位)
 UCIポイント個人:ログリッチェ(2375pts、12位)

・チーム勝利数ランキング
 14勝 フルーネウェーヘン
 8勝 ログリッチェ
 4勝 クス
 3勝 ファンポッペル

・レース出場日数ランキング
 82日 ファンポッペル、リンデマン、ローセン、ボウマン
 81日 ヴァンフック
 80日 ベネット、ワイナンツ
 79日 ファンエムデン、レーゼル

・グランツール総合成績

ジロ・デ・イタリア:ベネット(8位)、ヘーシンク(23位)、バッタリーン(34位)
ツール・ド・フランス:ログリッチェ(4位)、クライスヴァイク(5位)、ヘーシンク(31位)
ブエルタ・ア・エスパーニャ:クライスヴァイク(4位)、ベネット(35位)、デティエ(41位)

・モニュメント成績

ミラノ〜サンレモ:ファンエムデン(24位)
ロンド・ファン・フラーンデレン:ローセン(14位)
パリ〜ルーベ:ヤンセン(16位)
リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ:ヘーシンク(24位)
イル・ロンバルディア:ベネット(10位)

戦力補強アナリティクス

評価:★★★★★

かねてから移籍の噂はあったものの、急遽ヴァンアールトの加入が発表された。シクロクロス世界選手権3連覇中のスーパースターを獲得した時点で満点の補強だといえよう。昨シーズン、春のクラシックに本格参戦すると、ストラーデ・ビアンケでいきなり3位表彰台を獲得し、ヘント〜ウェヴェルヘム10位、ロンド・ファン・フラーンデレン9位、パリ〜ルーベ13位といきなり好成績を連発。ほとんどアシストがないなかでこの成績は立派だ。

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そして、マルティンとテウニッセンも石畳巧者である。既存戦力をあわせて、ヴァンアールトを強力にバックアップする体制は整っている。

マルティン、テウニッセンに求められるもう一つの役割は、フルーネウェーヘンとファンポッペルのリードアウトだ。昨年はローセン頼みのところがあったが、テウニッセンは最終発射台も務められるパンチ力を持っている。ファンデルホールンもスプリント力が高く、リードアウトトレインは大幅戦力アップとなった。

ホフステッド、デプルスと上りに強い若手を獲得。トルホーク、クス頼みだった山岳アシスト陣の厚みが一気に増した。

フルーネウェーヘンとログリッチェの2大エースのサポート要員を的確に補強した上に、チームのウィークポイントであった北のクラシックでエースを張れるヴァンアールトを獲得したとあっては、星5つでは済まないくらい完ぺきな補強だといえよう。

注目選手プレビュー

ネクストグランツールチャンピオン・ログリッチェ

元スキージャンパーという異色の経歴を持つログリッチェはまだプロ4年目だ。2018年はイツリア・バスクカントリー、ツール・ド・ロマンディ、ツアー・オブ・スロベニアで総合3連勝を飾り、ツールでは総合4位と大健闘。以前に増して登坂力が身についているように見えた。

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さらにツール第19ステージでは、最後のダウンヒルで猛スパート。精鋭揃いのマイヨジョーヌグループを19秒も引き離してステージ優勝を飾った。スキージャンプ仕込みのダウンヒル技術は、プロトンで3本指に入るといっても過言ではない。

得意のタイムトライアルでもシーズン2勝を飾っており、総合を狙うオールラウンダーとして隙が見当たらない。2019年グランツール総合優勝の有力候補だといえよう。

完全復活、そして悲願の表彰台を狙うクライスヴァイク

悪夢の雪壁クラッシュからはや2年。クライスヴァイクは、総合優勝をほとんど手中に収めかけていた2016年ジロのパフォーマンスを取り戻したかもしれない。

ツールではログリッチェとの共闘がピタリとハマって、総合5位。続くブエルタでも総合4位と好成績を残した。山岳ステージではアタックを仕掛ける場面が何度も見られ、クライマーらしいアグレッシブな走りが蘇ってきた。年齢は31歳と、グランツールレーサーとしては、いまがもっとも旬な時期。

