アスタナ戦力分析!【2018年シーズン】

ブエルタでいよいよ本領発揮したミゲルアンヘル・ロペス、リオ五輪メダリストのヤコブ・フルサングを中心に据えたアスタナ。

弱点を補う的確な戦力補強により、チーム力は着実にアップしている。

アスタナ2018ロースター

ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア)
ヤコブ・フルサング(デンマーク)
ペリョ・ビルバオ(スペイン)
ザンドス・ビジギトフ(カザフスタン)
ダリオ・カタルド(イタリア)
セルゲイ・チェルネトツキー(ロシア)
ローレンス・デヴリーズ(ベルギー)
ダニイル・フォミニフ(カザフスタン)
オスカル・ガット(イタリア)
エフゲニー・ギディッチ(カザフスタン)※トレーニーから昇格
アンドリー・グリブコ(ウクライナ)
ドミトリー・グルズジェフ(カザフスタン)
ジェスパー・ハンセン(デンマーク)
タネル・カンゲルト(エストニア)
トルルス・コルシャイス(ノルウェー)
バーフティヤール・コージャタイエフ(カザフスタン)
アレクセイ・ルツェンコ(カザフスタン)
リカルド・ミナーリ(イタリア)
モレーノ・モゼール(イタリア)
ルイスレオン・サンチェス(スペイン)
ニキータ・スタルノフ(カザフスタン)
ルスラン・トレウバイエフ(カザフスタン)
ミケル・ヴァルグレン(デンマーク)
アルチョム・ザハロフ(カザフスタン)
アンドレイ・ツェイツ(カザフスタン)

・新加入選手
マグナス・コルトニールセン(デンマーク)←オリカ・スコット
オマール・フライレ(スペイン)←ディメンションデータ
ユーゴ・ウル(カナダ)←AG2Rラモンディアール
ダヴィデ・ヴィレッラ(イタリア)←キャノンデール・ドラパック
ヤン・ヒルト(チェコ)←CCC・スプランディ・ポルコウィチェ(PCT、ポーランド)

・退団選手
ファビオ・アル(イタリア)→UAEチーム・エミレーツ
マッティ・ブレシェル(デンマーク)→EFエデュケーションファースト・ドラパック
パオロ・ティラロンゴ(イタリア)→引退
アーマン・カミシェフ(カザフスタン)→未定
カールパトリック・ラウク(エストニア)※トレーニー→未定

アルが抜けた穴を、ロペスが埋める

2015年ブエルタ・ア・エスパーニャ総合優勝、2017年ツール・ド・フランス1勝&総合5位にして、現イタリアロードチャンピオンのアルがUAEチーム・エミレーツに移籍した。

ワールドツアーチームランキング15位と低迷するチームにおいて、最もポイントを稼いでいた選手の離脱はあまりにも大きい。

だが、ロペスはアルの穴を補って余りあるほどの期待が持てる逸材だ。

2017年ブエルタでは、アルのアシストとして出場したが、いまいちコンディションの上がらないアルに対して、ロペスは第11ステージの超級山岳の山頂フィニッシュにて勝利を飾った。すると、いつの間にかアルとロペスは対等の立場となった上に、第15ステージでも勝利して、アルを押しのけて総合8位で完走したのだ。

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個人TTはからっきしダメだが、ピュアクライマーとしての登坂力は、今や世界一といっても過言ではない。それほどの凄まじいヒルクライムをブエルタで披露していた。

2018年に24歳となる若さもあり、課題のTTは追々改善していけばよい。ロペスの真の力を見せるためにも、怪我だけには本当に避けてもらいたい。

そして、もう1人のエースは2016年リオ五輪銀メダリストのフルサングだ。

クリテリウム・デュ・ドーフィネ第6ステージでワールドツアー初勝利を飾ると、最終第8ステージでも独走勝利して逆転で総合優勝を果たした。

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エースとして走ることが約束されていたツール・ド・フランスではあったが、アルが怪我の影響でジロ・デ・イタリアをパスし、ツール直前にアルがイタリア王者になったことで暗雲が立ち込めた。

ツールではアルがエースなのか、フルサングがエースなのかハッキリしないまま、アルが第5ステージで優勝するなど、総合争いで一歩リードしていた。フルサングも第11ステージを終えて総合5位と、表彰台を狙える位置にいた。

しかし、第12ステージで落車に巻き込まれて手首を骨折してしまう。ほとんど片手が使えない状態にも関わらず、そのステージは完走したものの、翌第13ステージは序盤から大きく遅れたこともあり無念のリタイアとなった。

