ツール・ド・フランスでは猛威をふるうチームスカイも、ジロでは結果を残せていない。
だが、今年はひと味もふた味も違うだろう。
過去最高とも言える戦力でジロに臨み、チーム初の総合優勝を狙う。
ジロ・デ・イタリア2017、チームスカイ出場選手
フィリップ・ダイグナン(アイルランド)
ケニー・エリソンド(フランス)
ミカル・ゴラス(ポーランド)
セバスチャン・エナオ(コロンビア)
ヴァシル・キリエンカ(ベラルーシ)
ミケル・ランダ(スペイン)
サルヴァトーレ・プッチオ(イタリア)
ディエゴ・ローザ(イタリア)
ゲラント・トーマス(イギリス)
実質的なエースはトーマス
ゲラント・トーマスとミケル・ランダのダブルエース体制で臨むと言われているが、恐らくトーマスが第1エースを務めると思われる。
今シーズンのトーマスは、ティレーノ〜アドリアティコでステージ1勝、ツアー・オブ・ジ・アルプスでステージ1勝&総合優勝、と好調だ。
特にティレーノ第4ステージでは、圧倒的な登坂力を見せていたナイロ・キンタナに次ぐ登坂力を見せ、ステージ2位となったことが印象に残る。
トーマスは元々トラック競技出身という背景もあり、平坦独走力に長けたTTスペシャリスト寄りの脚質だが、今シーズンはトップクライマーに引けを取らない登坂力を見せている。
一方でボルタ・シクリクタ・ア・カタルーニャ第5ステージではラストの超級山岳で遅れてしまい、トップと1分25秒離されてフィニッシュした。
長くて強烈な登りになると、対応しきれない弱点も露呈している。
ジロでは、長くて強烈な登りが多数登場する。
ここをどう凌ぐかがマリアローザ獲得するために最も重要なポイントとなる。
長くて強烈な登りで失うタイムを最小限にとどめておくことが出来れば、得意のTTでタイム差を挽回することは十分可能だ。
一方のランダは、自分がエースの立場になると思うように力を発揮できないタイプの選手ではないかと思う。
2015年にジロ総合3位となった際も、チームメイトのファビオ・アルが2位となっている。
昨年のジロでは、単独エースで挑むも途中リタイアに終わってしまった。
そして、同年のツール・ド・フランスでは、クリス・フルームの鉄壁山岳アシスト陣の一角として猛威をふるっていたのだ。
今シーズンも、ツアー・オブ・ジ・アルプス第3ステージでは、トーマスをステージ優勝に導き、自身も2位に入る活躍を見せている。
フィニッシュする瞬間に、トーマスの背中を押して、先に行かせた仕草が印象に残った。
まるで『おれじゃなくて、お前がエースなんだぜ』と言っているように思えた。
やはり、ランダはアシストで輝くタイプだ。
トーマスを支えるランダの存在は、山岳の多いジロでは非常に頼もしく、凄まじいほどに強力である。
もしも、ランダとライバル選手とのタイム差が少ない状況で、ランダがアタックを仕掛けたとする。
他の選手と違って、山に強いランダをみすみす見逃すわけにはいかないので、ライバル選手はチェックせざるを得ないだろう。
これらの動きによってライバル選手の脚を削り、間接的にトーマスのアシストをすることが出来る。
チームスカイにとって、山岳でのランダのアタックというオプションは、他のチームにはない強力無比な武器となるだろう。
ランダだけじゃない、山岳アシストの充実ぶり
ランダ1人だけでも、チームスカイの山岳での攻撃力はずば抜けていると言えるが、ランダに加えてもう4人のクライマーがロースターに名を連ねている。
まずは、ディエゴ・ローザだ。
今シーズンからチームスカイに移籍した選手の一人で、昨年はイル・ロンバルディア2位という戦績が光る。
山に登れる上に、パンチ力がある選手だ。
ローザの牽きにより、山岳での集団破壊を狙えることだろう。
次に、セバスチャン・エナオだ。
昨年のジロでは、チーム内最高順位となる総合17位でフィニッシュ。