今シーズンもツール・ブエルタへの出場を予定しており、悲願の総合表彰台を狙う。

世界最強スプリンター・フルーネウェーヘン

スプリンター単体の力を評価するのであれば、フルーネウェーヘンこそが世界最強のスプリンターだと主張したい。シーズン18勝のエリア・ヴィヴィアーニは本人の実力も素晴らしいが、それ以上にクイックステップトレインの力が非常に大きかった。そうなると、ツールではほとんど一人でポジション取りをしながらステージ2勝を飾ったフルーネウェーヘンの実力はずば抜けている算段になる。

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実際、ムキムキボディからのパワースプリントは威力満点。さらに、トレインがなくても野生の嗅覚と卓越したボディバランスで好位置をキープし、最前線でスプリントに絡むことができれば、その勝率は非常に高い。

シーズン序盤・終盤ではローセンの好リードアウトが光っていたが、今季はリードアウトトレイン陣も大幅に戦力アップ。クイックステップやボーラ・ハンスグローエといった強力トレインに対抗できる戦力が整ったので、フルーネウェーヘンのさらなる勝利増産が期待できそうだ。

第3の男・ベネット

クライマーとして安定した力を発揮できるようになってきた。昨シーズンはティレーノ~アドリアティコ総合9位、ボルタ・ア・カタルーニャ総合6位、ツアー・オブ・ジ・アルプス総合5位、ジロ・デ・イタリア総合8位、ツール・ド・ポローニュ総合4位と一桁順位を連発。ステージ勝利こそないが、粘りの走りで先頭集団に食らいつく力が備わっているのだ。

ブエルタではクライスヴァイクの山岳アシストとして奮闘。現状ではログリッチェ、クライスヴァイクに次ぐ3番手エースでもあり、最も計算できる山岳アシストでもある。

衝撃のけん引力を持ったクス

2017年、ラリーサイクリング時代に出場したツアー・オブ・ユタでは、総合優勝を飾ったロブ・ブリトン(カナダ)の頼れる山岳アシストとして、猛威を奮っていた。その活躍を見込まれ、このチームにやってきたが、1年目からその実力の片鱗を見せつけた。

1年後のツアー・オブ・ユタでは、驚異的な登坂力・ダウンリル・独走力を発揮し、ライバルたちを圧倒。ステージ3勝を飾り総合優勝を飾った。そうしてグランツール初出場となったブエルタでは、山岳ステージでライバルチームの山岳アシストを壊滅させるほどの強烈なけん引を披露。期待以上の結果を残した1年だった。

童顔だけどタフで凄いトルホーク

高身長のヘーシンクあたりと並ぶと、もはや父親と子供に見えるほどの童顔の持ち主た。ジャパンカップに2年連続出場し、4位・2位と上位に入ったことで日本のファンからの人気も増している。

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もともとは2017年ツール・ド・スイスで、連日の雨・雪・低温という悪天候のなか逃げまくって山岳賞を獲得。そのまま同年の豪雨のジャパンカップに半袖で出場し、序盤から逃げに乗り、終盤にメイン集団からブリッジしてきた選手たちに追いつかれても遅れることなく、先頭集団内の4位でフィニッシュ。顔に見合わないタフさが魅力の選手だ。

昨年のツールでは新人賞候補に目されながらも、ログリッチェとクライスヴァイクのために献身的に働いた。忠誠心も厚い。今季はジロに暫定出場メンバーに名を連ねており、ログリッチェの総合のために身を粉にして働く姿が見られることだろう。

童顔だけどタフで凄いボウマン

ユンボの童顔ブラザーズといえば、トルホークとボウマンのことをいう。ファンタジー小説の主人公のようなブロンドヘアと小顔の持ち主。かわいい見た目に反して走りはエゲツない粘り強さが持ち味で、特に山岳ステージでの逃げを得意としている。

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トルホークとともにジャパンカップに2年連続出場し、日本をモチーフにしたスペシャルペイントが施されたバイクにまたがり出場。序盤から得意の逃げに打って出て、チームの攻撃態勢を整える役割を果たした。

