2016年シーズンは、あまりインパクトのある活躍が出来なかったキャノンデール・ドラパックの戦力分析です。
TTスペシャリストのテイラー・フィニー、クラシックスペシャリストのセプ・ファンマルクを加えた陣容となっています。
キャノンデール・ドラパック2017ロースター
アルベルト・ベッティオール(イタリア)
パトリック・ベビン(ニュージーランド)
ネイサン・ブラウン(アメリカ)
サイモン・クラーク(オーストラリア)
ローソン・クラドック(アメリカ)
ジョー・ドンブロウスキー(アメリカ)
ダヴィデ・フォルモロ(イタリア)
アレックス・ハウズ(アメリカ)
クリスチャン・コレン(スロベニア)
セバスチャン・ラングフェルド(オランダ)
ライアン・マレン(アイルランド)
ピエール・ロラン(フランス)
トムス・スクジンス(オーストリア)
トム=イェルト・スラフテル(オランダ)
アンドリュー・タランスキー(アメリカ)
リゴベルト・ウラン(コロンビア)
ディラン・ファンバールレ(オランダ)
ダヴィデ・ヴィレッラ(イタリア)
ワウテル・ウィッパート(オランダ)
マイケル・ウッズ(カナダ)
・新加入選手
テイラー・フィニー(アメリカ)←BMCレーシング
セプ・ファンマルク(ベルギー)←ロットNLユンボ
トム・ファンアスブロック(ベルギー)←ロットNLユンボ
ヒュー・カーシー(イギリス)←カハ・ルラル(PCT、スペイン)
ブレンダン・キャンティ(オーストラリア)←ドラパック・プロサイクリング(PCT、オーストラリア)
ウィリアム・クラーク(オーストラリア)←ドラパック・プロサイクリング(PCT、オーストラリア)
トーマス・スカリー(ニュージーランド)←ドラパック・プロサイクリング(PCT、オーストラリア)
・退団選手
ジャック・バウアー(ニュージーランド)→クイックステップ・フロアーズ
マッティ・ブレシェル(デンマーク)→引退
アンドレ・カルドソ(ポルトガル)→トレック・セガフレード
ジョナサン・ディベン(イギリス)→チームスカイ
フィリップ・ガイモン(アメリカ)→引退
ベンジャミン・キング(アメリカ)→ディメンションデータ
アラン・マランゴーニ(イタリア)→NIPPOヴィーニファンティーニ(PCT、イタリア)
モレーノ・モゼール(イタリア)→アスタナ
アムナス・ナヴァルダスカス(リトアニア)→バーレーン・メリダ
クリストファー・スクジャーピング(ノルウェー)→チーム・ジョーカー(CT、ノルウェー)
ルーベン・ツェプンケ(ドイツ)→未定
絶対的エースは不在だが、ウランの力が一つ抜けているか
キャノンデール・ドラパックには、総合を狙える選手が多数在籍しています。
リゴベルト・ウラン、アンドリュー・タランスキー、ダヴィデ・フォルモロ、ジョー・ドンブロウスキー、ピエール・ロランです。
ウランはジロ・デ・イタリアで総合2位を2回(2013・2014年)獲得したことがあります。このメンツの中では、頭一つ力が抜きん出ているように思えますが、ツール・ド・フランスとブエルタ・ア・エスパーニャとの相性は悪く、ジロ以外では2011年ツールの総合24位が最高です。
まずは、ウランでジロの総合上位を狙うことがチームのミッションの一つであると言えそうです。
タランスキー、フォルモロは共に2016年ブエルタに出場し、それぞれグランツール自己最高の総合5位と総合9位で完走しています。ブエルタの激坂区間でもしぶとく耐えていた両者の姿が印象的です。フォルモロはまだ24歳と若く、これからの伸びしろにも期待が持てる選手です。
ドンブロウスキーは、グランツールで良い結果はまだ出せていませんが、イキの良い選手です。2015年はツアー・オブ・カリフォルニア総合4位、ツアー・オブ・ユタ総合優勝と、将来を期待させる走りを見せていました。
2016年に移籍してきたピエール・ロランは、ユーロップカー時代とは異なり、キャノンデールでは最新の科学トレーニングを行っていることに驚き、『フランスは石器時代だよ』という発言をして、グランツールでの成績向上が期待されていました。
しかし、誠に残念なことですが、2016年シーズンのロランは何一つ良いところが無く、あまりにも期待はずれの結果に終わってしまいました。
2017年シーズンのロランは、いよいよグランツールの総合を諦め、ステージ優勝狙いに切り替えてジロとツールに挑むとの報道がありました。
早々に総合争いから遅れたツール以降のステージレースでは、積極的に逃げてステージ優勝を狙うシーンが見られました。今オフのトレーニング等を通じて、パンチ力を身につけることが出来れば、ステージ優勝を狙えるパンチャーとして活躍の余地があると思います。
もはや、ほとんどの人が期待していないであろうロランを、わたしはまだ諦めたくありません。ぜひ復活して欲しい選手の一人です。
強力な山岳アシストは不在だが、将来性のある若手クライマーに注目
チームスカイやモビスターのように、ピュアクライマー的な山岳アシストはいません。ウラン、タランスキー、フォルモロ、ドンブロウスキーらがお互いにアシストする展開になりやすいかと思います。
