パリ〜ルーベをもって、北のクラシックシリーズは完結した。
ベルギー北部のフランドル地方方面から、南部のワロン地方方面のアルデンヌクラシックシリーズへと舞台を移す。
石畳と激坂が特徴の北のクラシックとは異なり、長い登りが度々登場することがアルデンヌ・クラシックの特徴である。
石畳をパワーでこなす重量系の選手ではなく、軽やかに登りをこなす軽量級の選手に勝機が訪れることが、北クラとアルデンヌの最大の違いだ。
フレーシュ・ワロンヌ、リエージュ~バストーニュ~リエージュと続く3連戦の初戦を飾るレースが、今回プレビューするアムステルゴールドレースだ。
オランダを走るレースのため、レース名にある「アムステル」から、首都・アムステルダムを連想しがちであるが、スタート地点は、オランダ南部リンブルフ州のマーストリヒトだ。
では、アムステルダムとアムステルゴールドレースは全く無関係かと言うと、そうではない。
アムステルゴールドレースの「アムステル」とは、オランダのビールブランドの一つである。
この「アムステル」という名前は、アムステルダムを流れるアムステル川の運河に由来している。
結局のところアムステルゴールドレースはアムステルダムに関連しているとも言えなくはないのだ。
もう一つ余談を挟むと、アルデンヌ地方とはベルギー南東部からルクセンブルク、フランスの一部の地域を含む一帯のことを言うそうだ。
オランダ南部のリンブルフ州は、リエージュから程近い地域ではあるが、純粋なアルデンヌ地方の定義から外れる場所である。
とはいえ、伝統的にアムステルゴールドレースは『アルデンヌ・クラシック』と呼ばれているので気にしてはいけないのかもしれない。
そんなアムステルゴールドレースは、昨年とわずかにコースレイアウトに変更がある。
このわずかな差が大きな差となり、新たなレースと生まれ変わるかもしれない。
アムステルゴールドレース2017コースプロフィール
アムステルゴールドレース最大の特徴は、無数にあるアップダウンだ。
コースプロフィール上でナンバリングされた35ヶ所の登りが登場し、トータルでの獲得標高は3000mを軽々と越えてくる。
さらに”1000のカーブ”と称されるほど、曲がりくねったコーナーを含む全長264.6kmのテクニカルなコースとなっている。
2015年のアムステルゴールドレースまでは、名物「カウベルグ」の頂上へとフィニッシュするのが通例だった。
しかし、昨年は「カウベルグ」を越えて、さらに1.8kmの平坦路を走ってからフィニッシュというレイアウトに変更となった。
今年からは、最後の「カウベルグ」が省略され、最終盤はクライマーでなくとも十分にこなせる登りの後にフィニッシュ地点が登場するレイアウトに変更となったのだ。
2015年までは、ミカル・クヴィアトコウスキー、ロマン・クロイツィゲル、フィリップ・ジルベールといった登りに強い選手が優勝していた。
2016年は終盤に飛び出したエンリコ・ガスパロットが優勝したが、3位以下にはソニー・コルブレッリ、ブライアン・コカール、マイケル・マシューズといった面々がトップ10位内でフィニッシュしている。
2017年は、この”登れるスプリンター”たちの勝機が更に高まるレースとなるかもしれない。
一方で、集団スプリントの展開を嫌うクライマーたちが、フィニッシュまで距離を残す登りで仕掛けて、クライマー同士のバンチスプリントに持ち込む展開も十分に考えられる。
では、勝負どころと思われる終盤に絞って、コースレイアウトを細かく見ていきたい。
2回目のカウベルグから、3回目のカウベルグまで
アムステルゴールドレースの代名詞とも言える「カウベルグ」は、登坂距離1200m・平均勾配5.8%・最大勾配12%の登りだ。
本レースでは、カウベルグを3回通過する。
1回目は55km(残り209.6km)地点。
2回目は176.8km(残り87.8km)地点。
3回目は245.7km(残り18.9km)地点となっている。
カウベルグの先には、フィニッシュ地点が待っているが、ここは通過する。
ここから登場する登りを列挙してみる。
181.5km(残り83.1km)地点、グールヘンメルベルグ(1,200m、4.6%、8%)
194.5km(残り70.1km)地点、ベメレルベルグ(900m、4.5%、7%)
210.0km(残り54.6km)地点、ロールベルグ(1,500m、5.3%、8.6%)
219.9km(残り44.7km)地点、グルペルベルグ(700m、8.2%、12.8%)
225.3km(残り39.3km)地点、クルイスベルグ(600m、8.8%、15.5%)
227.3km(残り37.3km)地点、アイセルボスベグ(900m、9.3%、17.1%)