今季はトルホークとともにジロに出場予定だ。山岳アシストや逃げに乗って前待ち要員など、戦術の幅を広げてくれることだろう。

ベテランになり円熟味を増したヘーシンク

かつてはオランダを代表するステージレーサーとして活躍していたが、近年は山岳ステージ狙いのパンチャーに転向。ジャパンカップにも出場し、宇都宮ブリッツェンがコントロールしていた集団を一撃で粉砕する強烈なアタックを見せた。トルホークと共に数的優位を築いたにもかかわらず、メカトラで集団から脱落してしまい、7位に終わった。トラブルさえなければ、ヘーシンクが勝っていたかもしれない。

一方でステージレースでは、山岳アシストを務める機会が増えてきた。昨年のツールではログリッチェとクライスヴァイクのアシストとして献身的に走っていた。2010年ツール総合4位の経験は、ログリッチェとクライスヴァイクだけでなく、トルホークやボウマンなど若手にとっても頼りになる存在である。

チーム総合評価

ステージレース:★★★★★
北のクラシック:★★★★★
アルデンヌクラシック:★★★☆☆
スプリント:★★★★★
個人タイムトライアル:★★★★★
チームタイムトライアル:★★★★☆
平均年齢:27.0歳

ステージレースでは、ログリッチェ、クライスヴァイクの2大エースに、ベネットがセカンドエースとして控えている。山岳アシストとして、ヘーシンク、トルホーク、クス、ボウマンに加えて新戦力のホフステッド、デプルスが加わった。ポーレスも上りに強くオールラウンドに活躍できる選手だ。ヘーシンク以外みな25歳以下の若手選手なので、成長度合いによっては世界屈指の山岳アシスト陣となることも夢ではない陣容だ。

エーススプリンターはフルーネウェーヘン、セカンドエースとしてファンポッペルが起用されるだろう。最終発射台は引き続きローセンが務めるが、新加入のテウニッセンにもその役割をこなせる力があるだろう。ヤンセン、レーゼル、エーンクホーン、そしてマルティンらスピードマンが最終発射台につなぐ役割をこなす。テウニッセン、マルティンの加入で一気に厚みが増した印象だ。

そして、ヴァンアールトを筆頭に、石畳巧者が多く揃った。北のクラシックで十分に勝てるチームになっている。唯一の弱点はアルデンヌクラシックかもしれない。ログリッチェやヘーシンクに適性はあると思うが、彼らの狙いはグランツールであり、アルデンヌクラシックに出場したとしても調整が一番の目的となるだろう。

(おまけ)サイバナの推しメン:エーンクホーン

BMCディベロップメントチームで2年間過ごした後、母国オランダのトップチームでプロデビュー。2017年12月のトレーニングキャンプ中に先輩に勧められた睡眠導入剤を使用したところ、それはチームが許可していない睡眠薬だった。朝になっても先輩は目覚めず、エーンクホーンらとともに病院に搬送され一夜を過ごした。UCIのルールに抵触してわけではなかったが、事態を重く見たチーム判断により先輩は解雇処分、エーンクホーンは2ヶ月の出場停止処分となった。

波乱のプロ幕開けとなったが、3月のセッティマーナ・コッピ・エ・バルタリ第1ステージで逃げ切りを決めてプロ初勝利。4月のロンド・ファン・フラーンデレンでは逃げ集団に乗り込み、8月のコロラド・クラシック第3ステージで集団スプリントを制して2勝目。ツアー・オブ・ブリテンでは総合10位に入る活躍を見せた。5月下旬のツール・ド・フィヨルド以降は出場したレースすべてに完走しており、プロ1年目から期待以上のパフォーマンスを見せていた。

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現在はマーストリヒト周辺のベルギーとオランダの国境付近に住んでおり、トレーニングコースにはアルデンヌクラシックでお馴染みのアップダウンを厳しいコースが含まれている。登坂力を鍛え、ワンデーレーサーとして活躍したい思いがあるようだ。持ち前のスプリント力に加えて、短い上りをこなす力が身につけば、クラシックスペシャリストとして活躍できそうだ。

チームはエーンクホーンを北のクラシック要員として期待している。2019年はE3ビンクバンク・クラシック、ロンド・ファン・フラーンデレン、パリ〜ルーベなど重要なレースに起用する見込みだ。

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