ジロ・デ・イタリア2017のコースが発表された。
記念すべき第100回大会となる2017年のジロは、全ステージがイタリア国内で行われる。
サルデーニャ島をスタートし、シチリア島を経由して、イタリア半島の南部から北部に向かってステージは進み、最終ステージはミラノで行われる個人TTだ。途中のステージも激しい山岳のオンパレードで、ジロらしいコースレイアウトという印象だ。
節目の大会で、全てイタリア国内で行われるとなると、イタリア人選手たちのモチベーションは高いに違いない。ファビオ・アル、ヴィンチェンツォ・ニーバリ、ダビド・フォルモロ、ディエゴ・ローザ、ジャンルーカ・ブランビッラあたりは、マリアローザの有力選手たちだ。
ツール・ド・フランスにも、第100回大会はあった。2013年がその年にあたる。
2013年のツールも、全ステージがフランス国内を通るように設計されていた。さぞかし、フランス人選手たちはモチベーション高く表彰台を狙っただろうと思われたが、ロメン・バルデの総合15位が最高と、トップ10に選手を送り込むことすら出来なかった。辛うじてクリストフ・リブロンがフランス人唯一のステージ優勝をあげ、総合敢闘賞を獲得したが、フランスの惨敗と言っても良い。
では、2013年のツールの中心人物は誰だったかと言うと、クリス・フルームである。初のマイヨ・ジョーヌを獲得した年であるからだ。
フルームがジロに出場する可能性
現状では、アルがジロの出場が濃厚とのことで、ニーバリはツールに出場するとは限らないというスタンスで、フルームはジロに興味を持っているという様子だ。
しかしながら、フルームはかつてジロに出場したことが2回ある。
2009年、プロコンチネンタルチームのバルロワールド時代に1回、そしてスカイプロサイクリングチーム(現チームスカイ)発足初年度である2010年の2回だ。
2009年は総合36位、2010年は第18ステージでリタイアとなった。当時はまだ無名選手で、フルームが名を上げたのは、2011年のブエルタでの出来事だ。
近年は、ツールとブエルタの両方に出場する年が多くなっている。2012・2014〜2016年はツールとブエルタに出場している。つまり、年に2回はグランツールに出場する意思と体力を持ち合わせていることになる。
ツール・ド・フランスが最優先であることは揺るぎないだろうが、フルームにはダブルツールという大きな目標がある。特にツールを含むダブルツール達成者は、1998年にジロとツールを制したパルコ・パンターニ以来達成者がいない。(ジロとブエルタを制したダブルツールは、2008年にアルベルト・コンタドールが達成している)
5月にジロ、7月にツール、8月下旬からブエルタと、3週間に渡って3000km以上走るグランツールを2ヶ月に1度のペースで走ることは、決して簡単なことではない。ゆえに、挑戦する価値のあることだ。
フルームの武器は一定ペースで登るクライミングとタイムトライアル
2016年のブエルタでは、ライバルのナイロ・キンタナたちが一度は振り切ったはずのフルームが、得意のペース走行でゾンビのように蘇った第17ステージの印象が強く残っている。ナイロ・キンタナは、『パワーメーターは禁止すべきだ』と言ってしまうほど、フルームの一定出力で登るクライミングは強力である。
だが、ペース走行には弱点がある。激坂に弱いことだ。
ナイロ・キンタナやアルベルト・コンタドールは、ダンシングを使って、ペースを変えながら軽やかに登っていくことが得意だ。ゆえに、激坂と呼ばれる斜度の厳しい登りも駆け上がっていくことが可能だ。
2016年のブエルタは、例年に比べて激坂の登場回数が多く、フルームは苦しめられた。第19ステージの個人TTでの圧倒的な走りを見ている限り、不調だったのではなく、単にコースがフルーム向きでなかったと考える方が自然ではないだろうか。
フルームは、ダブルツールを狙うためには不向きなブエルタよりもジロに出場した方が良いのではないかと思える。
なぜなら、ジロの山岳コースは常識外の標高を走るが、勾配はブエルタほど厳しくない。むしろ長い登りが多く登場するため、ペース走行を得意とするフルーム向きではないだろうか。
2017年のジロには、個人TTのステージが2つある。第10ステージはアップダウンを含む39.2km、最終第21ステージは28kmの平坦路、あわせて67.2kmとなっている。
フルームのもう一つの武器、いやフルームが世界最強たる所以は、抜群のタイムトライアル能力を持っていることだ。他のグランツールレーサーを全く寄せ付けない圧倒的なTT力によって、いとも簡単に数分差のタイムをつけてしまう。ライバル選手からしたら、恐ろしいほどのTT能力だ。
67.2kmもTTがあるとなると、TTが苦手な選手とは致命的なタイム差が付きかねない。ブエルタの厳しい山岳ステージでも、フルームはキンタナから最大でも30〜40秒程度の遅れにとどめていた。(コンタドールのアタックに乗じて逃げたステージでは3分ほどのタイム差がついたが…)
ライバル選手からしてみれば、TTで遅れたタイムをフルームが得意とする山岳で奪い返すことは、非常に困難なことである。
2017年のツールも決してフルーム向きとは言えない
ジロはフルーム向きで、ブエルタは地形的にフルーム向きでない。そして、2017年のツールも、フルーム向きであるとは言えないコースレイアウトとなっている。
※参考:ツール・ド・フランス2017コース発表!フルームに不利?キンタナに有利?
となると、ジロへの出場の可能性が高いのではないかと考えたくなる。というか、期待したい。
フルームがマリア・ローザを着る姿を見てみたいなと思う。ちょうど、ツール・ド・フランス第100回大会でマイヨ・ジョーヌを着たように。
フルームのダブルツールの最大の障壁は自身の体力ではなく、わたしはアシストの体力だと考えているが、この話はまたの機会に書きたいと思う。
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