もっぱら山岳アシスト専任選手と言えるが、安定感は随一だ。
主に山岳におけるペースメイクと、他チームのアタックをチェックする任務を担うことになるだろう。
フィリップ・ダイグナンも、2009年ブエルタ総合9位という実績を持つ力のある選手だ。
ここ2年ほどは、本来の実力を発揮できずにいたが、今シーズンは安定した走りを見せていて復調を感じさせられている。
そして、驚くべきはケニー・エリソンドの存在だ。
ローザと同じく、今シーズンから加入した選手で、チームにとっては久々のフランス人選手である。
チームスカイがフランスでの人気を取り戻すため(というより非難の矛先を軽減させるため)に、獲得した一面があるような選手で、てっきりツール・ド・フランスに出場させるものと思っていた。
しかし、ここに来て突然のジロへの招集となった。
エリソンドの今シーズンの走りを見て、首脳陣はその力を高く評価し、マリアローザを獲るための戦力としてジロに呼び寄せたのだろうか。
いずれにせよ、昨年のツール・ド・フランスの鉄壁の布陣に匹敵する山岳アシスト陣が揃った。
チームスカイは、山岳での支配力・攻撃力は全チーム中ダントツでナンバーワンであると断言できる。
懸念されていた平坦アシストには、元世界チャンピオンを起用
エリソンドの招集と共に驚いたのが、元TT世界チャンピオンであるヴァシル・キリエンカが出場を決めたことだ。
キリエンカもフルームのツール3連覇に欠かせないメンバーだと思われていたので、ジロへの起用は意外だった。
そして、キリエンカほど頼もしい平坦アシストはいない。
ある程度の山岳なら登る力を持っているので、険しい山岳ステージの後半の平坦路でも、ルーラーとして任務を遂行することが出来る。
勝負どころに向けてエースを好位置まで引き上げる仕事、横風からエースを守ること、山岳でのペースメイク、集団破壊。
平坦アシストに求められる以上の仕事をマルチにこなすことが出来る、まさに百人力だ。
キリエンカの補佐役として、サルヴァトーレ・プッチオとミカル・ゴラスの2名も平坦アシストの任務を担う。
これらルーラー陣の総合力も、出場全チーム中1、2を争う強さを誇る。
ただし、懸念点が無いわけではない。
チームスカイはリーダージャージを着用しようがしまいが積極的に集団コントロールすることが多く、アシストが消耗しやすい。
その結果、昨年のブエルタ第15ステージや今年のカタルーニャ第6ステージのように、アシストの消耗を突かれた奇襲攻撃を食らってしまうことがある。
アシストの力は圧倒的でも、仕事をしすぎないよう、集団での立ち回りも重要になってくるのではないだろうか。
チームスカイまとめ
このチームの総合評価をまとめてみる。
◆チーム力
・エースの登坂力:★★★★☆
・エースのTT力:★★★★★
・山岳アシスト力:★★★★★
・平坦アシスト力:★★★★☆
◆ストロングポイント
・トーマスが今季好調を維持していること
・トーマスの高いTT力
・第2エースであるランダのずば抜けたアシスト力
・山岳アシストの凄まじい充実ぶり
・キリエンカ
◆ウィークポイント
・トーマスが長くて強烈な登りへの対応に不安を抱えること
・伝統的にアシストが仕事をしすぎて消耗する傾向にあること
高い次元で、バランスの良い布陣となってるため、十二分に総合優勝が狙える大本命の一角と見てよい。
ゆえに最も重要なことはトーマスの調子だ。
トーマスが軽やかに登れれば登れるほどに、マリアローザが近づく。
言い換えれば、ナイロ・キンタナのヒルクライムに食らいつくことが出来るかどうかに懸かっている。
チームスカイが掲げる遥かな目標の一つである『世界一のスポーツチーム』実現に向けて、まずはジロ制覇を狙う。
今大会もチームスカイを中心に展開していくことになるだろう。