231.1km(残り33.5km)地点、フロンベルグ(1,600m、3.6%、8%)
235.6km(残り29.0km)地点、クーテンベルグ(1,200m、5.9%、16%)
注目は、219.9km地点から、激坂と言って差し支えない登りが連続して登場する点だ。
フィニッシュまで50kmを切っていることから、集団をセレクションする動きが活発化するだろうし、スプリンターを千切りたいクライマーチームは猛攻撃を仕掛けやすいポイントだ。
そして、245.7km(残り18.9km)地点で3回目のカウベルグを登って、いよいよ最終盤へと突入する。
3回目のカウベルグからフィニッシュまで
カウベルグを越えると、フィニッシュ地点を通過して、先ほどと同じルートを通っていく。
250.4km(残り14.2km)地点、グールヘンメルベルグ(1,200m、4.6%、8%)
259.0km(残り5.6km)地点、ベメレルベルグ(900m、4.5%、7%)
の2つの登りをこなせば、まもなくフィニッシュ地点だ。
昨年、ティム・ウェレンスがアタックを仕掛けたポイントがベメレルベルグだ。
単体で見れば、それほどキツくはない登りだが、259kmを走破した脚であることを考えると、決定的なアタックが決まりかねない。
ウェレンスのアタックは実らなかったが、追走で消耗したスプリンターチームは、カウンターアタックを決めたガスパロットを捉えることは出来なかったのだ。
だが、今年はカウベルグを経由しない。
ベメレルベルグを耐えしのげば、フィニッシュ地点まではダウンヒルを含む平坦路だ。
ゴール前ラスト3kmの断面図は以下のとおりだ。
ベメレルベルグで飛び出したクライマーやパンチャーが、ダウンヒルで攻めて逃げ切る展開になるかもしれない。
あるいはスプリンターチームがハイスピードでコントロールした集団によるスプリント勝負となるかもしれない。
いずれにせよ、最終回のベメレルベルグでの動きは、非常に重要となるだろう。
クライマーか、パンチャーか、スプリンターか
カウベルグ頂上フィニッシュのアムステルゴールドレースも見応えがあったし、昨年のレイアウトも終盤のハラハラドキドキ感はたまらなかった。
だが、今年はそれ以上に熱狂的な展開となるかもしれない。
スプリンターに勝機があることで、最終盤までどのチームも勝利を狙って、激しい競り合いが起き続けるだろう。
そして、スプリント勝負を避けたいパンチャー、クライマーチームは、無数にある登り坂を使って攻撃を仕掛けることが可能だ。
主催者は3回目のカウベルグが残り18.9km地点にあることから、『決定的なポイントにはなりにくい』と言っていたが、
もしわたしがクライマーチームを率いるとしたら、3回目のカウベルグでスプリンターチームをふるい落としにかかりたい。
したがって、残り18.9km地点のカウベルグは決定的なポイントになり得る、重要な勝負どころだと言えよう。
まさにロンド・ファン・フラーンデレンのオウデ・クワレモントやパテルベルグのようだ。
次回は、アムステルゴールドレースを走る有力選手についてプレビューしようと思う。
また、本レースは第2回サイバナラジオも放送予定なので、乞うご期待!
・関連リンク
ついにアルデンヌクラシックが始まりますねー!
以前にバルベルデがアルデンヌクラシック三連勝してほしいとコメントしましたが、今シーズンこんなに調子が良ければ本当にチャンスがあるかもしれませんね!
本人も「アルデンヌクラシックで勝利できれば今季はもうオフでいいくらいだよ笑」とか言っちゃってますし笑
とはいえ、今年はクウィアトコウスキー然り、ジルベール然り、名だたるクラシックハンターやアラフィリップ等の新鋭も台頭してますので、本当にレベルの高いアルデンヌクラシックになりそうですね。
サイバナラジオ、ぜひぜひライブで参戦したいのですが、その日はバイトで参加できなさそうです・・・orz
あと、全く関係ないですが、アルが膝を故障してジロに出場できなくなってしまったそうですね。ニバリ&ランダとの三つ巴・新旧アスタナエース対決を心待ちにしていたのでとても残念です・・・
林さん
バルベルデ、普通にアルデンヌ3連勝あり得ますよね〜。
マークしようが何しようが、最後のスプリントで周りをねじ伏せる力は十分に持っていますからね。
> サイバナラジオ、ぜひぜひライブで参戦したいのですが、その日はバイトで参加できなさそうです・・・orz
残念ですが、これからも定期的にやっていくので、都合のあう日にぜひ!
> あと、全く関係ないですが、アルが膝を故障してジロに出場できなくなってしまったそうですね。
アスタナやばいですよ…。
今シーズン未勝利なのに、頼みの綱のアルまで怪我となると、もう…。
ニーバリはともかく、ランダもいまいち調子が悪いのが心配です。