ジロ・デ・イタリアU23(ベビージロ)第9ステージ後半 レポート

ジロ・デ・イタリアU23、通称「ベビージロ」の第9ステージ後半パートの詳細をレポートします。

抜きつ抜かれつのデッドヒート

後半パートは追い抜き形式での22.4kmの個人タイムトライアルとなっています。途中勾配が10%を越えるキツい上り坂が2ヶ所登場するなど、全体的にアップダウンが多く、最後は登坂距離800m・平均勾配14.2%・最大勾配18%の激坂を上ってフィニッシュとなります。最後の最後で一番厳しい上りが待ち受けている非常に難易度の高いコースレイアウトです。

さらに総合成績上位15人の選手は、総合1位の選手から順番に総合タイムと同じ時間だけ間隔を開けてスタートし、最初にフィニッシュラインに到達した選手が総合優勝となる特殊ルールが採用されていました。

前を走る選手を風よけにするドラフティングは禁止されているものの、追いかける心理・追いかけられる心理が勝負どのような影響を及ぼすのか、非常に興味深いレースとなっていました。

総合16位以下の選手は、通常の個人TT形式どおり、下位の選手が均等間隔でスタートしていきました。

最初に好タイムをマークしたのは、初日のプロローグでステージ優勝を飾ったエドアルド・アッフィーニ(イタリア、SEGレーシングアカデミー)です。30分32秒をマークし暫定1位となりました。

このタイムを更新したのは、昨年のU23世界選TTチャンピオンのミッケル・ビョーグ(デンマーク、ハーゲンズベルマン・アクシオン)です。アフィーニのタイムを一気に36秒更新する29分56秒を叩き出しました。

ビョーグが暫定1位のまま、いよいよマリアローザを含む上位15人の選手による追い抜き形式での個人TTが始まります。

4つのスタート台が用意され、上位の選手が順番に並んでスタートを待ちます。

最初にスタートしたのは、もちろんマリアローザ。全身ピンクのスキンスーツを身にまとったアレクサンドル・ウラソフ(ロシア、ロシアナショナルチーム)が先陣を切ります。

続いてマーク・ドノヴァン(イギリス、チームウィギンス)が15秒後にスタート。TTバイクを用意できなかったのか、上り区間に備えた選択だったのかは不明ですが、TTバーをアッセンブルしたノーマルバイクを使用していました。

ウラソフは低いエアロポジションをキープしながら、ハイケイデンスで序盤の下り区間を快調に飛ばしていきます。

対するドノヴァンは過去の戦績を見ると、個人TTは得意な選手と思われますが、ノーマルバイクではさすがに不利だったようで、ウラソフとの差が徐々に開いていきます。

一方、総合3位以降の選手たちの争いでは、ウラソフから2分5秒差の7番手スタートを切ったロバート・スタナード(オーストラリア、ミッチェルトン・バイクエクスチェンジ)が凄まじい追い上げを見せます。

まず、スタナードより22秒先にスタートしたクリスチャン・ムニョス(コロンビア、コロンビアナショナルチーム)を抜き去ります。さらにスタナードより47秒先にスタートした総合4位のアレハンドロ・オソリオ(コロンビア、コロンビアナショナルチーム)、53秒先にスタートしたスティーブン・ウィリアムズ(イギリス、SEGレーシングアカデミー)を視界に捉えると、フィニッシュまで残り8km地点で2人を追い越しました。

6番手スタートのジョアン・アルメイダ(ポルトガル、ハーゲンズベルマン・アクシオン)もキレのある走りを見せて、ムニョス、オソリオ、ウィリアムズを抜いており、先頭からウラソフ、ドノヴァン、アルメイダ、スタナードという順位になりました。

残り5km地点にさしかかると、スタナードはアルメイダをも捉え、総合3位に浮上しました。

先頭のウラソフは前半を飛ばしすぎたためか、後半区間はやや失速気味となります。ドノヴァンとのタイム差をスタート時点の15秒から、一時期は1分以上開いていましたが、終盤は50秒程度まで縮められてきました。

そして、いよいよ最終盤、フィニッシュ直前の激坂区間へ到達しました。

10%を越える激坂にウラソフは完全に失速してしまいます。上体を揺らしながら、何とかダンシングでかろうじて蛇行せずに上っているような状態です。

それでもここまでに築いたリードは大きく、失速しながらもフィニッシュラインに到達。全ての力を出し切った様子で、片手をあげてガッツポーズしながら総合優勝を決めました。

2位のドノヴァンもウラソフと同様に激坂区間に入ると、やや蛇行しながら前に進んでいるような状態でした。

そこへ4人抜きしてきたスタナードがやってきました。しかし、序盤から飛ばし続けたスタナードも激坂の前ではスピードが激減。それでも地力に勝るスタナードがドノヴァンを追い越し、とうとう5人抜きを果たして総合2位に浮上しました。

と思いきや、スタナードの背後から、一度抜き去ったはずのアルメイダが突如として姿を現します。アルメイダは激坂のためにパワーをとっておいたとでも言わんばかりに軽やかに、かつパワフルに突き進み、フィニッシュまで300mを切ったところでスタナードをかわして前に出ました。

スタナードはアルメイダの背後にピタリと食らいつき(※ドラフティングは禁止だが、激坂区間なのであまり意味はない)、何とか引き離されないよう耐えます。

しかし、残り200mを切るとアルメイダがラストスパート。食い下がるスタナードを突き放して、ウラソフから46秒遅れの総合2位でフィニッシュしました。

スタナードはアルメイダに6秒及ばず、総合3位。ドノヴァンは何とか総合4位で踏みとどまりました。

また、総合順位とは関係なく、この日最速タイムを記録した選手がステージ優勝となるため、29分25秒でフィニッシュしたスタナードがステージ優勝を飾りました。ビョーグのタイムを31秒も上回るタイムでした。

総合優勝したウラソフは、プロコンチネンタルチームのガスプロム・ルスヴェロに所属するプロ1年目の選手です。昨年のパヴェル・シヴァコフ(ロシア、チームスカイ)に続き、2年連続でロシア人選手が総合優勝する結果となりました。

一時は2位に浮上したスタナードは総合3位表彰台とポイント賞を獲得しました。「今大会ではよく上れることを見せることができました。しかし、第4ステージのバッドデーがなければ、もっと上位に行けたと思います。」と確かな手応えと悔しさを覗かせるコメントを残しました。

※ハイライト動画

※リザルト

※参考
『STEVIE WILLIAMS FINISHES THE GIRO U23 IN FIFTH OVERALL』

『Stannard wins final stage, points classification and finishes third overall at the Giro d’Italia U23』

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