アルが抜けたことは戦力的には大きな損失ではあるが、ロペスとフルサングにとっては自身の総合狙いの風通しが良くなったといえる。2人のエースが万全の状態で走ることができれば、2017年シーズン以上の総合成績を残せるはずだ。

さらに、チームにはカンゲルトも控えている。ジロ・デ・イタリアでは、第14ステージを終えて総合7位に位置していたが、第15ステージ中に中央分離帯に激突する落車をしてしまい、リタイアとなった。そのままレース復帰することなく2017年シーズンを終えているが、本人のFacebookを見ると既にトレーニングは再開している様子が伺える。コンディション面に大きな不安を残しているものの、順調に復帰できればエースを担いうる貴重な戦力となるだろう。

ヒルトの加入、ビルバオの成長により層が厚くなった山岳アシスト陣

注目は新加入のヒルトだ。グランツール初参戦となったジロでは、大会序盤は不調だったものの尻上がりに調子を上げていき総合12位となった。グランツールでエースを担うことができるクライマーの補強は、引退したティラロンゴの穴を埋めるドンピシャの補強だ。セカンドエース的な立ち位置で、ステージレースやグランツールでエースとして走る可能性も十分にあるだろう。

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もう一人強力なクライマーは、ビルバオだ。ブエルタでは、アル以上に上りを順調にこなす姿が見られ、ライバルチームのアシストを削る牽引力を発揮していた。ビルバオはアスタナの山岳戦術におけるキーマンとなるだろう。

カタルドは、ジロ総合14位と安定した登坂力を見せている。山岳での集団コントロール、逃げに乗っての前待ちなど山岳コースにおける様々な役割をこなすことができる。

枚数は少ないが、一人一人の力が強力であるため、アスタナの山岳アシストの戦力は高いといえる。

パンチャーを補強し、ワンデークラシックの戦力強化を図った

ヴァルグレンは、2016年アムステルゴールドレース2位、2017年E3ハーレルベーケ6位、ロンド・ファン・フラーンデレン11位と北のクラシックもアルデンヌクラシックも戦える選手だ。ここに、パリ〜ルーベ15位のデヴリーズを加えた2人が北のクラシックでのエース格として走ることになるだろう。

アルデンヌクラシック要員として、2016年ジャパンカップを制し、2017年ブエルタで山岳賞を獲得したヴィレッラを獲得した。

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本人の最大の目標はイル・ロンバルディアで勝つことだ。ゆえに春のクラシックでピークを持ってくるかどうかは定かではないが、クライマー向きのワンデークラシックではエースとして出場する機会が増えるだろう。

2010・2012年とクラシカ・サンセバスティアンで勝利し、2017年はGPブルーノ・ベゲッリ(1.HC)で勝利したルイスレオン・サンチェスも、ワンデーレースでの勝利が期待できる。もちろん、ステージレーサーとして、ステージ優勝や得意のダウンヒル力を活かしたアシストも大事な役割となる。

コルトニールセンの加入でスプリントも狙える

2016年ブエルタでステージ2勝をあげたコルトニールセンの加入は心強い。今までのアスタナには無かったスプリントを狙えるようになった。

合わせて、トレーニーからギディッチが昇格。ツアー・オブ・タイランド(2.1)総合優勝、ツアー・オブ・チンハイレイク(2.HC)1勝と、21歳ながら通算6勝と結果を残している。春先のレースでは好調さを見せていた22歳のミナーリもいる。

スプリントトレインとして、元カナダTT王者のウルも獲得している。

トレウバイエフ、ザハロフ、スタルノフ、モゼール、グルズジェフ、グリブコ、ガット、フォミニフ、ビジギトフら平坦に強い選手も揃っており、スプリンターチームとしてメンバーを組むことも可能になったのだ。

着実な戦力アップに繋がる補強は良いが、突き抜けた戦力ではない

グランツール:★★★★☆
北のクラシック系:★★★☆☆
アルデンヌクラシック系:★★★☆☆
スプリント:★★★☆☆

チームの弱点を着実に補う補強は高評価できる。しかし、元々のベースとなる戦力に不安があるため、確実な勝利を見込めるには至っていないように見えてしまう。

ロペス、フルサングの2人が好調であれば、WTポイント獲得の面では不安はないだろう。ヒルトを補強したことで山岳への備えは確実に厚くなっている。

勝利数を重ねるという点においては、コルトニールセン、フライレ、ヴィレッラら新戦力陣の働きに懸かっている。加えて、LLサンチェス、ルツェンコ、ヴァルグレンらに期待したいところだ。

噛み合えば強力チームになりそうな予感がする。

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