今年のジロの大本命であるナイロ・キンタナ擁するモビスター。
毎回のように弱点とされていた平坦アシストを充実させ、2014年以来の総合優勝を目指す。
ジロ・デ・イタリア2017、モビスター出場選手
ナイロ・キンタナ(コロンビア)
アンドレイ・アマドール(コスタリカ)
ヴィネル・アナコナ(コロンビア)
ダニエーレ・ベンナーティ(イタリア)
ビクトール・デラパルテ(スペイン)
ホセ・エラダ(スペイン)
ゴルカ・イザギーレ(スペイン)
ホセホアキン・ロハス(スペイン)
ローリー・サザーランド(ニュージーランド)
絶対的エースであるキンタナのずば抜けた存在感
モビスターにとって、最大のチーム目標はツール・ド・フランス総合優勝である。
前身チームも含めると、記録上2006年にオスカル・ペレイロが総合優勝をしているが、ペレイロ以前となると1995年にツール5連覇を達成したミゲル・インデュラインまで遡らねばならない。
スペインの名門チームにとって、すっきりとしたツール総合優勝のタイトルは是が非でも欲しいところなのだ。
したがって、ナイロ・キンタナの今シーズン最大の目標はツールである。
では、なぜジロに出場するのか?
キンタナは、昨年ツールとブエルタに出場した。
ツールでは謎のウイルスに感染した影響もあり、本来の実力を発揮できずに総合2位。
しかし、ブエルタでは好調を維持して、総合優勝を果たした。
このことから、キンタナはグランツール連戦した2戦目に調子が上がるとチームは判断した。
ゆえに、今年はジロとツールの連戦を行うという理屈なのだ。
ちなみに、2014年はジロとブエルタに出場して、ジロ総合優勝・ブエルタDNFで、
2015年はツールとブエルタに出場して、ツール総合2位・ブエルタ総合4位となっている。
グランツール2連戦した方が好調になるという謎理論には、ツッコミどころ満載ではあるが、キンタナはキンタナだ。
今大会で、総合優勝の大本命中の大本命であることに一切の疑いはない。
今シーズンは、ブエルタ・ア・バレンシア総合優勝、ティレーノ~アドリアティコ総合優勝、直近に行われたブエルタ・アストゥリアスでは総合2位と好調を維持している。
長くて強烈な登りの前では、キンタナの前に出るものはいないのではないか。
というくらい、凄まじいヒルクライムを見せている。
普通に考えたら、ジロの1級山岳の数々をキンタナが総なめにしてもおかしくない。
だが、今年のジロには計70km近い距離を走る個人TTがある。
いつぞやに比べれば、キンタナのTT能力もだいぶ向上しているが、それでもTTスペシャリストと呼ばれる選手たちには1分以上の差をつけられることも少なくない。
TTでタイムを失うことを見越して、どれだけ山岳でタイム差をつけることが出来るか。
キンタナのマリアローザ獲得は、この一点に全てがかかっている。
山岳アシストの層の薄さは、キンタナの登坂力への信頼の裏返しか
ヴィネル・アナコナ、ホセ・エラダ、ビクトール・デラパルテがクライマーと言える選手たちだ。
しかし、チームスカイのミケル・ランダや、FDJのセバスチャン・ライヒェンバッハと言ったエースアシストと張り合う力があるか?と言われれば、厳しいと言わざるを得ない。
今シーズン、プチブレイク中のゴルカ・イザギーレにしても、1級山岳の終盤までキンタナを牽引するほどの登坂力はない。
モビスターには、アレハンドロ・バルベルデを除いても、ダニエル・モレーノ、マルク・ソレール、ルーベン・フェルナンデスといった、エースアシストを務めることが出来る一級クライマーが揃っているが、ジロでは起用しなかった。
ツールに向けて戦力を温存しているのではないかと思う。
そして、キンタナへの圧倒的な信頼感があるからこそ出来る判断なのだろう。
屈指の平坦スペシャリスト揃い
山岳とは打って変わって、平坦アシストの戦力はびっくりするほどの充実ぶりだ。
今シーズンから加入したダニエーレ・ベンナーティ、昨年のブエルタで貴重な平坦アシストとして大活躍したローリー・サザーランド、TTスペシャリストであるアンドレイ・アマドール、スプリンターながら山岳でのペースメイクも可能なホセホアキン・ロハス。
平坦での支配力は、出場全チーム中ナンバーワンだと言えるだろう。
モビスターは伝統的に、平坦アシストの存在を軽視していたのか、横風分断作戦をくらってしまうことが多かった。
しかし、ベンナーティの獲得も含めて、いよいよグランツールには近代グランツールには平坦アシストの存在が重要であるとの結論に至ったのだろうか。
この先のツールが心配になるほどの充実ぶりである。
モビスターまとめ
◆チーム力
・エースの登坂力:★★★★★
・エースのTT力:★★★☆☆
・山岳アシスト力:★★★☆☆
・平坦アシスト力:★★★★★
◆ストロングポイント
・キンタナのずば抜けた登坂力
・豪華平坦アシスト陣
◆ウィークポイント
・ライバルに比べるとやや劣るキンタナのTT力
・エース山岳アシストの不在
キンタナの登坂力が、他のライバル選手を凌駕しているので、圧倒的な大本命だと言える。
ただし、TT力で劣る部分があるため、最終日の個人TTを前に2分以上のアドバンテージは築いておきたいところだ。
得意の山頂フィニッシュステージで、猛烈なアタックを決めタイムを稼ぎたい。
平坦アシストが充実しているため、キンタナを勝負どころの山岳ポイントまで安全に運ぶことは難しくない。
ジロを制することで、ダブルツールも現実的になってくるだろう。