決戦の地へ導くサポート役としては、サイモン・クラーク、ローソン・クラドック、トムス・スクジンス、マイケル・ウッズあたりの登坂力は優れていると言えましょう。
ジャパンカップで優勝したダヴィデ・ヴィレッラも、2016年シーズン終盤に向けて、どんどん調子を上げていった選手で、2017年以降の飛躍に期待したいです。
カハルラルから獲得した、ヒュー・カーシーは「フルーム二世」と称される若手イギリス人クライマーです。グランツール初出場となった2016年ブエルタでは、持ち味を発揮することが出来ませんでした。ワールドチームに移籍してさらなる活躍に期待をしたい注目の選手です。
また、若手ではアルベルト・ベッティオール、ディラン・ファンバールレ、ネイサン・ブラウン、ブレンダン・キャンティは、登坂力を持った選手と言えましょう。
総合で上位を狙うには、エース格の選手たち自身の力が何よりも重要と言えそうです。
TTスペシャリストはマレンに注目
2016年シーズンのキャノンデールの弱点はTTでした。TT力に優れた選手がほとんどいないため、チームタイムトライアルは苦手としていました。
その中で、有望株と言える選手が世界選手権個人TT5位のライアン・マレンです。走りだけでなく、ホットシートに2時間近く座り続け、靴を脱ぎ足を組んでスマホを触りながら待っていた姿も世界に痛烈なインパクトを残しました。
2017年に23歳を迎える期待の新星は、身長189cm・体重77kgの大柄な体格を活かし、チームで貴重なTTスペシャリストとして、ルーラー的な役割を与えられる機会が増えるのではないかと思います。
BMCレーシングから獲得したテイラー・フィニーにも期待が集まります。2010年世界選手権U-23個人TT優勝、2012年世界選手権個人TT2位の実力は伊達じゃないです。
同じく新加入のウィリアム・クラークもTTスペシャリストです。2014年ツアー・オブ・ジャパン堺ステージで優勝を飾ったこともあります。
キャノンデールはTTスペシャリストを補強して、弱点を補うことに成功しました。
ファンマルクの獲得で、クラシックレースの台風の目となれるか
クラシックレース・ワンデーレースでのエースはロットNLユンボから獲得したセプ・ファンマルクが務めることでしょう。
意外にもワールドツアークラスのレースでの優勝経験はなく、2013年パリ〜ルーベ2位、2010・2016年ヘント・ウェベルヘム2位、2014・2016年ツール・ド・フランドル3位と、惜しい結果が続いています。
春の石畳クラシックを得意としており、共に移籍してきたトム・ファンアスブロックやフィニーと共に、クラシックレースでの活躍が期待されます。
セバスチャン・ラングフェルドも名うてのクラシックスペシャリストです。モニュメントでは2011年ツール・ド・フランドル5位が自己最高です。
エースのファンマルクを支えるアシスト陣は強力です。新天地では、ファンマルクに勝利の女神が微笑んでくれるのでしょうか。
そして、ジャパンカップで見事な独走逃げ切り勝利を飾ったダヴィデ・ヴィレッラにも期待です。
ジャパンカップの活躍だけでなく、直前のイル・ロンバルディアでは5位と、山を登る力が十分あります。アルデンヌクラシックでは、ウランやロランと共にエース格として出場するのではないかと思います。
ウランも、イル・ロンバルディアでは3位、その直前のミラノ〜トリノ3位、ジロ・デッレミリア3位と、なかなか勝ちきれない展開が多かったです。
ロランもなかなか勝てないことは、最初に述べました。
是非とも一矢報いる勝利をチームにもたらして欲しいと願うばかりです。
なお、キャノンデールにはスプリンターらしいスプリンターは不在となっています。
ミドルクラスのエース格選手が揃うバランスの良いチーム
ステージレース:★★★★☆
ワンデーレース:★★★★☆
ステージ優勝:★★★★☆
スプリント:★☆☆☆☆
確かに飛び抜けた選手はいませんが、メンバー構成のバランスは良く、どのレースでも勝利を狙える布陣だと言えましょう。
ステージレースでは、ウラン、タランスキー、フォルモロ、ドンブロウスキーで上位を狙います。願わくばウラン悲願のジロ総合優勝を果たすことが出来れば、言うことはありません。
ワンデーレースやステージ優勝はファンマルク、ヴィレッラ、ロランで狙います。ファンマルク、ロランにとっては待ち焦がれた勝利を掴み取ることが出来るか要チェックです。
個人的に最も注目している選手はマレンです。立ち振舞いから漂う大物感は、将来的にファビアン・カンチェラーラやトニ・マルティンのような偉大なTTスペシャリストになる予感がします。
2016年シーズンは、正直存在感の薄かったキャノンデール・ドラパックでしたが、2017年はプロトンの台風の目になることを期待しています。
・他のチームの戦力分析記事はこちら
ワールドツアーチーム一覧&全チーム戦力分析【2017年シーズン版】
・こちらも合わせてどうぞ